このページの批評は終了しました。
最近あった不思議な現象について書いていく。
3年前に俺は就職の為に引っ越しをした。最近建てられた小綺麗なマンションで、
俺は1階の端である104号室に入居した。マンションが建つ前は立派なお屋敷があったらしく、庭部分に大きな桜の木が植えてあった。
なんでも、前の持ち主がどうしても桜の木だけはそのまま残して欲しかったらしいと隣人から聞いた。
引っ越しから暫くは特に変わったことは無かった。
始めて異変が起きたのは翌年3月の事だった。朝起きると部屋の中央に桜の花びらが1枚落ちていた。その時は服にくっ付いてきたとかで大して気にもしてなかった。
しかし、それから毎日必ず朝起きると部屋の中央に桜の花びらが1枚落ちているようになった。
かなり不信には感じたが実害がある訳でもなく、落ちているのが桜の花びらという事もあり、逆に縁起が良いものなんじゃないかと思っていた。
何なら、落ちていた桜の花びらを机に飾っていたほどだ。
しかし、桜が散った後は一切そういう現象は起きず、夏ごろにはすっかり忘れていた。
次の年、また外の桜が咲き始めるころに同じ現象が発生し始めた。
未だに桜が落ちる瞬間を見た事が無いので、好奇心からビデオカメラで撮影することにした。
押し入れから昔買ったビデオカメラと三脚を引っ張り出し、部屋の全体が写るように部屋の入口に設置した。
楽しみ半分怖さ半分でその日は床に就いた。
翌朝、起床してすぐにビデオカメラの撮影を停止させた。今すぐ確認したいところだが、仕事前にゆっくり確認している時間はない。
そのまま仕事に出かけた。
仕事が終えて帰宅すると早速撮影した映像を確認することにした。
メモリーカードをPCに差し込みファイルを開き再生を開始する。
そのまま見るには長すぎるので、16倍速にし異常が無いかを確認する。
しかし、いつの間にか桜の花びらは床に落ちていた。見逃したかと思いシークバーを操作し出現する瞬間を探す。
午前2時37分にそれはあった。
それは期待外れというか、ただ空中に桜の花びらが出現し床にひらりと落ちているだけだった。
俺は何か映るんじゃないかと思っていたから拍子抜けしてしまった。
まぁ、こんなもんだろうと思ったがそのまま再生しているとあることに気が付いた。
ぎぃ……ぎぃ……
という音がかすかに聞こえるのだ。それは一定の間隔で規則正しく鳴っていた。
画面には何も異変が無く、隣人が何かしてるんだろうくらいに思っていた。
取り合えず1週間くらいは撮影してみることにして、暫く様子を見ることにした。
次の日も同じだった。その次の日も変わったところは無かった。
しかし、
ぎぃ……ぎぃ……
という音も同様に聞こえた。画面に変化はない。
3日目にして共通点に気付いた。
ぎぃ、ぎぃ……
という音は桜が出現してから日が昇る頃まで続いているが、日が昇るとぱったりと消えるのだ。
流石に3日も続くと隣人どうこうではない気がする。
俺は気になり、その時間まで起きることにした。
午前2時37分まで待ってみると、本当に突然空中に桜の花びらが出現した。
それとほぼ同時に
ぎぃ……ぎぃ……
という音も聞こえ始めたが、特に何か見える訳では無かった。
不気味ではあったが害がある訳でもない。俺は気にしないことにして寝た。
数日後、俺は飲み会で遅くなり午前2時を過ぎてようやく帰宅した。
何も無いだろうとは思いつつ日課になったビデオカメラの確認をする。
しかし、その日はいつもと違った。
ぎぃ……ぎぃ……
画面の中で女性が首を吊っている。
真っ白な死装束。
ほつれた帯は体と共に小さく揺れている。
ぎぃ……ぎぃ……
女性の首が伸びてゆくのが目に焼き付く。
吐き気を催すその光景に、目が離せないでいた。
息が詰まる。
その時、後ろからも
ぎぃ……ぎぃ……
という音が聞こえ始めた。
それはだんだん俺に近くなる。
心臓が跳ね、心音がうるさいくらいに鳴る。
午前2時39分。いつの間にかその時間になっていたようだ。
画面の女は依然ロープで首を吊りながらゆっくりと揺れている。
体が固まったように動すことが出来ない。
ただ画面から目を離せずに、画面から流れるぎぃ、ぎぃという音が自分を取り囲むように不協和音を奏でている。
ぼたぼたと女の死装束を湿らせるそれが排泄物であると、鼻を刺す尿臭が訴えている。
女を覆い隠すように広がる桜の木。
画面と現在が混ざって、自分の足が宙に浮くような感覚に襲われる。
女の顔は今、間近にある。漆黒の髪が、俺の荒い息で靡く。
女の髪がずれて、女の澱んだ目と目が合った。
気が付いた時には朝で、部屋の中心で丸まるように転がっていた体を起こす。
仕事の支度をしなければ。不意に首を掻いた俺の指にふわりとしたものが当たった。
桜の花弁。
俺は気持ち悪くなり桜の花びらを外に投げ捨ててその日のうちに荷物を纏めて家から逃げるように出、数日友人に無理言って泊まらせてもらってその間に新しい住居を決めた。
友人に頼み込んで一緒に引っ越しを手伝ってもらい後にした。
これは後で不動産会社から聞いた話だが、あのマンションが建つ前にあったお屋敷で娘さんが行方不明になっていたらしい。
当時のことも女性のこともわからないが、その行方不明の娘さんは後日桜の木にぶら下がった状態で発見されたそうだ。
家主_娘さんの父親は、彼女へのせめてもの弔いとして、彼女の遺体を彼女の好きだったあの桜の木に埋めたのだとか。
まぁ隠蔽の意図もあったんだろうね、どっちにしろ聞いた話だからわかんないけど!と不動産会社の人はカラカラと笑っていた。
あの幽霊が何を伝えたくて桜の花びらを落としていたのかは分からない。
丁度俺の部屋は桜がよく見える部屋だった。
娘さんは、あそこにいたのだろうか。
しかし、あのマンションにはもう関わることは無いだろう。
あのマンションの死装束のように白い花を付ける桜の下には今も彼女が_いや、やめておこう。
タグ: tale jp 依談
ページコンソール
批評ステータス
カテゴリ
SCP-JP本投稿の際にscpタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。
本投稿の際にgoi-formatタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。
本投稿の際にtaleタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。
翻訳作品の下書きが該当します。
他のカテゴリタグのいずれにも当て嵌まらない下書きが該当します。
言語
EnglishРусский한국어中文FrançaisPolskiEspañolภาษาไทยDeutschItalianoУкраїнськаPortuguêsČesky繁體中文Việtその他日→外国語翻訳日本支部の記事を他言語版サイトに翻訳投稿する場合の下書きが該当します。
コンテンツマーカー
ジョーク本投稿の際にジョークタグを付与する下書きが該当します。
本投稿の際にアダルトタグを付与する下書きが該当します。
本投稿済みの下書きが該当します。
イベント参加予定の下書きが該当します。
フィーチャー
短編構文を除き数千字以下の短編・掌編の下書きが該当します。
短編にも長編にも満たない中編の下書きが該当します。
構文を除き数万字以上の長編の下書きが該当します。
特定の事前知識を求めない下書きが該当します。
SCPやGoIFなどのフォーマットが一定の記事種でフォーマットを崩している下書きが該当します。
シリーズ-JP所属
JPのカノンや連作に所属しているか、JPの特定記事の続編の下書きが該当します。
JPではないカノンや連作に所属しているか、JPではない特定記事の続編の下書きが該当します。
JPのGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。
JPではないGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。
ジャンル
アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C-
- _
注意: 批評して欲しいポイントやスポイラー、改稿内容についてはコメントではなく下書き本文に直接書き入れて下さい。初めての下書きであっても投稿報告は不要です。批評内容に対する返答以外で自身の下書きにコメントしないようお願いします。
- portal:6355326 (04 Jun 2021 13:20)
怪談としてまとまってはいますが、ある種テンプレ的な話のまま終わったようにも感じました。小さな怪現象を記録したら恐ろしい現象で……というのは守るべきお約束じみたものではありますが、主人公の取った行動がカメラを設置したくらいなので「怪現象を探っていく面白さ」が用意できていません。禁忌に踏み込む後ろ暗さもなく自動的に怪異が本性を現しているのでどこか御都合主義的でもあり、とんとん拍子に話が進んでいる印象です。また、桜=死体というのも連想としてはそのまま過ぎるので別のモチーフを探した方がいいと思います。どちらにしても、もう少し捻りのある物語を期待したいです。
一人称視点で怪奇現象を語る、ということだけに拘るのであればパラウォッチなどで書かれてもいいかな、という印象を受けました。主人公がさらに能動的に禁忌に踏み込んでいったほうがより依談らしさも増すと思います(ex.ほかの住民に聞き込みする、神社やお寺に頼る)。
また、
とありますが、この_(アンダーバー)はもしかして―(ダッシュ)の誤用でしょうか。そうであればダッシュに置き換えるのが良いと思います。
さらに、二行目と三行目の改行に違和感があります。見直されてはいかがでしょうか。
批評は以上です。改稿頑張ってください!
しばらく更新が見られないため、この下書きのステータスを「批評中断」にしました。下書き批評を受ける準備が整ったならば、お手数ですが、改めて下書きのステータスを「批評中」に変えていただくようお願いします。