チーム9

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目覚まし時計から鳴り響く強迫の声は、私を現実世界へと引きずり込む。

 
腕を伸ばし、時計を宥めるようにして騒音を止めた。

 
時刻は7時30分。針を見なくたって、そんなの分かりきっている。

 
目新しいことのひとつもない、味のしない日常がまたやってきたから。

 
職場に行って、仕事を進め、時間になったら帰る。

 
仕事に行く意味なんてのはとうの昔に忘れてしまった。

 
疲弊しきった身体を起こし、立ち上がる。

 
陽の光を浴びようと、レースのカーテンを開けた。

 
──花の匂いがする。

 
反射的に窓の外に目を向けた。

 
すると、そこにある筈のアスファルトの地面には、一面の花畑が広がっていた。

 
8月とは思えないような、優しく柔らかい風に、寝癖の付いた髪がふわりとそよぐ。

 
どうやら今日はいつもの1日にはならないようだ。

チーム9

玄関を開けると、足元には美しい花々が咲きこぼれていた。その彩は私にはあまりにも眩しすぎて。でも、今なら少し手が届くような気もして。地面に寝転んで、雲ひとつない青空を見上げた。

今日は世界が終わる日。まるで、天啓に打たれたかのようにそのことを悟った。花の香りが私を幸せに包み込んでいるかのように、心中は自分でも驚くほど穏やかだった。

何をして過ごそうか。どこか遠くの場所にでも行こうかとも考えたが、結局花を見つつハーブティーでも飲みながらゆっくりすることにした。私にとって、茶を嗜むことは唯一ともいえる趣味だったから。

一旦家の中に戻り、茶葉を探す。折角なら以前専門店なんかで買ったお気に入りのハーブティーを飲みたかったが、あいにく切らしているようだったので、紅茶を淹れることにした。

庭に設置されたテーブルに、薔薇の模様が描かれたミルク色のティーカップを置く。

ティーポットから注がれた透き通った赤橙色の液体が、太陽の光を受けてキラキラと輝きながらカップに流し込まれる。アールグレイ特有の柑橘の芳香が辺りに漂った。

黄昏の空を凝縮したような色を暫く見つめてから、私はそれを口に運んだ。深みのある爽やかな風味が口の中を満たし、潤す。

思い返してみればどんな時だって、私はずっと独りだった。誕生日の時だって私を祝う人なんて1人も居なかったし、コンビニで買ったお粗末なショートケーキのいちごさえもねだられないような、そんな人生だった。

私はこの机の上に2つのカップが並べられることをずっと待ち望んでいたけれど、とうとうそれが叶うことはなかった。最期の時になっても相手が現れることもないし、2つ目のカップは置かれない。

そんなことを考えている内に、カップはいつの間にか空になっていた。

すっきりとした後味が口の中に仄かに残る頃、微かに風が吹き荒れているかのような音が耳に入った。向かうからだ。何事かと思い立ち上がると、カップがカタカタと音を立てて揺れ始めた。

次第に音は大きくなっているようで、花で満ちたこの場所で、終末の存在を激しく主張しているかのように感じられる。視界に広がるのは一面の花畑なのに、耳から入って来るのは轟音。その光景は異質という他なかった。

ああ、もう終わりなのだろうか。せっかくなら最期にハーブティー、飲みたかったな。できれば誰かと一緒に、お喋りをしながら。そんな願望が頭の中を駆け巡る。不思議なことに、死にたくないとは思わない。拒むことも受け入れることもせず、私はただその場に立ちすくんでいた。

すると、ほんの刹那。何かの影が揺らいだ。

ふと顔を上げると、耳を劈く音は何事もなかったかのように消え去っていた。



最初はこの任務に対して良い印象を持っていなかった。この光が届かない世界で、勇姿を誰にも称えられることのない、疲弊を誰にも癒されることのない、孤独な人生の終わり方。先人達もそうやって世界を救ってきた。

そういうものだと思っていた。

だが、サイトを出て目の前に広がったのは、花。無機質な部屋の壁に見慣れてしまった私の目を彩りで焼き焦がすように、暗闇の中で咲き誇っていた。

揺らぐことがない花はまるで飾られた偽物のようだったが、触ってみればその温かみが、命が手で感じられた。[蝶の描写加筆求む]だが、それらを照らす太陽はない。暗がりには咲かないはずの花が闇に包まれた土壌を一面に覆っていて、それが強烈な違和感として脳に刻み込まれる。


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執筆者: tera99
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最終更新: 12 Sep 2023 22:51
最終コメント: 04 Sep 2023 09:50 by tera99

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