アルキメデスの墓 - SCP-JPサンドボックスⅢ

アルキメデスの墓

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クレジット

タイトル: SCP-XXXX-JP - アルキメデスの墓
著者: tapioka356
作成年: 2023

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPを収容するサイト-7███は、表向きにはSCP-XXX-JPのすぐ近くに建つシチリア・シラクーザにある宿屋としてください。SCP-XXX-JPに近づく者が確認された場合には、SCP-XXX-JPに破壊・変形・変質その他の影響が及ばないことを確認してください。影響が及ぶ可能性がある場合には、その者をサイト-7███にて記憶処理を行って行動を阻止してください。

説明: SCP-XXX-JPは、イタリア、シチリア島、シラク―ザに存在する、一般に古代ギリシアの数学者アルキメデスの墓とされる建造物です。建造された時期は遅くとも紀元前であると推定されます。SCP-XXX-JPの材質は通常の岩石のみで、外見には異常な点はありません。

SCP-XXX-JPに対して敬意を持って参拝を行うことにより、演算能力、論理的思考力、集中力、注意力が一週間ほど上昇する効果が参拝者に発生します。SCP-XXX-JPがアルキメデスの墓であることを認識していない、またはアルキメデスに対する敬意を持たずに参拝を行っても能力の上昇は発生しません。

SCP-XXX-JP-1は、アルキメデスを名乗る男です。特に数学に秀でたと一般的に認識される者がSCP-XXX-JPに対して参拝を行った場合、SCP-XXX-JP-1とアルキメデスの家のような風景の中で会話した記憶が発生する場合があります。詳しい条件や制約は不明です。

SCP-XXX-JPは20██/██/12に、休暇に出ていたエージェントからSCPの疑いのあるオブジェクトとして報告され発見されました。

+ インタビュー記録XXX-1

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インタビュー記録XXX-1

対象: A氏 (著名な数学者、一般人)

インタビュアー: ██博士

<録音開始, 20██/██/23>

博士: ではインタビューを始めましょう。

A氏: ええ、はい……。

博士: あなたが「アルキメデスの墓」に参拝しに行ったのはいつ頃ですか？

A氏: 確か、あれは19██年の█月の頃でした。シチリア島のシラク―サに旅行に行った時に、宿の人がどうせならアルキメデスの墓に行ってみたらどうだ、と……。私が数学に打ち込んだキチガイみたいな人間であることを知って勧めてきたのだと思います。私も、かの有名なアルキメデスの墓参りに行くことに興味が湧きました。ディオファントスじゃあないですが、アルキメデスの墓にも何かそそるものがあるかもしれないと思いましたし……。

博士: アルキメデスの墓に、何か特別なことがあると予期していたのですか？

A氏: いやいや、そんなものではないです。ただ偉い数学者というのはどうにも頭がおかしいというか、常道から外れていますから、何か数学の問題があったりするかもしれないなと、そう思っていただけです。

博士: そうですか。

A氏: それで、その日の5日後に、私は宿からタクシーでアルキメデスの墓まで墓参りに行ったんです。広く満遍なく地面に生えた雑草の中に、立派な石造りの遺跡のようなものが建っていました。墓の前に立って、目をつむって、アルキメデスの偉大なる生涯に思いを馳せて、ご冥福をお祈りしました。

博士: そこで、何が起こったのですか。

A氏: 目を開けたら、周りの景色が全部違っていました。私は古い家にいました。そして、ああ、ちょっと待ってください……そうです、私の前には、彼が、神々しい雰囲気で地面にアグラをかいて座り込んでいました。それで、こっちに顔を向けて、ニィと歯を見せていました。

博士: 外見を詳しく教えてください。

A氏: 白髪に深緑の瞳の、七十路の男性でした。髭と髪がぼうぼうで、如何にもギリシャ人といった雰囲気でした。

博士: 先を続けてください。

A氏: 彼は私に向けて、「ようこそ、親愛なる客人よ」と言いました。私があっけに取られたままとりあえず頷くと、彼は自分のことを語り始めました……曰く、彼はアルキメデスであると。アルキメデスの魂が墓に取り附いた存在であると。夢のような光景に、いや実際に夢だったのかもしれませんが、私と彼は、数学者として語り合いました。彼は特に、数学の世界の最近の動向について気にしていました。人類の未来を、数学の未来を心配している様子でした。色々話した後で、彼は私に一つ頼み事をしました。

博士: それは一体どんな？

A氏: 「数学を、その面白さを、ずっとずっと未来まで残していくことに協力してほしい」と。私は承諾しました。彼は心のつっかえが一つ取れたような顔をして微笑みました。最後に彼は、ありがとうと感謝の言葉を言って……気が付けば、私は草原の上に、元のアルキメデスの墓の前に立っていました。太陽の位置も、雲の位置も何も変わっていませんでした。右腕を上げて時計を見れば、一分も過ぎていませんでした。

博士: なんとも不思議な体験ですね。

A氏: ええ、月日が経った今でも、ただの夢ではなかったか、とも思います……しかし、例え夢であったとしても、あの夢の中でアルキメデスが私に託した使命……その思いは、私は今後忘れることはないと思います。それほどまでに強い意志が、あの目にはこもっていたから……。

博士: お話ありがとうございました。

<録音終了>

終了報告書: インタビュー後、A氏は記憶処理を受け、このインタビューに関する記憶を抹消された上で解放されました。周囲への隠蔽は問題なく行われました。

実験記録XXX-3 - 日付20██/██/25

対象: SCP-XXX-JP

実施方法: 数学の専門家である赤ノ木博士がSCP-XXX-JPに向けて敬意を持って参拝し、SCP-XXX-JP-1との対話および情報入手を試みる。

結果: 赤ノ木博士はSCP-XXX-JP-1との対話に成功したと考えられます。実験後、赤ノ木博士はSCP-XXX-JP-2との対話の様子を「実験XXX-3でのSCP-XXX-JP-1との対話記録」として書き上げて提出しました。

+ 実験XXX-3でのSCP-XXX-JP-1との対話記録

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実験XXX-3でのSCP-XXX-JP-1との対話記録

記録者: 赤ノ木博士

**日付: ** 20██/██/25

SCP-XXX-JPに対して、アルキメデスへの敬意を持って祈っていた私が顔を上げて周囲を見回すと、そこには今まで周りを取り囲んでいた財団職員達の姿はなかった。どうやらここは古い家のようで、床と壁に書き詰められた数式からこの家が彼のものであることが分かった。戸棚にはピタゴラスのものと思わしき本があった。そして私の隣にはなぜか鉢があって、そこで雑草と思わしき草が育てられていた。

そして前には、やはりA氏が言っていたような姿の男が……恐らくはSCP-XXX-JP-1が、アグラをかいて興味深そうに深い緑色の瞳で私を見つめていた。

「やあ」とSCP-XXX-JP-1は私に手を挙げて挨拶をした。

「……ええ、こんにちは」と私は返して、注意深く返答を待った。

「ハハハ、君は今まで来た奴らとは随分と違っているな。まるで落ち着き払っているではないか。さしずめ、事前に私の存在を聞いていたといった所か」とSCP-XXX-JP-1は愉快そうに語った。

「正にそんな所です。あなたがSCP-XXX-JP-1……アルキメデスですか？」

「そうだな。えすしぷが何のことかは知らんが、我はアルキメデスである。君もなかなか偉大な数学者であることは我には分かっている。どうだ、少し気を抜いて話をしないか？」

「ええ、それもいいですが、その前に幾つか私からもあなたに聞きたいことがあります」

「ハハ、そうか、それが目的か。まあいい、後で数学の話を一緒にできるのだ、文句はない」とSCP-XXX-JP-1は諦めたようにひとりごちた。

私は一回心情を整理するために、一度床に座って一息吐き、これからどうするべきかを頭の中で組み上げた。SCP-XXX-JP-1はそんな私をのんびりとした態度で眺めていた。

「あなたは、本当にアルキメデスですか？」とややあって私は質問した。

「さっきも言ったではないか。私はアルキメデスだよ」

「現実世界のアルキメデスは既に死んでいますが、ではあなたは一体何ですか？」

「ふむ……」SCP-XXX-JP-1はしばらく考えると、やがてそれがバカな事だというように頭を振り、「確かにアルキメデスは数千年前に死んだ。だが私はアルキメデスで、今こうしてここにいる」と言った。

「あなたは人間ですか？」

「さあどうだろうな」と彼は宣った。この話題はこれ以上進みそうにないので、私は他の話題に移ることにした。

「では、それは一旦置いておきましょう。ここは何処ですか？」

「ここは、まあ、言うなれば私の世界だな。遠い遠い、私の記憶の世界だ」

「今のこれは古代ギリシア、いやカルタゴの風景、違いますか？」

男SCP-XXX-JP-1は遠い目をした。

「そうだな。我が故郷シラクーザだ」

「アルキメデスの墓とあなたにはどんな関係があるのですか？」

「我はあの墓からは離れられないし、離れない。それだけのことだ」SCP-XXX-JP-1は寂しそうに言った。そして思い出したように「次が最後の質問だ」と言った。

私は深呼吸を一つして、「あなたの目的は何ですか？」と聞いた。

SCP-XXX-JP-1は「この世界の数学を見守ることだ」と迷いもせずに断言した。

その後、約束通りSCP-XXX-JP-1と私は数学について会話をした。SCP-XXX-JP-1は、私の研究結果、発見と喜びを聞いて嬉しそうな顔をしていた。

随分話し込んだところで、「それじゃあな」とSCP-XXX-JP-1が言い、視界が暗転した。瞬きをすると、目の前にはSCP-XXX-JPがあり、財団職員が周りにいて私の様子を伺っていた。時間は全く経っていなかった。

20██年██月25日、SCP-XXX-JPを囲むように収容ユニットを建設することが決定されました。また、収容ユニットの建設が終わり次第、収容ユニットを含めるサイト-7███の建設に取り掛かることも決定されました。また、SCP-XXX-JPに関する情報を入手するため、有用な情報が得られなくなるまで、赤ノ木博士をSCP-XXX-JP-1と数回対話させることが決定されました。

+ 赤ノ木博士とSCP-XXX-JP-1の対話記録-1の一部抜粋

+ 赤ノ木博士とSCP-XXX-JP-1の対話記録-2の一部抜粋

20██年██月12日、SCP-XXX-JP用収容ユニットの建設が完了しました。続いて、サイト-7███の建設が開始されました。

+ 赤ノ木博士とSCP-XXX-JP-1の対話記録-4の一部抜粋

+ 赤ノ木博士とSCP-XXX-JP-1の対話記録-5の一部抜粋

+ 赤ノ木博士とSCP-XXX-JP-1の対話記録-6

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赤ノ木博士とSCP-XXX-JP-1の対話記録-6

記述者: 赤ノ木博士

日付: 20██/██/18

エージェントと共に収容ユニットの扉を開け、もはや見慣れたSCP-XXX-JPの前に立つ。いつものように参拝を行い、目を開けばそこにはSCP-XXX-JP-1が居た。

「やあ。ご苦労なことだね」SCP-XXX-JP-1が気軽に私に声をかけた。

「そうですね。……今日は、知らせがあります」

「何かね」

「私とあなたが会うことができるのは、おそらく今日が最後です」

SCP-XXX-JP-1は、何も言わず私を見つめた。

私も、その深緑の瞳をじっと見つめ返した。

「……そうか。君の数学の話は、まったくもって聞き足りないのだがな」SCP-XXX-JP-1は諦めたように目を瞑った。

「私も、実を言えばもっと話していたい所なのですがね。あなたの数学について語り合った時間は、本当に楽しいものだった。しかし上からの通達です」

「……分かった。君に、全てを教えよう。そして、託そう」男は真剣な表情で私に言った。

私は頷いた。

「……我はアルキメデス、と前に言った。……この言葉は正しい。確かに我はアルキメデスだ。だが、我は人間ではない。人間の、オリジナルのアルキメデスはとうの昔に息絶えた」

私が説明を求めて言葉を発しようとした瞬間……視界が唐突に変化した。動画をカットして繋げた時のように、大まかな景色は変わらず細かい位置がズレた。目の前の男はSCP-XXX-JP-1とほぼ同じ容姿だった。最初私は男がSCP-XXX-JP-1かと錯覚した。だがすぐに、男の瞳は輝くような水色であることに気が付いた。

男は一心不乱に、床に数式を書き殴っていた。

私は男に声をかけようとして……声が出なかった。喉を触ろうとして、手がないことに気づいた。足も、胴体も、頭すらもなかった。私の視点は宙に浮かんでいるようだった。

部屋の外から悲鳴が聞こえた。

男はそれを気にもかけていない。

部屋の外からバタバタと足音が聞こえた。

やがて、部屋の扉が乱暴に開けられた。扉を開けたのは、歳二十頃の兵士だった。革の鎧を纏い、青銅の剣を腰のベルトに挿していた。

「貴様は何者だ！」と兵士は血気盛んな様子で口走った。

男は答えず、なおも数式を書き殴っていた。

「貴様、答えぬか！」

兵士が歩いて男の目の前に立った。男の書いた図形が踏みにじられていた。

男は顔を上げて兵士に「私の円を壊すな！」と怒鳴った。

兵士は怒り心頭といった様子で剣を抜いて男の脇腹を切り裂き、「無礼者が！」と叫んで部屋から飛び出して行った。

男は脇腹を両手で押さえて、床の数式と、踏みにじられた円を見つめていた。その美しい筆跡が、流れ出した血に染まっていくのをじっと見つめていた。

「……我も、所詮ここまでか」と男は呟いた。

赤ノ木博士の指摘によりSCP-XXX-JPの周囲に生える植物群を調査した結果、植物群が通常の植物と比べ明らかに異常な構造をしていたため、SCP-XXX-JP-2として指定されました。

SCP-XXX-JP-2は、SCP-XXX-JPの建つ地面に生息する未知の生命体です。地上に露出する部分の外見はハナニラ(学名Ipheion uniflorum)に酷似しており、目視による判別はほぼ不可能です。地球に生息する異常性のない植物にはSCP-XXX-JP-2と類似する構造を持つものは存在しません。別次元、あるいは地球外から来たものである可能性が指摘されています。

地上部では個別の個体に見えるSCP-XXX-JP-2の根は地下において全て繋がっており、複雑に絡み合い哺乳類の脳組織のような形を形成しています。

SCP-XXX-JP-2は何かの振動を検知するものと思わしき器官と、空気中に振動を生み出すものと思われる器官を葉に所持しています。SCP-XXX-JPが生み出す幻覚はこの器官によって引き起こされている可能性が示唆されています。

SCP-XXX-JP-2は生命維持活動に日光および地中の養分を必要としません。

SCP-XXX-JP-2をSCP-XXX-JPから遠ざけるとSCP-XXX-JP-2は即座に枯れ始め、約一時間ほどで茶色に染まり活動を停止します。

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