「私、観覧車嫌いなんですよね。」
明石あかし 夕夏ゆうかはポツリと呟いた。今芸術部門オフィスの中には研究員である彼女と部門長の丁辻ヶ原ちょうつじがはら 幸四郎こうしろうの二人しかいない。明石研究員が脈絡のない事を唐突に言い出すのはいつもの事だが、だからといって二人きりの状態で無視するというのは余りにもコミュニケーションに問題がある。丁辻ヶ原は唐突な話題に対して答えを返した。
「あー、それは高所恐怖症とか? でも明石さん、高いところ苦手なイメージはないけどな。あー、それは処分で大丈夫。そこまで運び込める余裕はないからな。」
「私は高所恐怖症ではありませんからね。」
「じゃあなんで観覧車が嫌いなの? 高所恐怖症じゃない人が観覧車を嫌いなんてあんまり聞いたことが無いけど。」
忙しなく作業を勧めながら二人は会話を続ける。別に丁辻ヶ原は理由に興味があるわけではなかったが、聞かなければならないような成り行きになってしまったのだから仕方がない、とどこか不誠実に丁辻ヶ原は言葉を紡いだ。なんでなの? と。
「怖いから、ですよ。博士は観覧車が何のために作られてるかご存じですか?」
「高村光雲の作品は保存すべきだろう。……何のため。そりゃあ、人を楽しませるためじゃないのか? 高いところを見たい人、好きな人は多いだろうし、怖いもの見たさってのもある。そんな人たちのためじゃないか? ま、今考えた推測だけど。」
「大方私もそうだと思います。高いところが見たい。それだけでしょう。でも、高いところって一体何が魅力なんでしょうね?」
「……確かにな。」
明石研究員の問いかけに丁辻ヶ原は少し考えた。元来、動物は高所に恐怖を覚えるはずだ。落ちれば怪我をする可能性が高い。下手すると、命を落とす。ジェットコースターなんてのはそのスリルを安全に味わうために作られたものだろう。でも、観覧車は違う。危険を求めたわけでも、スリルを味わうためでもない。ただ景色が見たいとか、ぼんやりと高いところに行きたいとか、そんな理由でしかない。考えてみると、不思議な乗り物だ。
「そう考えると怖くないですか。なんとなく高いところっていいなって感情だけで、あれだけ大掛かりな装置を作って、何の疑いもなく楽しむって。……人間ってなんとなくの良さのために人手と予算と科学力をこんなにも躊躇なく使えるって考えると空恐ろしくなるんです。」
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