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アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Thaumiel
特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPは、"サーキュレーター計画"実現のための研究が十分になるまで、サイト-8117の水棲生物用収容室内で成育してください。アクアリウム用浄水器に偽造したカント計数機・PTAを水槽内に設置し、その実測記録を日ごとに同サイト内の研究室へと移送してください。
説明: SCP-XXXX-JPは、財団が確認可能なすべてのエネルギーを希釈することが可能なタイラギ(Atrina pectinata)です。当アノマリーを中心とした一定範囲内の物質的濃度・ヒューム値・EVE・アキヴァ放射などを完全に均一にします。このとき、範囲内に密閉空間をつくったとしてもその内部も変わらず影響を受けるため、発動が呼吸と同期してはいますが異常性自体は呼吸によるものではないと考えられます。このSCP-XXXX-JPが持つ異常性により、適用範囲内での現実改変・奇跡論的異常は発生しません。
寿命以外の特異な生命維持能力と生殖機能は、上記の異常性発動時にごくわずかに現実性の希薄化と奇跡論の行使などを行うことによって成立していると考えられております。
サーキュレーター計画: SCP-XXXX-JPの空間内エネルギー均一化機能を効果的に利用するため、多くのketerクラスのオブジェクトを付近に再配置する、またはSCP-XXXX-JP自体の重要施設への移動を行う計画のことです。吉田、山形、根岸の三名の博士による提案を基にして、2022/04/15に計画名称と実行の決定がなされました。現在は、その実現に足る計画の具体的展開が構想されています。
以下は計画に関係する出来事の変遷です。
2021/07/12: 脅威レベル赤の神格実体が、突如飛行能力・全身を覆っていた斥力の力場・奇跡論的消滅を発生させる光球のすべてを消失させ、そのまま地上に落下した。その神格実体は機動部隊が調査したが発見されず、落下予想地点の廃墟跡にSCP-XXXX-JPが存在していたため、翌日にそのアノマリーが収容された。
状況証拠などから、自由落下したその神格実体がSCP-XXXX-JPと衝突したことで、消失したと推考されている。
2021/10/05 多くの実験を経て、SCP-XXXX-JPが現在財団が確認できる限りの種類のエネルギー・物質濃度を異常性の対象にできることが判明し、Safeクラスのオブジェクトとして登録された。
2021/10/6: 神話・民俗学部門から、SCP-XXXX-JPが古事記に描かれる「比良夫貝」と関連があるのではないかとの見解が示された。
比良夫貝の描写
かれ その猿田毘古の神 阿耶訶あざかに 坐しし時に 漁すなどりして 比良夫ひらぶ貝に その手を咋ひ合はさえて 海鹽うしほに溺れたまひき かれその底に 沈み居たまふ時の名を底度久御魂そこどくみたまといひ その海水の つぶたつ時の名を 都夫多都御魂つぶたつみたまと申し そのあわ咲く時の名を 阿和佐久御魂あわさくみたまといふ
(その猿田毘古の神は、アザカの地に赴いたとき、漁を行うとヒラブ貝に手を挟まれて、海の水に溺れました。彼が底に沈んでられるときの名を底へつく御魂といい、水の中で泡が立つときの名を粒の立つ御魂と申され、地上で消えるときの名を泡の開く御魂という)
上記の「貝に挟まれた神格実体が、そのまま泡と化して海に希釈される」といった点が、神格実体を完全に消滅させたと思わしきSCP-XXXX-JPの特徴と一致するため、現在の財団では同一もしくは関係する存在だと想定されている。
2021/10/06: 神学・EVE力学部門の吉田博士が以下の提案を行った。
SCP-XXXX-JPは、これまで財団が手を焼かされてきた神格実体に対する大きな切り札になりうる存在です。
このアノマリーが存在する周辺の空間は彼らが行使する厄介な権能を打ち消し、さらに直接接触することでその本体すら消し去ります。これを利用すれば、神格実体の無力化・緊急時の終了手段をあまりにも簡単に行うことができるようになります。さらにアキヴァ放射すら拡散させるため、神格実体の手が加えられた後の空間に運んでも効果を発揮するうえに、人間への神格実体のあらゆる干渉をはねのけることも可能でしょう。
以上の情報からわかる通り、このアノマリーは対神格実体を想定した場合、単純な収容行為だけでなく防衛手段、また隠蔽技術としても非常に有用なのです。これをThaumielオブジェクトに指定しないわけはありません。すぐにでもオブジェクトクラスを変更することを提案します。
2021/10/07: 現実改変能力者対策部門の山片博士が以下の提案を行った。
SCP-XXXX-JPは、その異常性によって空間内のヒューム値を均等に保つことが可能であることはすでに明らかにされている。つまり、現実改変能力者をその範囲内に入れてしまえば、彼らの脅威的な力を完璧に封じることができるのである。
範囲外からの現実改変には無力なため、吉田博士の提案にあるほどの有効性があるわけではないが、それでも現在Thaumielオブジェクトを含めても効果的なヒューム的対抗手段が少ない財団においては、何も用意しなくとも運用可能なこのアノマリーは大変魅力的である。
生物としての食事や掃除すら必要なく、また管理していて何のリスクもない。貝という性質上自立して移動することはほとんどないため、収容に関しても実に手間がかからない。
正直に言って、私はSCP-XXXX-JPを利用しない手はないと思っている。リスクとリターンが、いい意味で全く釣り合っていないのだ。
この提案を受け取る職員たちが、賢明な判断を下すことを祈る。
2021/10/20: 0-5評議会の決定により、SCP-XXXX-JPのオブジェクトクラスがSafeからThaumielに変更された。それ以降、0-5二名以上、セキュリティクリアランス4レベルの職員4名以上からの許可が下りた場合のみクロステストが行われるようになった。
2021/10/24: SCP-XXXX-JPの空間内を希釈する異常性を"サーキュレーション機能"、その異常性の効果範囲を"ボウル"と呼称することが定められた。
2021/11/02: SCP-XXXX-JPのクローンを生成したが、"サーキュレーション機能"をはじめとする異常性は発生しなかった。
2021/11/12: 四回目のクロステストの際に、"サーキュレーション機能"が反ミームにも効果を及ぼすことが判明した。ただし、実験時に無力化されたオブジェクト、または認識した職員が"ボウル"外に出た瞬間に反ミーム性が復活したため、そのオブジェクトを対象とした研究自体はあまり進展しなかった。
2021/11/15: 五回目のクロステストの際に、"サーキュレーション機能"がミームや認識災害の影響力を弱める力があることを発見した。"ボウル"内の曝露者が少数になるほどその効果は強くなるが、本来曝露していない人物も"ボウル"内にいた場合に曝露の症状が現れるというリスクも見られた。"ボウル"から出れば、曝露者は本来の影響を受けるようになり、非曝露者の症状も消失した。
2021/11/22: ミーム・反ミーム対策研究部門の根岸博士が、以下の提案を行った。
いくつかの実験によって、SCP-XXXX-JPの活用方法の全容が徐々に見えてきた。今までの実測記録からわかるように、このアノマリーは日々有用性が明らかにされるばかりである。
神格実体、現実改変能力者、反ミーム、ミーム、認識災害。これまで財団が効果的な対処法を安定して生み出してこれなかった多くの厄介事が、この一つのアノマリーによってあっという間に解決する。無論、"ボウル"内でしか効果は持続せず、また複数のSCP-XXXX-JPを用意することが不可能なため、利便性が非常に高いわけではない。
だが、このアノマリーを利用しないわけにはいかない。
周辺に収容難易度の特別高いKeterクラスのオブジェクトの収容室と実験室を配備する、もしくは重要度の非常に高い財団施設の中心にこのアノマリーを置く、といったようにする必要はあるだろうが、それさえしてしまえばその利益はとてつもないものになるだろう。特に、現在研究どころか正確な認識すら困難なミーム・反ミーム系列のオブジェクトを、空間的制限があるとはいえ、ほぼリスクなしで支障を少なくしての調査が可能なのが最大の便益であるといっても過言ではない。
個人としての所感を述べさせてもらうと、いくつか存在するThaumielオブジェクトの中でも、このSCP-XXXX-JPがもっとも役立つものに違いないだろう。
2021/12/13: SCP-XXXX-JPに関する実験で、以下をはじめとするいくつかのアノマリーの異常性が一時的に消失した。その中にはヒューム値・奇跡論・反ミーム・ミームに関係のないものも多く含まれていたため、"サーキュレーション機能"の適応対象の修正が検討された。
対象となったオブジェクト |
具体的な変化 |
空気中に何かを放射するもの |
放射物が効力を失うまで希釈された。 |
異常性のある光/音/匂いを発するもの |
その光/音/匂いが異常性ごと拡散された。 |
熱変化をもたらすもの |
極度の温度上昇/下降は起こらなかったが、空間内全体が均等に変化した。 |
接触以外の条件で、人の精神に影響を与えるもの |
精神への干渉能力を失った。 |
2022/01/02: SCP-XXXX-JPが単為生殖を行い、SCP-XXXX-JP-Bを生み出した。
2022/02/12: SCP-XXXX-JP-Bが異常性を獲得し、その親がSCP-XXXX-JP-Aへと変化した。それと同時に、そのSCP-XXXX-JPの"ボウル"の大きさが増加していることが確認された。
それにより、世代によって"ボウル"の範囲が拡大する可能性が考えられ、Thaumielオブジェクトとしての運用設計に大きな変更が入った。
2022/04/15: 0-5評議会がSCP-XXXX-JPの積極的利用を目的とした運用計画の実行を発表した。その際に、三人の博士の提案を軸とすること、名称を"サーキュレーター計画"とすることを決定した。
2022/06/13: 収容してから二体目となる、新しいSCP-XXXX-JP-Bが生成された。次に異常性が継承された時に"ボウル"の面積増加が発生することが予想されたため、このSCP-XXXX-JP-Bが変化直後に範囲の計測を行うことが決められた。
2022/07/11: 新たなSCP-XXXX-JP-BがSCP-XXXX-JPに変貌した。上記の記録により確かに"ボウル"の範囲がさらに広がっていることが明らかになった。
今後も単為生殖の度に"ボウル"が拡大することを前提にして、"サーキュレーター計画"の利用規模に大幅な変更が加えられた。これ以降、SCP-XXXX-JP-Bが異常性を取得してSCP-XXXX-JPになることを"更新イベント"と呼称することが決められた。
2022/11/13: SCP-XXXX-JPに関する実験記録で、前個体の際には対象にならなかったオブジェクトのいくつかも"サーキュレーション機能"が適応されていた。
新たに対象となったオブジェクト |
具体的な変化 |
複数個体が存在し、互いに情報共有が可能なもの |
情報共有能力がひどく粗雑となった。 |
人間の精神に影響を与えるもの |
精神への干渉能力を失った。 |
擬態能力をもつもの |
擬態能力の精度が大きく下がった。 |
一定以上の速度で移動・行動可能なもの |
一定以上の速度の速度を出すことが不可能になった。 |
2023/01/11: 三回目の"更新イベント"が発生し、"ボウル"が250mまで拡張した。そのことが確認された後、"サーキュレーター計画"主任を務めるサイト-8117の管理者 木内氏が以下の内容を上進した。
木内氏の提言
私は、SCP-XXXX-JPが成長可能なオブジェクトだと確信することができてひどく安心しましたが、それと同時に計画の今後の展開がどうしても問題になると考えます。
もちろん、"サーキュレーション機能"の現在の適応範囲はSCP-XXXX-JP自体の利便性に比べれば狭すぎると言えてしまうほどなので、それが広がってくれるのは素直に嬉しいことです。しかし、SCP-XXXX-JPが異常性のない空気も完璧に循環させるという性質を持つ以上、これからも成長を続けていくといずれ大規模な対処が必要になるでしょう。
"ボウル"は横だけではなく縦にも伸びています。したがって、それが大きくなっていくとなると、上空のより薄い空気が混ざり合ったり、雲がかき消されたりするのです。今はまだほとんど影響はないですが、将来的には職員の防護服の着用などを考えねければなりません。それに、もしその上の距離がオゾン層まで届き、その次に紫外線すら散らばさせるようになれば、サイトの周辺に対する特別対策もしくは移動を行う必要があるでしょう。
もちろん、これは想定される多くの諸問題の一部にすぎません。他にも地下水の攪拌や日陰の消失などの様々な懸念点が存在していますが、研究を中止するほどのリスクではありません。この計画およびそのための実験を続行することに、反論はありません。
ですが、今のうちにそのあたりの対策は考えておいてもらいたいのです。この一匹の貝だけで、我々はほとんどのオブジェクトを安全に収容可能になるのですから。
この発言をくみとり、"ボウル"の規模が規定のものを超えた場合、サイト-8117を"サーキュレーション機能"の影響が可能な限り抑えられる場所へと移動させ、周囲にその対策設備を配置することが決定された。
補遺: SCP-XXXX-JPは絶対に傷つけてはなりません。決して、SCP-XXXX-JP自身を落下させる・一定以上の速度を伴って物を接触させる・圧力を加えるなどの事象を発生させないようにしてください。
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