スシブレードtale!?

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これ財団の創作って言い張っていいのか!?

【異説スシブレード 第5話 あらすじ】
搦手でかろうじて勝利したものの、先の戦いで己とサルモンのそれぞれの限界を知ったタカオ。浜倉からその戦いの様子を知らされた病床の勝は、タカオにとあるスシブレーダーの元での修行を命じる。

男の名前は輝。かつては勝、そして栄ー現在の“闇”ーと腕を競い合った期待のブレーダーだった。しかし、とある事故で左手を失い寿司を握れなくなったことで舞台から去り、現在は故郷の家業を継いで養鶏場を営んでいるという。

勝からの手紙を受け取り、山奥の養鶏場に向かったタカオと浜倉。だが……

【序】 

浜倉の運転する車が、3月の寒風がすさぶ田舎の一本道をひた走っていた。
あたりは田畑森林諸々の枯れ褪せた草色ばかりが広がり、未だ春の訪れが遠いことを思わせる。

「あー。うん、タカオさん、気分が悪くなったら車止めるんで、声かけてくださいッス」

浜倉の気遣いに、タカオが腹の中に入っていた空気がひょろひょろと抜けるような、精気のない生返事を後部座席から返した。
バックミラー越しに映る、ぼぅ、と流れる景色を眺める彼を一瞥すると、浜倉は何と声をかけるべきかも分からず、仕方なく運転に集中することにする。

曇天に切れ間なく、どこまでも灰色が続いている。
まだ雨は降らないが、まもなく下り坂にはなるだろう。

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タカオの目には流れる田舎の景色が映っているが、彼は何も見ていなかった。思い返すは先の戦いでの辛勝。浜倉の機転が無ければ、今頃生きたままミンチ機にかけられていたのは自分かも知らなかった。己の弱さ、スシブレーダーとしての限界、そして信じていたはずのサルモンを疑ってしまったことが喉の奥でつっかえ、前にも後にも思考が進まなくなっている。

“お前はスシの何を知っている?”

反芻。反芻。反芻。試合で交わされた言葉を反芻する。
等間隔に通り過ぎ、また巡る言葉。電柱は無機質に繰り返す。のっぺりと連続する休耕田をひた走っている。同じ場所を延々と走っている錯覚にも思えるように。

スシとは何か。何のために戦っているのか。
「そもそもスシは回して戦わせるものではなく、食べ物である」という至極まともな考えはこの世界では通用しない。

この世界ではスシは回り、そして命(ネタ)と信念(シャリ)を散らしていく。
気がつけばその考え、作法に順応していたし、強いて言うなら師匠に「筋がいい」と褒められたのは平々凡々取り柄なしの人間性と摩耗した精神にとって少なからず潤いのようであったというのは確かだ。

“お前はお前のスシの何を知っている?”

反芻。
理外の力でこの世界のスシは回っている。だが、その強さはネタやシャリの素材やスシを握る技術により左右されている。
これはこちらの世界ではスシブレーダーではなくても知っていて当たり前の常識になっている。しかしその強さに教科書的な法則はない。
各々が各々に最適なスシを握り、信念を持って己の相棒としている。

サルモンは師匠、勝が初めてタカオに握り方を、そして回し方を教えてくれたスシだ。
故に愛着があった。
そしてなにより、タカオは好き嫌いの多かった小さい頃から、サーモンの寿司が好きだった。
家族四人で何度か足を運んだチェーンの回転寿司で、がっつきすぎて喉を詰まらせ、店中大慌てになったのは数少ない睦まじい思い出だった。

自分はサルモン、いや、サーモンの寿司に頼っている、いや縋っているのだろうか。

“お前はお前の何を知っている?”

反芻。
別にスシを回さずに、黙ってあの灰色の収容房に戻り、ひと月だけよくわからないキツい仕事を耐え、あちらの現実に帰っていく事だって出来たはずだった。
だが、自分への冷たさは収容房も自分の現実も一緒だ。心貧しき人間には暖かいものは与えられないし、手を差し伸べてくれる人などそうそういない。
少なくともこの世界では師匠と、物好きな浜倉が俺についてきてくれた。

多分俺はこの世界に縋っている。縋っているだけなんだろうな、と思う。

道は下り坂、浜倉がエンジンブレーキのためにギアを変えた僅かな揺れで、タカオは我にかえった。

眼前をひしゃげ歪んだ看板が通り過ぎていく。
「タマヤ農場」
かろうじて読めた文字は、二人の目的地だった。

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所謂里山的森林に囲まれた、なだからな山の斜面の上に建物があった。サイロ、金網の囲いが貼られた芝生、複数の倉庫のような建物。確かにこの設備たちがあるということは、ここで確かに多くの鶏が飼育されていることはなんとなく想像できるだろう。

だが、

「ほ、本当にここで合っているのか!?」

先に挙げた設備たちのどれもが、滅茶苦茶に、壊滅的に壊れている。
あまりの荒れっぷりに狼狽するタカオ。
その顔前に、浜倉がずい、と携帯の画面を突きつけた。地図アプリ上にはひよこのアイコンと共に「タマヤ農場」という文字が掲載されている。

「間違いなく!こ!こ!ですよタカオさん…でも、なんでしょうこの空気感…荒れてるだけじゃない。なんだか僕、怖くなってきました…」

確かにこの荒れようを見たら、昼間だって普通の人間は薄気味悪いと感じるだろう。だがタカオは薄気味悪さ以外の別な物を感じ取っていた。それはさながら胃の奥から酸臭を伴ってこみ上げる、澱だ。

「これは…」

乾風にかすかに混じる寿司酢の香り。枯れて彩度を失った芝の上には、よく見れば白いものが落ちている。しゃがみ込み足元のそれを手に取ると、乾燥した米粒だ。そのまま顔を上げると、芝は規則的な渦を描いていることに気がつく。渦の中心にはポッカリと地面が見える円がある。その直径、17寸。

「スシ…ブレード…?」

間違いない。ここで試合が行われていたのだ。確信を得、試合の舞台であろうその禿げ地に歩みを進めようとした。

瞬間、タカオは先の試合で感じたものと同じ、だが圧倒的に濃く、淀んだどす黒い寿気1に臓腑を掴まれた。思わずその場に膝を突き、こみ上げた胃酸を絞り出す。

「タカオさん、しっかり!」

異変を察し、慌ててタカオの背中をさすりに寄ってきた浜倉も、さすがにこの邪悪な寿気の残り香には気がついたようだった。

「まさかこれ、闇寿司が…!?」
「多分。…そうだ、輝さんが無事か、確かめないと…」

タカオが指差す先にあるのはここらの田舎では一般的な形状の、旧い田舎そのものと言っていい平屋の一軒家だ。敷地の端々に見える鶏舎よりはまともだが、それでも荒らされているようで、雨戸があちこちに散らばり、窓ガラスも数枚が破れている。

いざ枯れ芝を踏み踏み歩んでみると、タカオの目には先々に鶏の物と思わしき羽や、大量の割れた卵が飛び込んできた。
硫黄の様な腐臭がどす黒い寿気の淀みに拍車をかけ、さながら地獄の窯で蒸されているような気分だ。

嫌な予感がする。無意識にタカオはウェストポーチに収納された湯呑みに手をかけていた。

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寿気による吐き気に阻まれながら、二人はやっとの思いで家の玄関にたどり着いた。玄関柱に釘打ちされたまま横一文字に破断され、真っ二つに割れている表札には、しっかりと「霊屋」と書かれている。

「やっぱり、ここが輝さんの…」

玄関扉は爆風に煽られたかのように破壊され、中を覗くと飛散したガラスの破片が、あちこちに散乱している輝とその家族と思わしき靴に、無数に突き刺さっていた。

「失礼するですよーっと」
「まっ、待て浜倉、荒れてても人の家なんだぞ!」
返事も待たずに廊下へと土足で上がり込む浜倉を、静止しようと手を伸ばし、タカオは気がつく。

廊下のどの内壁もズタズタで、土間こそ玄関扉の破片でめちゃくちゃに荒らされているように見えるが、式台より上にはチリ一つ残っていない。
そして、どれも無造作に並んでいるように見える靴たちの中で一足だけ、丁寧に揃えられた靴がある。

綺麗な茶色のローファーだ。

この惨状が起きた後に、何者かがこの家に侵入して、未だ滞在しているー

「浜倉、止まれ!」

閃光が走った、と、思った。
タカオの呼びがけと、浜倉がはるか後方に吹き飛ぶのは、ほぼ同時だった。

「浜倉!」

玄関の破片や靴が舞い上がり、土煙が立ち昇る中、さっきまで浜倉がいた場所に確かに"スシ"があるのをタカオは見た。だが一切の魚臭なく、そのネタまではわからない。回転に合わせて立ち昇る寿司酢の甘酸っぱい芳香が、タカオの脳髄の警鐘に早鐘を打たせる。

玄関の真向かいに伸びる階段の上の方から、からゆっくりとした踏み板の軋む音、つまりスシの主のものと思わしき足音が聞こえてきた。
咄嗟の臨戦態勢、タカオは左腕に装備されたケースから箸を手元に滑らせ、湯飲みをウェストポーチから取り出すのとほぼ同時にサルモンを構える。

「くそっ…何者だ!」

焦燥。
闇寿司の手先か、あるいはブレーダー・ギャングか。どちらも戦闘は避けられない。勝てるのか、俺に?できるのか?先の戦いでサルモンを使いこなせず窮地に陥った自分が、浜倉の助けも無しに?

「できるのか?」

思わず口からつく言葉。
疑問が繰り返し頭の中で再生される。疑念が宛先なく繰り返す。

箸を持つ手が力み、震える。重圧によりサルモンの繊細なシャリが散り散りになってしまうかのような錯覚。

突如階段からの足音が早まり、さらに緊張が走る。タカオは腹を括った。

後先はこの寿司を討ってから考えるしかない。

「来るなら撃つ!3!2!1ー」

正にタカオの湯呑が振り下ろされようとした瞬間、

「まって!その寿司を射たないで!」

土煙を突き破り現れた少女が、タカオの眼前に、スシを庇うように手を広げて滑り込んだ。突然のエンカウント。煮詰まった思考が弾け飛び、頭の中が一瞬真っ白になる。無意識に構えを解いていることにすら気がつけない。

口は何か言おうとしているが、思考がうまくまとまらない。この女が闇寿司の仲間である可能性がゼロではないのに、だ。

「あ、お、キミは…」

「あなた、闇寿司じゃないよね?」

先に相手の正体を問うてきた少女が、闇寿司ではないことをタカオの体が理解し始めた。これだけ的確に浜倉を吹き飛ばしたスシ使いであるにもかかわらず、先ほど感じたような闇の寿気を感じない。しかし動揺がまだ収まらず、纏まらない思考から考えずに要件が口から出てきてしまう。

「お、俺たちは、勝さんから…」
「あなたたちパパの知り合い!?…ごめんなさい、そうとは知らず、吹き飛ばしてしまったわ…」

茶色のショートカットに、夜に溶け込んだ猫の様な丸い目、ソバカス。着膨れしたフリースパーカーで寒そうに首周りを隠している。年はタカオよりも下……浜倉と同じぐらいだろうか。それよりも、だ。

「…パパ?じゃあ、なんだ?キミは輝さんの…」

娘がいるなんて師匠は教えてくれなかったぞ?

「パパの知り合いみたいだけど、私とは会うの初めだよね。私はヒロミ、タマヤヒロミ。私はここタマヤ農場の一人娘で、パパは経営者……うん、経営者で、スシ職人、だった。それで、あなた達、どうしてここに…」

会話返答を遮る様に、ヒロミと名乗った少女のパーカーの帽子が突如もこもこ暴れ出し、羽ばたき音と共に白い塊が飛び出した。

一羽の真っ白な鶏だ。

飛べない鳥とは思えないほどに軽やかに着地すると、土煙にまみれ回転を止めた彼女のスシを啄み始めた。あたりに米粒と、ネタが散らばっていく。

スシブレーダーにとって相棒に等しい寿司が畜生に食われていくのを見てられないタカオは、そよ鶏を止めようとしたが、ヒロミが穏やかな顔でそれを見ていることに気がつき、踏みとどまった。

「…ありがとうね、キミ。…あ、えーっと、この子は今唯一生きてる鶏で、名前はキミ。女の子」

彼女が放った一撃。
いま命を終えて食物として消費されている、刹那の稲妻の正体は、一巻の玉子寿司だった。

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