Tale下書き「ある金曜日の夜のこと」

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ここサイト-81██には少しばかり厄介なルールがある。時刻は22時。今日は誰が来るのだろうか。

「お疲れ様です、岩下博士」

「おお、お疲れ様、水梨君」

今夜のおともは彼女、水梨研究員のようだ。

「博士、お体の具合はどうですか。車椅子での生活には慣れましたか?」

「ああ、まあまあだね。これならもっと運動しておけばよかったなぁ。車輪を手で動かさなくてはならないのが中々厳しいよ」

というのも私は、3か月ほど前に発生したSCP-████-JPの収容違反発生時にSCiPの攻撃をもろに食らってしまい、脊髄損傷による軽度の下半身不随となってしまったのだ。医師によれば、リハビリを続ければ以前ほどではないないにしろ、少しはまともに歩くことができるようになるとのことだったが、やはりなかなかうまくいくものではない。業務をこなしつつ空き時間を見つけては、暇な職員に手伝ってもらってリハビリに明け暮れる日々が続いている。確かに不便ではあるが、そのようなことを言っていられる立場ではないので、なんとか早く復帰しなくてはならないと思うのだ。

「辛くなったらいつでも声掛けてくださいね。下手に無理して腕を"いわした"ら、笑いごとじゃないですからね」

「なんだその酷いダジャレは。笑うべきなのか?」

「ふふっ、失礼しました。でも本当に気をつけてくださいよ」

ああ、本当に良い部下を持ったものだ。

「ありがとう。いやしかし、今日も疲れた疲れた!新たに3つ報告書を作って、それでリハビリもして」

「ええ、本当にお疲れ様です」

「一刻も早く元気になって、前のように仕事をして、世界の平穏を、保たなければ、なぁ……」

「そうですね……博士、博士?寝ちゃったんですか?」








岩下博士の正義感には憧れるところもある。でも正直なところ、博士は無理をしすぎている気がする。伸びた髪と髭に、目の下の酷い隈がそれを物語っている。

「うわぁ……。すごい」

博士のデスクの上にある報告書の山。その横にはリハビリに関する書籍や下半身不随についての論文のコピーまである。一体、彼をここまで突き動かす原動力はどこにあるのだろうか。今の私には、ここまで自身を努力させるものは無いからこそ、彼の努力の爪痕が輝かしくも見え、同時に恐ろしくも感じる。

「私もタスクはこなしましたし、そろそろ寝ましょうかね……」

既に夢の世界へ旅立った博士に、静かに話しかける。

「あっ……。でも、どうしよう……」

ここに来る前に、少しばかりコーヒーを飲みすぎた。そのせいか、凄まじい勢いで尿意が襲ってきた。

「博士、すみません。少しトイレに……」

博士に小声でそう囁き、私はトイレに向かった。本当はこの時間帯は職員1人での行動は推奨されていないのだが、流石にそれを守り切って博士の部屋で失禁してしまっては、恥ずかしくて死んでしまう。












用を足し、岩下博士の研究室に戻る途中、その方向から突如爆音で"ダンシング・ヒーロー"が聴こえてきた。

「えっ!?嘘でしょ!?」

私はその異常に気付き、研究室へと走った。やはり、音の出どころは博士の研究室のようだ。私はすぐさま医療班へと連絡を入れた。

「水梨です!SCP-1984-JPの発生を確認しました!場所は岩下研究室!至急医療班を要請します!」

SCP-1984-JP。何故かこのサイト内だけで発生する、全く意味の分からない異常現象である。22時以降に閉鎖された部屋の中に1人でいると、突然部屋の中がディスコのようになり、被害者は部屋が開かれるまで踊り続ける。馬鹿みたいな話だが、死者が出ているため侮れない。8か月もの間発生していなかったが、まさかこの短い時間で発生を許してしまうとは。

「博士!岩下博士!大丈夫ですか!?」

部屋の中から突然「フォー!」と言う声が聞こえてきた。明らかに岩下博士の声だ。やはり、全く大丈夫ではない。

「今助けますから!待っててください!」

この異常性の厄介なところは、オブジェクトの発生した部屋の扉も窓も開閉不可能になるところなのだ。つまり、扉か窓を壊す以外に被害者を救う方法はない。私は持てる力の全てを使って、近くにあった木椅子を窓へと向かって振り投げた。

「はあ、はぁ、はぁ」

ガラスの破片が飛び散り、音が鳴り止む。すぐに扉が開くことを確認し、部屋の中へと入った。

「岩下博士!ご無事ですか!」

岩下博士は部屋の中央で、右腕を突き上げながら泣いていた。

「み、水梨君。ありがとう、本当にありがとう。死んでしまうかと思った……」

「勝手に部屋を出てすみません!無事で良かったです。すぐに医療班が来ますので、しばらくお待ちください」

「本当に助けられたよ。ありがとう……」

泣きながらひたすら"ありがとう"と呟く岩下博士。正義感に溢れ、強い心を持っているように見える彼も、こんな風に泣いてしまうことがあるのかと感じてしまった。

「あれ、そういえば博士。足が……」

博士の横には車椅子が倒れている。

「あっ。……おかしい、全然なんともない。ほら、この通り」

博士が得意とする、軽快なタップダンスを披露する。








翌晩行われた岩下博士の快気祝いパーティーの様子は、まさに狂宴フィーバーだった。


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  1. portal:fennecist ( 31 May 2018 15:13 )
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