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アイテム番号: SCP-2254-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-2254-JPは封鎖され、カバーストーリー"工事中"が適用されます。活性期には民間人の侵入を防ぐため、一名の警備員を配置します。
説明: SCP-2254-JPは東京都██区に位置する建築物です。非活性期では異常性のない建築物との差異はありません。
SCP-2254-JPは1月中旬、および2月下旬に活性期に入ります。これらは大学入学共通テスト実施期間、および東京大学理科三類の第2次学力試験実施期間と一致します。活性期のSCP-2254-JPは不定の時点に、およそ地上10m、壁面から1.5m先に故人の黒岡成仁氏と外見が酷似する実体(以下、SCP-2254-JP-1)を生成します。生成直後のSCP-2254-JP-1は終端速度に達しており、ほとんどの事例において転落死します。何らかの要因により転落死しなかった場合でも、不明な外力により例外なく圧死します。SCP-2254-JP-1は出現後、1分程度で消失します。
SCP-2254-JPは2021年からその異常性が確認されています。この異常性は成仁氏が2020/02/25に、同地点で投身自殺したことが起源であると推測されています。
補遺1: 以下は成仁氏の保有する電子辞書から発見された、同氏により記述されたと推測される文書の抜粋です。
2019/04/01
今年度から五浪目。この感情を書き出さないといつか爆発してしまいそうなので、ここに書く。さすがのお母さんも電子辞書のマイナー機能まで見てないでしょ。
やっぱり俺には東大、しかも理三なんて無理だと思う。これまでの試験で嫌というほどわからされた。もっと分相応な大学に行って、こんな浪人生活を早く終らせたい、解放されたい。こんなことお母さんに言ったらまた怒られるから黙ってるけど。
2019/06/28
今日も予備校のテストで一位になれなくて怒られた。「あなたのためを思って言ってるの」「どうして分かってくれないのかな」って。自分の学歴信仰のためだろ。昔は優しくて、医者になりたい、っていう夢も応援してくれてたのに、中学受験に失敗してから何もかもが変わってしまった。どうしてこんなことになったんだろう?
2019/09/11
どうしよ。もうすぐ模試が返ってくる。本当は全然できてないのにお母さんに手応えあるって言っちゃった。絶対に叩かれる。どうにかしてここから逃げ出したい。どうやって?
2019/09/29
諸々落ち着いたので日記再開。あの日初めて家出した。今は高校時代の先輩の伝手でなんとか生活ができている。大変だけれどあの頃と比べたら苦でも何でも無い。むしろ、人生ってこんなに楽しかったんだ!って久しぶりに実感できた。もうこれからは自分の力だけで生きていくんだ。
2019/11/15
お母さんに連れ戻された。「私を裏切るつもりなの」「理三にいくまで許さないから」って怒られた。殴られた。どこに逃げても結局、この地獄に連れ戻される。
2020/02/25
連れ戻されることもないし、いっそ本当の地獄に落ちた方がマシか。
補遺2: 成仁氏の母親である黒岡奈実氏は、成仁氏が投身自殺した日と同日に、自宅で死亡していたことが確認されました。死因は非異常性のくも膜下出血であると推測されています。また、奈実氏は死亡時に██神社の「合格祈願」の御守を把持していました。
補遺3: 2023/02/25に、SCP-2254-JP-1が保有するスマートフォンの解析が完了しました。解析の結果、スマートフォンは成仁氏が死亡した時点のものとほぼ同一であることが確認されました。ただし、SCP-2254-JP-1が出現する度に、SMSで奈実氏からのメッセージを受信しています。これらのメッセージはいずれも以下の内容である事が確認されています。
天国にいくまで許さないから
付与予定タグ: scp jp safe ショート2023 建造物 蘇生
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- portal:8477944 (11 Feb 2023 15:42)
拝読致しました。
リビジョン15時点での批評です。
何の説明もなく唐突に出てきたこの人物に違和感が出てしまい、どこか元ネタがあるのかとなってしまいますのでもうちょっと情報を付け足して「故人の黒岡成仁氏」とちょっと付け足していいかもしれません。他の方法があればそれでもいいですが正直ちょっと付け足す程度でないと記事の構成と合わない様に感じますのでお任せします。
どうせならば全てに年も入れて統一感を出した方がいいと思います。
UVです。面白く、人の狂いがありありと感じられる描写が何とも生々しくてよかったです。
記事作成頑張ってください。
追記: メタタイトルも改めて読んでよくできているなと思いました。
批評ありがとうございます。
ご指摘いただいた点は全て修正しました。
成仁氏の焦りや絶望感からくる悲壮さからの、母親の狂気によって読み手をゾッとさせるストーリーライン。見事だと思いました。UVです。
お読みいただきありがとうございます。
伝えたいことが伝わったようで良かったです。
面白い記事だと思いました。
出現時点で終端速度に達しているというのは楽しいですね。
その分、母親の言ったことや、最後のメッセージの内容がちょっと残念で、もう少し読者の情動反応を後押しする内容があるんじゃないかなと思いました。
「許さないから」という表現は、歪んだ愛情あるいは妄執を抱えた母親のセリフとしてはちょっと陳腐に思えて、むしろ「あなたのためを思って言ってるの」のほうが恐ろしく感じます。また、たとえば「どうしてわかってくれないの」「なんでこんなこともできないの」などの言葉のほうが、子に対する「呪い」の言葉として悪質さやプレッシャーがあるかと思いました。
批評ありがとうございます。
いろいろ考えた結果、文中の母親の言葉はより毒親らしさを盛り込んだ表現にしました。ただ以下の理由により、最後のメッセージは据え置きにさせていただきたいと思います。
本作では「母親の束縛から逃れたくて自殺した子だが、理三が天国に置き換わっただけで、結局死後も母親の束縛から逃れられない絶望感」を表現したいのですが、このためには記事のどこかに天国の要素を入れる必要があります。個人的には、最後のメッセージでストーリーが一気に広がる、というのをやりたいので最後のメッセージに天国の要素を入れたいと思っています。
本作では理三と天国を対応付けており、異常性は入試試験のようなものである、ということを想定しています。そのため、最後のメッセージは入試前の(歪んではいますが)母親からの激励のメッセージのようなものを想定しています。ご指摘を受けて「なんで天国にいくこともできないの」といった文面も考えましたが、これは激励のメッセージとは言えないと考えました。
以上の2つの条件を満たしつつ毒親らしい台詞は現状のものしか考えられませんでした。私が思いついてないだけで、以上の条件を満たしつつもっと良い台詞が存在する可能性はありますが、ひとまずは据え置きしたいと思います。