不死の屠り方 Xコン死

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「不死身の爬虫類は殺せない」

これは財団内での暗黙の了解だ。





誰かが写真を見つけた。



少しして説明が付けられた。



いつしか蜥蜴は人気になっていた。


多くの物語で蜥蜴は暴れ、破壊し、人々を満足させてきた。



そして蜥蜴は殺された。

多くの世界で、何通りもの殺され方をしてきた蜥蜴が今、目と鼻の先に横たわっている。殺される度に強くなって戻ってきた、殺しても死なない蜥蜴とは思えないほどに弱って。

その酷く皺のよって脆くなった皮膚は彼が辿ってきた歴史の深さを物語っている。今にも消えてしまいそうな息と脈。

「我輩を殺しに来たのか、少年?」

頷く、断固たる意思を持って。僕はこの蜥蜴を殺さなければならない。財団が最後にやるべきこと。既に異常が発生しなくなって久しいこの世界で、財団はそのアンチテーゼともとれる存在を最後に殺さなければいけない。

「我輩は殺せない。それは今までのあらゆる試みから分かっているだろう?」

嘲るように言ったその巨体。殆どは空中に投げ出されたが如く横たわっていた。

殺せない。普通の存在が言ったなら信じられないような、強がっているような物言いだ。けれど動かない巨体から発せられるそれは、殺せないことを信じざるをえないようなものだった。

それでも、殺すべきなのだ。財団は理外のものを捕らえ、蜥蜴はそこから逃げ出す。まるで悪趣味な神が理外の者に最後に与えた希望。だからこそ財団は彼を殺さなくてはいけない。忘れ去られてしまう前に、全て消えてしまう前に仕事を果たさなければならない。そこに説明できるような理屈が無くとも。

「そこに意味は無い、少年。我輩はそういった大きな流れに抗うために生みだされてきたのだ」

まさか蜥蜴から諭すような言葉が出るとは思っていなかった。蜥蜴は今まで理不尽に振る舞ってきた。どの世界線でも彼は殆どの生命に対して憎しみを、負の感情を向けてきた。だからこそ、この場でも理屈抜きで決して死なないことを振り回すばかりと思っていた。

いつの間にかずれていた視線を蜥蜴に戻す。

蜥蜴は多くの世界で殺されて、また生き返ってきた。まるで幾つもの死を経験することでより不死を印象付けるように、不死であることがクリシェそのものであるように。この場に於いても死に、生き返るのだろうか?この場にはそんなことをする余裕はないだろうに…

恐らくここでも死に、生き返るのだろう。それが蜥蜴の存在意義なのだろうから。

僕を見つめる瞼が見開かれる。決して大きくはない動きだ。それでも肉食鳥のような瞳は僕をはっきりととらえる。一瞬怒るような光を見せたそれはすぐに僕から反らされた。

「認めねばならないのかもしれないな。確かに我輩は流れそのものとなのかもしれない。」

「しかしならば余計、殺すことなどできない。分かっているだろう?」

どぎりとして蜥蜴を見る。何故。世界の終わるその続きは無い。直感的に不死を知っていても、理屈では生き返れないように思った。だから今が蜥蜴を殺す最後の機会だと思っていた。いつの間にか蜥蜴の目はこちらをまた向いている。気持ちを奮い立たせる。蜥蜴がなんと言おうと、断固とした意思を持って蜥蜴を殺さなければいけない。

「我輩は死に、生き返る。それこそが我輩をめぐる物語だ、物語の終わりに我輩は生き返る。我輩は死なずにいつかまた形となって現れる。少年もそれはまた然りだろう」

分からない。僕には物語の終わりがどこなのか分からない。今この瞬間にも物語は終わり、僕は消え入ってしまうかもしれないのだ。僕の足下には地面が無い。今この瞬間も落下している最中かもしれない。だからいつか地面に打ち付けられるまでは自分らしくいたかった。

「なあ、蜥蜴よ。僕は消えるのか?」

唇から僅かに空気が漏れる。声がみっともなく上擦る。いつの間にか頬に少し塩気のある液体が伝っていた。

蜥蜴はなにかを答えようとしてこちらに向かってくる。

もう役目を終えそうな足を一歩、また一歩進める。自らを中心とするシステムに組み込むように。

「消えない。我輩も、少年も。物語はまだ続く。それがどれだけ弱くなろうと永遠に続く」

蜥蜴が前足をくじく。悲鳴は上がらない。

僕の足下まで来て蜥蜴は止まる。

「我輩を殺すことは出来ない」

はっきりと断言した。今だかつて無いほど簡潔に、それでいてはっきりと自らのアイデンティティを示して。

ふと外に注意をやると雨が降りだしていた。今は小降りで、これから激しくなりそうな雨だった。

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  1. portal:8515036 (13 Mar 2023 09:09)
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