tale下書き「思い出さないで」

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「記憶処理を行いますか?」

収容違反等が原因で家族や大切な人を失い、心神耗弱となった職員へ向けてよくされる提案。

「しかし、貴方はその人やその人に関する思い出全てを失います。」

ほとんどの人の答えは"No"だ。

どんなに悲しかろうが、どんなに絶望しようが、大切な人と共に過ごしたかけがえのない記憶は失いたくない。

思い出とは、その人と過ごした証明であり、その人が生きていたという事実であり、一緒に過ごした時間そのものなのだから。


…でも、私は失わねばならなかった。

SCP-████-JPの収容違反。

私はそれに巻き込まれた。

SCP-████-JPは暴露者に自分の一番かけがえのない人に関する認識災害を発生させる。その認識災害の行き着く果ては自らかけがえのない人を殺すという悲しき結末である。

記憶処理をして、その人に関する記憶を一度全て失えば、その認識災害は排除できる。

だから、私は即座に記憶処理を受けさせられた。

私は、自分の恋人の記憶を失った。

恋人と一緒に写っている写真を見るまで、私に"恋人がいた"ということすら知らなかった。

名前も顔も全く覚えていなかった。

一緒に写っている写真を見ても、そこにいるのは見知らぬ他人だ。

無邪気に笑っている私。

その横で一緒に笑っている誰か。

私と手を繋いでいる誰か。

私と一緒にピースしてる誰か。

写真の中の私はどれも笑顔だった。

…もうその笑顔に辿り着くことはできないのだろうか。


ぽっかりと空いた心の穴。

失ってしまった愛の欠片。

私の頭を埋め尽くす空虚。

こんな感情を抱けるということはきっととても素晴らしい人だったのだろう。

「会いたい」という想いが強くなる。

しかし、私は彼と会うことをまだ許可されていない。

認識災害の経過観察の為に、まだ入院を続けなければいけないらしい。

これは仕方のないことだ。

いつか会える日が来るのだから我慢だ。我慢。

あの写真の先を、新たな1ページを、思い出を、紡ぐ。

そんな日を想像しながら、今日もベッドに体を預ける。

会えたら…最初になんて話しかければいいんだろう?

どんな反応されるかな…。

彼を心配させてしまっているかな…。

彼は私と同じ財団職員なのかな…。

会えたら…会えたら…会えたら…。

夢は大きくなる。希望は限界を知らない。私は自然と笑顔になる。


夢を見ていた。

夢の中であの人が手を振っている。

あの人と一緒に桜並木の下を歩く。

私はありし日の笑顔を取り戻す。

私は幸せだ。

とてもとても幸せだ。

このまま夢を見ていたい。

夢を見ていた。

夢の中で

私は…。





事案████-JP: 20██/██/██、サイト-81██にてSCP-████-JPの収容違反が発生。█人の職員がこれに暴露しました。

暴露者の一人である環月かづき博士は暴露後の症状が最終段階まで移行。最終的に同サイト内に所属していた███研究員1を殺害しました。


現在は暴露者全員に記憶処理が施され、SCP-████-JP由来の認識災害は完全に消滅しています。環月博士への対応に関しては審議中です。


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