現代義躯技術入門 緒言

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現代義躯技術入門
 
 

帝立醫工技術開發院 出版

工學博士 藍川麒麟 著


目次

諸言

第I部 數學

1 基礎槪念

2 微分と積分

3 ヴェクタ解析

第II部 工學

4 初等力學

5 機械力學

6 熱・流體力學

第III部 醫學

7 免疫學

8 神經學

第IV部 現代義躯技術

9 破損四肢の補完

10 缺落感覺の囘復

11 後天的身體擴張

12 感覺器官の擴張

13 腦髓の改良と擴張

14 自動人形オートマタの擬似意識生成

15 全身義躯化への最新の試み


第一版 諸言

我が帝國における義躯技術の進展は目を見張るものがあり,日夜新技術が怒涛の勢いで誕生している.本著は,著者としてはそうした最新の義躯技術も勿論だが,できるだけ一般向きの學修書,學術讀本として活用されることも目指した.現代義躯技術と題したが,大部分は基礎的な義躯技術とそれを支える數學・工學・醫學の一般的解說である.特に數學の分野に紙面を割き,基礎理論の導出とその解說に重點を置いた.現代の義躯技術を自由自在に活用するためには確固たる基本法則の理解が必要不可缺であり,なるべく早期にそれら基礎槪念を修めることの重要性は,あえて言う必要もない至極當然の事實である.

著者の理念としては明瞭簡潔を尊ぶ姿勢で本著に取組んだが,豫想外の項數となるに至った.ひとえに著者たる私の非力に原因はあるものの,敢えてその理由を外に求めるとすれば,多くの學生が理解に困難を覺える最新のヴェクタ解析の章の記載方式にあるだろう.通常學生が講義において躓き易い箇所を精査し,其の解說に紙面を割いた.言うなれば,そのまま講義錄として轉用可能な程の詳細さを與えたのである.また,演習問題も多く用意し,其の全てに解說を用意した.中には最新の論文で發表されたような難解な問題も存在する.これに挑む諸君の健鬭を祈る.

本著の後半は,讀者が卓上で可能な簡單な實驗も含めた最新の義躯技術の紹介と解說を行った,紙面上の文字を追うだけでなく,惡戰苦鬭しつつ手を動かして五感を以て義躯の最新技術に觸れることを著者は推奬する.必要な部品や手順は全て記載してある.

義躯技術は我が帝國を支える根幹技術である.より多くの臣民が其の内容を理解し,利用し,擴張していくことが帝國の明日をより明るいものとすることを,私は信仰している.本著がその一助となれば,望外の悅びである.

本書を出版するにあたり,非常に多くの方の協力を頂いた.遲筆な著者を時に勵まし時に叱咤していただいた編集者の亞蘭慈英氏,執筆中に有益な助言を多數與えていただいた帝國大學敎授の錠榮氏には心から感謝の意を示したい.最後になるが,本著に記載された各種義躯技術の檢證には我が家族,特に子供たちを活用した.身近な生體素體サンプルとして多大なる貢獻を果たしてくれた彼らに感謝と哀悼の意をここに表する.

大正150年1月 著者記す


改訂第二版 諸言

つい先日第一版を出版したが,望外の話題性を得た.ごく短期閒の閒に讀者諸賢から實に多くの便りを頂き,本著の誤りや不備について大變有益な情報をいただいた.元々全國的に品切と成っており增刷を打診されていたが,これらの誤植や不適切箇所,不足部分を放置してしまうのは不義理であると著者としては考えた次第である.そこで,本來より數週閒ほど遲れる形にはなったが,改訂第二版として新たに構成の見直しと本文の增減筆,内容の精査を行った.

本著第二版に於いて著者が考慮した要點としては,何よりも後半の實驗内容に多數の圖表,寫眞,空閒投影立體ホログラムを添付したことが擧げられる.特に空閒投影立體ホログラムは讀者の意圖する角度・大きさに調節可能であるので,實際に卓上實驗を行う際に大きな手助けとなると考えている.

編集者の亞蘭慈英氏,帝國大學敎授の錠榮氏には,第一版に引き續き多忙を極める中多大なご助力と有益な助言を頂いた.心から感謝の意を示したい.
なお,空閒投影立體ホログラムの多くは我が妻の身體部品を用いて撮影した.

当初の構想では14章は既存の人間の自我複製も含めた内容であった.しかしながら,著者の過誤によりその実験中に妻の自我が破損し,実験の継続が不可能となってしまった.編集部と相談の上,危険性を鑑みて自我複製の項は削除する運びとなった.またその影響で,14章以降が圖表と寫眞のみとなってしまったことは,著者として悔恨の念にかられるばかりである.

亡き妻を悼んで
大正150年6月 著者記す


改訂第三版 諸言

本著の著者は大正150年8月27日に逝去されました.亡くなる直前まで著者は本著の改訂原稿を作成しており,書齋のノートには既に構想が殆ど完成した狀態で遺されておりました.特に,最大の加筆部分であった「義躯と精神」は單なる技術書の枠を超えた,著者の哲學とも言える思想が展開されておりました.絕筆となったことが悔やまれるばかりです.

改訂作業中の著者の逝去という大事件は編集部において,著者の遺した資料をもとに第三版を書き上げるか否か大きな議論を生みました.
亞蘭慈英,錠榮の兩氏と,著者の下で硏究活動を行なっていた數名の有志達で会議を重ね,最終的には遺稿を元に,「義躯と精神」を除いて第三版を作成する運びとなりました.

これまでに編集部には,本著を通して深い知見と感動を得た讀者諸賢が行った卓上實驗の成果や結果が郵送されてきています.その數は專門部署の立ち上げを必要としたほどです.本著の好評を受けて暁星屋百貨店で開催された展示会には著者自身も訪れ,その光景を實に嬉しそうに見ておられました.特に14章記載の實驗成功例には感嘆の聲を上げ,失われた細君を想われていたようです.

舊版の記述や文體を最大限尊敬し,再生を行ったつもりではありますが,我々の淺學さから,誤解や不手際がないか恐れるばかりです.讀者諸氏にはご寬容いただきたいと思います.

第三版改定に關わった全ての方に深い感謝を,そして,科学にその身を捧げた著者に敬意と哀悼の意を示します.

大正150年12月 編集者記す


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  1. portal:2782808 (02 May 2021 17:12)
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