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「なんで、君が」
荒野という表現がよく似合うその場所で、声を発したのは一人の女性だ。
桃色の髪に、大きな瞳。高校生のように思えてしまうが、その風貌は、現実離れしている。
「”君”じゃなくて”███博士”だろう?あんたが理事になったとしても、俺がこんな見た目だとしても、俺はあんたより少しばかり年上で、あんたよりも先輩なんだ」
問いに対して、答えたのは一人の少年だった。少女から10メートルは離れた位置にいるが、その声はしっかりと少女に届く。緊張しているような少女と違って、まるで、友人と軽口を叩き合っているかのように言う。
蜜柑色の特徴的なくせっ毛。深い知性を感じさせる菫色の瞳。
小学生のように見えるが、こちらも少女同様、現実離れした風貌と言えよう。
少女がこの空間に現れたのは、ほんの数十秒前。そして、この人物はつい先ほど、少女の目の前に突然姿を現した。
少女はこの、子どものような見た目の人物を知っている。
サイズの合っていないだぼだぼの白衣は、血や焼け焦げた跡で汚れているし、いつもそのポケットから姿を覗かせていたタバコは見当たらないが、確かに、自分の前に突然現れた少年は、自分の知り合いと同じ姿だった。
「生きて……いたのかい」
少女の問いかけは、もしそうならどれだけよかったか、という否定的な確信を持って発せられた。
少女にとって、この人物は既に故人だ。死の瞬間を見たわけではない。だが、自分の中には確かにこの人物が死んだという確信がある。
だから、少女は質問と同時に、目の前の少年に対して手のひらを向ける。攻撃の準備だ。
「おいおい──」
少年が言葉を発するとともに、少女の掌から炎が撃ち出される。
ためらう様子は見受けられなかった。
それは、目の前の少年と同じ姿をした自分の知り合いは、もうすでに死んでいるはずだという確信があったからだろう。
だから、目の前の少年は自分の知り合いではない。そうだとしたら、知り合いの形を真似た、仇敵からの刺客である可能性が高い。そう考えて、攻撃を放った。
「ごめんね。ボクは死ぬわけにはいかないんだ。悪知恵をつけてきたようだけど、死んだ彼が、こんなところにいるはずないからね」
手加減はなかった。だというのに、かなりの勢いをつけて飛んでいく炎を、目の前の少年は軽々と跳んで避けた。
自分の身長の二倍程度の高さまで跳躍し、そのまま滞空するという、人間にはできないような動きに驚きながらも、少女は次の攻撃を放つ。
「そっちじゃねぇよ」
少年は、自身に向かう剣を全て払い落とし、少女のほうへと滑空してきた。
「突然レベルが上がりすぎだよ……」
自身の攻撃が通用していないことを認識し、呻く少女に、少年は接近する。
少女の対応は、間に合いそうにない。そして目を瞑ってしまう。
諦めたわけではない。諦めていいわけがない。それなのに、この状況で彼女が目を瞑ってしまったのは、しかし、仕方のないことであろう。
戦闘経験はないんだけどね。数年前に彼女が発した言葉に嘘はなかった。それ以来、いくらか戦闘を行うことはあったが、それは100には到底届かない程度であったし、そのほとんどで、彼女が追い込まれることはなかった。
そんな中、自分が対応できないような速度で、飛んでくる相手。萎縮して目を瞑ってしまうのは当然のことであった。
直後、地響きのような巨大な音とともに、少女は体に浮遊感を感じる。すぐにあの少年のせいだと気づいたが、目を開くことはできない。
地響きは、大きさを変えながらも鳴りやまない。
「このままやるぞ」
すぐそばから、少年の声が響いた。何のことかわからず目を開くと、目の前には少年の顔がある。少年はある一点を見つめていた。
少女がそちらに目を向ける前に、少年が再び動いた。
空を飛んだまま、少年は目を向けている方向に加速していく。
そのせいか、正面から風が吹き付け、少女は開いた瞼を再び閉じるほかなかった。
その後も少年は加速を続け、しかし、何かの音とともに動きが止まる。
その、大木が切り倒されるかのような音と引き換えに、地響きはやんだ。
「ほい、終わりだ」
よくわからないままに地面に降ろされた。
少女の目の前には、ゲームにでも出てきそうな化け物が倒れている。
「えーと。どういうことなのかな?」
少女は、考えていたのとは大きく違う展開に驚きながらも、そう尋ねる。
少年が自分を助けたくれたかのような現状を見てか、先ほどまでの警戒はほとんど解けていた。
「とりあえず、場所を移させてもらおうか」
先ほどの出来事から、数分。
二人は、それぞれにとってなじみが深い場所にいた。
サイト-████研究棟研究室13号。SCP-████-FEに対する最後の砦。少女にとって、もう存在しないはずの場所だ。
「それで?」
少年は、パソコンの前の椅子に座りそう尋ねる。
「空の旅は快適とは言えなかったかな。あと、そっちの椅子のほうが座り心地が良さそうだから変わってくれない?」
少女はそう軽口をたたく。もはや一切の警戒はない。
目の前の少年が███博士であると、確信したことが大きいだろう。
「あのなぁ──」
「タバコはだめだからね。はい没収」
ため息を吐き、机の中からタバコを取り出そうとする博士に対し、少女はキャスター付きスツールを乗りこなし、そのタバコの箱を盗み取る。
しかし、刹那のうちに、それは博士の手の中に収められていた。少女が気付かない速さで奪い取られたのだ。
「ふざけてないで本題に入るぞ、千凶理事?重要な話だ」
「……はいはい。じゃあ、説明頼むよ███博士。とりあえず、どうして君が生きてるのかってことから」
千凶と呼ばれた少女は、しっかりと椅子に座り直し、博士と呼ばれた少年に向かい合う。
「その前にだ」
「なんだい?」
「せめて謝るのと感謝ぐらいはしろ」
「……それは、何にだい?」
少女の返答は、一瞬遅れた。
「さっき、あんたが俺を攻撃したことと、俺があんたを助けたことにだな」
それに対して、博士の返答は淀みない。
「……そうだね、手助けありがとう。助かったよ。攻撃については、すまなかった。ただ、君が何者かわからなかった以上、財団理事としてあの選択が最善だったと今も思っている」
「そうだな。そこについて責める気はない。とりあえず、一つずついこうか」
そう言って、博士が話し始める。
「一つ目。確認だが、お前はここがどこだと思っている?」
最初に飛んできた確認に、千凶は不意を突かれた。
だが確かに、最初に確認しなければならないのは、そのことについてだ。
死人との邂逅に思考を支配され、ほとんど気に留めていなかったが、考えを改める。
「閉じ込められたSCP-████-FE-3空間内部が、変質したんだと思ったんだけど。仕組みはわからないけど、そうじゃないなら説明がつかないしさ」
軽々しい口調とは裏腹に、千凶はかなり深刻そう答えた。
「半分……いや、四分の一くらいは合っている。だが、閉じ込められた世界っていうのは無理があるかもな。ライプニッツ現実圧縮壁は今やもう機能していない。というか、必要がなくなった。ここはもう、SCP-████-FEに食われる新たな世界だ」
博士は淡々とそう告げるが、対する千凶は内心穏やかでなかった。理解が追い付いてない部分が多い。それでも、博士の言っていることが不味いということは、すぐに分かったからだ。
「どういう意味かをきちんと説明してくれないか。時間があるから、わざわざここに連れてきたんだろう?」
もし、千凶の頭に最初に浮かんだこと──内部空間の大きな変性──が発生したならば、博士はわざわざこんな言い方をしないだろう。空間の変性自体は、世界を渡る前から、何度も起こってきたことだ。
それに、博士によって運ばれた距離は、数百メートルどころの話ではない。少なくとも、今まで自分が体感してきたようなSCP-████-FE-3の変性とは違っていた。
だとすれば、千凶には想像しえない出来事が起こった可能性が大きい。
「そうだな、時間はかなりあるほうだ。だが、ゆっくりじっくり話せるほど暇じゃない。必要なことだけ話させてもらう」
とりあえず、これを見てくれ。博士はそう言って、パソコンの画面を壁に映し出す。
白い壁に投影されたのは、いくつかの文書ファイルだ。
「これは──」
「今回の異常現象に対する報告書だ。遅くなったが、先ほどの質問に答えさせてもらおう。生きていたのか?定義にもよるが、その答えはいいえだ」
「いいえ?今君は生きていないってことかい?」
千凶は聞き返す。確かに、自分の感覚に従えば博士は死んだのだが、目の前にいる人物は博士としか思えない。
それに対して、博士はパソコンを操作しながら答えた。
「これに見覚えは?」
壁に大きく映し出された、一つの報告書に千凶は息をのむ。
見覚えはあった。SCP-████-FEについての情報を集めていた際、千凶は少しでも関連性が疑われるオブジェクトについて、情報を集めていた。
その中で、最も印象に残っているうちの一つがこのオブジェクトだ。
SCP-███-FE、終わ█████譚。
目の前に映し出されている報告書では、“<危険を伴う救命活動を行ったことで死亡した人物(以下SCP-███-FE-B)によって、命を救われた過去を持つ人物(以下SCP-███-FE-A)>の前に出現する、黒い革表紙の本”という説明がなされている。
「あるみたいだな?じゃあ、言わなくてももうわかるだろう」
千凶の様子を見て、博士がそう告げる。
さすがに、ここまで情報がそろえば千凶にも理解できた。
SCP-███-FEの異常性には続きがある。SCP-███-FEとSCP-███-FE-Aが接触した場合に、その異常性は発生する。
その異常性はSCP-███-FE-Aの消失と、SCP-███-FEの文章の追加なのだが、その文章に記されている内容は、“SCP-███-FE-Aが危機的状況に晒された状態で始まり、それを前にしたSCP-███-FE-Bが命懸けの救命を行うかの選択を迫られるというもの”だ。
文章の追加は、一定期間ごとに行われ、<最終章>が綴られるまで終わることはない。
最終章が綴られた際には、SCP-███-FEの傍らにだまざまな死因によって死亡しているSCP-███-FE-Aが出現する。
概して言うとこういう内容のもので、消滅している間SCP-███-FE-Aがどこに存在しているか等は判明していないが、記述内容から、SCP-███-FEが作り出した異空間で、記述内容通りの出来事が起きているのではないかと言う予測は立てられていた。
そして、この場にいる二人の少年少女は、それぞれSCP-███-FE-BとSCP-███-FE-Aの条件を満たしている。
「ここは、SCP-███-FEの内部空間ってことかい?」
「さっきのと合わせて半分くらい正解だ。俺は、死んでいるからこそ、ここにいるってことだな」
「でも、それは──」
千凶は声を荒げる。
確かに、博士の言っていることはわからないわけではない。だが、そんなことがあるはずないのだ。
「──それはおかしい。だって、SCP-███-FEはもう存在しないんだから」
SCP-███-FEだけではない。SCP-0██-FEもSCP-3███-FEも、存在しない。異常と呼べる存在はSCP-████-FEを除いてすべて消え去った。
SCP-████-FE-1が収容違反を起こして、世界中にSCP-████-FE-1が拡散した。拡散したSCP-████-FE-1は、世界そのものを飲み込み始め、飲み込まれた世界はSCP-████-FEの持つ世界観に塗り替えられた。
そして、その世界観にふさわしくないものは消えていった。
残ったのはSCP-████-FE由来の異常性だけだ。そして、最後に残った異常性は、人間への特異な能力の発生と、様々な物語に登場する架空の生命体の出現のみであった。
千凶は大声を上げはしたが、しっかりと考えたうえで、そんなはずは無いと断言したのだ。
「その通りだ。“SCP-███-FE”はもはや存在しない」
百聞しても矛盾する発言だった。書き写して一見しても矛盾しているかもしれない。
だが、堂々としたその宣言に、千凶は口を閉じた。
「というよりか、SCPと呼ばれていた代物はSCP-████-FE以外、なくなってしまった。だが、E████-6██世界はそうじゃなかっただろう?」
E████-6██というのは、千凶がSCP-████-FEとともに移動した先の世界のことだ。千凶は、博士が何を言いたいのか理解した。
向こうの世界のオブジェクトが原因だろう、と。
「もちろん、E████-6██にあるのが、SCP-███-FEと全く同じものだとは限らないが。そうだな、紛らわしいし“██譚”と呼ぼうか」
千凶はE████-6██世界のオブジェクトに詳しいわけではない。向こうの財団職員からしたら、あくまで自分はSCPオブジェクトであり、協力関係にあっても、親しい隣人というわけでは無いのだ。
しかし、全く知らないというわけでもない。
「それは……あるかもしれないね」
千凶の頭の中に浮かんだいくつかの情報が、博士の推定を後押しした。
だが、千凶の疑問はまだ多く残っている。
「でも、ボクはSCP-█……じゃなくて、██譚に触れた覚えはないよ」
「あんたが寝てる間にぶつかったんじゃないか?寝相悪かっただろ?」
「寝ていたわけじゃないからね。空間内の定期的な調査の途中で突然。気づいたときには変な荒野だったよ。寝てる間ってことはあり得ない」
「じゃあやっぱり、触れてないけど取り込まれた。っていう可能性が高いな」
「取り込むための条件が、SCP-███-FEと██譚で違うってことかい?」
博士は、少し考えるようにしてから呟く。
「その可能性もあるが、俺はたぶん違うだろうと考えている」
「なぜ?」
「それよりも、可能性が高い予測が立ったからだ。そっちも確証が持ててるわけではないが」
「それはどういうものかな?」
博士は再び口を噤む。
そういう性格なのだ。確証を持てるまで、周りに意見を伝えない。報告書や意見書、提言等も、作成だけして、机の中に眠らせて置く。
よっぽど切羽詰まった状況でなければ、博士の意見が周囲に伝えられることはなく、ぎりぎりになって人前に出てくる。そして、その予測や推論は、ほとんど完璧に当たっているのだ。
うんうん唸りながら、なかなか口を開こうとしない博士に、千凶がしびれを切らした。
「極東支部理事として、説明を求める。何、間違ってても大したことにはならない。██譚という仮定が正しいなら、ここは完全な異世界で、たいていの失敗はここにいるボクたちにしか……」
そこで、千凶の言葉が途切れた。一つ、あることに気付いたために。
千凶は最初、自身が突然荒野に立っていた原因を“SCP-████-FE-3空間内部が、変質した”ため、と考えていたが、それには理由があった。
千凶はSCP-████-FE-3空間内から出られないのだ。SCP-████-FEが完結した物語で、自身がその登場人物である限り、そこから脱出することはできない。
そして、もし脱出できたのだとしても、それは楔が物語から外れることを意味する。
それは、あってはならないことだった。
「──博士は、何周目なんだい?」
千凶の口から発せられたのは、唐突な質問だ。
先ほどのように大きな声を上げたわけではなかった。だが、鬼気迫るものを感じさせる言い方であった。
それにはもちろん理由がある。
博士は、██譚と断定した。断定したからには、それなりの確信があったのだろう。
██譚だと断定できる要素は、現時点で千凶が体感した中にはほとんどない。死んだはずの博士が生きていて、自分を助けたぐらいのものだ。
だが博士は、異常の原因が██譚だと確信している。それは、博士がすでに同じような出来事を、繰り返しているからだと千凶は考えた。
そして、同時にまずいとも思った。すでに何回か繰り返しが起きているなら、それは向こうの世界で日数が経過しているということになる。
「何周目?ああ、なるほど。……14周目だ」
「つまり向こうだと14日かな」
絶望的な日数ではない。むしろ、可能性が大きいほうだと千凶は考える。ただし、SCP-███-FEから、生きて出てきた人物が存在しないことに、目をつぶればだが。
「ちょっと待て。何を考え込んでいる」
「タイムリミットについてだよ。SCP-████-FEが向こうの世界を食いつぶすまでの」
「向こうの世界?タイムリミット?何の話だ」
「ボクがここにいるってことは、楔はほぼ確実に外れているだろう?SCP-████-FEの異常性が、第二段階に移行するまでに戻らないと、ボクはもはや対処できない」
その返答に、博士は額を抑えてため息をつく。
「早とちりはやめろ。タイムリミットはないと考えていい。SCP-████-FEは向こうの世界には、もうないだろうからな」
向こうの世界にはもうない、という意味が千凶には理解できなかった。少なくとも、SCP-████-FEは次の標的をE████-6██世界としていたし、楔が外れたのならそこで暴れると思っていたからだ。
「確信は持てないが説明しよう。あんたが何で██譚に取り込まれたのか」
千凶の反応を待たずに、博士が話し始める。
「まず、あんたが██譚に取り込まれる前に、SCP-████-FEのほうが██譚を取り込んだ。そして、██譚を書き換えようとしたんだろうな。まあ、それでも、あんたの近くに██譚が出現したという偶然が起こらないといけないが──」
「██譚が出現したのはまだわかる。SCP-███-FEも、どこにでも出現するものだったからね。でも、書き換えようとした?それはありえないだろう?だって、ライプニッツ現実圧縮壁によって圧縮されたあの世界は、完成した物語の世界だ。どんな行間も、閑話も入り込む余地はない。新しい場所も、物も、人物だって登場する必要がない。そうさせるつもりが、SCP-███-FEにはない。ひとつの世界にひとつの物語だけを強要するのが、あの本なんだから」
「話を最後まで聞け。SCP-████-FEからの干渉を受けてすぐ、██譚は楔を通じて繋がっているあんたを、取り込もうとした。そういう前例があるわけではないが、あんたが物語の登場人物である以上、物語そのものというのは、あんたを内包しているからな。出来ると考えたほうがいい。もともと、物語の内部から、物語を固定するという詭弁じみた理論が成り立つんだ。何でもありと思っていたほうがいい。その結果、ここができた。何で、俺がここにいるのか?それはここが、██譚の影響でできた空間だからだ。じゃあ、何でここは、俺たちの世界と全く同じ形をしているのか?それは、ここが、SCP-████-FEの物語の中だからだ。それが、ウィルクスバリ楔のせいなのか、それとも、物語とその登場人物という関係性ゆえなのかは、まだ調査中だが、あんたはSCP-████-FE-3になった俺たちの世界と一緒に、██譚に取り込まれたんだ」
かなり強引な考察だと、千凶には感じられた。だが、それを聞いた今、それ以上に正しいと思える説は何ひとつ思い浮かばなかった。
「だから、時間があると?」
「ああ。時間をかけて脱出方法を探せばいい。SCP-████-FE-3の影響だと思うが、この世界では、前の周回の痕跡も、あんたの記憶以外はしっかりと残る。だから、今こうして、前の周回で用意した資料を提示できているし、この世界についての調査も進められている。今回の周回はまだ、ほとんどの時間が残っている。生還したいなら、俺が死ぬまで調査に協力してもらおうか」
SCP-1989-JP-1,SCP-1989-JP-2,SCP-1989-JP-3の消失は、財団にとって予想外の出来事であった。
監視はもちろん続けられていたし、SCP-1989-JP-2との定期的なコンタクトもしっかりと行われていた。
であるにもかかわらず、SCP-1989-JP-3は他に主のオブジェクトとともに、忽然とその姿を消したのだ。異常なヒューム値の変動とともに現れた、一冊の本──SCP-268-JP──を残して。
「交代よ、██研究員。収穫は?」
SCP-268-JP-██-1989と指定される、オブジェクトが出現して██日。
ほとんどの、有益な情報は得られていない。
SCP-1989-JP-2がSCP-268-JP-Aとなっていることは確定視されているが、イレギュラーが多く、研究は依然として進んでいない。
1つ目。博士と呼ばれる実体が、SCP-268-JP-Bであるとされているが、なぜか彼はSCP-268-JP-Aを助けてもすぐに死なない。
ほとんどの場合、SCP-268-JP-Aを助けて、二十四時間は生き残っている。
明らかに他のSCP-268-JPでは見られない現象だ。
2つ目。文章の更新が二十四時間おきではない。ほんの少しではあるが、二十四時間より長いのだ。
3つ目。検閲の数が尋常ではない。特に博士と呼ばれる実体の発言に関してはほとんどが検閲されている。
そして、4つ目。これが最もたる異常であるのだが、装丁表題文章の全てが、不定期に変動する。
黒い革表紙ではなく、カラーイラスト付きの文庫サイズのものに変化したり、表題は英雄譚という言葉すら入らなかったりもする。
文章の変化というのは、内容自体は変化せず、視点、認証、文体が変わる程度のものである。しかしこの際、検閲が外れることがある。
SCP-268-JP-██-1989を読み、異常性の原因を探すのが██研究員らの仕事であり、その際に、検閲が外れるというのは重要であった。
「ほとんどありませんよ。この、博士ってのの発言に、重要なヒントが隠されてると思うんですけど、検閲が外れても、知らない言葉ばっかりだったりしますし。1分経たずにまた文章が変わることも少なくないですし。あ、でも重要そうな単語についてはまとめてあります」
「そう。後で読んでおくわ。しっかし、わざわざ読まないといけないってのは、大変じゃない?」
「そりゃまあ。でも、仕方が無いですし」
5つ目。機械でスキャニングしたり、写真で文章を撮影した場合、文章の変動とともに、それらは全て消失する。
そのため、誰かが読むしかない。
「それに、読むのもあんまり辛くないですしね。博士が無残に死ぬ事が、あんまりないからでしょうか?」
「そうね。他のSCP-268-JPに比べたら全くと言っていいほど。あと、私が思うにね──」
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任意A任意B任意C- portal:3669025 (01 Jun 2018 11:48)
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