ダミー報告書作成部門(仮)

「"Thaumiel"…?このSCiPの報告書に似た文書は…これはなんだ?」

「似た文書ではない。報告書だ。正式にナンバリングされ、"報告書"として取り扱われている。"Thaumiel"というオブジェクトクラスは、最上級のクリアランスを持つ一部の職員にしか開示されていないものだ。」

目の前の男の吐く言葉を、字面だけでも理解するのに私は数瞬の時間を要した。言葉の意味はまったく理解できていない。何だこの文書は。何だこの場所は。なぜ私は今ここでこうしているんだ。立て続けに私にぶつけられる情報たちは、既に私の処理能力を遥かに超越していた。


私が「財団」と呼称されるこの組織に入ってからもう18年になる。それなりに上の立場にはなった。同じ役職に就いている同僚たちに比べると、私の経歴は少々特殊だ。

元々私は研究畑の人間ではなく、機動部隊に所属していた。「財団」という存在を知ったのも、訓練学校でヘッドハンティングされたことがきっかけになっている。それがなければ今ごろ一般人と同様に、異常存在なんてものはフィクションの中にいるものだと思いつづけていただろう。

部隊には2年ほど所属していた。良いリーダー、仲間に恵まれたと思う。知識も、信念も、数え切れないほどのことを学ばせてもらった。時には異常存在と、時には要注意団体と相対して、死線を何度か潜り抜け、経験を積んで判断力を培うことができた。そして、3年目のときに行われたミッションで、私以外のメンバーはその線を潜り抜けられなかった。よくある話だ。私も大きな怪我を負った。怪我の影響は大きく、機動部隊で活動を続けることは絶望的だった。

私は選択を迫られた。簡単に言えば、「雑用として働く」か「何もかも忘れて辞める」かだ。当たり前の話だが、私に学術的な知識は皆無であるし、機動部隊としての経験が豊富なわけでもない。研究員やアドバイザーとして、私が財団に貢献できることは無かった。

その時の私にとっては、辞めるのも悪くはなかったはずだ。任務中の事故ということで、財団からは多額の金を受け取ることができたし、贅沢をしなければそれだけで十分生きていくことができる程度の金はあった。そうしなかったのはなぜだろうか?私が何を考えていたのか、もう覚えていない。

私が任されたのは清掃。書類整理。データの入力作業。誰にでもできる仕事だ。ただ、一般人に任せるわけにもいかない。そういう意味で、私のような存在はきっと財団にとって貴重だったのだろう。決められたことを、決められた時間までに遂行する。学のない私は、それだけは遵守した。財団にとって、いわば"使いやすい小間使い"である私は、色々なところに回された。

2,3年ほどが経ち、研究員の多くと関わりを持つようになった。あとで聞いた話では、"ミスをしない雑用係"として、それなりに広く認知されていたらしい。その頃には研究所内で雑談をすることも多くなり、はっきりとした信頼関係が感じられた。

私がいつものようにデータの入力作業を行っていると、仲の良かった研究員から、担当しているアノマリーの研究が滞っているという話を耳にした。そのアノマリーは、私が部隊に所属していた際に目にしたことがあるアノマリーと若干の類似点があった。それが功を奏したらしい。停滞していた研究は結果として前に進むこととなった。

しかし、その話は単純ではなかった。というのも、私が研究員に伝えた内容はデータベースに詳しく登録されていなかったためだ。研究の進展の裏で、そのアノマリーの特徴について、私は繰り返しインタビューを受けていた。これが私にとって2つ目のターニングポイントとなる。

自らが体験したことを"全て"余さず伝えるというのは難しい。マイクやカメラといった記録機器を用いることである程度の範囲はカバーできるものの、それでもまったく同じものが記録されるわけではないし、感触や匂いまで正確に記録できる技術はない。機動部隊を含むフィールドエージェントは、ミッションの後にその記録を行い、場合によってはインタビューを受けることになっているが、どうしてもその中で抜け漏れは出てくる。今回の件もその"抜け漏れ"に該当するものだった。

その頃の財団は、研究員とフィールドエージェントの間の繋がりが今よりもずっと薄かった。

私はここ最近、「らしくない」ミスを繰り返していた。

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