ルーキーコン2020作品「Alter egoは嗤う」

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アイテム番号: SCP-XXXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPは現在サイト-8180の低脅威物品管理ロッカーに保管されています。SCP-XXXX-JP-1の閲覧には、担当職員と対象職員の許可が必要です。

説明: SCP-XXXX-JPは外見に異常の見られないノートパソコンです。「平和でありふれたいつもの日常」という名前のフォルダのみが保存されており、フォルダ内部閲覧以外の操作は実行できません。
フォルダ内部には不定期にテキストデータが追加されます。データはDクラス職員を含む財団日本支部職員のうち1名(以下、対象と呼称)の本名と、短編小説のような文体の文章(以下、SCP-XXXX-JP-1と呼称)で構成されています。SCP-XXXX-JP-1は共通して異常存在、SCPオブジェクトなどが存在しない世界(以下、世界-XXXXと呼称)での日常を描写したものになっており、これまでに追加されたSCP-XXXX-JP-1と対象へのインタビューから、SCP-XXXX-JP-1は対象それぞれの想像する、世界-XXXXとそこで生きる対象をモデルに作成されていると考えられています。
SCP-2727-JPの発見経緯は不明で、2020年5月1日時点で3███個のSCP-XXXX-JP-1が保存されています。

補遺1:SCP-XXXX-JP担当職員の報告により、SCP-XXXX-JP-1の中には対象と一人称、趣味嗜好が違うなどといった特異性がみられるものが発見されました。
以下は特異性のあるSCP-XXXX-JP-1の対象の一人である拓葉博士へのインタビュー記録です。

対象: 拓葉博士(サイト-8127の心理カウンセラー)

インタビュアー: エージェント・二条(SCP-XXXX-JP担当職員)

<録音開始>

インタビュアー: あなたが対象となった文章は読みましたね?尋問ではないので確証がなくてもかまいません。なぜあのような文章ができたのか心当たりはありませんか?

拓葉博士: ええ、読んだときは僕もぞっとしましたし、自分の心からこんなものが作られたとは信じたくありませんでしたが、後からよく考えてみると心当たりがないこともないんです。

インタビュアー: あるのですか?

拓葉博士: はい。ところで二条君も担当職員として例の文章を読んだことはありますね?質問に質問を返すようで悪いのですが、読んだときにあなたが抱いた感想を聞かせてもらえますか?

インタビュアー: (沈黙)あまり面白いものではありませんでした。みんな異常だらけの毎日に疲れているんでしょうね。でも変わり映えのない日常をあそこまで冗長に表現されるのははっきり言って不快です。

拓葉博士: ハハ、ありがとう。実を言うと私も、何度か許可を受け読んだとき君と同じような感想を抱きました。あれを読んだ他のほとんどの人もそう感じるでしょう。

インタビュアー: それが理由ですか?でもそれなら僕を含めた多くの人の文章が

拓葉博士: 無論それだけではありません。私自身意識はあまりしていなかったのですが、おそらく私はそのような感想だけでなく、そのようなつまらなさに対して破壊衝動の様なものを感じてしまったんでしょう。無論行動には起こしませんでしたが、この心は通り魔殺人という形で文章に現れてしまった。恥ずかしい話です。

インタビュアー: なるほど、ありがとうございました。ところで(沈黙)これは不快だったら答えていただかなくても結構なのですが、拓葉博士はやはり、もし異常存在が存在しない世界が実現すればこの文章のような凶行に走ってしまうのでしょうか?

拓葉博士: ふむ、残念ながら確証のある結論は出しかねますが、一つこのオブジェクトについて想定していることがありますのでそれを話しておきます。心理学の知識になりますが構いませんね?

インタビュアー: はい、大丈夫です。

拓葉博士: 自覚があるかは人によりますが、我々は常日頃もしもの状況での自分の在り方のシミュレートを行っています。もしあの時何かをしていれば、あるいは世界がこうだったらなどといったものですね。基本的に無意識化で行われるそれには本人のこうありたいなどという意思は介入せず、ゆえに意識に表面化することも滅多にありません。周囲の環境や出会いとは人格の形成に他なりませんから、このシミュレートの中で本来の人格とは違う人格が形成されることもあるでしょう。おそらくですがSCP-XXXX-JPはこの表面化しない対象の意識を文章化することでSCP-XXXX-JP-1を作成しているのではないのでしょうか。つまりSCP-XXXX-JP-1とは対象の考えであって対象の考えではないといったところですね。自己弁護のつもりはないのですが、私のこの考えが正しければ文章の内容が対象の人格をはかる判断材料になるとは思えません。

インタビュアー: なるほど、ではそのように報告しておきます。

<録音終了>

補遺2: 以下は、宮賀博士の許可のもと転写した、宮賀博士を対象として作成されたSCP-XXXX-JP-1の全文です。

朝6時に起きて、ジョギングに行き、朝ご飯を食べ、身支度をして、7時半に家を出る。たまにいつもと違う道や交通機関を使って会社に向かう。仕事に趣味は持ち込まない。淡々とやるべきことをやるだけ。昼休み、同僚の話の中心になろうとするけど、趣味はないと公言してしまった僕に話題を求めてくれる人はいない。仕事を終え家に帰る。コンビニで買った飯を食ってから、寝るまでにいつ辞めてしまうかもわからない趣味を求めてSNSをあさる。
趣味はないと言っているが、その理由は若いころから趣味といえるものを求めては飽きるという日々を過ごしていたからだ。かといって変わらない日常を楽しく生きることもできず、生きるのに向いていないのかと思ったことは数えきれない。こんな僕でも、何かを全力でやろうとどこかで決心できていたらこの現状も変わっていたはずなのに。
非日常が欲しかった。こんな僕の一挙手一投足も世界の存亡に大きく関わるような非日常が。そんな中僕はとある小説サイトのようなものが流行っているのを見かけた。参加者のみんなが僕のように非日常を求めて、魑魅魍魎跋扈する世界に生きる自分を描いていた。
すぐさま僕は、僕の生きたい世界、僕の理想の在り方を分にし始めた。リセットされる世界を前に、自分たちを忘れないようにとメッセージを送る自分、いずれ自分と同じように死ぬことになる誰かに向けてすべてを終わらせる弾丸を託す自分、どう対策を練ってもいつかは絶対に成す術もなく滅んでしまう世界に絶望する人々、とにかくたくさんの自分、たくさんの世界を書き綴った。気づけば夜はもう明けてしまっていた。
会社なんてもうどうでもよくなって、自分の書き殴った非日常を読み返した。

そして、ひどく虚しくなった。
非日常を求めて書いた僕の物語を読めば読むほど、自分がどうしようもなく何も起こらない日常を生きているのだと思い知らされた。
気づいてしまった途端、今日はもう何もしたくなくなった。会社に仮病の電話をした。

担当職員の皆さんが用意してくれたデータを疑うつもりはありませんし拓葉博士の推測も理解はしているのですが、やはりこんな文章が私の脳内から現れたとは考えたくありません。今日中に精神検査を受けるつもりだし、休暇届けも出すつもりです。
つい先日までこのオブジェクトは異常存在に囲まれ働く職員の平穏を求める心が作ったのではないかと考えていたのですが、絶対にありえません。誰かの心が作り出したのだとしたら、それは多分どうしようもない悪意です。
自分の心から出た内容だから理解できるのかはわかりませんが、あれを読めば読むほど、自分たちが救いようがないほど異常にまみれた世界に生きていることを思い知らされてしまうんです。
 ──宮賀博士


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