学校の屋上から飛び降りる話

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アイテム番号: SCP-XXXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

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SCP-XXX-JPから撮影した夜空

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの所在する都立██高等学校はカバーストーリー「少子化による統廃合」を適用、以後廃校とし財団の管理下に置かれます。敷地内を警備員が巡回し、民間人の立ち入りを防止してください。SCP-XXX-JPへと続くドアは厳重に施錠されます。新たな実験の可否は、現在検討中です。SCP-XXX-JP-A群は標準人形オブジェクト収容室に収容し、常に監視下に置かれます。収容を維持するにあたって問題がないと判断された娯楽品の提供が許可されます。収容室内の四方の壁には手すりを設け、SCP-XXX-JP-Aの移動が補助されるようにしてください。‪

説明: SCP-XXX-JPは都立██高等学校の屋上です。SCP-XXX-JPから建物の外周方向へと飛び降りた人間(SCP-XXX-JP-Aと指定)は地表から約1mのところで静止し、そのまま浮遊した状態を維持します。浮遊した状態は恒久的に継続するため、手すりなどの移動補助具なしの移動が不可能になります。SCP-XXX-JP-Aは浮遊特性を除いて非異常の人間と変わりなく、一般的な代謝が認められます。また、触れた物や排泄物などが異常性を獲得することはありません。
令和█年█月█日、都立██高等学校を夜間巡回中の警備員による「生徒が浮いている」旨の通信を財団が傍受。フィールドエージェントによってSCP-XXX-JP-A-1およびSCP-XXX-JP-A-2が保護された後、インタビューを通じてSCP-XXX-JPが収容されました。その後Dクラス職員の実験を通じて先述の異常性が発覚しました。当初はSCP-XXX-JP-A-1およびSCP-XXX-JP-A-2にSCP-XXX-JPが当てられていましたが、その影響の原因が屋上にあることが判明した後、遡及的にナンバーが振り直されました。

インタビュー記録1:

日付: ████/██/██

対象: SCP-XXX-JP-A-1 SCP-XXX-JP-A-2

インタビュアー: ██研究員
場所: サイト81██
付記:収容直後であることから対象の心理状態を鑑みて、二名同時にインタビューが行われた。 また、対象は紐で椅子に固定されている。

<録音開始,>

██研究員: 拘束する形になって申し訳ありませんが、いくつか質問をさせてください。こちらとしてもあなた達の状況を測りかねていまして。

SCP-XXX-JP-A-2: あ……あの、僕たちはどうなるんですか。親に連絡は……いや僕は良いので長谷川1は帰してください。……とにかく解剖とかそういうのは

██研究員: 落ち着いて。あなたたちをもとに戻したいんです。解剖なんかしませんよ。そのためにもまずはお話を聞かせてもらえますか?あなた達が……こうなるまでの経緯を。

SCP-XXX-JP-A-2: (沈黙)

SCP-XXX-JP-A-1: 私は止めようとしたの。

██研究員: 止めようと?

SCP-XXX-JP-A-1: (沈黙)

██研究員: どうぞ続けてください。

SCP-XXX-JP-A-1: こいつが。屋上で、飛び降りようとしてたから。私どうしたら良いのかわからなくて。なんで……

██研究員: 少し前から順を追って説明してもらえますか。

SCP-XXX-JP-A-1: (深呼吸と思われる音)今日は部活が長引いて下校時刻ギリギリだったんだけど、忘れ物したことに気がついて、慌てて四階の教室まで戻ったの。案の定というか校舎には誰もいなくて。そしたら森山2が階段を登っていくのが遠目に見えて。上には何もない3のにどこ行くんだろうって不思議に思ってたら大きな音が聞こえたの。で、見に行ったら屋上のドアの鍵が壊れてて、屋上に森山がつっ立ってた。

██研究員: お二人は以前から交友関係があったんですか。

SCP-XXX-JP-A-1: 小中一緒でそれなりに仲は良かったと思うけど。高校に入ってからは……
██研究員: わかりました。屋上に行ったあとのことを教えてください。何があったんです?

SCP-XXX-JP-A-1: 何があったも何も、森山がフェンスをまたいで落ちようとして、私は……止めなきゃって思って。つかんで落ちないようにって。そしたら足が滑って……。怖くて目をつぶったけど何も起こらないからゆっくり目を開けたら、浮かんでた。ジタバタしてたら警備員が来てここに連れてこられたってわけ。

██研究員: ちょっと待ってください。念のため。(無線で高校の屋上の封鎖を厳重にするよう指示を出す。)

SCP-XXX-JP-A-1: (ささやき声) 森山。えっと……大丈夫だよきっと。あんなとこから落ちても死ななかったんだし、なんとかなるよ。ラッキーだったね。まさか浮けるようになっちゃったなんて。

SCP-XXX-JP-A-2: なんで。

SCP-XXX-JP-A-1: なんでってそりゃラッキーじゃない、アニメの世界みた……

SCP-XXX-JP-A-2: なんで死なせてくれない!僕はもう何も考えたくない!みんな予想できないことばっかするし、それになじまなきゃいけない苦痛が!こんな毎日があと何年も何年も続くなんて信じたくない。漠然とした不安が、苦痛に対する予測が、寂寞とした孤独が、ずっとずっと僕の胃を締め付けてるんだ。やっと、やっと開放されると思っていたのに。どうしてこんな。長谷川4まで巻き込んで。あの瞬間僕は……

██研究員: 落ち着いてください。鎮静剤を!

<録音終了,>

終了報告書: SCP-XXX-JP-A-2が激しく動揺したことで、得られる情報が不明瞭になると判断しインタビューを終了。屋上を詳しく調査した後、改めてインタビューを実施する。

インタビュー記録2:

日付: ████/██/██

対象: SCP-XXX-JP-A-2

インタビュアー: ██研究員

付記: 前回のインタビューから一週間後に行われた。

<録音開始,>

██研究員: お久しぶりです。体調はいかがですか。

SCP-XXX-JP-A-2: まあ、この体にもだいぶ慣れました。それよりも僕たちはいつになったら解放されるんですか?

██研究員: その体がもとに戻ったらすぐにでも。

SCP-XXX-JP-A-2: (十秒あまりの沈黙)戻りたくないです。長谷川だけ戻してあげてください。

██研究員: そうなるとここから出るというのは難しいですね。

SCP-XXX-JP-A-2: それでも、良いと思ってるんです。僕、学校に馴染めてなくて。いじめられてるってわけじゃないんですけど、友達もいないし。家族も僕のことなんかいないように扱ってるんです。だから逃げたくて、毎日が嫌でいても立ってもいられなくてあの日、屋上から飛ぼうとしました。死にたかったのかって言われると今は分かんないんですけど。とにかく屋上から飛ばなきゃって5、思ったんです。そしたら何故か長谷川が来て。彼女とは昔は仲良かったんですけどだんだん近寄りがたくなっちゃって、ほら、性格があまりにも違いすぎるし。だから僕にとっては過去の人だったし、正直僕を止めようとしてるって気がついたときは嬉しかったかもしれません。でも結果一緒に落ちちゃって。落ちる瞬間、彼女の顔を見たら、巻き添えになんかしたくは無かったんです。彼女は、友達もいるし家族とも仲良いし、死んじゃだめだって。だから必死で祈りました。なんとか助かってくれって。僕を下敷きにしてでも、何なら時間が止まってくれないかとさえ思いました。

██研究員: そして、気がついたら浮いてたというわけですか。

SCP-XXX-JP-A-2: 思うに、これは神様がくれたチャンスなんじゃないかって。学校に向かう道、家に帰る道、そこを歩くことは僕にとって地獄の所業でした。でも今は……ちょっと不便だけど、歩かなくて良い、空中を漂ってどこへだって行ける。こんな自由なことはないと思うんです。

██研究員: だから戻らなくて良いと。狭い空間に閉じ込められていたとしても?

SCP-XXX-JP-A-2: はい。でも長谷川は戻してあげてください。僕にただ巻き込まれただけですし。彼女をもとに戻すためなら僕はなんだって協力します。

██研究員: わかりました……森山さん。もう、死にたいとは思っていませんか?

SCP-XXX-JP-A-2: 思ってないです。うまく言えないんですけど、今は新しい世界にいるような気分です。ここにいて、本が読めれば僕は幸せですよ。

<録音終了,>

終了報告書: SCP-XXX-JPの特異性が、SCP-XXX-JP-A-2を発端とするものである可能性がある。また、SCP-XXX-JP-A-2の精神状態と相談しながらにはなるが、ある程度収容室の外を自由に動けるようにしても良いかもしれない。

補遺1: SCP-XXX-JP-A-1は、本人の強い希望により、SCP-XXX-JP-A-2と同じ収容室に収容されることになりました。二人は非常に良好な関係を築いており、双方の精神状態の安定に寄与していると見られます。

補遺2: SCP-XXX-JPの発見及び収容から██日後、SCP-XXX-JP-A-2が収容室内で突如非常に速い速度で床へ落下。全身を強打し死亡しました。SCP-XXX-JP-A-1に対する追加の調査によりSCP-XXX-JP-A群が垂直方向に約10m毎秒の加速度を示すことが明らかになりました。

付記: このことから察するに、SCP-XXX-JP-A-2は無重力状態において浮遊していたのではなく、ただひたすらに落ち続けていたのだろう。我々とは違う慣性系で、彼の乗ったエレベータ6は自由落下していたのだ。—██研究員。

倫理上の観点から、存命のSCP-XXX-JP-A-1を異常から解放する試みが継続しています。

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  1. portal:8475873 (12 Feb 2023 01:57)
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