閻魔帳 または あなたの全て
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アイテム番号:SCP-1049-JP

オブジェクトクラス:Safe

特別収容プロトコル:
SCP-1049-JPは、標準的な収容ロッカーの中に収容されます。SCP-1049-JPを用いた実験を行う際は、事前にレベル3以上の職員の許可が必要です。通常扱う際にSCP-1049-JPに直接触れることは、実験時を除いて、避けるようにしてください。実験1049-K以降、死体を用いた実験は禁止されています。詳しくは実験記録1049-Kを参照してください。

説明
SCP-1049-JPは通常の大学ノートと同じ規格サイズの白紙ノートです。表紙および背面に関して通常見られるような製造番号、およびSCP-1049-JPの起源につながるあらゆる情報は存在していません。

SCP-1049-JPは、素手などで直接触れない限りは通常のノートと同様の性質を見せます。すべてのページを完全に埋めようとする試みは現在まで成功していません。
SCP-1049-JPの異常性は被験者がSCP-1049-JPに直接触れた際に発現します。SCP-1049-JPに触れた被験者(以降SCP-1049-JP-1と呼ぶ)は突如その場で卒倒し、およそ16~18時間にわたって気絶します。このとき、SCP-1049-JPは未知の方法によって突如として記述が開始されます。その内容は大まかに次のように分類されます。

・SCP-1049-JP-1の名前、年齢、外見的特徴などの基本情報
・SCP-1049-JP-1の行った過去のあらゆる行動に関する記録

これらの記述は、SCP-1049-JPの可能記述量を遙かに超える量であるにもかかわらず、すべて完全に記録が行われます。

すべての記録は、未知の成分を含む墨汁で記述されています。文字の字体、その文字の現れ方は筆を用いて記述した場合と一致し、行書体で記録されます。すべての工程は3~5時間以内にすべて完了し、その後しばらくの間は異常性を失い、ほかの人物による接触が行えるようになります。

16~18時間経過時、SCP-1049-JP-1は二つの段階へと移行します。SCP- 1049-JP-1のおよそ██パーセントに当たる人物は[削除済み]によって死亡します。このとき、SCP-1049-JP-1は明確な身体的損傷が見られないのにもかかわらず激しく抵抗するそぶり、多くの場合全身に大やけどを負うような時に見られる反応を見せます。
█パーセントに当たる人物は、意識を取り戻し、多くの場合激しく動揺します。

このときSCP-1049-JPはその記述のすべてが抹消されます。これには、記述の筆記による転写やその他媒体を用いたあらゆる記録も含まれます。

以下は、D-1336を用いた実験実施時に生還した直後に行ったインタビューの記録です。

インタビュー記録
対象:Dー1336

インタビュアー:相羽博士

付記: D-1336は回復直後、著しい精神的な発作を起こしていたため、鎮静剤を服用しています。また、D-1336のインタビュー以前における財団への職務態度は良好ではありませんでした。

≪インタビュー開始≫

相羽博士:それでは、始めます。

D-1336:・・・俺に何があったのか話せばいいんだよな。

相羽博士:そうです。可能な限りすべてのことを話してください。

≪D-1336、13秒間の沈黙≫

D-1336:あれは、巨大な建物だった。おれは目を覚ますと、なぜかそこを歩いていたんだ。あり得ないくらい長い廊下だ。・・・・・・サイト████なんかよりずっと長い。服も、あの悪趣味なオレンジ色の制服なんかじゃなかった。白装束だ。

相羽博士:明かりのようなものはありましたか?

D-1336:あったよ。壁際にある真っ赤な提灯だった。

相羽博士:続けてください

D-1336:その廊下を歩いている間、俺は何一つ逆らえなかった。止まろうとしても、足が一歩、また一歩って進んでいくんだ。それが無限に続いていた。

相羽博士:奥の方は視認できましたか?

D-1336:無理だ。そもそも、両脇にあるばかでけぇ壁と、それを支える柱以外は何も見えねぇ。というよりそうしようとすることがばからしくてやろうとなんて思えなかったけどな。

相羽博士:その大きさというのは・・・?

D-1336:少なくとも、俺が見たことのあるどの建物よりも大きかったな。というより、あれが・・・

相羽博士:あれが?

相羽博士:その後、何か変化はありましたか?

D-1336:何時間歩いたのかわからないうちに,俺は「端」まで来ていた。

相羽博士:そこには何がありました?

D-1336:・・・ばかでけぇ扉だ。見た感じ石でできていた。すると急に俺は体の自由がきくようになったんだ。気味が悪いから、引き返そうとしたが、今度はだめだった。見えない壁があったんだ。どうやらここは俺のことをなんとしてもここを通そうとしているらしい。

相羽博士:扉を開けようとしたのですか?

D-1336:もちろん。だが開かねぇ。俺は腕っ節に自信はあったが、この扉だけはびくとも動かなかった。

相羽博士:それで、どうしたんです?

D-1336:あきらめてそこに座り込んだ。床はびっくりするくらい冷たかった。歩いているときは何も感じなかったんだが、座ったときになって初めて冷たさを感じたんだ。そんで、俺は急に眠くなってきた。

相羽博士:眠ったのですか?

D-1336:そうしたいのは山々だった。だができなかった。俺が眠ろうとするたびに、いやな声がするんだ。

相羽博士:声・・・ですか

D-1336:そうだ。あれは・・・・・・

≪10秒間の沈黙≫

相羽博士:あなたには話す義務があります。

D-1336:・・・・・・親父の怒鳴り声だった。あいつは酒を飲むと・・・あぁ、いやな思い出だよ。あいつは俺をさんざん殴ったんだ。それで、俺の母親も殺そうとした。俺の姉はあいつに何回も暴行を受けてた。たまらなくにくかった。それで・・・・・・あぁ、俺はとんでもないことをしたんだ。あの男の、あいつの寝ている時にその首を・・・・・・

相羽博士:D-1336、≪資料をめくる音≫ あなたはあなたの父親を[編集済み]したのち、殺害していますね?

D-1336:・・・・・・そうだ。俺はあいつのことを殺した。それから、あのぼろアパートから逃げて、薬漬けになって、ギャンブルと女と喧嘩の世界で生き始めたんだ。高校もやめて、母親の引き留めも聞かずに、夜になるたび街へ繰り出して、悪いやつとダチになった。そのうち、腕を買われて█████1に入った。そこで何人も殺した。何人も・・・警察に捕まって、死刑判決を受けてここに来るまでの間はな。後悔しかできないよ・・・・・・あぁ、そうだ。

相羽博士:何か思い出しましたか?

D-1336:俺は懺悔したんだ。あのとき殺してさえいなければ。俺は、ひどい男だって。認めたくはなかったが、ずっと後悔していたんだ。そしたら、その扉が開いたんだ。俺はその中へ入った。

相羽博士:勝手に開いた、ということでしょうか?

D-1336:そうだ。俺が中に入ると、その扉は突然消えた。

相羽博士:(沈黙)

D-1336:俺が出たのは・・・・・・信じられねぇかもしれないが、丸い鏡の前だった。それ以外の場所は、全部真っ青な空だった。それで、俺はそこが空の一番高い場所だって思った。だって、そうとしか、無学な俺にはわからなかったからな。

相羽博士:その鏡というのは?

D-1336:ちょうど・・・この部屋の入り口の扉くらいの大きさだ。≪入り口の扉を指さす≫ その周りが、とにかくひでぇ状態だった。自分の顔なんてはっきり見えない。そんで、俺は思ったんだ。昔読んだ絵本だ。「鏡は自分の姿を教えてくれるものだ」っとか、そんなことを書いていた気がする。つまり、その鏡が、俺のすべてなんじゃないかってな。

相羽博士:あなたは何か行動しようとしましたか?

D-1336:・・・・・・どうもしなかった。目の前にあるのが俺なんだ。俺のすべてがそこにある。俺はこの鏡なんだって思い込んだ。そうすると、自然に涙が出てきた。するとどうした、鏡の向こうに昔・・・・・・子供の頃の俺が見えた。母親と、買い物に行った帰りだ。

相羽博士:(沈黙)

D-1336:俺は・・・・・・いつの間にか、足下に転がっている芋虫だった。・・・・・・なんていったかな。なんかの幼虫だ。紫色の、きれいな蝶になるやつ・・・

相羽博士:アゲハチョウ?

D-1336:そう、それの幼虫だ。俺は、道の真ん中でくたばりそうになっていた。それを、あのガキ・・・俺が拾い上げたんだ。母親が、「あら、優しいわね」ってな。俺は何も答えないで、そのまま走り去っていたよ。・・・・・・大人になってから、何人も殺したのによ。・・・・・・まったく、笑っちまうぜ。

相羽博士:(机の上に置かれているカップの水を口に含む)

D-1336:そしたら、俺はその当の蝶になっていた。「何のおとぎ話だ」っていいたくなったが、そこで初めて、俺は自分が自分に救われていることに気がついた。そんで、自分が昔、いろんなところで・・・・・・すっかり忘れていたんだ。俺は、生き物が大好きで、生きてることが幸せだったってことをな。そんで、俺はいつの間にか、また鏡の前に戻っていた。今度は、それがすっかりきれいになってた。見えなくなってた自分の姿を、もう一度はっきり見られたんだよ。

相羽博士:鏡の前に戻ってきたときの変化は?

D-1336:俺が戻ってきたとき、さっきまで鏡があったはずのあの空は、いつの間にか簡素な裁判所に変わっていた。傍聴人も、裁判官も、裁判長も、みんな俺の顔をしてやがった。俺が鏡の前に立っていることに気がついて、裁判長が俺に、証言台にたつように促してきた。俺は、言われたとおりにそこへ行った。

相羽博士:何人くらいいましたか?

D-1336:わからねぇ。自分を数えるなんて、そんな悪趣味なことする気にもならなかった。

相羽博士:・・・・・続けてください。

D-1336:そしたら、裁判長の俺が裁判開始を告げた。黒色の服を着た、検察役みたいな俺が俺の前に出てきて・・・・・・全部を話した。あんなに長い陳述は聞いたことがない。でも・・・・・・

相羽博士:でも?

≪相羽博士がD-1336に水を飲むように促す。それに応じて、カップの水をの飲み干す≫

D-1336:・・・・・・それで、今度は弁護士の番になった。それは・・・あぁ、そういやぁ、あいつだけが俺じゃなかった。あいつは・・・・・・俺の母親。

相羽博士:一人だけ違ったということですか?

D-1336:いや、一人じゃない。クラスメイトも、バイク仲間も、中学の担任も・・・・・・死んだ親父までいた。順番に、裁判長に俺のことを話していた。なぜかその間だけは、「生きててよかった」って気持ちになったんだ。

相羽博士:どういう話をしていたか覚えていますか?

D-1336:・・・みんな、俺のことを正直に話していた。なんていってたのかなんて覚えていないが、みんな俺のことを、ずっと見てたんだなって思った。それで、ほかの俺「たち」も、それを聞いて涙を流してるみたいだった。本当に流してたのかはわからないが、俺もそんな気分だった。

相羽博士:・・・・・・あなたが話す機会はありましたか?

D-1336:あった。裁判長に言われて、証言台の上で、俺は喋った

相羽博士:どんなことを?

D-1336:・・・・・・感謝と懺悔だ。そのときだけは、俺を生んだ親父にも感謝した。心の底から、本気でな。そんで、こんなことになっている自分を、悔いているっていった。そして、そこにいるすべての俺たちに「ごめん」って誤り続けた。・・・・・・途方もない時間、俺は頭を下げ続けていたような気がした。

相羽博士:(沈黙)

D-1336:そんでいよいよ、俺はついに判決を下されることになった。裁判長の俺が、まっすぐ見つめてきた。俺は、あぁ、死ぬのかって思った。そして、あいつが口を開いた。「判決は・・・・・・」

相羽博士:何だったんですか?

D-1336:そこで、視界が止まった。俺は、全員が俺のことを注目しているのに気がついた。最初は意味がわからなくて、そのまま黙っていたんだが・・・・・・少しして、ようやく気がついた。

「自分が自分に判決を下すんだ」ってことにな。

D-1336:正直……俺は怖かった。あのまま死んでもいいとさえ思った。でもそれは……責任の放棄だ。

相羽博士:あなたは何を宣告しましたか?

D-1336:……100日間で生まれ変わることを約束をした。この100日で、全ての罪を償う……そう誓った。そしたら、変にスッキリした気分になって.目が覚めたらここにいた。

相羽博士:具体的にはどういう気分ですか?

D-1336:そうだな……すまねぇが、何ともいえない気分だ。でも、自分に正直になれたような気がする…。もう俺は、今までの俺とは違う。……罪を償わなければ。

相羽博士:では、これでインタビューを終了します。何か、最後に言いたいことはありますか?

D-1336:……あそこは……俺にも何でだかわからないが、いやな予感だけがする。俺は一度死んで、またよみがえった。それはいい。でも、もうすでに死んでるやつは、そのままの方がいい気がする……なんで今こんなことを話す気になったんだろうな……

≪インタビュー終了≫

終了報告書
このインタビュー終了後、D-1336は短期間の療養を経て、業務に復帰しました。実験実施以前とは違い、財団に対して忠誠心が強くなったように思われます。彼をCクラスに格上げすることを考えてもいいような気がします。
ー相羽博士

SCP-1049-JPを使った複数回に渡る実験と、生還者へのインタビューの結果、SCP-1049-JPを介して体験することの多くは、対象の信仰や人生観に、大きく影響を受ける可能性が示唆されています。特に、対象がキリスト教、イスラム教などの終末思想のある宗教の信者であった場合、はっきりとした「最期の審判」、またはそれに近い現象を知覚したと報告されています。また、生還した被験者の多くは、多くの場合「感謝と懺悔」を行うことによって生還しているように思われます。

自分を顧みて自らに審判を下すことは、死から復活することに等しいのではないだろうか……。
ー相羽博士

実験記録: 1049-A
日付: 20██/█/██
責任者:相葉博士
対象: D-9152 
内容: 対象が死亡してる状態におけるSCP-1049-JPの異常性発現の有無およびその観察。
付記: D-9152は、本実験の三日前、業務中の事故で死亡しました。
結果: SCP-1049-JPは異常性を発現し蘇生。精神的に非常に不安定であり業務復帰は不可能と判断されたため後日終了されました。

実験記録: 1049-G
日付: 20██/█/██
責任者:相葉博士
対象: D-9188およびその左腕
内容: 対象が死亡してる状態におけるSCP-1049-JPの異常性の観察。
付記: D-9188は本実験の二日前の業務中、SCP-[データ破損]に接触した際にSCP-[データ破損]の異常性によって左腕が切断されています。
結果: SCP-1049-JPは異常性を発現しました。17時間経過後、D-9152が蘇生、激しく苦しむ様子を見せた後、死亡しました。このとき、左腕も蘇生の兆候を見せました。

実験記録: xxxx-K
日付: 20██/█/██
責任者:相葉博士
対象: D-3578
内容: 対象が死亡してる状態におけるSCP-1049-JPの異常性の観察。
付記: Dー3578は財団共同死体安置所から特別に調達されました。すでに腐敗が始まっており、身体の重要な機器はほぼすべて損壊しています。
結果: SCP-1049-JPは異常性を発現しました。17時間経過後、D-9152が蘇生。相羽博士を含む██名を殺害した後、武装職員によって鎮圧されました。
考察: その後の調査により、D-3578が生前財団に対し非協力的であったこと、当時研修生だった相羽博士によってSCP-[データ消失]の実験に参加し、そのとき死亡していたことがわかりました。このことから、死亡した人物に対してSCP-1049-JPを使用して蘇生した場合、死亡する以前の記憶を保持したままである可能性が指摘されています。この実験以降、SCP-1049-JPに対して死体を用いた実験を行うことは禁止されました。


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