1200字掌編企画2019用Tale「出来立てのからだ」

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コーヒーって泥のような味がする。
そうは思わないかな?僕はこの味を昔からおいしいとは思えないんだ。けれど周囲は皆おいしいおいしいというね、だから君にも淹れさせてもらったよ。おいしいかな?財団に来て、僕は何度も不思議な光景を見た。今日が君の初めての大型任務と聞いたから、新人教育をした立場から少し話をさせてもらいたくてね。時間を空けてくれてありがとう。

さて、唐突な話だけれど僕は実は3度ほど死んだことがある。そして土橋博士は1度死んでいて、大和博士に至っては僕が知っているだけでも582回…死んでいるんだ。内3回は僕が殺してしまったのだけれどね。ああ僕は快楽殺人鬼ではないよ、えぇと、彼がそういう性質なのさ。まあ彼は少し違う気もするけれど……。うぅん、さらに言えば、そうだな、新人の君でも御先管理員…御先稲荷の事は知っているかな?彼女は今やこの世界のどこにも存在していないのに、何も残っていないのに、君は彼女のことを知っているね?それは何故だろう。

スワンプマンを知っているかい?とある男が沼にハイキングに行った。しかし不幸なことに男は沼のそばで突然雷に打たれて死んでしまう。恐ろしい話だね。その時驚いたことにすぐそばにもう一つ雷が落ちた。その雷は沼の汚泥と不思議な化学反応を引き起こし、死んだ男と全く同一形状の人物を生成してしまう。その男がスワンプマンだ。スワンプマンは死んだ男と全く同一の構造をしており――見た目や知識、感情や記憶までも全て死んだ男と同じ。まったく身も縮んでしまうような話だ。

実はね、僕たちは泥で出来ている。
こうして喋っている内容も、記憶も、感情も全て”たまたま”植え付けられたものに過ぎないんだよ。君は自分がいつ生まれて何をして生きてきたか記憶しているかもしれないが、それは「たった今」こういう会話をしたから考えられたに過ぎないんだ。

コーヒーおいしいかい?多分僕たちも同じ味がするよ。だから僕はそれが嫌いなのだけれど……。

僕たちは消費されるために生きている。君は泥を踏み潰すのに躊躇いはないだろう?僕たちが死ぬのもそんなもんなんだ。だから精々踏むのに惜しい造形品になってやろうじゃないか。僕が君に伝えたかったことはね、爪痕を残すのは難しいという事と、君が死んでも変わりはいるっていう事なんだ。うん、これが最後の新人教育だよ。

さあて、そろそろ時間だね。
外は雨が降っている、雷には気を付けたほうがいい。
いってらっしゃい。


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