対象: D-XXX-07
備考: 当映像は対象のヘッドギアに装着されたカメラによって撮影された。対象にはフラッシュライトの携帯のみが許可された。
<記録開始>
[対象はSCP-XXX-JPからSCP-XXX-JP-Aに入る。10m程の薄暗い木製の通路が左に向かって伸び、対象はその通路内を進む。通路の左右には、SCP-XXX-JPを除き、計15の同形状の扉が並ぶ。対象は通路を抜け、部屋に入る。]
[室内奥には冷蔵庫、ガス台、流し台と多数の調理器具、部屋中央には、広いテーブルとその上に置かれたまな板、包丁、多量のパッキング容器が置かれている。室内の数カ所に吊るされた裸電球と、左奥の扉の窓から漏れるオレンジ色の光のみが室内を照らしている。設備は、経年によるものと見られる多少の劣化は見られるものの、清潔に保たれている様に見える。]
D-XXX-07: 厨房か? 暗いな。
██博士: 内部を一通り調べてくれ。
D-XXX-07: ああ。
[対象はフラッシュライトを点灯。室内を一回りするも、特段変わった点は見当たらない。]
D-XXX-07: 別におかしな所はなさそうだが?
[対象は、冷蔵庫を開ける。庫内には数種類の瓶やプラスチックケースが並べられている。]
D-XXX-07: ラベルが無いから中身が何だかは分からないが、調味料みたいだ。 どこにでもありそうな奴。
██博士: そうか。次は奥の扉だ。
D-XXX-07: そうなるよな。
[対象は、ゆっくりと扉へ接近する。]
D-XXX-07: この光……気味悪いぜ。ほんと。
[対象は扉を開く。先は6畳ほどの部屋。正面上方の窓からは夕焼けの様なオレンジ色の光が差し込んでいる。]
D-XXX-07: ここは……倉庫か?木箱が山程あるが。
[対象はいくつかの蓋がされた木箱を開ける。中には空の黒い布袋が詰められている。]
D-XXX-07: 袋が目一杯入ってるな。 みんな空っぽみてぇだが。
██博士: 窓はどうだ?外は覗けそうか?
D-XXX-07: 高過ぎるな。届かねぇ。
██博士: そこにある木箱を足場にできないか?
D-XXX-07: ……なるほどな。
[対象は高さ60cm程の木箱を移動させ、それを足場に窓を覗く。]
D-XXX-07: よし! 何とか見える。
D-XXX-07: お、おい。 何だよこれ!
[窓の外は、下方に広がる一面の黒い袋。遠方には無数の数百メートルを超える黒袋の山がそびえ立ち、不自然な地形を形成している。その中に点々と立つ真四角な深緑色の建物十数件と1本の黒い塔。塔の上部からはオレンジ色の光が放たれ、広大な空間を余す事なく照らしている。空間の最奥では黒袋で覆われた地面が霞むほど高く反り返り、地続きな黒袋の天井を形成している。]
D-XXX-07: ウソだろ? 信じられねぇ……。
██博士: なるほど……。部屋をもう少し調べてくれ。
D-XXX-07: あ、ああ。
[対象は木箱から降り、室内を見回す。室内右奥の床に目を止める。]
D-XXX-07: あ、床に取っ手が付いてる。ハッチってやつか?
██博士: 開けてみてくれ。
D-XXX-07: ああ。
[対象はハッチを開く。内部には酷く劣化した梯子が、取り付けられている。梯子は、20m程下方の黒袋に埋め尽くされた地面に向かっている。]
D-XXX-07: 外だ……。
██博士: 少し待て。[協議による20秒の沈黙]D-XXX-07。下に降りて周囲の調査をしてくれ。
D-XXX-07: 正気か? [舌打ち] わかったよ。くそっ。
[対象は梯子を慎重に降りる。梯子の真下周辺は円形に地表が露出しており、その円の中には十数枚のカラの黒い布袋が散乱している。]
D-XXX-07: 降りたぞ。さて……。周りは袋の山しかない。どうすればいい?
██博士: 1つ袋を開けてみてくれ。
D-XXX-07: 了解了解。
[対象は付近の袋を引きずり出す。口を縛っている紐を解き、開く。]
D-XXX-07: うわっ!おいおい。勘弁してくれよ!
[袋の中には人間のものらしき脚や腕、舌が詰まっている。それらの切断面は歪で、何かに引きちぎられたように見える。]
██博士: 他にもいくつか開けてみてくれ。
D-XXX-07: おい……![舌打ち] 俺に拒否権は無いんだったな。
██博士: ああ、助かるよ。
[対象は2つの袋を続けて開ける。中は1つ目と同様に見える。]
D-XXX-07: 一緒だ。全部。もういいだろ?
██博士: いいだろう。次は緑の建物に向かってくれ。一番近くのものでいい。
D-XXX-07: 向かうってこの袋の上を行けってか? [溜息] 了解。
[対象は袋の山を登り、数百メートル先の建物を目指して袋の上を進む。]
D-XXX-07: くそっ。流石に歩きづらいな。腕だの脚だのの感覚が、足裏から伝わってくるよ。気持ち悪りぃ。
██博士: 周囲の状況を教えてくれ。移動しながらで構わない。
D-XXX-07: 教えるも何も、見ての通り袋の海だよ。それにしても、ここは何の臭いもしないな。風も無いし。なんて言ったらいいか分からないが……生気みたいなもんを感じねぇ。
██博士: なるほど。それは有意義な情報かもしれない。記録しておこう。
D-XXX-07: ああ、そうかい。お役に立てて何よりですよ、先生……。
[移動開始から約6分が経過。現時点で目的の建物まで数十メートルに迫っている。]
D-XXX-07: 何だ? 地震か?
[映像が小さく上下に揺れ始める。揺れは時間とともに大きくなる。]
D-XXX-07: お、おい!あれ!巨人……?冗談じゃねぇぞ!
[対象の十数メートル先の袋の山の裏から、体長約12~13メートルの、全身を覆うローブを纏った人型実体(SCP-XXX-JP-A-1と指定)が現れる。]
██博士: D-XXX-07!物陰に隠れろ!
D-XXX-07: 隠れる場所なんかねぇよ!くそっ!
[対象は腰が抜けた様に座り込む。対象の数メートル先をSCP-XXX-JP-A-1が通過する。SCP-XXX-JP-A-1は対象に気付いていないか、気に留めていないように見える。]
██博士: D-XXX-07!大丈夫か!応答しろ!
D-XXX-07: 一体何なんだよここは!俺はもう戻るぞ。こんなやべぇトコこれ以上いられるか!
██博士: D-XXX-07。建物に向かってくれ。建物の調査が終われば、帰還の許可を出そう。約束する。
D-XXX-07: [舌打ち] ふざけやがって……。
[対象はゆっくりと立ち上がる。移動を再開し、間もなく深緑色の建造物に辿り着く。建造物は、高さ幅ともに約30メートル程で、対象の位置からは入り口や窓等は確認できない]
D-XXX-07: 着いたぞ。でかいな。
[対象は建造物の壁面を撫でる様に手で触れる。]
D-XXX-07: 触った感じだと石っぽいな。
██博士: 何処からか中に入れないか?
D-XXX-07: 入り口なんかないぞ。いや、ここ壁と壁との間に隙間がある。何とか入れそうだ。入るぞ!さっさと帰りてぇからな。
██博士: ああ、頼む。
[対象は建造物の角付近の壁面の隙間から内部へ侵入する。2メートル程の壁の間を抜けると、広い空間に出る。]
D-XXX-07: おい!またあの巨人だ!それに……あれは何だ?人が山積みになって……いや、人じゃない!腕や脚がいっぱい生えてる!畜生!何だよあれ……!
[内部空間の中央にはSCP-XXX-JP-2と類似した身体的特徴を有する人型実体(SCP-XXX-JP-A-2と指定)数十体が、2つの山に積まれている。その側には、暗い青色のローブを纏ったSCP-XXX-JP-A-1が胡座をかいて座っている。奥の壁には15メートル程の出入り口。SCP-XXX-JP-A-1の背後には壁伝いに大きなベルトコンベアが外に向かって設置され、天井からは蛍光灯の様な形状の白光を放つ光源が数十本、縦向きに吊るされている。]
[SCP-XXX-JP-A-1は左の山からSCP-XXX-JP-A-2を1体掴み上げ、ペンチの様な器具を用いて腕や脚、舌を全て引き抜き、後方のコンベアに投げ入れる。残った胴体は、右の山に放り落とす。その最中、SCP-XXX-JP-A-2は痛みからか時折叫び声を上げる。また、SCP-XXX-JP-A-2からの出血は見られず、引き抜かれた部位は徐々に再生している様に見える。]
D-XXX-07: あの袋の中身は全部あいつらのってことか?あの巨人、趣味悪すぎるだろ……。
██博士: もう少し”山”に近付いてみてくれ。鮮明な記録が欲しい。気付かれないように気を付けろ。
D-XXX-07: [溜息] お気遣いどうも……。
[対象は低い体勢を取り、床に散らばった腕や脚、舌を越えて、ゆっくりとSCP-XXX-JP-A-2の山へと近付く。]
D-XXX-07: これ以上は無理だ。気付かれる。もう十分だろ?
██博士: ああ、いいだろう。帰還を許可する。速やかに帰還しろ。
D-XXX-07: 言われなくてもそうするよ。こんなクソみてぇな所さっさと――
[突如、空間内に篭った奇声が響く。対象が”山”の方向を見る。SCP-XXX-JP-A-2の1体、破損したオレンジ色のツナギを着用した個体(個体Aと表記)が立ち上がり、対象を指差している。]
D-XXX-07: やばい!気付かれた!
[他十数体のSCP-XXX-JP-A-2が起き上がり、個体Aを先頭に不格好な動きで対象に向かって走り出す。SCP-XXX-JP-A-1は走り出した群衆を、緩慢に目で追う。]
D-XXX-07: くそっ!最悪だ……!
[対象は後方に向き直り、駆け出す。壁の隙間を抜け、素早く袋の上に登る。対象は袋に足を取られながら走る。]
D-XXX-07: おい先生!どうりゃいいんだよ!あいつら追ってくるぞ!
██博士: [不明瞭]XXX-JP[不明瞭]表示が[不明瞭]
D-XXX-07: 何だって?聞こえねぇよ!
██博士: いや、こちらの話だ。とにかく逃げろ。今、応援を手配している。
D-XXX-07: ああ、そうかよ。[荒い息遣い]
[対象は袋の上を、時折振り返りながら走る。遠方では、袋の山の合間から数体のSCP-XXX-JP-A-1が現れ、建造物の方向に向かっている様子が確認できる。]
D-XXX-07: 巨人どもが出てきた!あいつらを捕まえてる!
[対象が袋に足を取られ、転倒する。]
D-XXX-07: 畜生……![荒い息遣い]
[個体Aが篭った奇声を上げ、4本の腕を振り上げながら対象に飛びかかる。]
D-XXX-07: 痛てぇっ!離せ!この野郎!
[個体Aは正常な腕2本で、対象を押さえつけながら、右胸部と左脇腹付近に生えた2本の腕で、自らの余分な舌を引き抜く。]
個体A: [叫び声]この痛みはいつまで経っても慣れねぇよ。
個体A: お前何処からここに来た?なぁ!教えてくれよ。もう嫌なんだよこんな所!出たいんだ!舌と腕と脚を永遠に抜かれ続けるんだぞ![笑い声]可哀想だと思わないか?教えれば離してやる。それが出来ねぇなら――
[対象は握ったフラッシュライトを、個体Aの側頭部に激しく打ち付ける。]
[個体Aは怯み、後方に転倒する。対象はその隙に個体Aから逃れ、再び移動を再開する。]
D-XXX-07: [荒い息遣い] もうウンザリだ!
[対象が梯子に到着する。直様、対象は梯子を登り始める。それから十数秒遅れて、個体Aが梯子を登り始める。]
個体A: 出口はそこか!俺はここを出てやるんだ!
D-XXX-07: [舌打ち]しつこいぞ!来るな!バケもん!
[対象は梯子を登り切る。対象は梯子の劣化した接合部を何度も踏み付ける。]
[接合部は音を立てて外れ、個体Aとともに梯子が崩落する。]
D-XXX-07: [荒い息遣い] へっ。ざまぁみろ……。
[対象は梯子が取り付けられていた穴から、下方の様子を伺う。]
[個体Aが立ち上がり、対象を睨み付ける。]
個体A: くそ野郎!お前ももう分かっているんだろう!ここが何なのか!
個体A: お前は俺と同じ!遅かれ早かれここに来る事になるんだ!
[個体Aの後方からSCP-XXX-JP-A-1が現れ、個体Aを握りつぶす様に掴み上げる。SCP-XXX-JP-A-1は周りを見渡し、元来た方向へ去っていく。]
D-XXX-07: 信じてたまるか、そんなもん……。
[対象は早足で倉庫と厨房を抜け、扉へ向かう。対象は扉の前に立つと、扉に手を掛ける。]
D-XXX-07: おい!どうした?開けてくれ!
██博士: D-XXX-07。すまない。先程、SCP-XXX-JPの表示が”販売中”に戻った。現状、開扉は不可能だ。
D-XXX-07: お、おい!どういう事だよ!ふ、ふざけんな!説明しろ![扉を殴打する音]
██博士: この状態のSCP-XXX-JPの開扉に成功した例は無い。再び表示が切り替わるまで――
D-XXX-07: 畜生!畜生!もう嫌だ!こんな所!出してくれ![扉を激しく殴打する音]
D-XXX-07: こんな扉、ぶっ壊してやる!こんな扉!なっ――
[突如、対象が何かに引かれる様に、後方へ仰向けに倒れる。]
[赤黒いローブを纏った小型のSCP-XXX-JP-A-1が、対象を見下ろす。]
D-XXX-07: いや……だ。
[SCP-XXX-JP-A-1は右手に持った金属製の棍棒を振り上げる。]
D-XXX-07: いやだ!いやだ!やめ――
[SCP-XXX-JP-A-1は棍棒を振り下ろす。]
D-XXX-07: 俺も罰を受けるのか?
[映像及び音声が途絶する。]
<記録終了>
BBC2018参加予定の記事です。よろしくお願いします!
>特別収容プロトコルについて
探査記録で確認されているものについての記述も必要かと思います。
販売量が少ない場合に転移することがわかっているならば品切れになるまで購入した方が確実かと思います。
発信機を取り付けるなどして移動した際でも位置情報が分かるようにした方が良いと思います。
学名や肉の生物、遺伝情報等の記述があった方が良いと思います。
"正面上方の窓からは夕焼けの様なオレンジ色の光が差し込んでいる。"で良いと思います。
空
"形成している"の方が良いと思います。
一思いには要らないかもしれません。
"酷く劣化している"で良いと思います。
なぜ沈黙しているのでしょうか?思考していたり、他の職員と話し合っているのならばその旨を記した方が良いと思います。
移動した時間を記載した方がいいかもしれません。
カメラにもよりますが、ヘッドギアに装着しているのであれば後方の撮影は難しいと思います。
12〜13メートルの巨人に飛びかかられたら痛いでは済まないと思います。
>探査記録全体的に
"—"は必要無いと思います。
比喩的な表現が多いので修正した方が良いかと思います。
yanapppppu様 ご指摘ありがとうございます!
あまり内容を書いてしまうとインパクトが削がれてしまう気がするので、「電光掲示板の表示内容に変化があった場合は〜」と加えました。
その様に改めました。
学名を追加しました。遺伝情報については知識が皆無なので、相応しいかは分かりませんが「ヒトと近似した遺伝子を持つ生物」としました。
その様に改めました。
[協議による20秒の沈黙] に改めました。
不自然にならない様に改稿しました。
飛びかかられたのは「個体A(SCP-XXX-JP-A-2)」にです。
大幅に削減しました。残っている部分もご指摘があれば、削除を考えます。
なるべくそうならないように修正しました。
>「販売中」と表示された電光掲示板が取り付けられています。
取付ではなく、掲示などのほうがいいかもしれません
>これまでに表示内容の変化は確認されていません。変化事例が確認されました。
これまでに表示内容の変化は確認されていません。変化事例が確認されました。 などとしたほうがいいかもしれません
>身体に舌、腕、脚のいずれか、又は複数が新たに発生します。
少しわかりにくい説明かもしれません
>D-XXX-07: 言われなくてもそうするよ。こんなクソみてぇな所さっさと
>██博士: この状態のSCP-XXX-JPの開扉に成功した例は無い。再び表示が切り替わるまで
D-XXX-07: 言われなくてもそうするよ。こんなクソみてぇな所さっさと――
>██博士: この状態のSCP-XXX-JPの開扉に成功した例は無い。再び表示が切り替わるまで――
としたほうがいいかもしれません
to2to2 does not match any existing user name様 ご指摘ありがとうございます!
ご提案とは異なりますが、”内蔵”とさせて頂きました。
当該部分を修正しました。
その様に改めました。