Tale(連休の気の緩み)

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迷子のお知らせです

██市からお越しの██ ██ちゃん

お母様がサービスカウンターにてお待ちです

繰り返します、██市からお越しの██ ██ちゃん、
██ちゃん、お母様がサービスカウンターにてお待ちです


                       
「迷子の子見つかった?」
「ううん、見つかってない」
「でもお母さん帰ったんでしょ?」
「そう、もう10歳だし家も近所だから先に帰ったのかもしれないからって」
「見つからなかったらやばいね」
「ほんとね」

                                             
全国規模で展開し激安を売りに、商品を隙間なく並べ、店内が半ば迷路のように見えるこの店舗に勤めて早3年

迷子のアナウンスはブース毎に数こそ違えど総じて十数件はある              

それでも、見つからなかったことはなかった

例えば、おもちゃコーナーやボールプールなどで寝ていたり、遊んでいたり、はたまた商品の中に入っていた、紛れていた、などなど
発見までの時間はかかってはいるが見つかっているのだ

「店内見てくるよ」
「私体験コーナー見てくるね」


コロコロ、バンバン、カラカラ

遠くからでも分かるほどの様々な音と奇声歓声が体験コーナーから聞こえてきた

ようやくたどり着いて目にしたのは

色とりどりなカラーボールプール
廃棄削減のための商品体験コーナー
木製のレールでできた巨大ピタゴラスイッチ

「今日も人が多くて良いことだよ、」      
 
ここにいてくれると嬉しいなぁ、と体験コーナーのブースを見回しているとここを担当しているアルバイト店員がこちらに向かってきた         
  
「お疲れ様です、また迷子ですか?」
「そうなの、ここで発見されること多いから今回も来てみたよ」
「1人で入ってきた子はいないっすけど、結構小さい子いるんで居るかもしれませんね」  
「ありがとう、助かるわ」
「いえいえ、俺も探しましょうか?」 
「いーよいーよ、あそこの体験コーナー結構繁盛してるしそこのお客様の相手してて、」
「了解です、迷子の子よろしくお願いします」

1人で入ってきた子供がいない、ということは店内で友人と会ってそのまま遊びに来た、又は連れ去り、という可能性もある
後者でないことを祈りながら私はまずカラーボールプールを訪れた

「おさげでピンクのジャンパーを着てて右頬に黒子のある140cmぐらいの子、かぁ」

プールを覗いてもせいぜい100~130㎝ぐらいの子供が数人

プールを囲むようにして置かれている直方体の椅子では、中の子供達の親が談笑しているだけ
しかしボールに埋もれている可能性も否めない

異様な盛り上がりのある場所をまず見てみるしかない、と私はボールを退けていった

「あ、」
「あーっ!おねえちゃんなんでボールとっちゃうの!」
「ごめんね~、迷子の子探してて」
「ぼく今かくれんぼしてるの!見つかったら次鬼にされちゃうの!隠して!」
「ごめんね」
「でもボールの下にいると誰かに踏まれちゃったり……息が吸えなくなっちゃうかもしれないからね」
「一緒に出よっか」
「はぁい、」
「おともだちにも危ないから別の遊びをしようって言っておいで」
「うん…」

不満げな顔をしながらも友人のもとへ行き別の遊びを見つけたところで私はこの場を後にした


迷子のお知らせです

██町からお越しの██ ██くん

お母様がサービスカウンターにてお待ちです

繰り返します、██町からお越しの██ ██くん、
██くん、お母様がサービスカウンターにてお待ちです


豪快な破裂音がするこの場には家族や友人で来ている人たちが多く、どのブースよりも賑わいを見せている
そうして眺めていると先程のアルバイト店員が駆け寄ってきた

「迷子の子見つかりました?」
「まだだねぇ」
「俺もさっきこのコーナー見て回りましたけど一人の子はいませんでしたよ」
「そう?」
「はい、みんな親とか兄弟とか友達とかと一緒に居て困ってそうな子はいませんね」
「そっか…でも一応ここ見ていくね」
「よろしくお願いします」


ストレス発散!パーティーグッズ候補!
みんなで楽しもうピニャータ!


このコーナーでは1000円でピニャータを1つ破壊することができる
個別で販売しているピニャータの外袋に、店内で売っている賞味期限の近い菓子類を詰め込むという体験してもらうコーナー

海外ではこどもの祭りや誕生日を祝う時にピニャータ割りを行うそうだ
日本で言うとくす玉人形みたいなものである

「それにしても楽しそうにピニャータ叩いてるわね、」

ちょっと不気味だけど目がくりくりしてて愛らしいユニコーンをよくそんなにも……
指示する側は楽しそうだし割る人も楽しんでやってるし、なんかスイカ割りに似てるなぁ

独り呟いた音はピニャータを殴打する音に紛れた

このコーナーは特設コーナーで場所も広く取ってある
そのため小さな子供を見つけるのは困難を極めた

「ま、こういうときのためのインカムよね」

つけていたインカムのミュートを切りこのコーナーを担当する店員に繋いだ

「もしもし、聞こえますか?」
『聞こえます、どうされました?』
「ここ、なんか物凄く散らかってない?」
『あー、まぁ一応ピニャータ割り体験してもらって買ってもらおうっていう魂胆なので廃棄前の中身入ってるピニャータもタグつけて飾ってるんですよ』
「それにしても、じゃない?」
『細かいことは言わないでくださいよ』
『上からの命令で、飾ってあるピニャータもここで買えばこの体験コーナーで割れるようにしてありますし』
『客の出入りが多いし、端には休憩コーナーもあるしで、全然人手が足りてないんです』
「ここ任されてるのにそんないい加減なこと言わないでください!」
『陳列したり迷子探すだけの人には分かりませんよ』
「もういいです、仕事してください」

さっきのアルバイトくんの方が頼りになったなと思いながらインカムをミュートにした

                      
                      

迷子のお知らせです

██市からお越しの██ ██くん

お母様がサービスカウンターにてお待ちです

繰り返します、██市からお越しの██ ██くん、
██くん、お母様がサービスカウンターにてお待ちです

                        
                        
「迷子の子、みんなで遊んでたりしててほしいな、こんだけ迷子いるってなると……」

特設コーナーと言え広告に載るぐらいの規模
力の入れようも他のものとは違っていた

インテリアのように棚に飾られているもの
床に並んでいるもの
忘れ去られたもの
破壊されて千切れかけのもの
同じデザインだがそれぞれ色が違っている

非常に愉快な光景だった
奥を見ると兄弟らしき男の子二人がピニャータを間にして座っている

「迷子のあの子もああやっているのかも」

微笑ましく思いながらも視線をあちらこちらにやり探していると客に問われた

「すみません、聞きたいことあるんですけど」
「はい、なんでしょうか?」
「このピニャータの中に入ってるお菓子って何味なんですか?」
「え?」
「食べれる味なんですけど不思議なんです、」
「不思議、とは……?」
「甘いんですけどビーフジャーキーみたいな味をしてるんですよ」
「甘いビーフジャーキー?」
「ミルクみたいな味したのもあるし甘しょっぱいのもあるし、ちょっと癖になる味なんですよね。ここで買えます?」
「ここの担当ではないので詳しくは分かりません、ですがこのコーナーで使われるピニャータの中身は当店で販売されてるあめ玉やチョコレートなどのお菓子なんですね」
「食品ロス削減のため廃棄前のお菓子を利用して詰め込む体験をしてもらっているので、」
「じゃあここで買えるんですか?!」
「恐らく、ですね。申し訳ございません」
「良いです!ありがとうございます。ちなみになんですけど飾ってあるピニャータの中身は?」
「そちらはあめ玉のみかと、」
「じゃあ私達が割ったのそっちかも」
「向こうのカウンターでお買い上げ頂けますよ」
「ありがとうございます」

また何かありましたらお近くの店員までお訪ねください、と言い残して迷子探しを再開した

ここの子供向け休憩ブースにもピニャータは飾られていたり吊るされていた。そこで子供3人が休憩しているように見えた

そして、ついに、やっと見つけた

「██ちゃん?」
「…………」
「██ ██ちゃんだよね?」
「…………」

後ろから声かけるのは流石に怖いのかもしれない 

「██ちゃん?」
「…………」
「██ちゃん?大丈夫?██ちゃん?」

忙しなく目が左へ右へと動いている
何かが起きていてもしかしたら、があるかもしれない

すぐにインカムのミュートを切った

「すみません!聞こえますか!」
『次はなんですか?』
「担架、お願いします!」
『は?』
「一応AEDも!」
『え?』
「だから、


迷子のお知らせです

██町からお越しの██ ██ちゃん

お母様がサービスカウンターにてお待ちです

繰り返します、██町からお越しの██ ██ちゃん、
██ちゃん、お母様がサービスカウンターにてお待ちです

                         

『すみません、迷子放送で何いってるのか聞こえないんですけど』
「とりあえずスタッフとAED!早くして!」
『あっ、はい…』

インカムからサービスカウンターへ連絡をいれる声が聞こえた

「██ちゃん、██ちゃん!しっかりして!」
「…………」

取り返しのつかないことが起きる前に私は子供を抱いてこのブースを足早に出て、買い物客が一休みをするようなソファーに寝かせた

「██ちゃん、██ちゃん!」
「…ん、っ…おかぁ、さん…?」
「気がついたのね、よかった…大丈夫?」
「…みんなは?」
「みんな?」
「いっしょに、あそんでたの…」
「どんな子達だったか言える?」
「んと………ね…、」

ゆっくりと目蓋が閉じていった

「ぇ、あ、██ちゃん?」
「…………」

反応がない

鼻に指をあててみると生暖かい息が指先に触れた


迷子のお知らせです

██市からお越しの██ ██ちゃん

お父様がサービスカウンターにてお待ちです

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██ちゃん、お父様がサービスカウンターにてお待ちです

    

「すみません!遅くなりました!」

担架を持った店員達が駆け寄ってきた

「今まで会話をしていましたが気を失いました」
「見た感じ脱水症状が出ていますね」
「██市から来た██ちゃんだと思うの、お母様にご連絡もしといて」
「分かりました」
「あと今まで何回か迷子の放送あったよね?一覧とか特徴のメモとかしてない?」
「それ頼もうと思って持ってきました」
「この子居たところにまだ何人か居たから見てくる」
「お願いします」

ぐったりとした肉体が担架に乗せられて奥に消えていった

メモを見る限り先程のピニャータ休憩ブースに居た子供達ではないかと推測した
そしてまたさっきの子のようになっているかもしれない

悪寒がしてピニャータ割り体験コーナーを走り抜けていった

そしてその先の休憩ブースの子供達は居らずすぐそこの衝立のあるテーブルつきの休憩ブースでコーヒーを飲んでいた親達もその皿も居なかった

「一緒に帰ったのかな、それだといいな」

                        
                         

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██ちゃん、お母様がサービスカウンターにてお待ちです


                         
                         

迷子のお知らせです

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██ちゃん、お母様がサービスカウンターにてお待ちです


                         
                         

迷子のお知らせです

██市からお越しの██ ██くん

お母様がサービスカウンターにてお待ちです

繰り返します、██市からお越しの██ ██くん、
██くん、お母様がサービスカウンターにてお待ちです


    

「いつもより多い気がするなぁ、連休だからって羽目はずしちゃだめだよ、親もなにしてんのほんと、」

先程もらったメモを見ながらインカムの先にいる店員へぼやいた

「迷子の捜索を再開します、できるなら人を割いていただけると大変助かります」

再びインカムをミュートにし背伸びをした
そして視線の先にかわいらしい包みのあめ玉を見つけた

「これ食べてがんばろ、わたし!」

真っ赤なあめ玉を口に放り込むと香ばしい焼き肉の味が広がった

イチゴかと思ったが全く違い肩を落としたが先程の客の言葉を思い出した
確かに癖になる味かもしれない

休憩ブースに背を向け次のピタゴラスイッチのコーナーへと向かった

飾られているピニャータの数が増えているのには気づけなかった

迷子のお知らせです

██市からお越しの██ ██ちゃん

お母様がサービスカウンターにてお待ちです

繰り返します、██市からお越しの██ ██ちゃん、
██ちゃん、お母様がサービスカウンターにてお待ちです


               

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