特別確保プロトコル: 流行性健忘の罹患が疑われる個人または集団に遭遇したエージェントは、対象のクリアランスレベルに関わらず一切の記憶処理を行なってはなりません。
該当事案に遭遇した場合は直ちに医療サイト-8119管制室へ報告して下さい。適切な医師を含む特別確保チームが派遣されます。
確保チームが到着するまでの間、現場の財団エージェントは飛沫感染に対する標準の予防措置によって周辺人員の感染を防ぐとともに、記憶処理を用いない方法で情報規制を行なって下さい。確保および初期収容に際してミーム撹乱因子の使用は容認されます。
特別収容プロトコル:日本支部管内にて5日以上に渡って発熱を伴う記憶の欠落がみられる人間には検査を行い、SCP-xxxx-JPへの感染が強く疑われる場合には医療サイト-8119へ隔離した上で治療が行われます。手続き記憶の広範な欠落は流行性健忘に顕著な症状であり、発生が確認された場合はレベル3職員によって直ちに収容違反が宣言されます。
分離されたSCP-xxxx-JPのサンプルはサイト-8119内の低温収容室に保管されます。収容および研究任務にはクリアランスレベル2以上の職員のみが割り当てられ、担当者は耐性株の発生に留意した記憶補強薬の適切な服用が義務付けられます。
収容違反が発生した際には上記の特別確保プロトコルが適用されます。
説明:SCP-xxxx-JPは伝染性を有する異常な反ミームです。後述する特性から情報の完全な隠蔽はできておらず、SCP-xxxx-JP感染症は「流行性健忘」として一般に知られています。SCP-xxxx-JPに暴露した人物(以下、感染者と呼称)は段階的な健忘症を発症すると共に、暴露後に喪失した記憶量に比例する数の呼吸器粘膜細胞をSCP-xxxx-JP-Aへと変異させます。感染者の免疫系はSCP-xxxx-JP-Aを未知のウイルスに感染した細胞であると認識しており、体内ではSCP-xxxx-JP-Aの増加に応じて発熱や咳などの免疫活動が活性化します。
SCP-xxxx-JP-AはSCP-xxxx-JPによって変異した感染者の細胞です。SCP-xxxx-JP-Aに変異した細胞では代謝活動の90%以上がSCP-xxxx-JPを多量に含んだ未知の伝達物質の生成に費やされます。自身の生存を維持する能力が極端に低下するために、SCP-xxxx-JP-Aは変異から30時間以内に細胞死を経て破裂します。破裂したSCP-xxxx-JP-Aからは内包する伝達物質が放出され、周囲の健康な細胞にSCP-xxxx-JPを感染させます。海馬など一部の中枢神経系を除くヒトの細胞内では外部からの情報がごく短時間で忘却されるため、細胞破裂は非常に短い周期で連鎖的に発生します。
上述の通り感染者は免疫活動によって体内のSCP-xxxx-JP-Aを排除しようと試みますが、感染者の粘液にはSCP-xxxx-JP-Aおよび内部で生成された伝達物質が含まれており、これらの飛沫がヒトの粘膜に付着することはSCP-xxxx-JPの感染を拡大させる要因となります。
さらに、感染者の血液からはSCP-xxxx-JP-Bに分類される物質が発見されています。
SCP-xxxx-JP-Bには記憶補強作用がありSCP-xxxx-JPを抑制するとともに、その構造はSCP-xxxx-JP-Aに対する特異抗体に相当します。上記の性質に加え、免疫の活性化に続いてこの物質が血中に出現することからSCP-xxxx-JP-Bは感染者の免疫作用の一環として生み出されていると考えられます。SCP-xxxx-JP-Bが出現するメカニズムは[編集済]。血液中に十分な量のSCP-xxxx-JP-Bが蓄積された感染者は体内のSCP-xxxx-JP-Aが効率的に凝固、排出されるようになり、また記憶能力に有意な向上が確認されています。この性質によりSCP-xxxx-JP-Bを保有する人物は再度SCP-xxxx-JPに暴露した際にオブジェクトの反ミーム特性に抵抗して記憶を保持するため、流行性健忘を発症しない、または発症した場合も症状は軽度であり速やかに快方に向かいます。特筆すべきことに、これらの人物は程度に差異はあるものの財団の保有する記憶処理技術にも耐性を示しています。そのため、彼らは快復後も機密維持のため暫定的にサイト-8119にてレベル1職員として雇用されています。感染者の増加によって機密維持のコストは年々上昇しており、より効果的な収容プロトコルの策定が急務となっています。
実験記録
以下は医療サイト-8119にて行われた実験から得られた情報です。
第一段階では、感染者はSCP-xxxx-JPに関する記憶を部分的に保持できなくなります。感染者が取得したSCP-xxxx-JPに関する情報の約10~20%が失われると第二段階へ進行します。
第二段階では、感染者は直近の24時間に渡る記憶を部分的に喪失します。喪失する記憶には必ずSCP-xxxx-JPに関する情報が含まれており、約50%が失われるとSCP-xxxx-JP-A郡は破裂シーケンスを開始し、第三段階へ進行します。
第三段階では最大で数十年に渡る広範な陳述記憶と非陳述記憶に影響が及び、多くのケースにおいて日常動作への障害となります。衣服の着用や食事といった動作にも支障がみられるため、以降の段階では症状による診断が有効となります。第二段階までの症状と比較して健忘の進行が非常に速く、これはSCP-xxxx-JP-Aの急速な生成と破裂を引き起こします。SCP-xxxx-JPに関する情報の約90%が失われると第四段階へ進行します。第四段階までに感染者の体内に存在する全てのSCP-xxxx-JP-Aが排除された場合、症状は速やかに快復します。
第四段階に到達した感染者は昏睡し、その後24時間以内に快復の兆候がみられます。快復した感染者からはSCP-xxxx-JPに関する記憶が完全に失われており、また体内のSCP-xxxx-JP-Aの大部分が死滅しています。
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