Falsehood 8 Ace2

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 静かに瞑想する、この一時がとても重要だ。全て遠ざけ、内と過去だけを見る。山積の問題も差し迫った脅威も忘れた、ひっそりとした静寂。殊、滅びの近い世界では、安らぎは個々の中にしか無い。自らを見詰め直し、いつ消失するとも分からない自己同一性を確認する。
 だが、今日も今日とて、静寂を破く者が来る。

———やあ、調子はどうだい———

「頭なら常に痛いが」

———別に悩みの種が溜まっているかどうかは訊いていない———

「知ってるさ。大体問題無い」
『なら良いがな』
 後ろに何者かが飛び降り、着地した様な音。
「最近は、全滅したサイトから汚染が拡散する心配も無い」
『油断は厳禁だが?』
 ガラス越しに話す様な、周りと僅かに位相がずれた声。
「耐性ならある」
『"夢見"、か。キャリアは良いねぇ』
 年齢の分からないモンゴロイドの男が、目の前に胡座を組む。
『その"夢"は、近頃は少しか役に立っているのかい?』
「ああ。最近では、唐揚げ博士が人に見える」
『それは凄いな』
 役に立っているかは知らないが、随分と唐揚げが食べ易くなった。
自称海王星人が何者なのかも分かった」
『それは、役に立ったと言えるのかねえ……そもそも上さんの契約に含まれてた事が驚きだよ。近頃上さんの様子は?』
「変わり無し、だ。今でも馬鹿騒ぎを楽しげに見てらっしゃる。満足して頂けているらしい」
『祭りがコロッセオの役割を果たしてくれていれば良いが。飽きれば更なる興奮を求められるだろう。花見に戻ってくれるとは思えん』
 戻って頂きたい物だが。
『あの祭りが四神の収容に役立ってるのか、何か分かったか?』
「駄目だな。四神を祀り上げる事、花見を続ける事。この2つが崩壊した時点で、もう誰にも分からない」
 それがこの国の限界だ。残党が何か知っているとは思えない。
を全て剥がし、祠を分析しても良いんだが……」
『———何かが起こってからでは遅い、か』
「ああ」
『それとだ。あまりを外したままにしておいて欲しくないんだが』
「伝えておこう」
 どちらが重要か考えれば……ある程度は仕方が無い。
『……まあ良いさ』
 目の前の男は、どこからか酒瓶と二つの升を取り出した。
「……」
『安心しろ、脳が溶けたりはしないよ
 まあ、今頃こんな事で警戒する必要も無いだろう。酒が注がれた升を受け取り、口に運ぶ。
「……!」
 旨い! 滑らかな舌触りと爽やかな喉越しに程良い刺激、こんな旨い酒は飲んだ事が無い。
『どうだ、旨いだろう』
 男は、得意げに自らの升を呷った。
『少しばかりささやかな変化をもたらす機械を借りたのと、爽やかな味わいにするスライムを分けて貰ったよ』
「……君がその順を逆にする様な愚か者ではなくて良かった」
 まあ、この男を止めろというのは、エージェントや研究者達に酷な話だろう。
「私からも訊く事がある」
『何だい?』
「海外のお仲間は、上手くやっているか?」
『ああ、の事か。まあ、良くやっている』
「こちらには情報が入って来ないのだが、本当に機能してるのか?」
『隠蔽されてるらしい。これでは、爆発楽団と変わり無いんだがなあ』
「非道な実験と意味も無い殺戮をしていないだけ、随分マシだろうがね」
『さあなぁ』
「しかし、事件が起こると言われた所で、事件が起こっていないのに事前に手を打つのが困難であるのは確かだ。まあ、ただ単に"正体不明の存在からの助言で動いたとなれば威信に傷が付く"程度の考えなんだろうが。別の方法を考えた方が良いんじゃないのか?」
 そう、動けない訳ではない。事実財団は予言型のThaumielオブジェクトを複数運用している。彼らは動かないのだろう。
『私達は一枚岩ではないからねぇ。余り実働力を分散したくはないんだ。それはそちらも同じだろ?』
 どうかな。分散した結果が、我々"本部の意向通りに動かない勢力"だと思うが。彼らは統一的手段、我々財団は個々に適応した手段を使う。その違いだろう。
「話の流れで、1つ忠告しておこう。世界を捨て過ぎるな。"我々"から要請があれば、我々は動かなければならない。君とも戦わざるを得ない」
『そうかも知れないね。次からは、事前に他世界との接続を絶っておこう』
「……まあ良い」


『ああ、もうこんな時間か』
 男は、升を一気に空にした。
『さて、帰る前に一応訊くけれど』
「なんだ」
『君達は、逃げる予定は立てているかい?』
「それは、地下の大穴からの脱出か? 空の大穴からか? それとも、真っ白い大穴からか?」
 男は、歩いて私の後に回った。
『全てさ』
 飛び上がる様な衣擦れの音と共に、気配が消えた。

———方法なら探す。もう少し、時間を稼いでくれよ? "鵺"———

「……言われなくとも」
 そのつもりさ。
 犀賀は、また会いに来るのだろう。次は、何か手土産になる物を見付けておいてやらねば。改造スクラントン現実錨辺りで十分か。

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  1. portal:falsehood ( 02 Jun 2018 23:00 )
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