Tale下書き「遺書」

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この文書は、サイト-81██の管理室のデスク上に置かれていた「旧サイト-81██管理者・██1の遺書」と記された封筒の中に記されていた遺書と思われるものです。信憑性に欠ける記述が多数存在することに留意してください。

文書内容:

 私はこの遺書を残して去ることにした。この遺書には重要なことを書くつもりでいるが、信じてもらえるかはわからない。しかし信じてほしい。これは事実であり、おそらくは真実であるからだ。
 私は現実改変や過去改変に耐性がある人間だということは既に財団の検査によって判明していたのだが、私の耐性はどうやら財団の検査では測り知れないほど強かったようだ。

 とある日のことだった。私は毎朝上がってくる各収容室の報告書をチェックしていた。しかし、どうにも報告書の数が合わないと思い、チェックリストのほうに目をやった。チェックリストに記載されている収容室の数も私の記憶と合わない。私の記憶より1つ少ないのだ。少し首を傾げながら、報告書が上がっていなかった収容室(があると私が認識していた場所)に向かった。目的の場所に着いたとき、私は呆然と立ち尽くしてしまった。私の記憶には確かに存在していたはずの収容室が忽然と消えてしまっていたのだ。そこには昨日まで人を殺す恐ろしい怪物が収容されていたはずだというのに、消えてしまっていたのだ。私は管理室に戻り、財団のデータベースを開いた。そして私は驚愕した。あの怪物の特別収容プロトコルが記載された報告書が、データベースのどこにも残っていなかったのだ。他の職員にこの怪物の存在とその消滅について報告したところ、何かしらのSCiPの影響を疑われ、検査に回された(が当然何の異常も検出されなかった)。昨日まであんなに頭を悩ませていた怪物が、跡形もなく消滅してしまっていたのだった。この日を皮切りに、同じようなことが何度も起こった。しかし、そのことに気付いていたのは私だけだった。
 異常存在が収容室ごと消えるなど有り得ないと思うか?私だってそう思う。そんなこと有りなどしないと思いたい!しかしこれは紛れもない事実なのだ。

 様々な仮説を立てた結果、私はこの現象は神の悪戯によって引き起こされたものだと判断した。そうすると様々なことの説明がつくからだ(或いは私がそう思いたいのかもしれない……)。

 私はこの現象について日々考え続けた。そして思い至ったのだ。これは私の現実改変或いは過去改変に対する耐性があまりにも強すぎるために認識できているのではないか、と。過去に行った現実改変に関するSCiPの実験中にも似たような状況になったことに私は気付いたからだ(とはいえ、そのSCiPも今は消失してしまっているのだが……)。しかし、この現実改変/過去改変を行っているのは一体誰なのか?こんな大規模な改変を行いつつ財団の目に一切留まらない存在……、そんなものが存在するのだろうか?存在するとしたら(過去の事例から考えて存在するとしか私には思えないのだが)、それは神のような存在だろう(こんな悪質な悪戯をする存在を私は神とは呼びたくない、悪魔の類だろうと私は考えている)。これは私の考え過ぎなのだろうか。この遺書が読めているということはその可能性は低いと私は考えている(理由は後述する)。

 私はこの考察を進めていくうちにある1つの可能性に思い至った。私の考え過ぎなのかもしれない(し、そうであることを祈る)。そのことに留意してこの先を読んでほしい。

 その可能性というのは、この世界自体が1つのおもちゃ箱なのかもしれない、という可能性だ(これに関する報告書は後で纏めようと思っているが……悪戯だと思われる可能性のほうが高いし適当な紙にでも書いて適当な書類に挟んでおこうと思う)。この考えに基づくと、この世界は異常存在を確保、収容、保護していたところで意味はないという結論が導き出せる。なんでかって?あの神/悪魔の裁量次第でこの世界が存続するか滅びるかが決まるからだよ!このおもちゃ箱が閉じられてしまったらこの世界はもう終わりだ、一瞬にして崩壊してしまう、誰も認識できない間に!何故この世界が滅亡するかもしれないレベルのKeterクラスオブジェクトを抱えてなおこの世界が滅びないのか考えたことはあるか?何故収容違反を起こしたオブジェクトをこうもあっさり収容できていると思うか?おもちゃ箱で遊んでいる悪魔がまだこの世界に飽きていないからに決まっている!この世界が滅びるとあの忌まわしい悪魔がこの世界で遊べなくなるからに決まっている!

 ……済まない、つい感情的になってしまった。しかし私は言いたい。この世界はあの悪魔、いや悪魔とすら呼べないような餓鬼の掌の上に存在しているのみなのだ。あの餓鬼がこの世界に飽きてしまった瞬間、この世界は滅亡するのだ。私はそれだけは明言したい(ここまでの話はあくまで1つの可能性に過ぎないが)。
 滑稽な話に見えるかもしれない。狂言だと思われるかもしれない。しかし私はこの可能性を伝えたいのだ。

 私は友人の研究の結果である、私自身の過去改変および現実改変に対する耐性を別のものに移すことができる装置を譲り受けた。そこで、私はこの遺書を書き上げた後、この遺書に耐性を移そうと考えている。耐性を移した瞬間、あの餓鬼に私の存在を消し去られてしまうんだろうな。私は知り過ぎた。私が消えてもこの遺書はきっと消えない。あの餓鬼の改変能力に耐えうるほどの耐性を持っているということは私自身が一番良く知っている。そして、この遺書が読めているという事実こそが、私の存在があの餓鬼の悪戯によって消されたことの証明になるだろう。
 結局財団だってあの餓鬼の悪戯に抗うことなどできない。まだ無駄な抵抗をする気なのですか?
 あの神に逆らってはならない。

— 旧サイト-81██管理者・██


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