SCP「ニンゲンホイホイ」

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文字数: 5158

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クレジット

タイトル: SCP-XXX-JP - ニンゲンホイホイ
著者: ©Jiraku_Mogana
作成年: 2018

SCP-XXX-JP

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP-1内に存在するGPS装置から発信される信号を観測してください。位置の変更が認められた場合、転移先に複数名のフィールドエージェントを派遣し、SCP-XXX-JPの周囲に工事用シートに偽装した隔壁の設置とSCP-XXX-JP内部への500円硬貨複数枚の投入を行ってください。民間人によるSCP-XXX-JPの視認を防ぐため、カバーストーリー「地中工事」を適用し、必要ならば近隣住民や目撃者にクラスA記憶処理を施してください。

説明: SCP-XXX-JPは日本国内で一般的な外見をした自動販売機です。電力の供給源が無いにもかかわらず、SCP-XXX-JPは通常の自動販売機と同様に稼働します。その内部構造や販売している商品に異常は見られません。ただし、茶に分類される商品はこれまで販売が確認されていません。SCP-XXX-JPは不定期に消失し、埼玉県内のランダムな場所に再出現します。また、デザインは出現場所付近の景観や近隣の自動販売機設置業者の取り扱っている自動販売機に合わせたものへと変化します。転移が起こる以前に受けた損傷は移動後に回復し、取り付けた物体は転移しません。そのためSCP-XXX-JPの固定や下記の異常性に対する継続した無力化の試みは全て失敗に終わっています。

SCP-XXX-JPをその1 m以内で直接視認した対象(以下曝露者)は硬貨を取得したいという強い欲求を抱きます。曝露者は欲求達成を最優先に行動し、妨害された場合激しく抵抗します。欲求は硬貨の取得の他、時間経過および記憶処理によっても解消されます。多くの曝露者はSCP-XXX-JPのコイン返却口内部の確認やSCP-XXX-JP下部への侵入を試みます。

SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPの下部に広がる異常空間です。内部での重力加速度は11.8 m/s²であり、地球上でのおよそ1.2倍となっています。SCP-XXX-JP-1の初期の高さは40 cm程度であり、無人探査機による調査ではその空間の端は発見されていません。外部との空間的な断絶はなく、SCP-XXX-JP内で通信機器の使用や物品の授受は問題なく可能です。GPS装置は内部での移動に依らず、常にSCP-XXX-JPの設置場所を示します。SCP-XXX-JP-1内部に人間が侵入すると天井が降下を始めます¹。降下速度は分速1 mm前後で、内部にいる人間が圧死しない程度の高さまで降下します。SCP-XXX-JP-1内に生存している人間が存在しなくなった時点で天井の高さは初期状態に戻ります。

SCP-XXX-JP-1内に侵入した曝露者は硬貨を求めて直線的に前進を行います。進行方向に硬貨があることを曝露者は主張しますが、高解像度赤外線カメラや複数の探知機では硬貨は確認できません。曝露者は最終的にSCP-XXX-JP-1内から脱出できず衰弱死または自殺します。

+ SCP-XXX-JP-1内部探査記録XXXX-1 - 日付20██/██/██

調査員: D-9683。GPS装置、赤外線カメラ、マイク、ヘッドライトを所持。映像および音声は担当職員である俵屋博士らに中継されていました。また、あらかじめ興奮剤を投与しており多弁になっています。

調査目的: SCP-XXX-JP-1の内部初期偵察および曝露者の経過観察。

付記: 空間内の初期高さは40 cm。

<記録開始>

D-9683: あ、あった！金だ！

俵谷博士: D-9683、聞こえていますか。

D-9683: 何円かなぁ。あの光り方は100円玉に見えたけど500円もありうるな。いや50円でも十分儲けものだ。

俵谷博士: D-9683、応答してください。

D-9683: それにしてもラッキーだな。まあ俺の日頃の行いがいいからだな。

俵谷博士: D-9683。

D-9683: ああ聞こえてる聞こえてる。

俵谷博士: 通信は問題ないようですね。

D-9683: うるさいな。しかしこの俺にどんな仕事をやらせるかと思ったら小銭を拾うだけなんて楽な仕事だぜ。

俵谷博士: D-9683、その小銭はどこに落ちているのでしょうか。

D-9683: なんだ見えないのか？あそこだよ。（D-9683が彼方を指さす）

俵谷博士: カメラには何も映っていません。

D-9683: あそこに時々キラーンってしてるのがあるだろ。見えないとか財団とやらの技術もたいしたことねぇなぁ。

俵谷博士: 何か発見したら報告してください。

(5分経過)

D-9683: こう匍匐前進していると思い出すぜ。小さかった頃に……

(カメラに人骨が映る)

俵谷博士: D-9683、今骨がありませんでしたか？

D-9683: 骨ェ？気づかなかったな。誰かチキンのゴミでも捨ててたんじゃねぇか？

俵谷博士: いや、いまの大きさは明らかに人の……

D-9683: 今はあの金を拾うのが先決だろ。俺は進むぜ。

(30分経過)

D-9683: いてっ、頭ぶつけた……

D-9683: なかなかたどり着かないな、あんなに遠かったか？なあ博士そんな距離あったか？

俵谷博士: そもそもこちらからは硬貨を確認していません。

D-9683: ああそうかよ。ちょいと疲れた。最近あんまり運動してなかったからな。博士、戻ったら運動プログラムを追加してくれよ。

俵谷博士: 検討しておきます。

D-9683: 昔はよく兄貴とキャッチボールしたもんだ。兄貴は今何してんだろうなぁ。

(40分経過)

(D-9683、移動を止める)

D-9683: (唸り声)

俵谷博士: D-9683、どうしましたか。

D-9683: なんだ？よく聞こえなかったぞ？

俵谷博士: 停止したようですが何かありましたか？

D-9683: 疲れたから休憩してるだけだ。

俵谷博士: わかりました。帰還しますか？

D-9683: いや、ここまで来たからには拾う。

(後ろを振り返る)

D-9683: うわ、出口が見えないぞ……随分進んだな。

(46分経過)

D-9683: よし、進む。

(55分経過)

(頭部を殴打する音)

D-9683: ちっ、(罵倒)。

D-9683: なあ、金ひろわなくていいか?

俵谷博士: もとより強制していません。

D-9683: そうか……

(移動を止める)

D-9683: 決めた。戻る。

俵谷博士: わかりました。

D-9683: こんな暗がりに長くいたら頭がおかしくなりそうだ。

(1時間1分経過)

D-9683: なぁこっちで方角合ってるのか？

俵谷博士: そのはずです。

D-9683: 本当か？なんだか匍匐しづらくなってきてるし……こんなとこでお陀仏はごめんだぜ。

(1時間12分経過)

D-9683: ほんとに俺が進んでる方向に出口があるんだよな？

俵谷博士: カメラから得られる情報では限界があります。

D-9683: おい……頼むよ博士、合ってるよな？

俵谷博士: ……ええ。

(1時間18分経過)

(腰を殴打する音)

D-9683: ああああ！これ絶対天井下がってるだろ！

俵谷博士: 今映像解析を行っていましたが、確かに降下しています。

D-9683: お、おい、このままだとペッシャンコだぞ！聞いてない！

俵谷博士: 帰還を急いでください。

(1時間30分経過)

D-9683: あっ足

(複数の打撲音)

俵谷博士: D-9683？

D-9683: (悲鳴)

俵谷博士: D-9683、大丈夫ですか？

D-9683: 足つった、助けてくれ……

俵谷博士: 前進は可能ですか？

D-9683: 博士、助けてくれ、頼む……

俵谷博士: 申し訳ありませんが、危険性がまだ明らかではないので救出の人員は送ることはできません。

D-9683: 後生だ……

(1時間39分経過)

D-9683: くそ、なんで俺がこんな目に。博士。

俵谷博士: 自力で脱出をお願いします。申し訳ありません。

D-9683: 暗い……助けてくれよ博士……

(1時間45分経過)

D-9683: ひっ骨だ。

俵谷博士: 先ほども見かけましたね。

D-9683: ふははっ。

俵谷博士: D-9683？

D-9683: 何か嬉しくてな……ずっと何もなかったから。おかしいよな、俺ももうすぐこうなるのに。

(1時間50分経過)

D-9683: ああ、出口だ！出口が見える！

(1時間53分経過、前進が困難になる)

D-9683: ああ、あと少し……くそ。

(2時間30分経過、天井の降下が高さ20 cmで止まる。)

D-9683: 暗い……

(4時間51分経過)

D-9683: (うめき声)

(47時間46分経過、天井が上昇する。)

<記録終了>

発見: ████年██月頃、埼玉県付近のユーザーによってSNS上で「人喰い自動販売機」に関する噂²が流布されました。この流布された時期と埼玉県内での行方不明者数が増加された時期が同時期であったため財団の注目をひき、発見に至りました。現在の収容プロトコルが確立するまでのSCP-XXX-JPが原因と考えられる行方不明者は██名に上り、そのうち約3割の遺体がSCP-XXX-JP-1内で発見されています。

Footnotes

1. 実際には空間内の地面または底面に対して垂直方向に空間収縮が発生していますが、記述および理解の易化のために相対的な表現として「天井の降下」という表現を使用しています。

2. 「外へ飲み物を買いに行ったきり帰ってこない」「自販機の小銭をあさりに行った友人が戻ってこず、翌朝自販機も消えていた」など

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  批評コメント批評コメント

  
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  minminzemi 22 Dec 2018 09:50

  • 特別収容プロトコル項より

  転移先に複数名のフィールドエージェントを派遣し

  "複数名"ではなく"X¹名"や"X名以上"などとした方が良いかもしれません。

  • 説明項より

  この降下速度は人間の知覚では認識が困難なわずかな速度で

  少し読みにくく感じました。内部探査記録を見る限り、降下速度は大体0.02mm/秒でしょうか。具体的な速度をかいたり、表現を少し変えると良いかもしれません。

  硬貨を求めて直線的に前進を行います。

  "硬貨を求めて"は不要かもしれません。

  • SCP-XXX-JP-1内部探査記録より

  硬貨を取得する必要性に疑問を抱く。

  天井が降下していることを訝しむ。

  腓腹筋痙攣を起こす。全身を複数箇所打撲する。

  失禁する。

  [天井の高さについて]

  これらはカメラから得られる情報として違和感がありました。毎回Dクラス職員が心境や自身の様子について発言したり写したりしているのでしょうか。

  • 発見項より

  埼玉県付近のユーザーによって

  "ユーザー"とは何のユーザーでしょうか。自販機のユーザーを指すのであれば、"自動販売機利用者"とすると良いかもしれません。

  脚注

  1. "X"は任意の数字

  Fennecist 22 Dec 2018 19:06

  拝読しました。

  電力の供給源が無いにも関わらず、

  「電力の供給減が無いにもかかわらず、」

  また、外見は出現場所付近の景観や近隣の自動販売機設置業者の取り扱っている自動販売機に合わせたデザインへと変化します。

  「また、デザインは～～に合わせたものへと変化します。」

  また、この転移以外にSCP-XXX-JPを移動させる方法は発見されていません。

  よく分かりませんでした。人為的には移動不可能なのでしょうか？

  この欲求は周囲の人間の制止を振り切りますが、時間経過によっても解消されます。

  欲求が周りの人間の制止を振り切るように読めます。うまい代替案が思い浮かばないのですが、変更なさることを勧めます。

  47:46:01 天井が上昇する。

  この前の謎の空白は不要だと思います。他には、探査記録については現状で問題ないと感じます。

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  物足りないです。内部探査記録をもっと詳細かつ内容を膨らませ、さらにDクラスの発言を載せるなどして臨場感を増幅させると良いと思いました。

  (account deleted) 23 Dec 2018 04:26

  ＞GPS装置からの信号を観測してください。
  装置から発信される信号を～　としたほうがいいかもしれません

  ＞財団の注目をひくことになり発見に至りました。
  財団の注目をひき、発見に至りました。としたほうがいいかもしれません

  最後の編集 23 Dec 2018 04:41 by (account deleted) さらに表示

  Jiraku_Mogana 23 Dec 2018 15:17

  minminzemiさん、Fennecistさん、to2to2さん、ご批評感謝いたします。指摘頂いた点に関して修正などいたしました。

  + minminzemiさん

  ＞内部探査記録について
  この記録はカメラ(ライト付き)による映像だけではなく、マイクから拾われるDクラスの発言を書き起こしたものです。またDクラスは興奮剤が投与されてハイになっており、思ったことや感じたことをよく考えずになんでも口走ってしまう精神状況になっています。「興奮剤を投与しており多弁になっている」という表現が伝わりづらかったかもしれないので、もう少しわかりやすくなるよう検討します。

  + Fennecist さん

  やはりものたりないですよね‥‥
  探査記録をあえて報告書然とした客観的記述にしてみたのですがあまり効果的でなさそうなので、ご提案のように臨場感を増幅させていたいと思います。
  率直な感想やアドバイスありがとうございます。

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