bad-faundation

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四月の晴れた寒い日だった。時計の短針は8を指している。██は気温が快適に調節された廊下を足早に歩いていた。無機質なリノリウムの床に足音だけが響く。脇の電子掲示板には、大きな確保、収容、保護という標語の横に、円と三本の矢印を組み合わせたようなマークが描かれていた。彼はエレベーターに乗りこんだ。振動や騒音のたぐいが一切排除された閉鎖空間で、彼はただ無言だった。

サイト-8115の第二職員寮から彼の仕事場まではさほど時間を必要としなかった。それは小さな部屋であり、机は一つしか置かれていなかった。そこに座ると、彼はパソコンを起動させた。真っ白なデスクトップには先ほどのロゴだけがが大きく描かれていた。
実際には会ったことも無い上司からのメールが4件来ている。それを処理するのが彼の仕事だ。彼はキーボードを横たえると、ゆっくりとキーを叩き始めた。
彼はサイト-8115統治部門第二課───通称"広報課"───所属のBクラス職員である。彼は財団の統治下にある人民へ与えられる"適切な"情報の文面を考案するという重要な任を負っていた。
メールの一件目は簡単な仕事だった。Vブロックに住む家族がオブジェクトを隠し持っていたために財団に連行され、Dクラス職員として採用された旨を告知するためのポスターを制作するだけだった。添付されていた資料によれば、そのオブジェクトは下手をすれば都市全体が汚染されるほどの強力なものであり、その家族はそれを使って財団を転覆させようとしていたらしい。それが本当かどうかを彼は考えなかった。知る方法もないし、知ったところで意味などないからだ。どうせもうこの家族はバラバラの肉塊かミイラかドロドロの液体になっているころだろう。メールにはその家族の集合写真も載っていた。居間かどこかのソファーに揃って寛ぐ両親と10歳に少し足りないぐらいに見える年齢の息子。それを大きくポスターに載っけようとして、やめた。その代わりに画像編集ソフトを起動し、周囲の光景と彼らの表情に手を加える。完成した写真の中で、彼らは邪悪な笑みを浮かべていた。人民はこれを見てどう思うのだろうか。彼らはそんな人間じゃないといって憤るだろうか。隣人の隠れた本性に恐怖するだろうか。彼は一瞬そんなことを考え、しかしすぐにどうでも良いと思い直した。どちらにせよ知りようがないのだ。Bクラス以上の職員がサイト外に出るときは外出許可証が必要だったが、彼が何度申請を出してもそれが受理されることは無かった。

 二件目のメールを開く。一昨年に出されたサイト管理官からある職員に向けて出された賞賛通達が"非在人物"について言及しているため、その"ミス"を"適切に修正"せよ、という内容だった。元の資料を見てみると、それはある民間人が隣人を30人密告したとして表彰され、財団に雇用されたということだった。存在しない人物と言うことは、もうすでに消されたのだろうか。それともこの人物も架空の存在だったのだろうか。
 彼は唇を舌で湿らせた。この文書を先ほどのような簡単な布告に丸ごとすり替えてもいいが、それは少しありきたりな感じがする。どうせなら、賞賛通達という方向性を変えずに行こう。必要なのは純然たる幻想の一片。みるみる間に、彼の頭の中には██という名の財団職員のイメージが鮮明に浮かび上がってきた。
 財団に忠実な両親の間に生まれ、3歳にして彼女は収容サイトとアノマリーの玩具でしか遊ばなかった。6歳で子供収容隊に入隊。14歳までにオブジェクトを隠し持っていた隣人を4人密告した。15歳のとき起きた収容違反の際財団機動部隊に献身的な協力をし、その功績を認められて三等稲妻勲章を贈られる。財団に20歳で採用され、数々のオブジェクトの研究に携わるが、重要書類を運搬中、武装したカオスインサージェンシーのメンバーに襲撃され、決死の反撃で三人を殺した後自爆した。理想的な
 
プロフィールはこれでいいだろう。あとは、サイト管理官からのコメントを書くだけだ。サイト管理官は──少なくともサイト-8115の管理官は──疑問文を投げかけた後にすぐその答えを言うという学者上がりらしい話し方をした。「諸君、今我々が一丸となって立ち向かわなければならないものは何か?それは──」といった具合に。それはある意味象徴的ですらあったが故に再現は容易だった。キーボードを叩く硬質な音が響く。「彼の態度は財団職員として模範的であった。その勇気、栄光、信念、決意に対して我々が応えられるものとは何か?それは今までより一層確保、収集、収容に励むことであり、またそれは同時に──」

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  1. portal:ginger81xx ( 13 Jun 2018 22:49 )
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