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アイテム番号: SCP-1827-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1827-JPの収容はその性質から推奨されません。通常、対象の特異性が流布されそうになった場合、周辺への情報操作や記憶処理による隠蔽で対処されます。緊急時は対象を一時的に保護して周囲の状況への対応が完了し次第解放することが許容されますが、極力干渉は避けてください。
平時のSCP-1827-JPには、衛星、望遠装置、ドローン、カメラ等を用いた遠距離からの監視のみを行い、対象がそれらの中断を要請するような素振りをした際は特段の理由がない限り従ってください。監視に向けてSCP-1827-JPが協力を要請するような素振りをした際にも同様に従うことが推奨されます。対象はこちらの監視をほぼ全て把握しています。
説明: SCP-1827-JPは現在██歳の日本人男子で、身体的には同年代の日本人男性と差異はありません。
SCP-1827-JPの異常性は、その知性にあります。対象は未知の原理により、数学者ピエール・シモン・ラプラスの提唱した“ラプラスの魔”に近い能力を有し、全宇宙の過去から未来までの大部分を知っています。人間の脳では到底処理不可能なそうした情報をどのように有しているのかは判明していません。各種検査では、脳に特別な異常は見られませんでした。学校の成績、知能テスト等においても特筆すべき特徴は見られませんでしたが、これらは本人による演技の可能性があります。
SCP-1827-JPは、20██年██月██日に、"大事にならない程度の行方不明でいられる期間"を把握の上で利用して失踪を演出、手近な財団日本支部の施設であるサイト-81██に全体の90%以上の警備を掻い潜って侵入後に発見され、自らがSCPオブジェクトに該当しうることを名乗り出たことにより認知されました。この際、財団はSCP-1827-JPからおよそ必要な情報をまとめられたノート(以降、SCP-1827-JP-Aと記述)を渡されています。
以下はSCP-1827-JPとの最初の接触時のインタビュー記録です。
対象: SCP-1827-JP
インタビュアー: 番匠谷博士
付記: SCP-1827-JPが信頼に足る財団に関する情報を知っていることを適切に伝えてきたため、この時点で彼がSCPオブジェクトに該当しうることは納得済みである。
<録音開始>
番匠谷博士: では始めようと思う。もっとも、たいていのことは君がもう話したし残りもノートで補えそうなので――
SCP-1827-JP: 来訪した理由を聞きたいんですよね。
番匠谷博士、唖然とする。
SCP-1827-JP: ぼくはなるべくみんなを助けたいんです、できる限りでだけど。
番匠谷博士: ……なるほど。もっと詳細を教えてほしいな。
SCP-1827-JP: うん。例えばおじさんは今朝、ここに来るときに小石を蹴ったでしょ?
番匠谷博士: 記憶に――
SCP-1827-JP: ――ないだろうけど蹴ったんだ。それを登校途中の小学生が何気なく拾って空き地の草むらに投げた。これに驚いたハシブトカラスが逃げて、遠くに行くことにして██県██市██町の国道██号線沿いの並木の上で巣を作ろうとする。材料には██神社の雑木林の不法投棄されてるゴミ山からハンガーを持って来るんだけど、釘が引っ掛かってて途中で落ちる。そのせいでタイヤがパンクしたナンバー████の軽自動車が████さんをひいて死なせちゃうかもしれない。けど、この事故はもうぼくには防げないってわかっちゃってる。
番匠谷博士: (マジックミラーの向こうに)確認を。(SCP-1827-JPに)今話した件の真偽は不明だが、君にそのくらいの予見を可能とする能力があるのは理解したつもりだよ。では、我々に協力して人助けをしたいということかな?
SCP-1827-JP: そうしたいけど無理なんだ。ぼくの細かい言動がいちいち周りに影響を与えるから、なるべくみんなを助けたいけど言動を制限されるここじゃそれができない。でも財団に知ってもらうのが一番効率がいいんだ。ずっと未来でダメでも。
番匠谷博士: 未来でダメとは?
SCP-1827-JP: 今、おじさんがまさかって考えたことだと思うよ。
番匠谷博士: ……K-クラスシナリオのことかね?SCP-1827-JP: (肯定も否定もせず)……もう一つ理由があります。
番匠谷博士: ……何かな。
SCP-1827-JP: ぼくがここに来たときに財団の機密を話したことでおじさんたちがおわれた対応で、SCP-████-RUの収容違反が起きてるんだ。再収容には失敗するだろうけど安心して。それがむしろ、多くの人を助けることになるから。
番匠谷博士: (マジックミラーの向こうに)すぐロシア支部に確認を取れ! (SCP-1827-JPに)君はここでじっとしていてくれ!SCP-1827-JP: これ以上いると騒ぎになりそうだから帰ります。
番匠谷博士は話を聞かずに出ていく。SCP-1827-JPは明らかにそれを予期しており、最後の言葉は初めから録音機器に向けて発言している。
<録音終了>
終了報告書: 以降、SCP-1827-JPは各種警備の隙をつき、職員の不注意を招くことで意図的に低危険度のSCiPの一時的な収容違反を起こさせ、その性質を利用してサイトを脱出。帰宅しました。この際、職員一名とSCP-1827-JP自身が軽傷を負いましたが、大事には至りませんでした。
後に、SCP-1827-JPが話した事故、並びに他サイトでの収容違反は実際に発生したことを確認していますが、前者の被害者は重傷を負ったものの一命をとりとめ、後者のSCiPは酷似した性質の別のものであった点が異なっています。
補遺1: SCP-1827-JPの訪問から██日後、対象への対応を検討中の2013年2月15日。
前日にSCP-████が表面に付着していることが発覚し、地球近辺を通過した際にK-クラスシナリオを発生させかねないことが懸念されていた小惑星2012DA14が、SCP-1827-JPとの接触をきっかけに収容違反状態にあったSCP-████-RUと宇宙空間で衝突。2012DA14の軌道が逸れたことで、K-クラスシナリオは回避されました。SCP-████-RUは大破してロシアのチェリャビンスク州に落下し、空中で爆発。2012DA14は、その後何事もなく地球のそばを通り過ぎました。
SCP-████-RUは器物の損壊や怪我人は出したものの死者は出さずに済み、「カバーストーリー:チェリャビンスク隕石」により隠蔽。真相に迫る記録は回収及び修正し、SCP-████-RUの破片はロシア支部の機動部隊が隕石とすり替えました。
この一件により、財団はSCP-1827-JPの言動をなるべく阻害すべきでないとの結論に到り、SCP-1827-JP-Aにそうなるだろうと書かれていた通りの対応がおおよそ承認されました。現在の特別収容プロトコロルはSCP-1827-JP自身がノートに記していたものを九割以上採用した形になります。
補遺2: 以下は、SCP-1827-JP-A内の注目すべき記述です。
ぼくは最近までまともな言動ができなかった。蝶の羽ばたきがニューヨークで雨を降らせるみたいに。風が吹けば桶屋がもうかるみたいに。ぼくが動くこと、話すこと、息をすること、その度に動く何億という素粒子がどこでどんな結果に繋がるかほとんどわかっちゃうから。
でも、なるべく人を助けようとした。サイト-81██でのインタビューで話したみたいに1どうしようもなく傷ついちゃう人がいて、それが辛かったし、ぼくの言動は周りからすればめちゃくちゃだったけど。障害があるのかとかいろいろ思われたけど、どこで調べても異常の正体はわからなかった。
でも、最後の奇行って思われてることをしたあとからは、身の回りの負担になり過ぎないできる範囲でみんなを助けることに決めて、それからは、ちょっとは普通の人みたいに生きることができるようになったんだ。周りにとってはその方がいいみたいで、喜ぶ人が多かった。ぼくは嬉しくないけど。
SCP-1827-JP-A中に"最後の奇行"と記されている出来事については、複数ヵ所で言及されているにも係わらず具体的な内容が述べられておらず、SCP-1827-JPに尋ねても回答を得られなかったため、財団は調査を試みました。
以下は、福祉課によるSCP-1827-JPの精神疾患に関する調査という名目で財団が行った聴取により、関係者から得られた関連が強いと見られる証言の抜粋です。財団側の問いかけや不要な話題等は削除してあります。
証言者: SCP-1827-JPの小学校時代の担任教師
<証言内容>
██(SCP-1827-JPの本名)くんには困っていました。最初は逐一対処していましたが、あまりに支離滅裂な言動を繰り返すので。卒業後の今も地元では奇行の噂を聞くほどですが、なるべくみなの迷惑にならないよう気を遣うことを覚えたようですね。彼のご家族も友人も我々教師一同もみんな、自分がおかしいと気付きまともになってくれた彼の成長に感謝していますよ。最後の奇行? 確か██くんたちが……いや、自分で服を着たまま海に飛び込んで溺れて、██くんたちに助けられた時かと。
証言者: SCP-1827-JPが通院する心身医療科の主治医
<証言内容>
海に飛び込んだ理由? ああ、彼の統合失調症による最後の強い妄想ですね。メモしてあります。
えーと、さざ波を起こすことでプランクトンを動かしたのをきっかけに食物連鎖を誘発して、この果てにアメリカで釣りをしていたNASAの職員がひときわ大きな魚を釣ることになるそうです。後に彼が宇宙探査機の発射に立ち会う際、釣った魚のことを何気なく思い出したために指示にズレが生まれ、これが原因で探査機は宇宙塵うちゅうじんにかするそうですよ。いえ異星人でなく、"宇宙の塵"と書いて宇宙塵です。はい。それがこうビリヤードのように次々と別の宇宙塵にぶつかって、だんだん対象を大きくしていくとか。やがて、えー████年後に太陽系が通る軌道でどんな観測機器にも捉えられない怪物に小惑星をぶつけることになって。それで、太陽系を食べる予定だった怪物が心変わりをしてこれをやめるそうです。なかなか豊かな想像力でしょう?付記: 証言内容に基づく████年後に太陽系が通ると推定される宇宙空間を財団の観測機器で調査したところ、半径█光年に及ぶ奇妙な時空の歪みが発見されました。一般の観測機器では発見できず、財団の技術でも充分に測定しきれないその存在をSCPオブジェクトに認定すべきかは協議中です。
証言者: SCP-1827-JPの小学校時代の同級生
<証言内容>
いじめてたけど進学先は違うしもう何もしてねえって。とにかくあいつの最後の奇行はそれだよ、服着たままいきなり海に飛び込んだやつ。自分でだ、そこは本当。ま、陸に上がれないようにおれたちが邪魔したけど。……いや待て。あのあとにも一回、変なことやろうとしたな。なんだったか。とにかく、そんときはやろうとしてることをひたすら邪魔してやったよ。そのうちあきらめて、それからはあんまり変なことしなくなった。みんな喜んだけどおれらはつまんなくなったから、あいつに構うのもやめた。絶望した顔だけが見ものだったな。
補遺3: SCP-1827-JPは、全宇宙のあらゆる情報を把握できると仮想された"ラプラスの魔"と似た能力を有すると思われる。
もっとも、思考実験におけるそれは自らを観測対象に含めないよう宇宙の外にいるとされていた。対してSCP-1827-JPは宇宙内に存在するため、特に自分の与える影響では宇宙の観測に狂いが生じているはずだ。何より、思考実験の方は量子力学の発展以前のもので、今日では不確定性原理によって確実な未来予言は不可能だということになっている。これらのことが影響して、SCP-1827-JPの予測も実際の結果と微妙にずれているのだろう。おまけに彼は肉体的にはただの人間であり、己の言動で逐一変化する状況の全てに対処できるわけでもなさそうだ。故に無理に対応しようとする言動が奇行と受け取られ、変人と思われてきたらしい。
とはいえ、非常に高い確率でその予言と酷似した状況が訪れるというのは確かなようだ。問題は、どう思われようと自分の人生を捨ててまで少しでも人を救おうとしてきた人格を持つ彼が、以前より奇異な言動をとることに積極的でなくなったことだ。いわゆる正常な社会にとってはこうなった方がありがたいのだろうが、そのせいで少なくともSCP-1827-JPの予測ではどうにもならない将来が待ち構えることになった可能性が高い。
それでも我々は、あきらめずに対処せねばならない。無知ゆえに。 —SCP-1827-JP担当 番匠谷博士
補遺4: SCP-1827-JPから以下の文章を追記するようにとの要望を受け、財団は承認しました。
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任意A任意B任意C- portal:7137679 (20 Dec 2020 23:16)
拝読しました。
ラプラスの魔とカオス理論を結びつけるアイデア自体は悪くないと思うのですが、最後の「これから先は未知数だ」というのは、彼が能力を行使できなくならない限りありえないのではないでしょうか?
また、取り扱える事象が大きすぎ、SCPオブジェクトとして現在は自身の意志で準不活性状態にあるにせよ、特殊クラスのオブジェクトとするのが妥当のように思えます。
(SCP-650-JPのように、潜在的危険性が極めて高いオブジェクトでも協力的な場合Euclidとし、高度警戒扱いのオブジェクトにしてもよいのですが、彼が収容違反を犯す確率は図れませんし、その場合彼の出方は財団にはほとんど予想できないですから、しっくりこないものを感じました)
以上、ご参考になれば幸いです。
ご批評ありがとうございます。
特殊クラスのオブジェクトに関して勉強不足でした。
万能にも描き過ぎた気がしますので、能力に欠陥があるように改稿してみようかと思います。
SCPオブジェクトの能力に不完全さを増やしてみました。