稲穂の祠 - SCP-JPサンドボックスⅢ

稲穂の祠

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クレジット

タイトル: お稲荷様と稲穂
著者: koku4
作成年: 2023

8/15
おじさんが死んだ。
夏休みの間、いつも遊んでくれたりお菓子をくれたおじさんだ。
いつものように待ち合わせ場所の樹の下に行ったら、そこで倒れてた。
お母さんに伝えてそこに行ったら、「死んでる」って言われた。
お葬式は明日あるらしい。
大人たちは、おじさんの死体の周りで難しいことを言い合ってた。
おじさんが死んで、悲しくないのかな？

8/16
今日はおじさんのお葬式があった。
おじさんはもういないと思うと、悲しかった。
お葬式のあと、祠のところに行った。
おじさんから、「私が死んだら、君が奉るのを引き継いでほしい」って言われてたから。
思えば、おじさんはあの時から死ぬことをわかってたのかもしれない。
祠の前で手を合わせて、今日は帰った。
明日も行こう。

8/17
おじさんがいないのに、いつもの場所で待ち続けてしまった。
心にぽっかりと穴が空いた気分だ。
今日も、祠の前で手を合わせた。
家に帰る途中、先生に出くわした。
「宿題、ちゃんとやってるか？」と聞かれた。
宿題、やらないと。

8/18
今日も祠の前で手を合わせた。
宿題が忙しい。量が多すぎる。
明日は日記が書けないかも。

8/21
宿題が終わった。
残りの夏休みは明日だけだ。
祠には、毎日行って手を合わせた。
明日は、油揚げをお供えしないと。

8/22
お母さんに油揚げがほしいって言ったら、無いって言われた。
しかたがないので、僕が持ってたきれいな石をお供えしてきた。
これで大丈夫かな？
明日から、学校だ。

8/23
学校からの帰り道で祠を見たら、石がなくなっていた。
ここに奉られてるなにかが持っていったのかな？
そういえば、ここには何が奉られてるのだろう？

8/24
今日も帰り道で祠に寄って、手を合わせた。
昨日お母さんになにが奉られてるのか聞いたけど、お母さんは祠があることすら知らなかった。
先生にも聞いたけど、知らないと言われた。
クラスのみんなも知らないらしい。
あの祠のことは、もう僕しか知らないのかもしれない。

8/25
先生に「寄り道するな」と言われた。
僕が祠への道を通っているところを見た友達が、先生に告げ口したらしい。
家から祠まで遠いのに。
でも、仕方がないから学校に帰ってから行くことにする。

8/26
祠が汚れてきてしまった。
そろそろ祠の掃除をしないと。
おじさん、なんで死んじゃったの？

8/27
祠を壊してしまった。
その時祠の中から、狐の鳴き声のような音がした。
多分怒ってる。
ごめんね、狐さん。
……明日行ったら、治ってたりとかしないかな？

8/28
祠は壊れたままだった。
壊れた祠の前に、狐が居た。
こちらに気付くと、ただじっとこちらを見つめてきた。
気まずくなって、逃げ出してきた。
もう、祠に行けない。
いや、行きたくない。

8/29
日記を書く気が起きない。

9/10
今日、学校でお稲荷様という神様の話を知った。
先生が「旅行先で撮った」と言いながら見せてくれた写真には、お稲荷様の祠が写っていた。
……あの祠に、そっくりだった。
お稲荷様は、稲を豊作にしてくれる神様らしい。
……今年のお米は、ちゃんと採れるだろうか？