悪とされたモノ

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 この時期の雨は、降り始めると中々止まない。だから止む前に色々な事が起こる。今日もそうだ。
 聞き慣れた叫び声。聞き飽きたと言った方が正しいかも知れない。でも、いつもとは少し違う気がする。未知に対する恐怖ではない。絶対的強者に対する恐怖。それが感じられる様な声。

 命令が回されたのは昨日だ。"有事の際には、アレを殺せ。"皆やりたくなかった。好かれていたとか、そんな甘い理由じゃない。出来るならとっくにやっていた、ただそれだけの事。
 結局、誰も彼を満足させられなかったのだ。戦闘力、闘争本能、そのどれもが飛び抜けていた。そして、"上"は彼を管理する事を放棄した。現場に押し付けたのだ。何なら空爆で全て更地にすれば良い、その程度にしか思っていないのだろう。
 私は巻き添えで死にたくはないし、命令違反で処罰されたくもない。だからここにいる。

 気持ち悪い金属音が近付いて来る。じきここも死に覆われるだろう。
 財団は彼を抹殺対象、世界に対する"悪"だと認定した。この惨状を見れば、誰もがそれに同意するだろう。今広がっている光景は地獄その物、その事実は如何ともし難い。
 でも、本当に彼は悪だろうか。私はそうは思えない。
 彼は財団の兵士だ。元は殺戮を求めるマシーンだった。今彼は財団の兵士に襲いかかっている。この点だけを見れば、彼は間違い無く悪だ。でもそれは、財団が善だという前提があって、初めて成り立つ構図。
 私を拘束し、自由を奪い、挙げ句自由の対価として殺人の道具にした財団。あの裁判の後、世の中の奇異の目に晒されるのとどちらが良かったかと聞かれれば、ボーイフレンドを弔う時間がある分、表の世界の方がましだったかも知れないとさえ思う。
 彼は違った。まだ手を汚していない私を部下にする事を嫌った。部隊に入る事が決まってからは、殺人、逃走、潜入、サバイバル、必要な事全てを教えてくれた。彼は私の能力の利点だけを見て、私を評価してくれた。それが正しい事かどうかなんて興味無い。私にとって、彼は善だった。

 私に、自らの思う善を貫き通す強さがあれば、今ここにはいなかっただろう。これは、私が再び"ある程度の"自由を得る為のミッション。自由を人質に取られた私は、彼を止めなければならない。
 あらゆる意味で、財団は悪だ。
 これが終わって、それなりの自由が得られたとしても、きっと財団は私を再び兵士にするだろう。
 彼と私が協力すれば、財団からさえ逃げ果せるかも知れない。そうも思ったが、リスクが大き過ぎたし、私が彼と秘密裏に連絡を取るのは不可能だった。
 彼が近付いて来る。始めなければならない。
 私は、荒れ狂う怪物にファインダーを向けた。

 私の名はアイリスアベルの下編成された機動部隊オメガ-7"パンドラの箱"最後の兵士。


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  1. portal:falsehood ( 02 Jun 2018 23:00 )
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