花開く日に

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この世界は残酷だ。恵まれた人には更なる恵みを与え、恵まれぬ人には更に鞭打つ。例外はたまにいる、でも彼らと私たちとじゃ根本的にどこか違うんだろう。つまるところ、世界に好かれているかどうかだ。そして、案の上今日も私は世界に嫌われていたみたいだ。

今日、私は決心ができていた。死ぬ決心だ。どうせ生きていたって周りに迷惑をかけ、より酷くドン底へと転がり落ちていくだけなのはわかっている。それならばいっそここで幕引きすべきだと思っているにも関わらず、今まで土壇場になって恐怖に負けていた。

だが今日こそは違ったのだ。私は覚悟を決めていた。何が何でも死のうと思って駅までの道を歩き、階段を登り、ホームへと到着してその時間が来るのを待っていた。

そしてホームに放送が鳴り響く。最期の時まであと数分。手元のコーラを飲み干して歩き出そうとし、周囲の喧騒に気がついた。

──何かがおかしい。

群衆の間をすり抜け、前方へと歩いていく。手前の爺さんの頭の向こうに小さな影が見えた。だが再び群衆に飲まれよく見えなくなってしまった。

ならば。

私は後ろへと下がり、もはや誰も休息しようとはしないベンチの上に立った。これでようやく見える。いったい何が起きているというのか──息が詰まる。

それは葬列だった。並び向かう人々の一群。彼らはゆったりと線路の上を歩いていた。中心には黒い棺が運ばれていっており、その横を花を持った子供たちが歩いていっていた。この時点で既に十分すぎるほど異常だった。だがこれだけならまだ、素っ頓狂な集団の悪戯じみたものだと言うこともできただろう。だが彼らは違った。

彼らには首から上が無かった。

正確には、人の頭が無かった。彼らの首から上は全て花々に置き換わっており、その光景はまるで花畑かのようだった。

そして、ホームの誰もが呆気に取られている間に──時間は来た。葬列は飛び込んできた列車の下へとかき消えた。そこに死は無かった。列車の下には何もなく、ただ昨日と同じ日常が存在しているだけだった。

あの後、私は一本遅れた電車に乗って学校へと向かった。もう、死のうとなんて考えていなかった。あの衝撃は私の心を塗り替え、そしてまだそこに居座り続けていた。

あれ以降、気分が悪い。あんなものを見たらこうなるのが当然なのかもしれない。2時限目の半ば、神崎がいつも通りジジイに怒鳴られている辺りから頭が痛くなってきていた。

ずっと、常にあの光景が頭の中で繰り返されていた。何故首がないのか? 誰の葬儀なのか? あの棺に入っていたのは誰だ? そもそもアレは現実だったのか? 思考は渦を巻き、私の視界も同様に捻じれ、そして私は──。

気がつくと保健室のベッドで寝ていた。相変わらず気分は最悪だったが、帰る許可は貰えた。まだ視界は若干歪み、足元も少しふらついていたが、私はそのまま学校を出ていった。

家に着いてからも体調は最悪だった。そのまま自室のベッドへと倒れ込み、そして胃の中身をぶち撒けた。

その後汚れたベッドは部屋から放り出し、隅でうずくまって頭を抑えていた。痛みは更に大きくなってきており、頭が内側から弾けそうに感じていた。

ふと違和感を感じて首を見ると、段々と裂けていっていた。痛みと、恐怖と、血が混ざり合い、もはや何が何だかわからなかった。私、私は。再び今朝の光景が頭に蘇る。首無しどもが歩いていき、いや、それよりもっと前だ。爺さんの隙間に見えていた小さいもの、あれは──。

既に首の裂け目は頬まで広がっていた。床は赤く染まっていたが、もはや私は声を出すことすらできなかった。頭が割れる。喉が裂ける。私が、私が、私が、ああ、痛い。

隙間に見えたもの、それはこちらへと手を伸ばし、口なき顔で笑いかけ、私の目、私の中へと入っていた。

まだ葬列は終わっていなかった。彼女はまだ死んでいなかった。彼の国はまだ潰えていなかった。

そして光が私の頭を穿ち溢れ出る。首の千切れる音がする。思考が、痛みが、心が、命が、私の手から滑り落ちていく。私のものではなくなる。彼女のものへとなる。私の頭は彼女のものになる。私の内の彼女が花開く。そして。ああ。私が。私が。

ああ、

首が、

落ちる。


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