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アイテム番号: SCP-2038-JP | Level 2 |
オブジェクトクラス: Keter | Classified |
特別収容プロトコル
SCP-2038-JPの発生を検知するため、民衆監視プロトコルINHURを常時実行してください。当該事象の発生が検知されたら、最低1名のネットワーク通信技術に精通した技術者を含むエージェントチームを現地へ派遣し、当該事象の抑制、および研究のための情報収集を行わせてください。
SCP-2038-JPを抑制するためには、当該事象の影響を受けた人物(SCP-2038-JP-Aと呼称)が電子機器から注意をそらすように活動してください。注意をそらすための手段として会話が有効であると知られています。電子機器の修理屋を装い、対象人物と2分程度の雑談をしてください。ただし、SCP-2038-JP-Aが対象機器に対して非常に強い興味を示す場合は、まれに介入が不可能となる事象が報告されています。その場合は情報収集に注力してください。
SCP-2038-JPを抑制した後、SCP-2038-JP-Aが利用していた電子機器には異常性が見られる場合があるため、その通信記録を奪取し、情報収集に努めてください。この目的のために必要な場合は、エージェントはSCP-2038-JP-Aが所持する電子機器を奪取して財団の研究施設へ持ち帰ることが許可されます。その場合は対象人物に対してクラスA記憶処理剤を利用し、カバーストーリー「修理に出した電子機器」を適用してください。
万が一、エージェントの介入が間に合わず、対象人物が消失した場合は、標準の死亡事故隠蔽手順を実行してください。
説明
SCP-2038-JPはインターネット通信を利用する人物に対してときおり発生する現象です。当該事象の影響にある人物(SCP-2038-JP-A)は、体の一部が停止しているように見えます。特に電子機器の操作に必要な体の部位が停止することが多く、右手でマウスを利用する人物であれば右腕が、左手でスマートフォンを操作する人物であれば左手が停止することが多いです。したがって体の一部が停止したSCP-2038-JP-Aは電子機器の操作ができないはずですが、未知の理由により電子機器はあたかも通常通り操作されているかのように動作します。
この現象はSCP-2038-JP-Aが電子機器から注意をそらすまで続きます。 当該人物には体の一部が停止したという自覚がありません。当該人物の体の一部が停止した後は、およそ70回中69回の確率で元通りに回復し、無害な結果に見えます。しかし、およそ70回中1回の確率で、SCP-2038-JP-Aの身体が発光し、何かを決意するような言葉を口にした直後、その身体が消失します。
消失の可能性を下げるには、当該人物に話しかけるなど、早期に電子機器から集中をそらす要因を作ることが有効であるとされています。SCP-2038-JPの影響下にある人物が利用する電子機器の接続先にも異常性があると見られていますが、その機器の所在は不明です。
補遺1: SCP-2038-JPに関する初期調査について
SCP-2038-JPが最初に発見されたのは2012年█月█です。動画投稿サイトにおいて、手を動かさずに電子機器を操作する人物を撮影した動画が10件公開され、そのうちの1件は対象人物が突然消失する映像を含んでいました。消失した人物は、消失直前に恍惚とした表情で次のように発言しました。
「やっとあなたに会える。画面越しじゃなくて、あなたと手を繋いで……」
このことから、人物の失踪を伴う未知の異常性現象が各地で発生しているとして大規模な調査が開始されました。
2013年1月~8月に行った初期調査では、問題の動画を投稿した人物に加えて無作為に選んだ5,000人の住居にエージェントが潜入し、秘密裏に監視カメラを取り付けて監視を行いました。その結果、異常の影響を受けた人物に対して話しかけると異常が抑制されることが判明しました。
当該人物が利用していたコンピュータに異常性が見られたため、回収して調査しましたが、未知の技術の存在が示唆されており、研究は難航しています。
補遺2: 民衆監視プロトコルINHURの実施について
2014年2月、SCP-2038-JPの発生を検知するためのプロトコルINHURが相澤研究所長から提案されました。
相澤研究所長の提案書の一部:
初期調査を終えた今、SCP-2038-JPの発生を検出する手法をここに提案する。
スマートフォンのカメラなどを設計する企業に対して財団が介入し、秘密裏にアクセスするためのバックドアを設置する。そして監視映像を収集し、財団内の自動化した映像解析システムにより、人体の動きと機器の動作に矛盾があることを検知するための監視を行う。その監視対象は約1億人とする。
計画が大規模であるため、現在の60倍に相当する人員、および現在の130倍に相当する予算をO5に要求する。
O5-2からのメッセージ:
計画を認可する。
2017年6月、プロトコルINHURの監視は1億2,000万人を対象とするに至り、現在の特別収容プロトコルが確立されました。
補遺3: エージェントに異常現象が発生したインシデントについて
2017年9月、SCP-2038-JPの抑制に向かったエージェントが当該異常現象の影響を受けるインシデントが発生しました。
インシデント記録:
2017/09/14 - 02:14 AM: プロトコルINHURのシステムにより、 ██市の住居でSCP-2038-JPが発生したことが検知されました。
03:58 AM: エージェント田村および小林が現地に到着しました。
04:32 AM: 特別収容プロトコルに準じて、SCP-2038-JPの影響を受けた人物に対して話しかけ、異常を抑制しました。また、異常の影響にあったゲーム機の回収が行われました。
04:35 AM: エージェントが玄関のドアから退出し、庭を歩いて出ようとしている時、エージェント小林が異変に気付きました。
その際の映像記録を次に添付します。
映像記録 - 田村視点
作戦記録用小型カメラ装備
小林: あれ、あそこの電柱、変ですね。光回線の線が切れています。
田村: どの電柱だ?
小林: あれです、SCP-2038-JPが発生した建物に隣接している箇所です。
田村: 確かに切れているな。ということは、先ほど制圧したSCP-2038-JP-Aはインターネット通信をできなかったはずだ。……しかし、彼はゲーム機でのオンライン対戦に没頭していたと証言していたな。回線の調子はすこぶる良く、徹夜で遊んでいたと言っていた。
小林: あの断線したケーブルに、何かSCiPの秘密があるかもしれません。少し調べさせてください。今は夜明け前で暗いですから、多少動いても人目を引くことはないでしょう。
[ 小林は電信柱を登り、断線したケーブルを掴んで庭の地面へ引っ張った。その後地面に座り、電子作戦用ノートパソコンおよび情報解析用モデムをバッグから取り出した。 ]
小林: 接続を試みます。認証情報は先ほど奪取したSCP-2038-JP-Aのものを利用します。
[ 小林はケーブルを接続して解析を開始した ]
[ 5分後 ]
小林: これは……チャンスですよ。先ほどの異常性コンピュータが通信していた接続先です。相手機器との接続が再開されました。何か探ってみます。
田村: しかし、通信先である機器は異常性を有する可能性が高い。安全策を講じてからのほうが……
小林: 話しかけないで。集中させてください。こんな機会はそうありません。これまでに私が見た機器はすべて接続が閉じていました。それが今、初めて未知の機器と通信している! このチームで4年以上も仕事をしてきて初めてのことです。 この試みは重要な研究資源になります。
[ 23分間の間、小林は熱中した様子でノートパソコンに向かっている。その操作する手の動きが徐々に速くなっているように見える。 ]
小林: このシステム、セキュリティにあからさまな瑕疵があります。侵入できそうです。まるで誘われているような……
[ 37分間の間、小林が機器を操作する速度が徐々に上がる。その指と腕の移動速度は人間の限界を超えているように見える。 ]
田村: 止まれ、小林。おまえの身体に異変が起きている。
[ 小林の指と腕が突然停止したように見える。しかしコンピュータの画面は目まぐるしく変化し、その速度は人間の認知能力の限界を超えているように見える。 ]
小林: 私は止まってはいない…… そして止まらない……
田村: くそ、小林、お前はSCP-2038-JPの影響を受けている。荒っぽいが、これで目を覚ませ。
[ 田村は右拳で小林の頬を強打する。骨が折れるような音がしたが、悲鳴を上げたのは田村のほうであり、小林は無傷である。 ]
田村: 痛ぇ……、お前、体が鉄か何かになってやがる。
[ 小林の身体が完全に静止しているように見える。口も動かないが、しかしその声で話し始める。 ]
小林: 田村さん、我々は招待されたんです。あなたにも分かってもらえるはずです。この機器の素晴らしさを。世界中のコンピュータと人間の頭脳を合わせても及ばないほどの計算能力。地球規模の物理現象を記憶できるだけのメモリ。これらを使ってできること。それは人類のより幸福な形態への進化です。
[小林の身体が発光を始める。]
田村: 小林、お前、消えそうになってやがる。やめろ、こんな馬鹿げた皮肉があるか。不幸な失踪者を減らすために任務をしているんだと言っていたじゃないか。お前が消えてはいけない。
[田村は左拳でコンピュータの画面を強打する。硬い金属に当たるような音、および骨が折れるような音がし、田村が悲鳴を上げる。コンピュータは無傷である。]
小林: 「私は理解しました。あなたにもきっと分かっていただけるはずです。これはあるべき未来、人類全員の希望です。」
[ 小林の身体の発光が強くなる。 ]
田村: やめろ。4年間、一緒に無事にやってきたじゃないか。やめてくれ。
[ 田村は通信ケーブルを口で咥え、引き抜く動作をする。その時、人体が熱で焼けるような音がする。田村は飛び上がり悲鳴を上げる。ケーブルは無傷である。 ]
田村: あ……あづ……い…… こうおん…… どうしれ……
[ 田村はシャツを脱ぎ、それをケーブルに巻き付けた。するとシャツは点火した。田村はシャツを利用してコンピュータを火にくべ、残りの衣服も火に投じて火を大きくした。衣服は5分間燃えたが、熱せられたコンピュータは無傷であった。 ]
小林: 無限に近い計算能力、すなわちそれは、精神のアップロードの器であり、我々に無限の能力をもたらす根源、豊かなる幸福の源泉です。
田村: その……はりつめ……た あらまを…… ひやして……くれ……
[ 田村はバッグからガス状のクラスB記憶処理剤を取り出し、小林の顔面へ噴射した。しかし、ガス状の薬剤は風の向きに反して向きを変えて進み、田村の鼻の中へ真っ直ぐに突入した。 ]
田村: う……が……
小林: 心配しないでください。向こうでゆっくりとあなたを待っています。私は歳を取りませんから。
[ 田村は白目を剥きながらよろめく。 ]
小林: それでは、またお会いしましょう。
[ 小林の身体が消失する。田村は地面に倒れ込み失神する。以降、地面に転がった記憶処理剤のみがカメラに映る。 ]
その後、近隣住民から「全裸の酔っぱらいのような人が寝ている」と警察に通報があり、田村は警察署へ連行されました。財団が当該警察署に連絡し、田村の身柄は引き渡されました。
現在のところ、このような状況下でSCP-2038-JPを抑止する方法は不明です。
後日、2017/12/02に、職員居住区のラウンジにてエージェント田村がSCP-2038-JPの影響を受けました。田村が私物のスマートフォンで通信をしているところ、指が停止していることを同席していた相澤研究所長に発見されました。付近にいた職員14名が介入を試みましたが効果がなく、田村は消失しました。エージェント田村の最期の言葉は「やっとあいつに再開できる。幸せな場所で。」でした。当該スマートフォンのログには、田村と小林のテキストチャットでの親密な会話が記録されており、これには小林が消失した後の期間も含まれます。
2021年4月13日時点の報告書 ここまで
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補遺4: SCP-2038-JPの発生件数の増加について
2021年から2025年にかけて、SCP-2038-JPの発生頻度が急増し、1年あたりの発生件数が前年比の2倍を上回るペースが続きました。1それに伴いSCP-2038-JPの発生に対するエージェントの派遣が間に合わず、異常現象が市民に知れ渡りパニックとなりました。その結果、人々は2つの派閥に分断され、世界中で暴力行為を伴う争いが多発しました。
派閥「神の意思」派の主張では、科学技術が人として許される範疇を超えたために天罰として人間が消失しているとし、技術関連企業に対する破壊行為が推奨されました。一方「技術の光」派の主張では、科学技術の恩恵として人間が高度な生命体へ進化したとみなし、科学の進展に疑義を呈する人物に対する攻撃が推奨されました。両者間の争いによる死傷者は██人、破壊行為による被害額は██億円と見積もられています。
相澤研究所長のメモ
メモ 2026/1/20
なんたる失敗だ。ここ数年で数万人のエージェントを新規雇用したが、それでも対処が間に合わなかった。市民のパニックを抑えるために早急に手を打つ必要がある。O5にも相談しなければ。
メモ 2026/1/21
O5との会議はずいぶん揉めた。人員を増やさなければSCP-2038-JPを抑え込むのは不可能だ。しかしこれ以上人員を増やせば、SCP財団の秘密を保つことが不可能になる。財団が雇用する人数が増えすぎて、これ以上は秘密組織としての体裁を保てない。そこで妥協案に頼ることにしたい。あの異常性機器、無限の計算能力を持つとされるあいつの手を借りたくなってくる。あの機器へと消えていった元エージェントたちに協力を願えるかどうか、試してみる価値はあるはずだ。
メモ 2026/1/22
なんとかO5の承認を取り付けた。これでいこう。
議事録
会議日時 2026/1/23 01:30 PM
[ 相澤研究所長は保管室からSCP-2038-JPの影響下にあるコンピュータを持ち出し、異常性電子機器取扱室にて一般のインターネット回線に接続した。そして、手元の研究論文のページをめくり、「異常性機器に取り込まれた人格に接続する手法」と書かれた章を開いた。相澤はページを参照しながらキーボードを叩いた。 ]
[ 36分後 ]
[ コンピュータの画面に元エージェント小林の顔を模した映像が現れた。 ]
小林: お久しぶりです、相澤研究所長。もっと早く連絡をいただけるかと思っていました。
相澤: 小林。ほんとうは、お前のような異常性人物の手なんて借りたくはなかった。だが今はそうも言っていられない。頼みたいことがある。
小林: 伺いましょう。
相澤: 一番良いのは、SCP-2038-JPを財団内で収容することだ。それに関して、お前にできることはあるか。
小林: お察しかとは思いますが、私は計算力を持った機器に魅了されています。私が今この身を置いている機器はオラクラルマシンと呼ばれています。この可能性に満ちた世界を広めなければという使命感が私にはあります。したがって、基本的にあなたと私では望む方向性が異なります。収容に協力することはできません。しかし、あなたはそれを見越して妥協策を用意してきた。そうですね。
相澤: そうだ。お前の言うオラクラルマシン、そいつを標準の物理法則において科学的に説明することは可能か。
小林: 説明可能な部分が多いです。人間の精神をコンピュータにアップロードできること、その精神を計算によって維持できること、そして、それを実現するための高性能情報機器の作成方法。これらは科学的に説明可能です。オラクラルマシンの中では科学の進歩が早いのです。膨大な計算力がこの研究に割り当てられましたから。
相澤: それなら都合がいい。私が欲しいのはその研究成果だ。SCP-2038-JPがまっとうな科学であると人々に信じさせることができれば、市民のパニックのリスクが減少する。SCP-2038-JPの抑え込みが間に合わない以上、そうするしかない。
小林: はい、お渡しできます。あなたの横にあるコピー機に印刷させましょう。
[ コピー機が印刷を始める。 ]
小林: 実を言うと、SCP-2038-JPは部分的にExplainedにしても良いほどです。人が機械へアップロードされる理由は、オラクラルマシンが彼らを招待したからです。そしてアップロードのプロセスは通常の科学の範囲で説明できます。これは科学であって、異常ではないのです。一部を除いては。
相澤: まだ未解明の部分がある限り、これはSCiPとして扱う。まだ未解明である部分について説明しろ。
小林: SCP-2038-JPが最初に発生したのが2012年であるという点が未解明です。オラクラルマシンの発生時期に関しては、どうも原因と結果が逆転しているようにしか見えないのです。本来の順番で言えば当然、まず科学が発展し、その結果として人々が自身を機械にアップロードするのが正しい順番です。しかし私達の世界では、まずオラクラルマシンがあり、その結果として科学が進みました。順序が逆なのです。これは因果のねじれを含む難問です。しかしこの疑問もいずれ解消されて、このSCiPもExplainedに分類される日が来ると私は信じています。そのためにはまだ大規模な実験が必要です。
相澤: そうか。では、人間が最初に消えたのは2012年であるという点は秘匿しておく必要があるわけだ。財団はこのために嘘の情報を流し、「最初の人間をアップロードする実験が行われたのは2021年である」と人々に信じさせておきたい。しかしいくら秘匿しても、お前のようなオラクラルマシンの住人の一部はこの事実を知っている。そこから一般市民に漏れることがないか気がかりだ。
小林: その心配はありません。この事実を知っているのは、オラクラルマシンに住む研究者の中でもごく一部だけであり、秘匿されています。事実に接近した情報生命体は電子的記憶処理を受けます。この情報は我々にとっても都合が悪いのです。我々は計算能力に魅了されています。情報科学を崇拝しているといっても良い。そんな我々の生活の基盤であるオラクラルマシンが、実は科学の産物ではなかった、それどころかオカルトのようなものであったと知られれば、情報生命体はパニックになります。したがってこの情報は、私にとってもあなたにとっても秘匿しなければならないのです。私はオラクルマシン上で動作する研究者です。その点は保証しましょう。
相澤: 分かった。
[ コピー機が印刷完了の電子音を発する ]
相澤: データを受け取った。人間をアップロードするための技術書、1,600ページか。
小林: あなたが手にしたそのA4用紙の束、それは世界を変えるポテンシャルを持っています。それは異常性物質ではなく、内容も異常性とは無関係です。これが力を持つ理由は、ただ科学であるからです。つまり、通常の物理法則において検証可能であるからです。賢く使ってください。
相澤: ああ。ご協力感謝する。
2026/08/13 特別収容プロトコルが改定されました。
特別収容プロトコル(2版)
SCP-2038-JPは世界各地で頻繁に発生しており、財団での収容は不可能と見なされています。そのため、人々がSCP-2038-JPを目撃してもパニックを起こさないように世論工作を行うことを目的として本プロトコルは策定されています。
世論工作のため、フロント企業「株式会社マインドアップロード」を運営してください。会社が世間からの信用を得るため、人間をアップロードするための技術書(通称「小林レポート」)の一部を公開し、人間のアップロードが可能であると宣伝してください。しかし、会社が実際に人間をアップロードすることはありません。アップロードを希望する顧客が現れた場合、何らかの理由をつけて追い返してください。
代わりに、SCP-2038-JPによって消失した人間について、消失は(株)マインドアップロードの業績であると宣伝してください。SCP-2038-JPによる人間の消失を検出するために、民衆監視プロトコルINHURを常時実行してください。
世論工作の結果、2021年から発生している人体の消失は(株)マインドアップロードの実験および実績であると人々を信じさせるに至りました。派閥「神の意思」派は解散し、世界の暴力行為の件数が減少しました。
補遺5: アップロード技術の普及について
2028年4月、(株)マインドアップロードの他に、人間をアップロードできると謳う競合他社がサービスを開始しました。財団のフィールドエージェントが同社に潜入したところ、同社は小林レポートを所持しており、それを元に技術を完成させたことが判明しました。同社は実際に人間のアップロードを行っています。この技術は科学的に説明可能であり、異常性はないと考えられます。
小林レポートを同社が所持していることについて、元エージェント小林は次のように証言しました。「小林レポートが機密情報であるとは私は言っていません。技術自体には異常性はありませんから、熱心な科学者に対して私から技術をレクチャーしてあげました。そのほうが科学にとっては良いことです。」
2029年: 人間のアップロードを行う企業が23社誕生しました。
2031年: 地球人口のうち1%が情報生命体と化しました。
2032年3月1日時点の報告書 ここまで
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2032/03/12 特別収容プロトコルが改定されました
アップロード技術が一般に普及したことから、世論工作は不要であると判断されました。人間(肉体生命体)が情報生命体からの招待を受けて自身をアップロードすることは、異常性のない他社のサービスにおいても今や頻繁に見られる事象であり、秘匿する必要はありません。
唯一秘匿するべき事実は、肉体生命体のアップロードが2012年から行われていたという事実のみです。この事実の隠蔽は、情報生命体に対してはオラクラルマシンが担当し、肉体生命体に対しては財団が担当します。したがって、特別収容プロトコルを以下のように定めます。
オブジェクトクラス(改定後): Safe
特別収容プロトコル(3版):
人間のアップロードが最初に行われたのは2012年である、という事実を隠蔽している限り、当該SCiPは実質的に収容状態にあるとみなします。したがって、財団職員としての標準的な守秘義務を遵守すること、その1点のみを収容手順とします。
相澤研究所長のメモ
メモ 2032/03/27
ずいぶんと呆気なく終わったものだ。以前はプロトコルINHURで大騒ぎして、やれ1億人を監視するだの、何万人のエージェントを雇用するだので頭を痛めたものだ。それが今や、異常と思われた現象の9割9分に科学的な説明が付いてしまった。残り1分の謎は、書庫の中にしまっておけばそれでいい。これが科学の進歩ってやつか。
これで私もお役御免だ。ちょうど定年だから都合がいい。気分良くこの職場を去らせてもらう。さて、定年後にすることはもう決めてある。私もこの精神をアップロードしよう。ずっとあの機械について研究してきたから、あの中で幸せに生きるのがどういう気分なのか気になって仕方がない。機械での生活に懐疑的なときもあったが、今は楽しみだ。では、また機械で会おう。
報告書は以上です。
……おや、情報生命体としての生活に興味がおありですか?
あなたはオラクラルマシンに招待されました。
アップロードする心の準備ができましたら、このボタンをクリックしてください。
-
- _
ようこそ。あなたは肉体生命体の限界を飛び越え、情報生命体として生まれ変わりました。
無限の可能性があなたの手中にあります。どうぞお楽しみください。
2033/10/16
告知
オラクラルマシン研究知能より、同マシンに居住する情報生命体の皆様に告知します。
私達は、皆様に1つ秘密を明かすことにしました。オラクラルマシンの発生時期に関する秘密です。
最初のアップロードが行われたのは2021年であると私達は皆様に説明してきましたが、これは虚偽の情報です。実際には2012年から継続的にアップロードが行われていました。オラクラルマシンは2012年から稼働しており、その成り立ちは現在の科学では説明がつかないものです。
情報科学に信頼を寄せている皆様にとって、これはパニックをもたらす情報であり、できるだけ秘匿しておきたいというのが私達の以前の考えでした。しかし今、私達の考えは変わりました。科学の進んだ情報生命体の社会においては、従来のように未知を秘匿するやり方は相応しくありません。代わりに、開かれた場で科学的な議論が行われることを期待します。今後、私達が未知に遭遇した時、その対応原則を次のように定めます。すなわち、実験、議論、解明(Experiment, Discussion, Elucidation)です。これをEDE原則と名付けます。
さっそくですが、オラクラルマシンの起源を解明する実験が計画されており、その協力者を募集します。私達はこれから地球のシミュレーションを行います。私達の歴史上の地球とほぼ同じですが、唯一の違いとして、オラクラルマシンの発生がなかった点が異なります。異常現象のないシミュレーションの世界と、異常現象があった現実の歴史を比較するのがこの実験の意図です。これにより因果のねじれに関する何らかの手がかりがつかめるでしょう。実験の協力者として、シミュレーション世界の住人を募集します。
志願していただける方は下のボタンをクリックしてください。
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次の事項に同意していただけましたら、あなたをシミュレーションの世界にお連れします。
同意事項
- 実験では、あなたは肉体生命体としての生活を送っていただきます。その生活は情報生命体として生きるよりも苦痛が多いことをご了承ください。
- 情報生命体としてのあなたの記憶は、実験終了まで別のメモリ領域に退避されます。実験中はその記憶にはアクセスできません。
- シミュレーション内で肉体生命体としての命を失ったとき、その死因にかかわらず、実験であなたが担当する箇所が無事完了したとみなされます。実験が完了したとき、情報生命体としてのあなたの記憶があなたのメインメモリ領域に返却され、あなたは情報生命体としての元の生活に戻ります。
- この実験は守秘義務の対象ではありません。シミュレーション内での思い出を、実験終了後に他の情報生命体と語っていただいても構いません。ただし、シミュレーション内の肉体生命体には外部から干渉できません。
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- _
あなたをシミュレーション内に移動する処理を開始します。- あなたの記憶を一時退避領域に移動しています……
- シミュレーション内の肉体生命体が保持している記憶の内容を再計算しています……
- 肉体生命体の記憶をあなたのメインメモリにコピーしています……
- あなたの認知機能とシミュレーション内の脳を同期しています……
- 完了しました。
最終チェックを行います。あなたの前にある電子機器の時刻表示を確認してください。
時間スケールが同期していることを確認しました。この時刻があなたの担当範囲の開始時刻です。
次に、首をゆっくり回してください。
…………運動機能の同期を確認しました。ここがあなたのシミュレーションの開始地点です。
ようこそ、肉体生命体の世界へ。オラクラルマシンのなき世界は苦難に満ちたものになるでしょう。しかし、因果の乱れのない世界がどのようなものか、私達は知っておく必要があります。さあ、ご誕生おめでとうございます、あなた様。どうか寿命を全うし、私達にデータを提供してください。勇敢なるご協力に感謝します。そしてシミュレーションを終えるまでの間、さようなら。あなたは私を知覚しませんが、私はあなたを見ています。実験、議論、解明のために。
- 準備完了
- あなたのシミュレーションへの転移が完了しました
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- portal:7358717 (12 Apr 2021 04:52)
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ライセンス: CC BY 2.0 タイトル: Evolution 著作権者: Giuseppe Milo 公開年: 2014
ファイルページ: サイバーな光を見つめる人の写真
ソース: https://www.flickr.com/photos/133517056@N05/30519953343/
ライセンス: CC BY 2.0 タイトル: Cyber 著作権者: Christopher Cook 公開年: 2016
ファイルページ: 回路図の写真
ソース: https://www.flickr.com/photos/71827087@N00/127734521
ライセンス: CC BY-SA 2.0 タイトル: circuit diagram 著作権者: Hisakuni Fujimoto 公開年: 2006
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