歌訟で捧ぐ愛

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アイテム番号: SCP-2981-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル:  SCP-2981-JPの出訴を止める方法は明らかになっていません。日本の各裁判所に潜入している財団職員は、当該裁判所で行われるすべての裁判の事件番号を確認します。事件記録符号が(ゐ)1である裁判を発見した場合は、直ちに法令部隊と-1 ("被告人")2に連絡します。法令部隊と-1は、SCP-2981-JP-Aを速やかに同定の上、当該裁判のすべての口頭弁論期日を傍聴します。これにより、可能な限り早期の勝訴要件の特定及び他の財団職員(各機動部隊を含む)と連携したその充足の阻止、あるいは充足された場合の被害の低減ないし無化を試みます。

SCP-2981-JP-A及びSCP-2981-JP-Bに対するあらゆる直接的あるいは間接的攻撃(SCP-2981-JPの進行の妨害を含みます)は必ず失敗し、かつ、攻撃者に対する法的制裁という結果に至ります。他方で、SCP-2981-JP-Aのみ、クラスIII以上の現実改変に対しては耐性がないことが確認されています。そのため、勝訴要件の充足阻止が困難であり、かつ、勝訴が甚大な被害をもたらすことが予期される場合には、法令部隊と-1の判断により、日本支部理事に通達の上で機動部隊オメガ-12 ("アキレウスの踵") が出動します。その後の対応については、法令部隊と-1の指示に従ってください。いずれの場合においても、状況が収拾した後は、法令部隊と-1の指示がない限り、SCP-2981-JP -Aに対してクラスB記憶処理を行って解放します。

説明: SCP-2981-JPは日本の裁判所における異常な訴訟です。原告は日本に在住する一般人(以後SCP-2981-JP-A)ですが、インタビュー調査や周辺調査のいずれによっても、SCP-2981-JP-Aが訴状を提出した形跡は見つけられません。SCP-2981-JP-Aが提出したとされる訴状は、白紙であるにもかかわらず、通常の手続に従って受理されたものとして処理されます。

SCP-2981-JPは、どの裁判所に提起されているかにかかわらず常に、「松崎 ████」3と名乗る壮年の日本人男性(以後SCP-2981-JP-B) が一人で担当します。SCP-2981-JP-Bは、自らがSCP-2981-JPの「裁判長」であると名乗り、関係者はそれをごく自然なこととして受け止めます。

SCP-2981-JPは、あらゆる司法関係者に裁判として認識されるにもかかわらず、対審制や当事者主義といった現代の裁判に特徴的な構造を備えていません。SCP-2981-JP-Bが指定した要件をSCP-2981-JP-Aが満たすことができるかどうかだけが問題になります。

SCP-2981-JPの第一回口頭弁論期日において、SCP-2981-JP-Aは、自らの請求を短歌の形式で口述します 。その後、SCP-2981-JP-Bは第二回口頭弁論期日を数か月後 に指定します。第二回口頭弁論期日において、SCP-2981-JP-Bは勝訴要件を伝えるとともに、数か月後の第三回口頭弁論期日を指定します。その上で、裁判の迅速な処理の為に同日に判決を言い渡すことを宣言します。第三回口頭弁論において、SCP-2981-JP-Aは勝訴要件を満たすための証拠の提出や立証等を行います。その後、SCP-2981-JP-Bは、勝訴あるいは敗訴を言い渡します。SCP-2981-JP-Aが勝訴した場合、請求の内容は確実に実現します。

判決言い渡し後、SCP-2981-JP-Bは即時に消滅します。同時に、SCP-2981-JP-Aは一切の異常性を失います。SCP-2981-JP-Aを含む関係者は、SCP-2981-JPに関する記憶は有していますが、それを自然なこととして受け入れています。

SCP-2981-JP記録(一部)
判決日 事件番号 原告 請求 勝訴要件 結果
198X/
10/XX
昭和5X年(ゐ)第905号4 SCP-2981-JP-A-3 『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 SCP-2981-JP -A-3の配偶者によるサラダの味の良さの証言 SCP-2981-JP-A-3の配偶者は法廷に出頭して、198X/7/8の夕食に出されたサラダの味の良さを証言。原告勝訴。
国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)の改正案(七月六日をサラダ記念日に指定するもの)が与党委員会で審議の対象として提出される。当該短歌を含む歌集の出版を含むカバーストーリー「個人的な記念日」の流布により、それ以上の進展は見られず。何らかの形で請求が実現されればそれ以上の進展はないことが確認された。
1989/
12/XX
平成元年(ゐ)第26号 SCP-2981-JP-A-6 鮭の死を米で包んでまたさらに海苔で包んだあれが食べたい 120円相当の物品の提出。 SCP-2981-JP-A-6は120円を提出。原告勝訴。判決言い渡し直後に、SCP-2981-JP -A-6の手の中に温かい鮭おにぎりが出現
199X/
8/27
平成X年(ゐ)
第1号
SCP-2981-JP-A-7 ぼくたちは勝手に育ったさ 制服にセメントの粉すりつけながら セメントの粉がすりつけられた制服の提出 SCP-2981-JP-A-7の甥に譲渡されていたSCP-2981-JP-A-7の学生時代の制服を期日前に回収。SCP-2981-JP-A-7はなにも提出できなかった。原告敗訴。
2021/
XX/XX
令和3年(ゐ)第339号 SCP-2981-JP-A-9 あの海の向こうを目指して溺れて死んだリンダリンダのドブネズミ 溺死したリンダリンダのドブネズミの死体の提出 SCP-2981-JP-A-9は何も提出できなかった。原告敗訴。
20X7/
8/12
██X年(ゐ)第2456号 SCP-2981-JP-A-13 もしきみが世界を敵に回したら最初にやられる敵になりたい 「きみ」が「世界を敵に回すに値する人間であること」及び、SCP-2981-JP-A-13が「最初にやられる敵になるべきこと」の立証 原告勝訴。詳細については補遺を参照。

補遺:XXXX年(ゐ)第2456号に関する記録

20X6/12/XX ████裁判所において、SCP-2981-JPの訴訟提起を確認。財団データベースに照会したところ、原告は、機動部隊[編集済]の隊員であるエージェント・████と判明。SCP-2981-JP-A-13に指定。
20X7/2/12 第一回口頭弁論期日。上記の請求を行う。法令部隊と-1は、日本支部理事に通達の上、機動部隊オメガ-12の出動を要請。同日に、日本支部理事より、機動部隊[データ削除済]の特性上、SCP-2981-JP-A-13自身が高度の現実改変耐性を有しており、かつ、小型スクラントン現実錨 を携帯していることが開示される。機動部隊オメガ-12は、法令部隊と-1 と対策について協議。
20X7/2/15 機動部隊オメガ-12の分析の結果、SCP-2981-JP-A-13はSCP-2981-JPの影響により現実改変耐性をさらに上昇させており、対象を確実に終了させるにはクラスVI現実改変能力が必要と判明。法令部隊と-1は、勝訴の結果として出現する「きみ」(このときより、SCP-2981-JP-Cに指定)がクラスVI現実改変実体になる蓋然性を指摘。両部隊はHK-クラス:神格支配シナリオ の差し迫った危険が存在していることに合意、日本支部理事及びO5評議会に通達。
 同日、O5理事により、法令部隊と-1に対して、裁量的に行動可能な職員を任意に徴用する権限が与えられる。法令部隊と-1は、機動部隊オメガ-12の全部隊の出動を要請。ベータ・フォー5を除いて招集。
20X7/2/21 法令部隊と-1 により、勝訴要件の可能性が4通り提出される。
20X7/3/4 SCP-2981-JP-A-13の周辺調査によって、SCP-2981-JP-Cの可能性がある人物が9通り特定される。SCP-2981-JP-A-13に対して、精神安定のカウンセリングと称して面接を行ったものの、SCP-2981-JP-Cの特定にかかわる質問は、プライバシー侵害として拒否される。ポリグラフ検査、自白剤その他の侵襲的手段による質問を行おうとした職員は現地警察によって拘留中。
20X7/3/12 機動部隊オメガ-12・ベータ・フォーの協力により、SCP-2981-JP-Cに対する面接を実施。

 

 

20X7/3/18 機動部隊[編集済]隊長浜島 ████を、████裁判所近くのサイト-805に確保。
20X7/4/12 SCP-2981-JP-A-13に対する肉体的・精神的攻撃は想定通りに全て失敗。小型スクラントン現実錨の没収は窃盗未遂として処理されて頓挫。配置転換命令についても、不当な動機・目的により発令されたものとして無効と処理される。また、上記の処理に関わった財団職員は全員、現地警察によって勾留中。
20X7/4/14 現地警察内部の財団職員、拘留中の職員たちの解放を試みる。当該職員に対する懲戒免職を帰結。
20X7/4/24 勝訴要件第一候補・第二候補について充足不可能性を確保。
20X7/5/11 第二回口頭弁論期日。勝訴要件が明らかにされる。最も充足阻止が困難な第四候補に合致。
20X7/6/17 機動部隊オメガ-12 、SCP-2981-JP-A-13の終了を目標とした作戦開始。しかし、対象の耐性及び小型スクラントン世界錨により無効化。SCP-2981-JP-A-13の行動を阻害する試みも、間接的攻撃とみなされ全て頓挫。
20X7/6/18 法令部隊と-1、プロトコル「亀がアキレウスに言ったこと」を提案。当該提案は日本支部理事及び機動部隊オメガ-12により即時に承認された。
20X7/6/21 機動部隊オメガ-12ベータ・フォー、サイト-805に到着。プロトコル「亀がアキレウスに言ったこと」について説明を受ける。多少の逡巡を見せるが、SCP-2981-JP-Cのためであることを強調した結果、承認する。
20X7/8/11 カバーストーリー「生物兵器を持つテロリストの潜伏」により、裁判所付近20km範囲の住民退避完了。
20X7/8/12 ████裁判所付近に、機動部隊ニュー-7 ("下される鉄槌") 、機動部隊オメガ-12を展開。浜島████は、機動部隊に-8("地域猫")6によって管理。第三回口頭弁論開始。

 

 

20X7/8/12
14:00:00
プロトコル「亀がアキレウスに言ったこと」開始
14:24:11 機動部隊"アキレウスの踵"ベータ・フォー、浜島████の収容室の隣室へ到着。
14:55:23 ベータ・フォーを除く機動部隊"アキレウスの踵"、浜島████が収容されている建築物周囲を包囲。
15:08:57 第三回口頭弁論開始。
15:10:23 浜島████をSCP-2981-JP-Cに指定。
15:17:01 SCP-2981-JP-Bによる判決言い渡し開始。原告の勝訴が確定。SCP-2981-JP-Bの発話速度から、判決言い渡し終了は5-7秒後と推定。機動部隊に-8 SCP-2981-JP-C管理担当チーム、速やかに退避。
15:17:05 機動部隊ニュー-7アルファ・スリー、780m地点からSCP-2981-JP-A-13の胸部に向けて発砲。同時刻、同ガンマ・ワン、800m地点からSCP-2981-JP-A-13の頭部に向けて発砲。
15:17:08 SCP-2981-JP-Bによる判決言い渡し終了。SCP-2981-JP-C、クラスVIの現実改変能力を獲得して、SCP-2981-JP-A-13の方向へと歩行開始。急激かつ巨大なヒューム値ギャップの発生により、SCP-2981-JP-C周囲の局所現実の溶解を確認7
15:17:09 SCP-2981-JP-A-13、機動部隊ニュー-7のアルファ・スリーの発砲した銃弾により終了。
15:17:10 機動部隊オメガ-12ベータ・フォー、「隊長」と叫びながら、SCP-2981-JP-Cのいる部屋へ侵入。SCP-2981-JP-Cに駆け寄る。
15:17:11 SCP-2981-JP-C、ベータ・フォーを消去。直後、沈静化。現実改変現象も途絶。
15:19:26 機動部隊オメガ-12、SCP-2981-JP-Cを確保。特に抵抗なし。

機動部隊オメガ-12隊長による報告書

 当初の想定では、SCP-2981-JP-C は我々の全員を消去するものと考えられていましたが、実際にはベータ・フォーを消去しただけで終わりました。我々全員は同じ並行世界からやってきたと思っていたのですが、少なくともベータ・フォーは他の隊員とは異なる世界からやってきていたようです。
 SCP-2981-JP-Cは我々に対して非常に協力的です。SCP-2981-JP-C自身、「エージェント・████に報いるためにも、このまま財団職員としての業務を継続したい」と希望しています。
 我々から見れば、彼が本当にクラスVIの現実改変能力を持っているかどうか疑問です。様々なテストは必要でしょうが、現実改変耐性の高い普通の財団職員に見えます。何より、ベータ・フォーと同じ世界から新たなSCP-3480-2実体がやってきたとき、SCP-2981-JP-Cはそれに対する切り札になりえます。
 SCP-2981-JP-Cの能力・人徳は私の耳にも入っていました。我々は彼を歓迎します。

日本支部理事付記

機動部隊オメガ-12による提案の実行可能性については現在調査中です。

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