悪コン出展予定作品 「悪い事をするとバチが当たる」

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アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe Neutralized

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは異常性を消失したと見做されています。SCP-XXX-JP-Aは生物サイト-8102の低温貯蔵ユニット内に保存されています。

説明: SCP-XXX-JPは長野県██に位置する森林です。人間(以下、被験者)がSCP-XXX-JP内部の特定地点に侵入した場合、SCP-XXX-JPが活性化する可能性があります。

活性化事象が発生した場合、被験者は即座に消失します。消失から数時間後、被験者はSCP-XXX-JPへ侵入した地点に再出現します。被験者は消失中の記憶を保持しており「ずっと森の中で迷っていた」「厳かな声に導かれて脱出する事ができた」といった証言を行っています。1

収容初期段階の時点でSCP-XXX-JPの活性化が確認できなくなったため、異常性の詳細は判明していません。

探査記録XXX-JP-2 - 日付2011/02/21

以下はD-3157による探索試行の音声転写である。D-3157の消失が確認された時点で相互通信が不可能となったため、実験を担当した白蔵博士の音声は省略している。

[記録開始]

D-3157: 景色が変わった。

D-3157: ああ、でも森の中にいるのは変わってない。でもなんか、そうだな、ぐにゃぐにゃした感じに見える。

D-3157: おい?

D-3157: これからどうすりゃいいんだ?

D-3157: (舌打ち)

(D-3157は無言になる。足音が続く)

D-3157: クソが。

不明な声: これもお主の行いが招いた事。

D-3157: 何?

D-3157: 何だよおい。出てこい。おい。

不明な声: (笑い声)

D-3157: 殺すぞこの野郎。

不明な声: 今暫く迷い続けるが良い。 (笑い声)

(足音が続く)

不明な声: 哀れな男である事よ。

D-3157: (舌打ち) どうなってんだ?

不明な声: どうもせぬよ。

D-3157: どうにかなってるじゃねえかよこの野郎。おい。

不明な声: 一寸教えてやったまで。道に迷うは心の迷い。犯した罪から目を逸らすゆえ、正しき道が見えぬのだ。

D-3157: はあ?

不明な声: 世界は何も変わっておらぬ。先までお主が正しき道と、信じたものこそ虚構なり。これこそ罰と心得よ。

D-3157: お前馬鹿じゃねえの?

不明な声: 何と? (数秒の沈黙) 何故にそのような事を申すか。

D-3157: んな訳ねえからだよ。何が心だよボケ。仮にそれで目がおかしくなったとしたって機械は壊れたりしねえだろ馬鹿。しかもありきたりすぎるんだよ心とか。今時その辺のガキだってもうちょっとマシな理屈考えるぞ。いつの時代の心理学者だお前。

不明な声: お主は、この──。

D-3157: 大体さあ、悪い事してる奴なんか世の中には死ぬ程いるだろうよ。普通に犯罪とか世界中にめっちゃあるし、テロとか戦争の首謀者とかもう滅茶苦茶罪人じゃねえの? 知らねえけど。そいつら別にバチ当たってねえし。普通に生きてる奴いるし。まあ俺も悪い事はやったけどさ、これは一応科学的な? 調査? なんだよ。法律上問題ないし、科学的なやつだから、今俺は別に悪い事やってねえし。ていうかもうちょっとで月末だから。もうすぐ無罪になるから俺。

不明な声: お、お主を諭そうなどと考えるのではなかったわ。去ね。疾く去ね。

D-3157: あーうるせえ。うぜえよ。

不明な声: こ──この罰当たりめ。あ。

D-3157: 何だこいつ?

(鈍い音がする)

不明な声: 痛、痛い痛い痛い。

D-3157: いやうるせえから。さっさと死ね。

不明な声: ごめんなさい。もう悪戯しません。もうしませんから。

D-3157: 死ねよ。

不明な声: ごめんなさい。ごめんなさい。やっぱり悪い事するとバチが──。

[記録終了]

この時点でD-3157は再出現した。また、D-3157の脚元にはキタキツネ(Vulpes vulpes schrencki)の死骸が転がっていた。オブジェクトとの関連性を疑われ、死骸はSCP-XXX-JP-Aに指定された。また、D-3157の検査を行ったところ異常性は発見されなかった。2011/03/02、当該職員は記憶処理の後通常業務に復帰した。

本探査以降、40回以上の実験を行ったにも関わらずSCP-XXX-JP活性化事象は発生しませんでした。2011/04/21、SCP-XXX-JPはNeutralizedに再分類されました。



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人事課の山岡です。返信が遅れて申し訳ありません。ご相談いただいた件についての対応ですが、正直なところ、難しいと思います。少なくとも書類を受け取ったのが私ならば首を縦に振る事は無いでしょう。

まずは、ひとつ指摘させてください。博士はSCP-1592-JPの異常性はSCP-1582-JP-Aに由来するものであり、D-3157の行動がオブジェクトの無力化という結果に繋がったと考えておられるようですが、それは確定的なものではありません。我々は知性を持つ動物の類を数多く収容していますが、それと同じように異常な空間や、そういった空間へと繋がる場所も収容しています。SCP-1582-JPの異常性の主体が森とキツネのどちらにあったのかは最早分かりません。個人的には博士の説に説得力はあると感じます。しかし、我々は科学の徒なのです。既に確認のしようがない推測を事実であるかのように語る事は可能な限り避けるべきでしょう。

本題に入ります。Dクラス職員の職務割当──とりわけ探査実験に利用する場合──の見直しですが、前述の通り、これは難しいです。仰られる事は分かります。直接指示が届かない状況においては帰還を優先し、不明な存在への接触は避ける。職員の生命の為にも遵守されるべき事前指示をD-3157は無視しました。そして結果的にオブジェクトは無力化されました。SCP-1592-JPとSCP-1582-JP-Aの関係はどうあれ、この結果自体は確かなものです。こうした事態は本来防止されなければなりません。

しかし、このような探査実験中のDクラス職員が独自に行った行動によってオブジェクトが無力化された(と、考えられる)ケースは過去にどれだけあったのでしょうか? ええ、全く無かった訳ではないです。D-14134に命じられたのは内部調査と帰還でした。彼はそれを守った訳ではありません。無論D-14134とD-3157を同列視する気はありません。私にはSCP-1582-JP無力化案件の前例、類例を他に見つける事ができなかった、というだけの話です(これは単に私が研究職ではない故の知識不足なのかもしれませんが、それでもそう多くはないだろうと思います)。

我々は、それが必要な事であるのなら、未知の異常空間に人間を送り出します。送り出された者は断片的な情報を我々に伝え、そして、概ねそのまま帰ってきません。あるいは我々にとって危険なものを持ち帰ろうとしたり、それ自体が危険なものと化したりします。その場合、例え生きているのだとしても、彼らの帰還は許されません。

ある程度の安全が保証されているならともかく、基本的に異常空間の探査は生命の危機に関わる可能性が極めて高い職務です。万全な準備を整えたベテランの機動部隊が全滅する事も珍しくはありません。事前のデータがないのならば尚更です。殆ど知られていない異常空間であり、人間が侵入する事で活性化するSCP-1582-JPのデータ収集の為に、数多くの職員の中からD-3157は選出され、実験に参加しました。

Dクラス職員は道具ではないし、個性のないクローン人間でもありません。習得が難しい技術を持つのならそれは生かされるべきですし、一般社会においてはハンディキャップとされる身体的、精神的な性質も、時にはオブジェクトの収容に有効な場合もあります。年齢や性別、過去の経歴、出身地によってオブジェクトの異常な影響を受ける事もあれば、回避できる事もあります。Dクラスの無用な消費を避ける、というのは当然ですが、その上で、希少な人員は(比較的)丁重な扱いを受けるでしょう。D-3157にあるものは複数の殺人、傷害、動物虐待で逮捕された経歴であり、ないものは更生の余地、倫理観、財団に対する忠誠でした。つまるところ、財団においては特筆すべき部分のない人材でした。

実験に参加したのがD-3157のような人物でなければ、SCP-1582-JPの無力化は避けられたのかもしれません。しかし異常な状況下でも冷静さを保ち、指示が届かずとも独自に帰還の方法を模索し、財団にとって有用な結果を得る事が期待できるようなDクラス職員は多くありませんし、そういった職員の喪失リスクは、そうでない職員のそれよりも大きいのです。

私はD-3157を責める気にはなれません。唐突に指示が途絶え、出口のない空間を彷徨い、その最中に遭遇した異常現象の元凶らしき存在が自分よりも小さなものだった時、どうするのか。私が彼の立場に立たされたとして、絶対に彼と同じ行為をしなかったとは言い切れません。博士の監督が行き届いていなかった、というのも結果論です。あなたが責任を取る必要はありません。

今回の件は、誰が悪かったのか、などと言えるような話ではないと思うのです。そして、例え我々の行為が悪事なのだとしても、自らに罰を下す意味はないでしょう。

乱文失礼しました。あなたの復帰をお待ちしています、白蔵博士。


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