Quiet and Happy Days

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クレジット

タイトル: Quiet and Happy Days
著者: Popepape
作成年: 2022

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窓から差し込む眩い日差しを浴びて、きみは瞼を上げる。
そのままベッドから体を起こすと、卓上のフリップクロックがパタパタと回っているのが見える。
2月28日。
隣で眠っていたはずのダイアナはいつのまにかいなくなっている。

3月1日。
「あなたはいつだって前向きね。昔はくよくよしがちだったけれど、あたしはいまのあなたが好きよ。」

3月2日。

3月3日。
きみは昔から不眠症だ。
睡眠薬を飲んだきみは、静かに眠りにつく。

3月4日。
きみがリビングの方に歩いて行くと、壁にダイアナがもたれかかっている。
声をかけても一切の反応を示さないダイアナをきみは不思議に思う。
近づいてみると、胸が上下していない。脈もない。
よく見れば頭から血が流れていて、右手はこめかみに銃を突きつけたかっこうになっている。
彼女は死んでしまったのだろうか、ときみは思う。睡眠薬に侵された頭がまだうまく働いていない自覚がある。
几帳面に畳まれたメモが膝の上に置いてあるのをきみは見つけて、そっと拾い上げる。
メモには、きみへの謝罪と愛の言葉が書かれている。あなたのように前向きではいられなかった、とも。
涙は流れず、嗚咽もできず、なにもできないきみは眠ることにする。
薬のケースのキャップをひねり、すこしばかり出しすぎた玉たちをそのまま喉に突っ込む。水を口に流し込んで、きみはベッドに横たわる。意識が遠のいて行く。

夢の中では、きみの目から涙がこぼれている。
ダイアナが笑う。あなたってば、ほんとうに泣き虫ね。
これは現実だっただろうか。

きみは目を開ける。
卓上のフリップクロックがパタパタと回る。3月6日。
きみが気まぐれに報告書のエントリーをチェックすると、見知らぬ誰かが奮闘した記録が残っている。世界はみんな死んでしまったらしい。
何かが流れてくるような気がしたきみは瞼を閉じてみたが、何もこぼれ落ちては来なかった。
けれど、大丈夫、全部が大丈夫だ。恋人がきみを残して死んでしまったけれど、全部大丈夫。いまや世界はこんなにも静かで、空はよく晴れて青く、まったく万事が順調だ。
泣くことも悲しむこともできないきみだが、感情を伝える相手がいない今じゃあそんなことは問題にならない。
なんて素晴らしき静かな世界！
この静かな世界にふさわしい言葉を、きみはひとつしか思いつけなかった。
キーボードをカタカタと叩き、その言葉をデータベースに保存する。