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批評してくださる方へ
その年はあまりにも多くの変化があった。
侵攻されていた遠い国の攻勢が逆転し始めた。
長年親しまれた朝のニュース番組が終わり、新たなニュース番組が始まった。
ここ数年私達を制限してきたウイルスがようやく下火になり始めた。
祖母が亡くなった。
生きていた頃、祖母はよく私に会いにきて様々なことを話してくれた。決まってリビングで話す祖母はとても楽しそうだった。けれど私は落ち着きがなく、人の話を聞くとかが苦手だったから殆どまともに聞いていなかった。
それでも祖母は何度も様々なことを話してくれた。覚えているだけでも、戦時中にどうやって空襲から逃げたのか、昭和天皇を間近で見たこと、祖父が病院にヘリでやってきてプロポーズした話だとかがある。他にも幽霊や妖怪に会ったことがあるなんて話もあったけれどそれらは流石に嘘ではないかと今でも思っている。
中にはプロポーズの話然り、突拍子の無いものもあったし、そもそも祖母が生まれる前の話も混じっていた。けれども何しろ私も幼かったからあまり気にしていなかった。一度中学に上がる頃に寿命的に有り得ない話があると問い詰めても「私は不死身なんだ」と誤魔化されたことがある。けれどそこで思い出したのは地域の資料館の写真の話。そこに祖母そっくりの人が写っていると母が話していた。写真の年代は明治中頃らしい。だからこそ私は嘘だと否定しきれなかった。破天荒な祖母のことだから、面白い話で孫の気でも引きつけたかったのかもしれない。いずれにせよ私は祖母の話をまともに取り合わなかったのが今となっては悔しい。
葬式の最中も私はそんなことばかり考えていた。
焼香のとき改めて祖母の顔を間近で見た。顔は穏やかで、それでもその顔からはガラス細工のように壊れやすそうだった。いつもはがっしりと笑ってどこか太陽のように思えていたその顔。今は腐敗防止のためだろう、凍らされていた。なにか周りの人のように声をかけなくてはいけない気がして、何を言えばいいか分からずそのまま席に戻った。
その日の夜のこと、葬式が一段落して疲れたのか家族はみんなすぐに寝てしまった。私もなかなか寝れず、目を閉じて物思いを巡らせていたと思うがやがて静かな睡魔に飲まれていった。
その夢は、夢だとするにはあまりにもリアルだった。
いつものように話をしている祖母とまるで聞いていない私。ずっと聞いていたいと思った。
私は何を言えば良かったのだろう。今でも考えている。ただ、そのときの私は必死に何かを言おうとして、何か謝りたくて、一言
「それじゃあ、いつか向こうでの話も聞かせて」
としか言えなかった。祖母はいつものようににやっと笑って、分かったとでも言うように頷き消えた。
朝起きたときには冷蔵庫のドアは閉まっていたし、中身も減っていなかった。至っていつも通りの日常だったし、昨日のことも見間違えにしか思えなかった。朝のニュースではいつもの調子で、どこかの町のお盆の風習を報じていた。
その年の夏には祖母の家に行って、祖父に昨日のことを話した。
その年にはいろんなことが変化して、いつもの日々に戻っていった。
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ジャンル
アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:8515036 (13 Mar 2023 09:09)
現状DVです。細かい表現でつっかえる部分がいくつかありましたし、また展開自体にも思う箇所があります。如何に詳述します。
表現の点
ある種のネタにされているネットミームのような雰囲気を感じるのであまり好ましくないと思います。COVID-19のような世界規模のニュースに触れるなら、ロシアとウクライナの件とか、それを巡る中国やG7の動きを仄めかす方がまだノイズにならないと思います。
ここで仰々しく「苦手であった」と論じるのはかなり違和感がありました。普通に「苦手だった」で良いかと。
「空襲から逃げる」「ヘリでプロポーズに来る」に比べると情報の解像度が低く、釣り合っていないように思います。
「一度中学に上がる頃、」くらいで読点を打つと文意の切れ目が分かりやすくなると思います。
また、「~的に」はかなり話し言葉の雰囲気があり、一人称視点で書かれていても違和感が残ります。「寿命からして」とかでどうでしょうか。
前半に2つも読点が入り、後半に1つも読点が入らないので、バランスが悪いなと感じました。適宜句読点の位置や語順を調整すると良いと思います。私なら、「その時ふと思い出したのは、地域の資料館に飾られた明治時代の写真の話。以前、そこに祖母そっくりの人が写っていると母が口にしていたこともあって、嘘だとも否定しきれなかったのも覚えている。」くらいにするかなと思いました。
ここも語順を改めた方が良いと思います。「今となっては」という時系列を左右するフレーズは前の方にもってきて読者と前提を共有する方が良さそうです。
全体的に文のバランスが悪く感じるところもあったので、ご自身で音読・黙読してみて、あるいは読み上げソフトを試してみて、リズム感が良いかどうか検証してみてはいかがでしょうか。音にしてみるとバランスの良しあしが比較的掴めます。そうして表出した歪つな点を、語数の増減や変更、句読点の除去挿入によって調節することをお勧めします。
内容の点
まず、後半では祖母の表情をはじめとする視覚的な描写が取り上げられていますが、序盤で祖母の容姿に関する情報が一切公開されていないため、読者の中でイメージを作り上げにくいと感じました。髪型はどのようなのか、髪は染めているのか、背中は曲がっているのか、肌の皺やハリは、目元は、普段の服装は、普段のしぐさは……といった細かい情報が無ければ、読者は正確なイメージができず、困ってしまうことでしょう。ちなみに、私は笑顔のシーンを読んで『食糧人類re』に登場する主人公の母親の絵を思い浮かべました。歯が抜けて白髪になりながらもやたらと煌めく瞳を浮かべる、排卵誘発剤を服用した高齢の女性の笑顔であったので、とても非倫理的でグロテスクな絵面を想起してしまったことになります。
また、夜中に起きたら身内とはいえ冷蔵庫を漁っている死者が居る、というのはかなり恐ろしい絵面ではないかと思います。本作は亡くなった祖母を想わせる感動系あるいはしんみりとした作品を目指したのだとは思いますが、昼行性の動物が行動をしない夜に、死んだはずの者が蘇り、食餌行為を行っている、というのは身の危険を感じさせる状況のように感じます。祖母にポジティブな印象を与えたい作品として、食い合わせはかなり悪いと思います。
霊となった祖母との対面の場としては、もっと祖母の生前の行動や語り手の体験に根差した場所をセッティングした方が良いと思います。そのためにももっと祖母の過去や描写を具体的に掘り下げ、そこから要素を拾い集めながら後半で回収するとよろしいのではないでしょうか。特に現状だと何が変遷しているのか分からない程度に「変遷」色が弱いので(祖母が霊になって出てきたことを「変遷」とは受け取れませんでしたし、語り手の考えや心情も末尾ではほぼ描かれていないのでそこまで「変遷」しているようには読めません)、例えば戦前→戦中→戦後のような時代の移り変わりに触れて、その変化を拾う、みたいなのもアリなんじゃないかなと思います。執筆頑張ってください。
拝読いたしました。
お二方へ、批評ありがとうございます。
まず表現に関することはこれから少しずつ直していきます。
内容についてですが、やはりオチへの伏線やオチが唐突なことが弱い原因かなと二人の批評を読んで思ったのでそこを重点的に直してきいたいです。
また、テーマですが変還から別のものにすることも考えていてここから変還色が強くならなかったら別のものとなるかもしれません。(でもそれだと最初と最後の文が…とも思ったり…)