クレジット
タイトル: SCP-3000-JP - 抵抗権
著者:
Cerial
作成年: 2022
アイテム番号: SCP-3000-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-3000-JPはサイト-8107内の低脅威物品保管ロッカーにて保管されています。SCP-3000-JPを用いた実験を行う際は、セキュリティクリアランスレベル2以上の職員2名以上の許可を得てください。また特別実験-3000-JPを行う際には、責任者である榊原上席研究員の立ち合いの下、所定の手順に従って実験を行ってください。詳細については、榊原上席研究員もしくはサイト管理者へ問い合わせてください。
説明: SCP-3000-JPは縦7.1cm、横10.2cm、高さ4.6cmの木製の箱です。表面には幾何学的な模様が施されており、また箱を開けるための機構は確認できません。SCP-3000-JPは未知の力により浮遊しており、固形物を接触させることで移動させることが可能です(気体及び液体の接触による移動は現在まで確認されていません)。またX線を用いた透過検査により、当該オブジェクトの内部には人間のものと推定される1本の歯と、折り畳まれた1枚の紙片が存在することが分かっています。
SCP-3000-JPの更なる異常性は、当該オブジェクトに覚醒状態の人間が接触することで発現します。SCP-3000-JPに接触した人間(以下、対象と表記)は、当該オブジェクトの側面が複雑に可動し、上部の蓋が開くことで内部から漏れ出る多量の光を知覚し、意識を失います。その後、対象はSCP-3000-JP-Aと呼称される異空間に移動していることを認識します。この際、外部からの観察ではSCP-3000-JPが可動している様子は確認できず、当該オブジェクトに接触した対象は睡眠状態に移行します。対象がSCP-3000-JP-Aから帰還する以外の理由で覚醒した事例は確認されていません。また特筆すべき事項として、SCP-3000-JPに接触した対象は、覚醒するまでの間ごくわずかにヒューム値が上昇することが確認されています。
SCP-3000-JP-Aの外観は我々の住む世界と類似していますが、SCP-3000-JP-A内において地名等が記載された文字情報は発見できず、また場所を特定する試みも失敗に終わっています。前述のイベントにより対象が移動させられるSCP-3000-JP-Aの場所は、毎回違う場所であることが確認されています。また、SCP-3000-JP-Aでは常時雨が降っており、後述するSCP-3000-JP-B以外の動物は確認されていません。SCP-3000-JP-Aに移動していることを認識した対象は、付近でSCP-3000-JP-Bと呼称される人型実体と接触します。SCP-3000-JP-Bは同時に1人しか出現しません。SCP-3000-JP-Bの姿はイベントの度に変わり、またイベントの途中で変わる事例も確認されています。対象と接触したSCP-3000-JP-Bは対象に友好的に接し、「対象を現実世界に帰還させる」旨の発言をした後、対象がSCP-3000-JP-Bに追従することを促します。またSCP-3000-JP-Bは2本の傘を携帯しており、片方はSCP-3000-JP-Bが常に使用し、もう片方は前述の発言の後に対象に手渡されます。この傘には異常性は確認されておらず、対象が傘の受け取りを拒否する・傘をささない等の選択をしたとしてもイベントは進行します。
SCP-3000-JP-Bは対象を帰還ポイントまで先導します。SCP-3000-JP-A内における対象の初期位置から帰還ポイントまでは、徒歩でおよそ30分ほどの時間で到着します。SCP-3000-JP-Bの行程を無視してSCP-3000-JP-A内を探索することは可能ですが、本来の行程から1kmほど離れた位置には空間を横切る何らかの力場が存在しており、その先へ行くことは不可能だと考えられています。なお対象が先導を無視した際にもSCP-3000-JP-Bは対象に追従し、対象が元の行程に戻る意思を見せることで再度先導を開始します。また先導中のSCP-3000-JP-Bに何らかの会話や質問を試みた場合、SCP-3000-JP-Bは基本的にそれに応じます。SCP-3000-JP-Bの口調は例外無く丁寧で温和であり、対象を敵視・侮辱・軽蔑するような言動は確認されていません。またSCP-3000-JP-Bは財団及び財団の収容するオブジェクト等についての知識も有していることが確認されています。
対象とSCP-3000-JP-Bが帰還ポイントに到着すると、SCP-3000-JP-Bは当該位置に存在する装置の内部に入ることを対象に求めます。装置の外観は苔むした金属製の円筒であり、前面に扉が備え付けられています。製造者や製造年等の情報は確認できません。装置はイベントにより直立している・横たわっている等の違いはありますが、外観の証言が一致しているため、同一もしくは同じ型の装置であると考えられています。対象が装置の内部に入ると、SCP-3000-JP-Bは対象に別れの挨拶を告げ、装置の扉を閉めます。その後対象は速やかに意識を失い、現実世界において覚醒します。
SCP-3000-JPは██県██市の██山の登山道において、財団関係者ではない友人と登山を行っていた休暇中のエージェントによって発見されました。発見時、SCP-3000-JPは地表から高さ1.3mの位置に存在していたことが記録されています。また、発見時に当該エージェントに同行していた人物には、クラスA記憶処理が施されました。
実験記録001
対象: D-8130001
実施方法: 薄手のビニール手袋を着用してSCP-3000-JPに触れる。
結果: 何も起こらなかった。
分析: 直接SCP-3000-JPに触れなければ、イベントは発生しないようだ。 -榊原上席研究員
実験記録002
対象: D-8130001
実施方法: 耐久性の確認のため、SCP-3000-JPにカッターナイフで傷をつける。
結果: SCP-3000-JPの表面に傷がついた。特異性が失われる可能性を考慮し、実験は中止された。また、その後自己修復される様子は確認できなかった。
分析: SCP-3000-JPには耐久面に関する特異性が無いことが判明した。以降、当該オブジェクトに危害を加える実験は禁止とする。 -榊原上席研究員
実験記録003
対象: D-8130001
実施方法: 対象をSCP-3000-JPに接触させ、イベント終了後にインタビューを行う。
結果: SCP-3000-JPに触れてから37分で覚醒。
インタビュー記録003
対象: D-8130001
インタビュアー: 榊原上席研究員
<録音開始>
榊原上席研究員: それでは、SCP-3000-JP-Aで体験したことを教えてください。
D-8130001: ああ。まず目が覚めた場所なんだが、町の中だった。都会って感じでは無かったな。ビルは点々と建っていて、周りの家のほとんどは一軒家かアパートだ。俺は大通りの脇の歩道に立ってた。でも車は全く走ってなかった。それで付近を見渡してみたら、男が立ってたんだよ。
榊原上席研究員: その男性の見た目は?
D-8130001: 30歳ぐらいの、普通の日本人だ。黒のコートを着てて、あとは傘を持ってた。そうそう、雨も降ってたな。それで、その男が話しかけてきたんだ。「こんにちは。ご機嫌いかがですか」って。知らない場所で、知らない奴にそんなこと言われたらさ、困るしかないよな。でもそいつは、俺を元の世界に帰してくれるって言ったんだ。何も分からないから、従うしかなかった。それで俺はそいつから傘を受け取って、一緒に歩き始めたんだ。
榊原上席研究員: 続けてください。
D-8130001: 特に何も話すことはないからさ、無言のままついていったんだ。そのまま30分ぐらい歩いたかな。ああ、でも一度だけ、向こうから話しかけてきたな。「好きだった食べ物はありますか」って。
榊原上席研究員: 何と返答したのですか?
D-8130001: ██████のバーガーとポテトって答えた。そしたら、「そうですか、美味しそうですね」とだけ言われた。……まあそれはいいだろ、それでそいつについていった先は、小さな公園だった。滑り台と砂場ぐらいしかない、本当に小さな公園だ。でもその真ん中に、明らかに場違いな機械が置いてあったんだよ。なんて言えばいいのか……SFに出てくる冷凍睡眠装置みたいな、筒形の機械だ。でも近くに寄って見てみると、苔が生えててさ。かなり古びてた。それで、男がこの中に入れって言ってきたんだ。ここまで来たんだから入るしかないだろ。扉を開けてみたら、中は綺麗だった。そこに寝そべったら、男が最後に「好きだったものをまた食べられるよう、祈っています」とか言って扉を閉めたんだ。すぐに猛烈な眠気に襲われてさ。後は知っての通りだよ。起き上がったら、あんたが目の前に座ってた。
榊原上席研究員: なるほど。インタビューを終了します。
<録音終了>
分析: これまでのイベントの結果から、こちらが刺激しない限り、SCP-3000-JP-Bが危害を加えてくることはないと判明している。次の実験では、SCP-3000-JP-Aの範囲について調査する。 -榊原上席研究員
実験記録004
対象: 野口研究員
実施方法: 対象をSCP-3000-JPに接触させ、イベント終了後にインタビューを行う。対象には、SCP-3000-JP-Bの先導を無視し、SCP-3000-JP-A内の探索を行うよう指示している。
結果: SCP-3000-JPに触れてから1時間23分で覚醒。
インタビュー記録004
対象: 野口研究員
インタビュアー: 榊原上席研究員
付記: 対象はイギリスで15年間生活していた経験があり、日本語よりも英語を得意としている。
<録音開始>
榊原上席研究員: それで、SCP-3000-JP-Aの範囲は判明しましたか?
野口研究員: その前に、一つよろしいですか?私が接触したSCP-3000-JP-Bなのですが、イギリス人の女性に見えました。私に接触してきた際も、イギリス式の英語を話していました。
榊原上席研究員: ふむ、留意しておきましょう。他に何かありますか?
野口研究員: いえ、SCP-3000-JP-Aの範囲の話に戻りましょう。SCP-3000-JP-Bの先導に従ってしばらく歩くと、川と橋が見えました。丁度いい目印だったので、そこを起点にして探索を行うことにしました。
榊原上席研究員: 行程を外れることについて、SCP-3000-JP-Bは何らかの反応を見せましたか?
野口研究員: はい。というのも、直接聞いたのです。「この場所を少し探索したいから、待っていてくれないか」と。そうしたら、「でしたら、私も付いていきましょう」と言われたため、了承してそのまま探索を開始しました。私が移動していた場所は地方の町で、水田が7割、民家が3割といった感じでした。区画が分かりやすかったので、水田に沿って真っ直ぐに移動することにしました。途中あった民家も調べてみたのですが、住所等の情報は発見できませんでした。
榊原上席研究員: インターホンは鳴らしましたか?
野口研究員: はい。ですが、応答は得られませんでした。家の敷地外に出ると、外で待機していたSCP-3000-JP-Bから「この世界に、私以外の人間はいません」と言われました。実際、探索中に他の人型実体を見ることはありませんでしたし、水田も観察してみましたが、生物は発見できませんでした。
榊原上席研究員: なるほど。続けてください。
野口研究員: それで、探索を始めてから20分ほど経った辺りでしょうか。私の目の前に、壁が現れたのです。
榊原上席研究員: 壁?
野口研究員: はい、といっても普通の壁ではなく、何というか……水のように小さく波打っていて、透明な壁です。現れたと言いましたが、おそらく遠くからでは見えなかっただけで、最初からあったのだと思います。その壁は縦方向にも横方向にも伸びていて、壁に沿って少し歩いてみましたが、終わりがないようでした。それで、その壁に触れてみたのですが……。(沈黙)
榊原上席研究員: 何が起きたのですか?
野口研究員: それが……触れた場所から波紋が広がって、手が壁をすり抜けました。感触はありませんでした。そのまま手を押し込んだのですが、そこで……強烈な違和感を感じました。今でもよく覚えています。ふと、目線を横の水田に向けたのです。そうしたら、水田の水が、緑色の稲穂が、全く動いていませんでした。まるで時間が止まったかのように。即座に後ろのSCP-3000-JP-Bを見ようとしたのですが、身体が……極めて緩慢にしか動かないのです。直感的にこの壁に触れたせいだと思い、腕を引き抜こうとしました。本当に少しずつ……少しずつ、腕が抜けていきました。完全に引き抜くまでに、10分ほどかかった気がします。手が壁から離れる頃には、時間の流れは元通りになっていました。もう調べるべきことは無かったため、SCP-3000-JP-Bに行程に戻りたい旨を伝えました。その後は通常のイベント通りであり、特筆すべきことはありませんでした。
榊原上席研究員: SCP-3000-JP-Bは、壁に触れたことについて言及してきましたか?
野口研究員: いえ、特に何も。
榊原上席研究員: 分かりました。インタビューを終了します。
<録音終了>
分析: SCP-3000-JP-Aにおいて自由に行動できる範囲は、限定的であることが分かった。またSCP-3000-JP-Bは、実験対象に合わせて姿を変えている可能性がある。次の実験では、この件についての検証と、SCP-3000-JP-Bへのインタビューを行う。また、次の実験からは対象の脳波を測定し、それを映像化する装置を使用することとする。 -榊原上席研究員
実験記録005 - 日付2022/05/17
対象: 翠川研究員
実施方法: 対象をSCP-3000-JPに接触させる。対象には、脳波を測定し、映像化する装置を取り付けている。対象には、SCP-3000-JP-Bに対して、以下の内容について質問するよう指示している。
・SCP-3000-JP-Bについて
・SCP-3000-JP-Aについて
付記: 対象は元財団ドイツ支部の研究員であり、日本語よりもドイツ語を得意としている。
<記録開始>
[対象は海岸沿いの堤防の歩道に立っている。横には道路を挟んで民家があり、その奥には山が見える。また、雨が降っている]
SCP-3000-JP-B: こんにちは。
[対象が即座に振り向くと、SCP-3000-JP-Bが立っている。暗いブロンド色の髪をした20歳ほどと思われる男性が立っている。また、話している言語はドイツ語である]
翠川研究員: ええ、こんにちは。
SCP-3000-JP-B: あなたには説明は要らなそうですね。元の世界に帰るならついてきてください。
[若干の動揺]
翠川研究員: あなたたちは、ここに人物が来ていることを記憶しているのですか?
SCP-3000-JP-B: そういうことを聞くために、あなたはここへ来たのでしょう?歩きながらでよければ話しますよ。さあ、これをどうぞ。
[対象に傘を手渡す。対象は受け取り、二人は歩き始める]
翠川研究員: 早速ですが……あなたたちは一体何者なのですか?
SCP-3000-JP-B: 自分をうまく説明するというのは難しい事ですが、そうですね。私はあなたによって呼び出された者、といったところでしょうか。
翠川研究員: どういう意味ですか?
SCP-3000-JP-B: 私たちはコピーのようなものです。ある1人のオリジナルの人間に残されたものから生まれた、コピーです。しかしただのコピーではなく、私たちは少しずつ違っていて、同じものは生まれません。
翠川研究員: オリジナルの人間、というのは?
SCP-3000-JP-B: どこからコピーしているかは、あなたも知っているのでは?それが誰なのかは私にも分かりませんが。
翠川研究員: すみません、具体的にお願いします。
SCP-3000-JP-B: 箱の中にあるものですよ。その持ち主が誰であったかは分かりませんが、おそらくあなたの世界の人物ではないでしょう。
翠川研究員: あなたは、箱を……いや、私たちがどこから来たのかを知っているのですか?
SCP-3000-JP-B: 詳しいことは知りません。ですが、あなたの世界が危機に満ちていて、それでいてあなたはそれを防ごうとする組織に所属し、その一環としてここに来たことは知っています。
[動揺]
翠川研究員: どのようにして、そのことを知り得たのですか?
SCP-3000-JP-B: 初めから知っていたんだと思います。あの箱が、生まれた時から。
<中略、1分>
翠川研究員: この世界は、一体何なのでしょうか?
SCP-3000-JP-B: 私の知る限りでは、この世界は誰かが箱に触れた時に生み出されます。そして、その誰かが元の世界に帰ると同時に、消滅します。
翠川研究員:
<記録終了>
分析:
補遺: 財団の新人職員研修プログラムにSCP-3000-JPを利用する「特別実験-3000-JP」計画が提出され、現在審議されています。
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