いとしき(改題前「うつくしいもの」)

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SCP-XXX-JP-A

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP-Aはサイト-8122の低脅威度保管ロッカーに収容されています。サイト-8103の大型生物収容室にて監視、実験、治療が行われています。収容室内の温度は20〜25℃を保ってください。レベル1以上の財団職員はSCP-XXX-JP-Aの接触が禁止です。近づく場合も対象から半径5m以内には侵入しないよう注意してください。1日3回の投薬処理にはDクラス職員を使用してください。
SCP-XXX-JP-Bを外部へ持ち出さないよう収容室内には荷物の持ち込みを一切禁止し、出入りの際には収容室入口にてエアーシャワーを利用した滅菌処理を行ってください。

説明: SCP-XXX-JPは高さ約2.1m、幅約1.5m、奥行き約1.8m、重量██kgの劣化した金属の置物です。近年になり生物実体であると判明しました。詳細は補遺を参照してください。姿はバルーンモデリング1の「犬」の形に非常に酷似しています。表面は光沢のある未知の金属となっており破壊は不可能ですが、通常の貴金属類よりも劣化の速度が進行しています。そのため財団は特にその保護を目的とした実験を優先させてください。
SCP-XXX-JPの特性は直接目視した際に起こります。対象から半径5m以内かつ10秒前後視認し続けると、対象に愛着を持ち始め注目し続けます。この行為は制御可能ですが、その為に職員が接近すべきではありません。なお、カメラなど記録媒体を通して視認した場合、異常性は発生しません。この「愛着を持って注目し続ける行為」は認識異常の一種と考えられますが、目視の理由が「美しい芸術作品だから」「あれが見続けて欲しいと訴えている」など被験者により差異があるため確定的ではありません。
SCP-XXX-JPは19██年1月30日██県██山中にて発見されました。当時、警察が一般男性の遭難事件の捜索を行っていたところ、SCP-XXX-JPとその正面で向かい合い座り込んでいる男性が発見されました。男性は対象を発見してから2日間注目し続けていたと思われ、多少の衰弱はあるものの命に別状はありませんでした。警察による事情聴取中に男性は「ずっと見ていたい」「見ないと不安なんだ」など不明な発言を繰り返していたためSCPとの関係が発覚、財団に収容されました。その後の調査で原因はSCP-XXX-JPであり、男性はその影響に曝されたのみであると判断され、男性はAクラス記憶処理の後に解放されました。なお、発見場所である██山中にSCP-XXX-JPと関連する物質、痕跡などは現在まで発見されておりません。

補遺1: 200█年3月9日、実験9の最中にD-XXX-1が命令違反を起こしました。D-XXX-1がSCP-XXX-JPに直接接触したまま動こうとせず、隣室から駆けつけた研究員が彼を取り押さえたことで実験は中止になりました。棟に戻されるまでD-XXX-1は「あの子が喋った! 助けるんだ!」と繰り返し発言し、彼はしばらくの経過観察の後に終了処理となりました。
この事案を受け、登西博士の指揮の下SCP-XXX-JPの実験が行われました。結果、SCP-XXX-JPに"呼吸" を確認。これによりSCP-XXX-JPは生物実体であると判明しました。同時に、SCP-XXX-JPが不明な病理に罹っていることも判明しました。

ここで生物実体をSCP-XXX-A、不明の病理をSCP-XXX-JP-Bと呼称します。
SCP-XXX-Aは表皮と骨の構造はイエイヌ(Canis lupus familiaris)、内臓の構造は人間(Homo sapiens)とほぼ同一、その他の構造は地球上のどの生物にもあてはまりません。また、SCP-XXX-Aは声を出さずに意思疎通が可能のようです。表皮の劣化は、金属としては早いですが病理の症状としてはかなり遅い部類に入ります。食事や排泄などの生物的行動は現在まで確認できていませんが、これは元来必要ないのかそれともSCP-XXX-JP-Bが原因なのかは判断がついていません。
SCP-XXX-JP-Bの症状には一部として、
・表皮が未知の金属に変化する(表皮の硬化)
・気温の低い場所では表皮の色が変わる(レイノー現象2
などがあり、これらは地球上に存在する「全身性強皮症」に酷似しています。現代の医療技術では根治治療は無理だと判断されており、全身性強皮症の別の治療法が有効か試行実験を行いました。しかし表皮が金属化しているため医療器具類は全て使用不可、同じ理由でレントゲン検査やMRI検査もデータが取れなかったため、内臓の病状は不明です。現在はステロイド等を使った経口投与を行なっておりますが効果が出てきたとは考えられません。
SCP-XXX-JP-Bはあくまで「全身性強皮症に類似した未知の病理」であることを留意してください。たとえば表皮の金属化は皮膚の硬化と同義なのか、強皮症との合併で罹る逆流性食道炎の症状が全く起きていないのはなぜかなど、不明な点は多数あります。
SCP-XXX-JP-Bの進行具合、そして空気感染・接触感染の可能性は低いと考えられていますがゼロではないと断定できないこと、以上のことから治療を兼ねた実験は適切な環境の元で行うべきと判断され、200█年4月10日、SCP-XXX-JPはサイト-8122からサイト-8103へと移送されました。それに伴いオブジェクトクラスがSafeからEuclidへと引き上げられました。

200█年4月19日、登西博士がSCP-XXX-JP-Aと直接接触、インタビューを行いました。

補遺2: インタビューから1週間後、登西博士に強迫性障害の傾向が発現しました。3ヶ月に渡るカウンセリングにより治まりましたが、その間博士は「すぐにでも私が消えてしまう、いなくなってしまう」と繰り返し訴えていました。

これにより実験の見直しが要請され、認識異常ではなく「SCP-XXX-JP-Aと接触することで起こる影響」の実験が行われました。
実験記録10

対象: D-XXX-5

実施方法: D-XXX-5に軍手を装着させた状態でSCP-XXX-JP-Aに15秒間接触させる。

結果: 注目し続ける状態は発生したが、それ以上の影響は起こらなかった。

分析: 直接接触しなければ影響は弱い。

実験記録14

対象: D-XXX-5、D-XXX-6、D-XXX-7

実施方法: 3人同時にSCP-XXX-JP-Aを15秒間直接接触させる。

結果: 全員影響された。ただし3人は「悲しい気持ちになった」「無性に泣きたくなった」「かわいい」とそれぞれ別の反応を示した。

分析: 反応の差異は、声ではなく感情を交わしたためのようだ。

実験記録17

対象: D-XXX-8

実施方法: D-XXX-8に目隠しをさせた状態でSCP-XXX-JPを15秒間直接接触させる。 なお、D-XXX-8にはSCP-XXX-JPの説明はしていない。

結果: D-XXX-8は接触した瞬間「金属だ」と発言。10秒経過したあたりで「誰かいるのか?」と周りを見回す動作をした。

分析: D-XXX-8は感覚の疎通を「誰かに話しかけられた」と誤認した。これによりSCP-XXX-JP-Aを認識していないと疎通はできても齟齬が生じるほど弱くなることが判明。

実験記録18

対象: D-XXX-5

実施方法: D-XXX-5にSCP-XXX-JP-Aを20秒間直接接触させた後、収容室から退出させ様子を観察。

結果: D-XXX-5はしばらく「あの子を見たい」と発言するなど影響を受けていた様子だったが、時間経過に伴い減少。24時間が経過すると沈静した。その後の検査でも異常なし。
分析: 対象から離れると沈静化するのは視認のみのときと同じである。

実験記録19

対象: D-XXX-7

実施方法: D-XXX-7にSCP-XXX-JPを直接接触させる。外部からの抑制を防ぐため収容室内は対象と被験者以外立ち入り禁止、何があっても実験は停止させないこととした。

結果: [データ削除済] D-XXX-7の遺体は60時間後に収容室から回収された。なお、SCP-XXX-JP-Aに変化なし。

分析: D-XXX-7の元3を考えれば前半の様子はある意味予想通りだ。しかし後半が理解できない。なんで今さら後悔したんだ?ーー登西博士

実験記録から、SCP-XXX-JP-Aは「認識した上で直接接触すると感情の疎通が可能。認識しないまま直接接触するとき、半径5m以内にいるときも微弱だが影響を受ける」と結論づけられました。直接接触したときの影響は急速な精神障害の発症、それ以外では対象に好意的、同情的な気持ちを向ける、被験者個人が持つ「死に対する恐怖や寂寥感」の想起に留まります。
以上のことからこれ以降の実験は停止。 また、Dクラス職員以外の財団職員はSCP-XXX-JP-Aとの接触が今後一切禁止となりました。


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