調査記録XXXX 日付20██/██/██
目的: SCP-XXXX-JP中心部の調査
調査員: D-8900(通信用のマイク、イヤホン、アクションカメラと終了用首輪型小型爆弾を装着)
備考: 精神状態が安定しており、財団にある程度の忠誠心があるDクラス職員。SCP-XXXX-JPの異常性については把握済み
<記録開始>
[D-8900がSCP-XXXX-JP内部に侵入。D-8900が白と黒のみの色調で構成される]
D-8900: 聞いてはいたが本当に色が失われるとはな。モノクロ写真の世界に来たみたいだ。
██博士: ええ。ではそのまままっすぐヤマザクラまで向かってください。
D-8900: なあ、調査だけだよな。いきなり首を撥ねたりしないか?
██博士: あなたが不審な行動をしたり、我々の命令に背かない限り首は撥ねません。
D-8900: そうか。ならいいんだよ。
[侵入から4分後]
D-8900: …ここの空って美しいと思うか?
██博士: 私はそうは思いません。白黒で出来た空なんて美しくありませんしね。やはり青い空に限ります。
[D-8900が足を止め、辺りを見渡す]
██博士: どうしましたかD-8900?中心に向かってください。
D-8900: この中に俺が入ってから、なぜかSCP-XXXX-JPの外の景色が忌まわしく、厭わしく、汚らわしく思えるんだ。まるで完成された美術作品を素人の手によってはちゃめちゃに色を塗られたような気分だ。
██博士: D-8900?我々の命令に従ってください。
D-8900: …。
[またD-8900が中心に向かって歩き始める。]
D-8900: なあ、██博士はこれがなんの色に見える?
[D-8900がSCP-XXXX-JPの中で自生している植物の葉にカメラを向ける。]
██博士: 黒にしか見えませんが。
D-8900: そうか。
[中心部に到達するまでの執筆することもないため割愛]
D-8900: 桜の木と石碑のところに着いたぞ。
██博士: では早速石碑に何か書いてあるかどうか確認してください。
[D-8900が突如泣き始める]
D-8900: 俺達の心からすらも失われていた色をあいつ等は取り戻しやがった…。
██博士: どうしましたかD-8900。
D-8900: 桜の目の前まで来て確信した。俺はこの景色を見るために生きてきたんだ。
D-8900: これが本当の桜だ。これが本当の日本人の魂だ。俺達は何者かに誤魔化され続けてたんだよ!
██博士: 落ち着いてくださいD-8900。私たちの桜はこんなにも薄暗く、黒と白だけで出来た淡白なものじゃありません。
D-8900: なんだと!!お前この桜を愚弄するのか!?
D-8900: ここに入ってから心の奥底でなにかが訴え続けてた。俺じゃないなにかが、俺より先に生きていた者の無念が、日本人の悲鳴が、俺に代々受け継がれてきた景色を見させてくれた。
[D-8900が何かを呟きながら号泣し始める]
██博士: D-8900。これ以上命令に背くつもりならあなたを終了させる必要があります。
D-8900: 俺は友人を失いながらも、この景色を見るために生き永らえたんだ。あの銃撃の雨を、地雷原をくぐり抜けてようやく日本に帰ってきた。
D-8900: 帰ってきたらどうだ。くそったれの色がついた景色が俺の目の中に飛び込んできやがった。俺が心で描いていた桜の景色はもう存在しなかった。死ぬほど悔しかったよ俺は。
D-8900: 俺は渋々、故郷で一番デカい桜の木の石碑にあいつらの認識票を巻いたよ。そしたらどうだ!!あいつらは色を取り戻しやがった!!
██博士: D-8900。応答してください、D-8900?
[D-8900は非常に錯乱しており、██博士との会話が困難になる]
██博士: D-8900、非常に残念です。
[終了用首輪型小型爆弾を起爆]
<記録終了>
追記: これ以上の調査は不可能だと判断しD-8900を終了させた。D-8900は如何なる精神病やうつ症状もなく、軍人経験も確認されていない。
補遺XXXX-1:今回の実験結果からSCP-XXXX-JPには内部に侵入した人間を興奮状態にさせ、虚言を発せさせる異常性があると考えられる。またD-8900が中心部に到達した際に、石碑に認識票が巻かれているのを発見。石碑の文字の確認作業と認識票に書かれてある名前の調査は次の実験で行うことが██博士によって決定された。
調査記録XXXX-2 日付20██/██/██
目的: 石碑の文字の確認。認識票の名前の確認。
調査員: D-1772(通信用のマイク、イヤホン、アクションカメラと終了用首輪型小型爆弾を装着)
備考: 体力のあるDクラス職員より選抜。予めD-1772にミーム予防措置を行う。
<記録開始>
██博士: D-1772、あまり時間がありません。早急に中心部に向かってください。
D-1772: おうよ。
D-1772: っでもよ、結構傾斜きついぜここ。
[重要度が低いため割愛]
D-1772: ひっつき虫って知ってるか██博士?
██博士: 調査に必要でないことを喋らないでください。
D-1772: なんだよせっかく調査に関係あることだっていうのによ。
██博士: どういうことですか?
D-1772: ひっつき虫って呼ばれてるこのオナモミ、実はもう絶滅しかかってんだ。
██博士: いや、よく見かけますが。
D-1772: そりゃあオナモミじゃねぇ、オオオナモミだ。
D-1772: 捕まるまで教師やってたから分かんだよ。ここら辺一体絶滅しかかってるはずのオナモミがわんさか生えてるぜ。
D-1772: それだけじゃねぇ。白黒で分かりづらいが、外来種がほどんどいねぇ。俺らに馴染みのある外来種のセイヨウタンポポすら見かけない。
D-1772: もし大学生の頃にここに来れたら在来種についてのレポート書くのが随分楽だったのにな。
██博士: なるほど。
[中心部到達まで省略]
D-1772: 着いたぜ。
██博士: では、カメラで石碑の文字と巻かれてある認識票を映してください。
D-1772: これでいいか?
██博士: はい。石碑の文字は分かりました。
[白黒であるためカメラに映る認識票の文字が識別不能]
██博士: D-1772。認識票の文字を読み上げてください。
D-1772: このドックタグ、文字が擦れて読めねぇ。
██博士: なるほど、では認識票を持ち帰ることは可能ですか?
D-1772: ああ、多分いける。
D-1772: よし取れた。
██博士: ではすぐにSCP-XXXX-JPから帰還してください。
[特筆するべきものがないため省略]
██博士: もう少しですD-1772。こちらから視認できました。
D-1772: なぁ。もう少しここにいてもいいか?
██博士: その要望は認められませんD-1772。今すぐ帰還してください。
D-1772: なんかここにいて、大切なものを思い出した気がするんだよ。
██博士: D-1772。もし、命令に背くならあなたの首に装着されている爆弾を起爆することになりますが。
D-1772: やってみろ██博士。
D-1772: 俺はこの景色さえ見られれば満足なんだ。まるで曇った空が晴れていくような気分だ。
D-1772: ああ、私が見たかった桜。同胞が私をここに連れてきてくれたことに感謝しかない。
D-1772: 本当に、本当に、私達の桜は綺麗だ。
[D-1772が静かに泣き続ける]
██博士: 仕方がない。あなたを終了します。
D-1772: ██博士。私達はどんなに永遠とも言えるような時間を掛けたとしても、必ず失われた全てを取り戻します。
[終了用首輪型小型爆弾を起爆]
<記録終了>
追記: D-8900に似た症状がD-1772にも現れた。どうやら興奮状態だけでなく、SCP-XXXX-JP内に留まろうとさせる異常性もあるようだ。比較的外部に近い距離で起爆したため、ミーム予防を受けた別の職員が回収した。
補遺XXXX-2: 石碑には 桜、永遠に と書かれていた。回収された認識票はSCP-XXXX-JP外であっても色彩は消失したままであった。認識票の多くは大日本帝国満州軍のものであり、70年以上経過しているのにも関わらず回収された全ての認識票は一切の損壊がなかった。通常、旧日本軍には個別認識票がなく将校以外は名前が記入されていない。だが回収された9枚の認識票には全て名前が記入されており、後から誰かが裏に名前を彫ったのだと考えられる。下記に名前と、記入されている場合は所属部隊を記入する。
田中 正一 |
隷歩 ██ 大 3 番 137 |
佐藤 茂 |
隷歩 ██ 大 3 番 137 |
清水 勇 |
隷歩 ██ 大 3 番 137 |
池田 武雄 |
隷歩 ██ 大 3 番 137 |
春日 博 |
隷歩 ██ 大 3 番 137 |
根岸 武二 |
隷歩 ██ 大 3 番 137 |
勝又 茂吉 |
記入なし |
白崎 秋子 |
記入なし |
武田 新平 |
記入なし |
9枚の認識票はサイト81██の低危険物収容ロッカーに保管されます。
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サイト81██でSCP-XXXX-JPの収容違反が発生。サイト81██の8%が色彩を奪われました。SCP-XXXX-JP内部にあった9枚の認識票がSCP-XXXX-JPの発生源であると判明。今後9枚の認識票をSCP-XXXX-JP-1とします。低危険物ロッカーの外側にSCP-XXXX-JPが発生し、通りがかった財団職員3名が興奮状態へと変化。そのまま3名の財団職員がSCP-XXXX-JP-1をサイト81██外へ運搬し、周辺の色彩を奪いながら逃走。収容違反から27分後に機動隊が3名の財団職員を拘束し、SCP-XXXX-JP-1を元のSCP-XXXX-JPの石碑に巻き付けました。拘束した職員にBクラス記憶処理をしました。その後職員3名は問題なく職場に復帰しましたが、約二か月後に全員が鬱症状を発症しました。現在職員3名に財団によるメンタルケアを行っています。SCP-XXXX-JP-1の回収を指示した██博士は他のSCPオブジェクトへと割り当てられました。今後SCP-XXXX-JP-1の回収を禁止します。
一連の騒動をサイト81██管理者が財団本部へ報告。本部がSCP-XXXX-JPを担当する職員を選抜しました。
一度投稿して見るも無残な姿になった記事です。
投稿した際コメントを何も貰わず、改善点が分かりません。
批評をお願いします。
前提として、これまでにもたくさんのSCP-8900-EXを題材とした記事が書かれ、その多くが低評価で消えています。そのため、これを題材とするには新規性がかなり重要なものとなっています。
現在の記事の内容では、白黒に見える場所という段階で読者からすれば8900-EXが関係するんだろうなと推測でき、記事のオチも実際その通りなため、期待を上回れていないと感じました。
サンドボックス3オペレーターです。
しばらく更新が見られないため、この下書きのステータスを「批評中断」にしました。下書き批評を受ける準備が整ったならば、お手数ですが、改めて下書きのステータスを「批評中」に変えていただくようお願いします。