ある夏の夜の怪語り

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「肝試しに行こうぜ、場所は学校、9時半集合な。」
そう言ったのは誰だったっけ?
確か田中くんだったと思う。
正直行きたくなかったけど、行かないと仲間はずれにされる。
そう思いながら、家を抜け出して学校へいったと思う。
いまでは、それが間違えだったと思うけど。


学校へ行くと、みんなはもう集まっていて、
「千ちゃんおそいよー」
なんて言われたと思う。
その後は、学校の色々な場所を歩き回った。
校庭や理科室、図書館をみんなで話しながら歩き回った。
そのうち仲間の内の1人  鈴木さんだったかな?  が、歩き疲れたと言い始めた。
それを聞いた田中くんは
「じゃあ、教室で休もうか」
なんて言って、私たちの教室に歩いて行った。
帰りたい。そう思ったのは私だけではないはずだ。
だが、グループのリーダーに逆らうわけにはいかない。
渋々付いて行き、教室に入った。
後ろで「ぱたん」という音がした。
振り返ると、教室のドアが閉まっていた。
……私は、一番最後に教室に入ったというのに
『……語……な…と』
いつの間にか、教室の中心にある机に、箱がおいてあった。
大きな、木でできた箱だった。
それが開いて、中から蝋燭と鏡が飛び出てきた。
鏡は空を突き抜け、先生の机の上へ。
蝋燭は宙を漂い炎を灯し、みんなの机の上へ。
『百…語を…ないと』
みんなが椅子に座る。
帰りたい、そんな私の内心に反して、私も椅子に座る。
なぜか、そうしなければいけないと思ったから。
『百物語をしないと』
そうだ、百物語をしないと。
「さあ、始めよう。」
その言葉は誰が言ったんだっけ?
田中くん?鈴木さん?山田くん?中山さん?
それとも……私?


「ぽちゃん」
水音が聞こえる。
どこから聞こえてくるのだろうか?
「ぽたっ」
話し始めてから、2時間くらいが経っただろうか。
帰りたい。
「ぽちゃん」
でも、帰れない。帰ろうと思わない。
口は勝手に言葉を紡ぎ、体は勝手に動いて止まる。
「ぽたっ」
帰りたい、けど帰りたくない。
「ぽちゃん」
帰りたい、帰りたくない。帰りタい、帰りたクない。帰リタイ、帰リタクナイ。
「ぽちゃん」
あ、次は私の番か。
何を話そうかな?
死者に会える踏切?自殺者を誘う街?それとも……
「ぽたっ」


……何時間経っただろうか?
私達は、ただ怖い話を語って、火を消して、鏡を覗く。
「ぽたっ」
そういえば、これは何話目なのだろうか。
そう思いながら息を吹いて、蝋燭の炎を消す。
炎の残っている蝋燭は1つだけ。
つまり、次の話で、やっと帰れる。
「ぽちゃん」
そう思うと、嬉しさがこみ上げてくる。
そんな内心に関係なく、私は鏡を覗き込む。
自分の顔だ。この何時間かの間で何回も見た顔と室内が見える。
「ぽたっ」
いや、違う。それだけではない。
背筋が凍る。
そこには居た。
『ナニカ』が居た。
黒くて、白くて、丸くて、四角い。形容しがたい『ナニカ』が居た。
楽しそうに笑っていて、でも悲しそうな顔をしてつまらなそうにしている『ナニカ』が。
怖い、怖い、怖い、怖イ。
みんなは気付いてないの?
なんで中山さんは楽しそうに怖い話を話し始めているの?
なんでみんなは楽しそうにその話を聞いているの?
なんで……私は笑っているの?


……そうして誰も、帰ってきませんでした。」
そう語り終わった中山さんは、蝋燭を消した。
教室の中から明かりが消え、私達は闇に呑まれる。
暗い。そう、暗いはずなのに。
ぼうっと光る何かがあった。いや、『ナニカ』が居た。
丸くて、四角くて。でも、紅い。まるで血に濡れているかのように。
なぜだろうか。ふと、周りを見た。
山田くんは、なにかアカイロの液体を流しながら倒れている
中山さんは、アカイロに濡れながら、にこにこしながらケラケラと笑っている。
田中くんは、『ナニカ』から逃げようと、必死で逃げている。
鈴木さんは、ぶつぶつとなにかを呟いている
こんな場所に来なければよかった。
後悔してももう遅い。
『ナニカ』はその爪か触手かで田中くんを引き裂く。
中山さんは、爪で手首を掻き続けている。
鈴木さんはもう、何も言わなくなっていた。
『ナニカ』が私の前に来る。
もう駄目だ。
私は目を閉じた。
『ハハッ』
誰かの笑い声が、聞こえた気がした。
そして私は……


「……次のニュースです。3ヶ月前に起きた████小学校で生徒5人が殺害された事件、その容疑者の初裁判が行われ……」
12月のある昼下がり、テレビの音が流れる部屋で、2人の白衣を着た人物が話をしている。
「それで、まだあの少女に質問はできないのか?」
「あの唯一生存した子ですか、たしか対話部門のやつがまだ無理だと言っていましたが。」
20代ほどの女性がそう返すと、40代ほどの男性はため息をついた後、こう言った。
「まだ駄目なのか?もう4ヶ月だぞ。そろそろ回復しても良いと思うんだが。」
「あの子は小学生ですよ?目の前で親しい人が、それも4人も亡くなったんですよ?」
「……だが、百話語りきったのはあの子達だけなんだぞ。何が起こるか知りたいだろ?」
「Dクラスを使えばいいだけじゃないですか。」
「だが、実験がバレては困るといって、夏休みが終わってから実験ができていないではないか。もう3ヶ月だぞ。」
「あと半月で冬休みに入るんですから我慢してくださいよ……。」
そう返されると、男性はため息を付く。
そして、「暇だな……」と呟いた。
女性も頷き、「暇ですね……」と呟いた。
彼らはまだ知らない。
語り終えた後に起こる惨劇を。
彼らは、まだ知らない。
……自分たちが、その光景を目にすることとなる事を。


実験記録████-JP-7 - 日付20██/12/29

対象: D-4124, D-5326, D-6798, D-3962, D-6017

実験方法: 対象たちを午後9時にSCP-XXXX-JP-Aに侵入させる。また、D-4124にボイスレコーダーとビデオカメラを所持させ、██研究員が内部を監視する。

結果: [編集済]

付記: ██研究員が壊れました。  黒紫博士


taleってこんな感じですかね?
批評お願いします。



jp tale



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執筆者: koku4
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最終更新: 28 Apr 2023 15:10
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