(定例会にて批評済)【ビギコン】勿忘草の花の栞

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音声記録XXXX-JP.1

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記録日: 2025/04/01 08:31:02 - 08:33:34


<抜粋開始>

東雲研究員: 1番収容室……[筆記音] 異常なし。[扉の開閉音]

東雲研究員: [靴音]

東雲研究員: [扉の開閉音] 2番収よ  

SCP-XXXX-JP: [遮るように] ひゃっ……お、おはようございます、東雲さん。今日は随分と早いですね、何かあったんですか?

東雲研究員: [沈黙]

SCP-XXXX-JP: ……東雲さん? あの、えっと……どうかしました?

東雲研究員: 君は……何者だ?

SCP-XXXX-JP: ……え?

東雲研究員: どうやってこの収容室に侵入した?

SCP-XXXX-JP: え、ま、待ってください。ど、どうしたんですか、急に。

東雲研究員: [沈黙]

SCP-XXXX-JP: し、東雲さん? 変なからかいは止して  

東雲研究員: [言葉を遮って] 質問に答えろ、君は何者だ、どうやって収容室に侵入した?

SCP-XXXX-JP: ……そ、そんな分かり切ったこと、聞かないでくださいよ。ほ、ほら、私、1年前から、ここに居たじゃないですか。

東雲研究員: 1年前? 一体何を言って……いや、待て。そもそも、どうして私の名前を知っている?

SCP-XXXX-JP: [震える声で] どうしてって、東雲さんが教えてくれたんじゃないですか。……も、もうやめましょうよ、これ。趣味悪いですよ、こんな冗談……冗談、ですよね?

東雲研究員: [沈黙]

SCP-XXXX-JP: ……冗談だと、言ってくださいよ、ねえ。[過剰な呼吸音] ねえ、どうか、お願いですから。

東雲研究員: [沈黙]

SCP-XXXX-JP: [嗚咽の混じった声で] うそ、なんで、どうして、こんな  

東雲研究員: [沈黙]

SCP-XXXX-JP: [嗚咽]

東雲研究員: [溜息]……[電話の呼び出し音] こちら東雲、2番収容室にて正体不明の人型実体を発見。至急、応援を求む。

<抜粋終了>

SCP-XXXX-JP

アイテム番号: SCP-XXXX-JP

オブジェクトクラス: Pending

特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPはサイト-81██の低危険度人型実体収容室に収容されます。

説明: SCP-XXXX-JPは10代後半と推測される、日本人女性です。

SCP-XXXX-JPは2025年04月01日、サイト-81██の3号棟2階に配置された空室状態の低危険度人型実体収容室にて、同収容室の空室巡回作業を行っていた職員により発見されました。室内の状況から、当該収容室では1年以上に渡り収容活動が行われてきたことが示唆されています。一方で、サイト-81██開設以降、当該収容室が使用された事例はありません。

当事案を受けて、サイト-81██内部局である観測数値監視局において、観測データの再確認が行われました。この結果、当該収容室の内部状況が最後に確認された03月31日20時29分から、SCP-XXXX-JPの発見時刻である04月01日08時31分までの約12時間にわたり、如何なる種類の観測数値にも異常は無かったことが判明しています。

確保時、SCP-XXXX-JPの精神状態は会話が困難な状態にまで悪化していました。現在、対話部門により治療が行われています。


補遺01: SCP-XXXX-JPの精神状態が安定したため、事情聴取を目的とした対話が行われました。この際、SCP-XXXX-JPは事情聴取を受ける条件として、インタビュアーを東雲研究員とするよう要求しています。以下は事情聴取時の対話記録です。

対話記録XXXX-JP.1

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記録日: 2025/04/07 09:15:32 - 09:30:28


<抜粋開始>

東雲研究員: それでは、事情聴取を始めます。

SCP-XXXX-JP: ……はい、よろしくお願いします。

東雲研究員: こちらこそ、よろしくお願いします。では初めに、どのような手段を用いてあの部屋に侵入したのか、教えていただけますか?

SCP-XXXX-JP: ……[不明瞭な声] せん。

東雲研究員: すいません、今、何と?

SCP-XXXX-JP: 侵入なんて、してません。

東雲研究員: ……確かに、貴方は先日、1年前からあの部屋に居たと語っていましたね。しかし、そうであるのならば、どのような理由であの部屋に?

SCP-XXXX-JP: ……収容されていたんです。元から、あの部屋に。

東雲研究員: ふむ……1つ教えられる事があるとすれば、あの部屋で収容活動が行われた事例は無い、ということでしょうか。この施設が出来て以降、あの部屋が使用されたことは1度たりとも存在しないのですよ。

SCP-XXXX-JP: [沈黙]

東雲研究員: さて、改めて尋ねましょう。どのような手段を用いてあの部屋に侵入したのか、教えていただけますか?

SCP-XXXX-JP: [沈黙]

東雲研究員: [溜息] 日を改めましょうか。それと、インタビュアーも変えましょう。その方が、恐らく話しやすいでしょうから。[立ち上がり、SCP-XXXX-JPに背を向ける] それでは、失礼しま  

SCP-XXXX-JP: [手を伸ばし、東雲研究員の白衣の裾を掴んで] ……本当に、何も覚えていないんですか?

東雲研究員: [SCP-XXXX-JPの方に顔を向けて] 少なくとも、何かを忘れたという自覚はありませんが……私が、いえ、私たちが、貴方が収容されていたことを忘れている、と?

SCP-XXXX-JP: [ゆっくりと、首を縦に振る]

東雲研究員: それを証明する証拠は、何かありますか?

SCP-XXXX-JP: ……東雲。あなたの名前は、東雲ですよね?

東雲研究員: ああ、そういえば……あの日も私の名前を呼んでいましたね。なるほど……[ため息をつき、着席する] 先ほどの態度、お詫び申し上げます。貴方が収容されていた時のことを教えてください、自由に語ってもらって構いません。

SCP-XXXX-JP: ……先ほども言った通り、私はあの部屋に収容されていました。SCP-XXXX-JP、貴方は私を、そう呼んでいたはずです。

東雲研究員: その番号は……失礼しました、続けてください。

SCP-XXXX-JP: 収容されたのは、ちょうど1年前……2024年の、4月1日のことでした。理由は分かりません、起きたらこの施設の部屋の中にいて、ぼうっと待っていたら東雲さんに見つかって。そのまま、東雲さんが私の収容を担当することになりました。

東雲研究員: 結局この施設に侵入  いえ、出現の方が適切かもしれませんが  したのは事実なんですね。そして理由は分からない、と。……そういえば聞いていませんでしたが、貴方の身元は  

SCP-XXXX-JP: [遮るように] 分かりません。

東雲研究員: 分からない、というのは?

SCP-XXXX-JP: 覚えていないんです。名前も、住所も、家族の事も。それどころか、此処に来る前は何をしていたのかさえ。[小さな笑い声] 何だかそっくりですね、皆さんが私の事を覚えていないのと。

東雲研究員: ……なるほど、分かりました。情報提供に感謝します、今日はこの辺りで終わりましょうか。

SCP-XXXX-JP: はい。……あの、1つ良いですか?

東雲研究員: 何か聞きたいことでも?

SCP-XXXX-JP: 東雲さんは、私の収容担当者で居てくれますか?

東雲研究員: このままだと、恐らくそうなるでしょうね。……しかし、貴方はそれで良いのですか?

SCP-XXXX-JP: 何か、問題でも?

東雲研究員: いえ……ただ、今までの態度を考えると、嫌われて当然だと思っていたので。

SCP-XXXX-JP: [小さい笑い声] 私は覚えていますから。東雲さんはぶっきらぼうに見えて、本当は優しいこと。……それに、私は信じてますから。例え今はぎこちなくても、月日を重ねれば……また、あの時みたいに仲良くなれる、って。

東雲研究員: ……そうですか。[沈黙] さて、今日はこの辺で終わりましょうか。

SCP-XXXX-JP: 了解です。では、また明日……あれ、今までは1日に1回は東雲さんと会っていたんですが、これからはどうなるんでしょう?

東雲研究員: そうですね……明日かは分かりませんが、またお会いすることはできるでしょう。[椅子から立ち上がって] それでは   ああ、失礼、1つ伝え忘れていたことがありました。

SCP-XXXX-JP: 何でしょうか?

東雲研究員: 貴方のアイテム番号は、SCP-XXXX-JPに決まりました。……奇しくも、貴方が言っていたものと同じ番号です。それでは、またお会いしましょう、SCP-XXXX-JP。

<抜粋終了>

対話内において、SCP-XXXX-JPは自身が過去に「SCP-XXXX-JP」として収容されていたと発言しています。当該ナンバーは2025年04月01日時点において如何なるオブジェクトにも割り当てられておらず、また空きナンバーのうち最も若いものであったことから、SCP-XXXX-JPのアイテム番号として割り当てが行われていました。

また、対話内において、SCP-XXXX-JPは1年間に渡り東雲研究員の担当下で収容されていたと発言しています。人事記録上、東雲研究員は2024年04月08日以降、如何なるオブジェクトの収容活動にも関与を行っていません。しかしながら、東雲研究員の財団在籍年数を鑑みた場合、東雲研究員は最低でも1つのオブジェクトの収容活動に携わっていることが好ましく、それゆえ当人事は現時点において極めて不適切なものであったと判断されています。当時の人事担当者が当人事に関する記憶を喪失していることから、当人事が行われた理由は判明していません。


補遺02: 2025年04月15日を以て、SCP-XXXX-JPに関する初期調査活動は終了されました。現在、SCP-XXXX-JPはSCPオブジェクトとして正式に承認され、同時にそのオブジェクトクラスはPendingからEuclidへと変更されています。また、初期調査活動の終了に伴い、SCP-XXXX-JPの収容担当者の選定が行われました。現在、SCP-XXXX-JPの収容担当者は東雲研究員に割り当てられています。


補遺03: SCP-XXXX-JPの収容状況が良好な状態であることから、SCP-XXXX-JPの限定的外出を許可することが決定されました。以降、SCP-XXXX-JPは収容担当職員の監視下におて、3号収容棟内及びそれに付属する中規模庭園内の散策が可能となります。

以下は初回散策時の対話記録です。

対話記録XXXX-JP.175

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記録日: 2025/07/07 14:00:01 - 15:02:36


<抜粋開始>

SCP-XXXX-JP: [深く深呼吸して]……やっぱり、外の空気は良いですね。

東雲研究員: 都市から遠いここの空気は、澄んでいますからね。

SCP-XXXX-JP: それもありますけど、何と言うか……自然! って感じの香りがするので。何なんでしょうね、この感じ。

東雲研究員: 草木の匂いか、湿った空気の匂いか……或いは、花の香りかもしれませんね。夏に差し掛かっているとはいえ、未だ花の咲き盛りですから。[遊歩道の脇を指差して] ほら、そこにも咲いてますし。

SCP-XXXX-JP: わ、本当だ! ……ちょっと近くで観察しても良いですか?

東雲研究員: ええ、もちろん。

SCP-XXXX-JP: [道の脇に駆け寄って] きれいな青色……この花、初めて見るかもしれません。この植物、どんな名前か知ってます?

東雲研究員: これは……恐らくですが、勿忘草ですね。

SCP-XXXX-JP: これが、あの有名な……あれ、でも勿忘草の花って、咲くのは春じゃなかったでしたっけ?

東雲研究員: 寒冷地では7月ごろまで咲くと聞きますし、ここは山の中にあるのもあって気温が低いですからね。咲いていてもおかしくは無いかと。

SCP-XXXX-JP: あー、確かに、7月だっていうのに涼しいですもんね、ここ。

東雲研究員: まあ、そのおかげで、下界に降りると茹って死にそうになるんですけどね。

SCP-XXXX-JP: [小さく笑った後、沈黙]

東雲研究員: [沈黙]

SCP-XXXX-JP: [呟くように] もし、私が去年、この花を見つけていたら。それで、私が東雲さんに渡していたら。東雲さんは、私の事を覚えていてくれたのかな。

東雲研究員: ……それは  

SCP-XXXX-JP: [遮るように] なーんてね、冗談ですよ、冗談。だから、そんなに真剣にとらえないでください。こんな、陳腐な冗談。

東雲研究員: ……別に、陳腐だからと言って、簡単に切り捨てようとは思いませんけどね。

SCP-XXXX-JP: え、何でですか?

東雲研究員: 陳腐だということは、古くから受け継がれてきたということでしょう? それも、途絶えることなく。それなら、何か特別な効果を持ち続けていておかしくは無い。そうは思いませんか?

SCP-XXXX-JP: [沈黙]

東雲研究員: 少なくとも、私はそう思っています。財団職員として、実際に体験してきましたから。古くからのおまじないを、見くびってはいけないことを。……[小さな笑い声] 変なことを、熱く語りすぎてしまいましたね。そろそろ、部屋に戻りましょうか。

SCP-XXXX-JP: そうですね。……あの、1つ良いですか?

東雲研究員: はい、なんでしょう?

SCP-XXXX-JP: このお花、何輪か摘んでいっちゃだめですか?

東雲研究員: 構いませんが……摘んでどうするんです?

SCP-XXXX-JP: 本に挟んで、押し花にしようかなって。その後どうするかは、まだ考えてないんですけど……

東雲研究員: なるほど……それなら、ラミネーターで栞を作ってみませんか? 勿忘草は小さいので、何輪かを散りばめればきっと奇麗ですよ。

SCP-XXXX-JP: [顔を綻ばせて] いいですね、それ。採用です!

<抜粋終了>

対話記録XXXX-JP.722

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記録日: 2026/03/31 19:01:13 - 20:28:11


<抜粋開始>

東雲研究員: [椅子から立ち上がって] それでは、また明  

SCP-XXXX-JP: [手を伸ばし、東雲研究員の白衣の裾を掴んで] ……やっぱり、もう少しだけ、一緒に居てくれませんか?

東雲研究員: ……やはり、明日を。4月1日を迎えるのが、不安ですか?

SCP-XXXX-JP: もし、また忘れられたら。そう考えると、どうしても。

東雲研究員: [小さな笑い声] 忘れませんよ、私は。

SCP-XXXX-JP: ……信じて、良いんですよね?

東雲研究員: 破ったら、針を千本、飲ませてもらっても構いませんよ。

SCP-XXXX-JP: [小さな笑い声] 忘れてたら、その約束文句も意味がないでしょうに……分かりました、信じてますからね。

東雲研究員: ええ、信じてください。

SCP-XXXX-JP: ……じゃあ、約束のついでにこれも。[本に挟まれた栞を抜き取り、渡す]

東雲研究員: [受け取って] これは……勿忘草の花の栞?

SCP-XXXX-JP: 追加のおまじないです。……あげたんじゃなくて、貸すだけですよ。だから、明日の朝、私に直接返してくださいね。

東雲研究員: [小さな笑い声] わかりました。では1夜だけ、私が今読んでいる本の栞を務めてもらいましょう。

SCP-XXXX-JP: [白衣の裾から手を放して]……じゃあ、また明日。

東雲研究員: ええ、また明日

<抜粋終了>


jp scp pending 人間型 記憶影響



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執筆者: koku4
文字数: 15641
リビジョン数: 138
批評コメント: 17

最終更新: 14 Jun 2026 03:10
最終コメント: 11 Jun 2023 09:01 by koku4

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  1. portal:8518479 (16 Mar 2023 05:38)
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