ゴールデンドーン

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局、人類は滅びなかった。
俺の知る限りではそれが、旧世界の人間たちによる最もましな言い訳だ。

人類最高峰の頭脳を有するいくらかの人間たちによって、数千年の人類文明の営為のおよそ8割が荒野の砂の奥に投げ込まれたその日、俺は母親の腕の中に抱かれてシェルターの奥で泣いていた。
その人がどんな母親だったかを俺は知らない。恐らくは良い人だったのだろう。何発目かの核弾頭が炸裂した時、シェルターの真上に位置していたビルが永久に姿を消し、代わりに数億トンの瓦礫が降り注いだ。流れ込む土砂に押し潰された女が最後にしたことは、父親のわからない息子を天高く差し出して、息ができなくなるのを防ぐことだった。

俺は母親が好きだ。別に、俺を産んでくれたからではない。俺を生かしてくれたからでもない。
顔も知らないその女が、勇気ある人間だったことを知っているから。
俺は母親が好きだ。名前を知らない母親を、俺は愛している。


母親を愛しているなら君はイタリア人だと、男は言った。
俺の浅黒い肌のことを笑い飛ばし、外界の塵で汚れているからだと言い張った。
俺を連れ帰って貴重な浄化水で体を洗い、汚れが原因ではないことが分かると、パエトーンの墜落を引き合いに出し、神話の時代から続く君の血筋がそうさせるのだと言った。
俺はエチオピア人ではないと思うのだが、彼が言うからにはそういうことにしようと思った。

神のために働くから自分は神父だと、男は言った。
聖霊の存在を信じていると話し、これ見よがしに祈りを捧げてみせた。
いつも朝方に起き出しては曖昧な説教をし、昼食とともに奇妙な講釈を垂れ、夕暮れには胡乱な儀式を行って、ワインを片手に君は預言者だと言った。
俺は預言者ではないと思うのだが、彼が言うからにはそういうことにしようと思った。

蔵に積んであったワインが尽きた日、彼は塩になってゆく身体を横たえて、俺に幾つかの伝言を遺した。
俺は納得し、別れの祝福の言葉をかけ、彼の口に最後のワインをまる1ボトル注いでやった。
最後に、赤く濡れた塩をケースに詰め込み、彼の説教書を焼いて暖を取った。

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  1. portal:5060201 ( 15 Jan 2019 17:15 )
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