ワルコン用tale「斑鳩博士の異常な愛情」

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「失礼します」

収容室に入り、背中越しに斑鳩博士へ声をかけたが反応は無かった。研究に没頭しているようだ。巨大な鮫型オブジェクトが横たわり、斑鳩博士はその腹部を触診している。オブジェクトは時折斑鳩博士を避けるように身体を動かそうとするが、拘束されているためその試みは失敗している。自分の世界に入っている博士とオブジェクトの間に割って入る事に躊躇したが、改めて声をかけた。

「斑鳩博士!お久しぶりです、宇陀です!」

斑鳩博士はびくりと肩を震わせ、こちらを向いて目を見開いた。

「宇陀君か、久しぶりだな!元気そうじゃないか」
「博士こそお元気そうで何よりです。中々顔を出す事が出来ず申し訳ありません」
「いやいや、君も忙しいだろう。活躍の噂はここにも届いているよ。今日は何の用かね?」
「しばらくこちらでお世話になるのでご挨拶に伺いました」
「ほう、よくボスに手放してもらえたな。また君と海洋研究が出来るのか」

ここはセクター-81██、海洋生物の研究を行うための施設だ。以前私はセクター-81██で斑鳩博士に師事し、研究を行っていたが、引き抜かれて違う部署に異動する事となった。多くの実績を積み、斑鳩博士と同等の段位クリアランスを取得したが、今でも斑鳩博士の教えは体に染みついている。

「博士はこの鮫型オブジェクトの確保で活躍されたそうですね」
「皆の力あってこそだ。職員2名が殉職し、12名が重症を負った」

斑鳩博士は複雑そうな表情を浮かべている。

「確保の際、何か不自然な事は起こりましたか?」
「特には無いな」

一瞬だけ、斑鳩博士の目が細まった気がする。

「オブジェクトの検証作業のために確保時の動画を拝見しました。博士もご覧になりますか?」

手元の端末を操作し、動画を再生した。当オブジェクトの確保には財団の極秘技術が使用されており、これは斑鳩博士と同等の段位クリアランスレベル4以上の職員でなければ確認する事が出来ない。動画には、空を飛ぶ1体の巨大サイズの鮫型オブジェクトと、その周囲に浮かぶ中サイズの鮫型オブジェクト、そして倒れ伏す職員と職員を庇うように立つ斑鳩博士の姿が映っていた。

中サイズの鮫型オブジェクトが高速で突進してきたが、斑鳩博士は避けようともせず、両腕を別々に振動させ始めた。腕から発生する音波の共振作用により中サイズの鮫型オブジェクトが空中で爆散した。財団神拳奥義、共振遠当てである。それと同時に巨大サイズの鮫型オブジェクトが動きを止めた。外傷が無い事を考えるとロレンチーニ器官に刺激を与えたのだろうか。その後、博士は取り巻きの中サイズの鮫型オブジェクトを全て破壊し、巨大サイズの鮫型オブジェクトが気絶するまで打撃を加えて収容を行った。

共振遠当てを習得したばかりの職員でも、冷静に確認すればこの動画の異常さに気付く事が出来るはずだ。音波は発信源の距離の二乗に比例して減衰する。共振作用により固有振動を無限に増幅させる事は出来るが、その振動に必要なエネルギーは使い手が供給しなければならない。斑鳩博士の身体能力とオブジェクトの距離を合わせて考えると、破壊までにかかる時間が短すぎるのだ。

十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。だが、財団神拳は断じて魔法ではない。科学技術で説明できない事を起こす事は出来ない。

「つまり君がここに来たのは私を収容するためか」
「はい、ですが、これまでの斑鳩博士の功績から考えると、安全性が確認できれば収容は一時的な措置になると考えられます。どうかご協力を」
「それはもう少し待つ事は出来ないのかね?」

斑鳩博士ともあろう人が自分の体の異常性に気付いていないはずがないのは分かっていた。自己申告が無かった以上、少なからず財団内での処遇に不服があるのだろう。可能な限り穏便に済ませたいが、斑鳩博士が抵抗した場合は拘束しなければならない。

「一時的であれ見逃して良い力ではありません。それに、財団神拳を習得した職員は全ての財団職員の模範であるべきです」
「そうか、無理か。先ほどしばらくお世話になると言っていたが、私が収容されている間は君が私の仕事を引き継ぐ形になるのかね?」

はい、と答えると斑鳩博士はそうか、そうかと呟いた。

「最後に一つ、宇陀君にとって最も重要な事は何かね?」
「異常存在を確保・収容・保護する事です」
「いいだろう。迎えが来る前に彼女の調査の目途を付けたかったのだが煮詰まっていてな。君なら打開策を見つけられるかもしれない」

私は目の前の鮫型オブジェクトを見上げた。彼女と呼ばれていると言う事は、雌なのだろうか。

「これは調査が難航するようなオブジェクトなのですか?」
「彼女は確保時の怪我が重かった事と、収容室が合わないためか衰弱し続けている。まだ怪我を治す位の元気はあるようだが、この調子だと半年も持たないだろう」
「分かりました。オブジェクトの保護は私にお任せください」

この状況下でオブジェクトの保護の事しか考えていない斑鳩博士を見て流石だなと苦笑した。ここまで言われたら期待に応えられるよう頑張らねばなるまい。


「斑鳩博士の異常性は身体能力の大幅な向上に加え、拳で語り合う……と言いますか、拳を通して感情及び記憶を双方向に伝達するものと考えられます」
「異常性の発生原因などは分かったかね?」
「不明です。本人は理解しているようですが、断じて言葉で表現しきれる話ではないと拒否しています。拳を通せば伝える自信はあると主張していますが、保留しています」
「了解した。詳細は資料を確認させてもらう。引き続き調査を続けてくれ」

斑鳩博士の異常性の調査結果を報告し、通信を切った。斑鳩博士から研究を引き継いでから2か月間が経ったが、思うように研究が進んでいない。斑鳩博士の異常性の検証は中々難しい。身体能力の向上に関しては容易に計測可能だが、記憶や感情の伝達を検証するとなると対人実験を行う必要がある。斑鳩博士の打撃に耐えられるDクラス職員などそうそう見つかるものではない。頭部が爆発して死亡したDクラス職員の事を思い浮かべ、ため息を吐いた。元プロボクサーの丈夫なDクラス職員を選んだつもりだったのだが。これ以上は財団神拳を習得した職員を利用するしか無いのだろうか。さらに、博士から託された鮫型オブジェクトの保護も難航している。収容中の斑鳩博士とも相談しながら研究を重ね、怪我は概ね治ったが体調の悪化は続いている。

斑鳩博士の異常性の報告のために事務棟に出向いたが、こうやって外に出かけるのも久しぶりだった。残された時間は少ない。早く研究を再開しなければ。鮫型オブジェクトの状態を見るために海洋生物専用の収容棟に入ろうと社員証をかざしたが、ドアのロックの解除音がしない。首を傾げながらドアを手で押すと、ロックされているはずのドアが何事もなく開いてしまった。

ドアを開け収容棟の中に入ると、収容棟内が様変わりしていた。各収容室の入り口がこじ開けられている。中を覗くと、収容されていたオブジェクトが破裂するように死亡している事が分かった。この特徴的な破壊痕には見覚えがある。ここ2か月間の斑鳩博士の異常性調査で見飽きるほど見たものだ。犯人は斑鳩博士と考えて間違いないだろう。あれだけ保護を訴えていた博士に何が起こったのだろうか。さらに不思議な事に、明らかな収容違反にも関わらず人影が見えない。まさか斑鳩博士が脱出時に調査部隊を鎮圧したのだろうか。

気を引き締め、周囲を慎重に調べていると、ようやく人影を発見した。斑鳩博士が収容されるまで指導を受けていた雨下研究員だ。顔が若干腫れているが元気そうに見える。何か知っているかもしれないと思い、声をかけた。

「雨下さん、今お時間ありますか」
「あ、はい」
「この収容棟で何が起こったのか、分かる範囲で教えて頂けますか?」
「斑鳩博士が収容室を破壊して脱走したんですよ。そこで止めようとしたら斑鳩博士に殴られて気を失ってしまいまして。起きてから他の職員達に一通り情報を伝えて、今は斑鳩博士の後を追いかけている所です」
「脱走の際、博士は何か言っていましたか?」

「いえ、特には。ただ、斑鳩博士の拳で語る異常性で何をするつもりかは分かってますよ」
「雨下さんには何かを伝えたと。教えて頂けますか?」
「はい、この辺りを破壊していたのは練習ですね。これから本命の所に行くはずです」
「練習と言うのは、斑鳩博士が異常性をコントロールするための練習でしょうか?」
「そうですね」
「本命とは、私が今保護しようとしている鮫型オブジェクトの事でしょうか?」

破壊が目的と考えるなら、妙に執着していた例のオブジェクトが絡んでいる可能性は高い。オブジェクト確保の際に職員が2名捕食された事を考えると、恨みを持つ動機もある。ただ、恨みを晴らす事が目的だとしたら何故私に治療を依頼したのだろうか。

「あ、その質問に応える前にちょっと待ってください。ちょっと私からも聞きたい事があります」
「何でしょうか?」
「宇陀さんにとって最も重要な事は何でしょう?」

この質問は以前斑鳩博士からも受けた気がする。嫌な予感がしたため、警戒しながら答えた。

「異常存在を確保・収容・保護する事です」
「あ、そうですか。じゃあ斑鳩博士の所に行かせる訳には行きませんね」

言葉と同時に共振パンチが飛んできた。不意打ちだったが、警戒していたお陰で何とか避ける事が出来た。雨下研究員の拳が収容室の壁に当たり、鉄製の壁が拳の形に変形する。私は驚愕した。雨下研究員の共振パンチの周波数は私に向けて調整された物で、背後の壁の共振周波数とは異なっていたからだ。つまり、雨下研究員は純粋な膂力で鉄製の壁を歪ませた事になる。明らかに人間の枠を超えており、斑鳩博士の異常性に感染していると考えるのが自然だろう。この戦いでは拳によるミーム感染を警戒しなければならない。

「申し訳ないですが、伝えたい事があるので殴らせてください」

異常性により強化された雨宮研究員から絶え間なく拳が飛んでくる。私から見ると財団神拳の技術としては未熟な部分もあるが、今の雨下研究員にはそれを補う身体能力がある。

「ちゃんと伝わればちょっと痛いだけで済みますので」

軽い口調とは裏腹に雨下研究員の一撃一撃は重い。全ての打撃を避けながらとなると長期戦は厳しい。斑鳩博士と戦う可能性を考えると、罠に嵌めて早めに対処した方が良いだろう。私は雨下研究員の打撃を避けつつ、追い込まれているかのように部屋の角へと移動した。雨下研究員の攻撃を避ける事は出来なくなるが、攻撃手段を制限する事に成功した。

雨下研究員の拳が私の胸に当たる刹那、私は特殊なステップを踏んだ。雨下研究員の拳は私の胸をすり抜け、後ろの壁に当たった。財団神拳奥義、量子歩法である。トンネル効果を発生させる事で物体をすり抜ける事が可能となる財団の極秘技術だ。絶大な効果は得られるものの、トンネル効果を発生させる事自体が難しく、すり抜けている途中で止めてしまうとその物体が体の中に埋もれてしまう。その高いリスク故に習得はクリアランス4以上の職員に限られ、予測不能な状況での使用は禁止されている。雨下研究員が量子歩法の効果に混乱している隙を突き、背後に回って首すじに手刀を当てた。雨下研究員が昏倒したのを確認し、鮫型オブジェクトの収容室に向かった。

鮫型オブジェクトの収容室の入り口は予想通り開放されており、斑鳩博士がすでに入室している事を物語っていた。中を覗くと、オブジェクトを殴り続ける斑鳩博士の姿があった。おびただしい量の血が流れ、オブジェクトの頭部は大きく変形している。オブジェクトは振り下ろされる拳に何の反応も見せなくなっている。すでに絶命しているのだろうか。

異様な光景に唖然としていると斑鳩博士が急に振り向いた。涙を流しつつ笑みを浮かべている、狂気に満ちた表情だ。私が構えを取った直後に、斑鳩博士は異常性により強化された脚力で間合いを詰めてきた。不意を突かれ、私は咄嗟に腰を落として拳を突き出した。

それを見て、斑鳩博士は特殊なステップを踏んだ。量子歩法により斑鳩博士は私の拳をすり抜けていく。反射的な行動を誘発され、後手に回ってしまった。背後に回られた後に行うべき動作について逡巡していると、急に腕が重くなった。斑鳩博士の量子歩法が解除され、私の拳が斑鳩博士の腹部を貫いた状態になっている。

手ごたえから考えると明らかに致命傷だ。斑鳩博士が理由もなく量子歩法に失敗するとは思えない。思わずもう片方の手で生気の抜けていく斑鳩博士の体を支えた。すると、斑鳩博士は致命傷を負った体とは思えない力で私に掴みかかり、耳元で呟いた。

「すまない、君には全てを伝えたかった」

まずい、と思ったが手遅れだった。斑鳩博士の拳が私の頭に当たり、斑鳩博士の膨大な記憶とそれに伴う感情が脳内へ急速に流れ込んでくる。遠のきそうになる意識をつなぎ止め、自分のやるべき事を再確認する。まずはこの場所で斑鳩博士に何があったのか思い出そう。大丈夫、まだ自分は冷静だ。


はやる気持ちを抑え、彼女の収容室の入り口前で大きく深呼吸をした。まるで恋する乙女になったような気分だ。始めて彼女を見た時、あまりの美しさに呼吸をするのも忘れてしまった。彼女になら人生を捧げてもいいと思うようになり、取り巻きの鮫や、捕食され血肉となった職員にすら嫉妬した。この気持ちを伝える事が出来たらどんなに嬉しい事だろう。この拳で語り合う能力が産まれて以降この気持ちはどんどん増している。能力の練習は完了した。後は彼女にぶつけるだけだ。

ドアを3回ノックする。振動波はドア内部で増幅され、鍵が破壊された。ドアを開けると、夢にまで見た彼女が目の前にいる。しっとりと濡れた肌に、灰色と白のコントラストがまぶしい。私に文芸の才能があったとしてもこの美しさは表現しきれないだろう。見ているだけで感情が高ぶってくる。あらゆる想いを込め、殴る。

『痛い!何!?せっかく怪我治ってきたのに!』

彼女と対話出来た事に激しく興奮した。殴る。

『あ、アンタ前私を殴ってきた奴じゃない!』

良かった、覚えて貰えていた。殴る。

『私は何も良くないわよ!何しに来たの!』

愛を伝えるために来ました。殴る。

『愛って、あなた人間でしょ?』

種族の違いなんて関係ない。殴る。

『もしかして、あなた人間だけど私の能力が効いてるの?』

恋をさせる能力だとしたらもう完全にかかってますね。殴る。

『そうね、取り巻き死んじゃったしアンタでいいや。この拘束具外してよ』

外したらどうなりますか。殴る。

『そりゃもちろん逃げるけど。いい加減その殴るの止めてよね』

もしかして今の状態が嫌なのですか?殴る。

『そりゃ当たり前でしょ』

どうも私の愛が上手く伝わっていないようだ。もっと強く伝えねば。殴る。

『痛い!ほんと何なの!』

愛を伝えるために来ました。殴る。

『分かった!私の体いつも調査してたし知りたい事があるのね?殴ってるのは尋問とかそういう事なのよね?』

聞きたい事ですか。私の事を愛してくれますか?殴る。

『嫌に決まってるでしょ!前々から私の体べたべた触って来てたし本当に無理』

あれは主に治療のためなので。殴る。

『そういうつもり少しはあったんじゃない!気持ち悪い!』

これだけ愛を伝えているのに全く愛が返ってこない。やはり殴り方が弱いのだろうか。殴る。

『やめて!助けてママ!』

そうか、母親もいるのか。殴る。

『えっ、どういう事』

殴る。

『痛い』

殴る。

『やめてったら』

殴る。

『ごめんなさい』

殴る。

『許して』

殴る。

『愛してますって返せばいいの?』

ようやく気持ちが伝わってきたようだ。殴る。

『愛してます、愛してます、愛してます』

殴る手を止め、愛する彼女の怪我の状態を見た。痛々しい姿に涙があふれてくる。治療に専念しても恐らく助からない位の重症だ。私がもっと上手く愛を伝える事が出来ればここまで酷い怪我をさせずに済んでいたはずだ。だが、残された時間を考えると後悔している余裕などない。最後の一瞬まで彼女と対話を続けよう。

殴る。

『えっ』

殴る。

『何で?』

大丈夫、一人で死なせはしない。殴る。

『あんたが一緒に死ぬから何なのよ』

殴る。

『1人で死んでよ』

彼女は怪我で錯乱しているようだ。殴る。

『死にたくない』

殴る。

『助けて』

殴る。

『愛してます』

殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。


斑鳩博士の記憶を追いかける内に私の目にも涙が流れていた。私は斑鳩博士の体を貫通している拳を通し、想いを送った。

『申し訳ありません、私が彼女の治療に成功していれば、あんな辛い決断をしなくとも……』
『いいんだ宇陀君、自分を責めないでくれ。私が治療していても同じ結果だったろう』
『ですが……』
『私は満足しているよ。最後まであの子と愛を確かめ合う事が出来たんだ』
『はい、種族を超えた愛の成立に感涙しました』
『あの一瞬のために私は生きてきたのかもしれない。私の体はあの子と一緒に埋めてくれ』
『まだ斑鳩博士には教えて頂きたい事があります』
『君には鮫の素晴らしさを全て伝えたつもりだ。あの子を1人にする訳には行かないんだ。君ともさよならだ』
『斑鳩博士……』
『君はまだ若い。私のように躊躇するな。君が望む通りに生きてくれ』

私は斑鳩博士の腹部から腕を抜き、彼女の隣に横たえた。斑鳩博士とその彼女が愛を語らいながら暮らす事の出来る未来もあったのだろうか。そんな事を考えていると、激しい衝撃音と共に収容室のドアが吹き飛ばされ、雨下研究員が入ってきた。

「斑鳩博士は!?斑鳩博士はどうなりましたか?」

雨下研究員は斑鳩博士とその彼女の遺体を発見し、奇声を上げている。まずは一発殴って事情を伝えた。

「取り乱しまして申し訳ありません。宇陀さんはこれからどうしますか?」
「斑鳩博士の遺言は君が『望む通りに生きてくれ』でした」
「望む通り、ですか」
「斑鳩博士や雨下さんと同じように鮫を愛し、その愛を伝えたいと言う気持ちは強いです。ですが、それ以上にやりたい事があります」
「それ以上に重要な事がこの世界にあるんですか?」
「斑鳩博士はあの一瞬のために生きてきたと言っていました。悔いは無いと言ったのも嘘ではないでしょう。ですが、もっと幸せになれる道があったのではないかと思うのです」
「もっと報われて欲しかったですね」
「斑鳩博士は鮫を愛する気持ちを一人で抱え込んでいました。協力してくれる仲間がいれば違う未来があったかもしれない。彼女が弱っていなければ心中と言う形を取る必要も無かったはずです」
「なるほど、ではどうしますか?」
「鮫に愛を伝えるための組織を作ろうと思います。鮫の確保・殴打・そして治療を行う組織です」
「一度の殴打では足りない事も多いでしょうし、その3つのサイクルをどんどん回していけたら良さそうですね」
「そう言うわけで、雨下さんにも協力して貰えるとありがたいのですが」
「水臭い事言わないで下さいよ。当然じゃないですか」
「それは頼もしい。ここから仲間を増やしていきましょう」
「それに関してはご安心を。収容棟に来る前にセクターの職員は一通り殴り倒してきました」

雨下研究員の仕事の速さに感嘆した。なるほど、だから収容棟で雨下研究員以外の人を見かけなかったのか。

「Dクラス職員は博士の拳圧に耐えられませんでしたが、あなたは職員を殴っても大丈夫だったんですか?」
「そこは計算済みですよ。私を舐めてもらっては困ります。ちゃんと愛に目覚めれば耐えられます」
「それなら問題無いですね」

「仲間も増えますし、早めに組織の名前を決めちゃいましょうか」
「何か案はありますか?」
「理念を示す言葉と絡められると良いですよね。何でしたっけ」
「確保(Secure)・殴打(Punch)・治療(Cure)ですね」

2人同時に「それだ」と声を上げた。互いの拳を突き合わせると、2人の脳内に1つの言葉が浮かび上がる。

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  1. portal:3389120 ( 02 Jun 2018 15:05 )
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