tale案「『目』薬」

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「先輩先輩!」

頬をゆるませながら駆けてきたのは後輩の中野だ。はしゃぐそいつに俺はゆったりと話しかける。

「おうどうした。新しいアイデアでも浮かんだか?」
「すげー良いのが浮かびました!てかもう試作品造っちゃいました!」

そう言いながらポケットから小さな小瓶を突き出してくる。大声のまま中野は続ける。

「これね、目薬なんですよ。んで気になる相手の目に差すんです。そうすると目薬の所有者にラブラブになるんですよ!使用したら使用した分だけラブラブっす!キャッチコピーは『貴方への想いが大きくなる愛情目薬』…どうっすか!」

ふーん…と俺は呟いた。ただそれだけじゃ面白みはない。誰でも考えつく便利アイテムだ。だがその俺の考えを読んだかのように中野は続ける。

「でもヤバイとこはそこだけじゃないんです。想いがでかくなる分だけ体もでかくなるんです!」

中野はヤバイっすよね!?マジヤバイくないですか!と興奮しながら続ける。

「これで下心満載の中年親父とかイチコロっすよ!しかも大好きだから相手も離れない。ヤンデレって奴ですかね!?下心と恋心と自分の体全部潰えちゃえ!ざまあみろ!」

なるほど普通の媚薬みたいな奴とは一味違うらしい。ここで俺は一つの疑問をぶつけてみることにした。

「それって動物にも効くのか?」
「バッチリです!今お見せしますね!」

そう言いながら胸のポケットから実験用のモルモットを出してきた。いや、なんで入ってるんだ気づかなかったぞ。

「ご覧ください。1滴、2滴、3滴…」

中野がモルモットに目薬を投与してすぐ、モルモットは巨大化を始めた。ブルドッグ一匹分はあるだろうか。たしかに中々の効き目のようだ。

「ほら!来ましたよ!ハンパないしもう俺にラブラブですよ!」

中野はじゃれついてくるモルモットをお座り、お座りと言って座らせるとズボンの前ポケットから首輪を取り出し近くの柱にモルモットを繋いだ。いやどっから出てきたんだ首輪。絶対ポケットに入らないって。

「あとユーモアでこんなこともしてみました!見てくださいこれ!」

と言いながら目薬と同じポケットから出してきたのは小指ほどの小さなサイコロだ。よく見ると何か文字が印刷してある。

「…なんて書いてあるんだ?これ。」
「見えないっすよね。これ。じゃあこのサイコロの『目』にこちらを掛けてみると~?」

そういいながら中野はサイコロに目薬を掛けた。みるみる間にサイコロは抱きかかえるほどになった。

「こちらの目、『収容違反させた時の話』でした~」

なるほど、動物の目だけではなく、目と付く物なら何でも良いようだ。これは確かに面白い。あとサイコロが中野にじゃれついてて中々シュールだ。

「中々良いんじゃないか?最近はあんまりいい製品が無いからな。」
「っすよね!っすよね!というわけで今週末試験用屋外グラウンド使わせてください!サイズの変化とと分量の関係しっかり調べないといけないんで!」
「おう、多分空いてるから頼んどいてやる。楽しみだな。」
「やった~!あ、きみはもう結構です。」

そういうと中野はズボンの後ろポケットからハンマーを取り出してサイコロを粉々にした。いやおかしいって。
                       
                      

「はぁ~付いてないです。折角の試験日に台風直撃だなんて…」

研究室の机でうなだれる中野がブツブツと文句を言う。風が窓を叩く音が中々にうるさい。台風直撃のテレビニュースを見ながら中野は台風逸れろ、台風逸れろと念を送り続けていたのだが、結局台風はこの県を直撃した。しかもよりにもよってこの施設を通るらしい。もちろんグラウンドなんて使えるはずも無かった。

「先輩。屋内試験場使えないんですか~」
「無理だ。もう別の班が使用してる。それにもし使えたとしてもサイズの変化のデータを取るためなんだろう?予想外に巨大化して施設を壊したらどうする。」

窓のガタガタ鳴る音が止まった。

「うぅ…早くこの目薬試したいんですけどねぇ。」

そう言いながら戸棚の中を覗き込んだ中野が呟く。

「あれ、空っぽだ。先輩もしかしてこれ使いました?」
「使わないよ。こぼしたんじゃないのか。」
「いや…そんな感じはないですけど…」

窓が再びガタガタと音を鳴らし始めた。しかもさっきより音が大分大きい。俺は嫌な予感がした。

「なぁ…もしかして台風の『目』がここを通ったんじゃないか…?」

もし、そうだとしたら…?

その時、バリバリッと音がして屋根が裂けた。一瞬のうちに俺達の体は空に巻き上げられた。

一体どれほどの大きさになったんだろうな?


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  1. portal:yzkrt ( 02 Jun 2018 12:45 )
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