SCP-1472-JP - 夢の彼方で蛸とランデブー

クレジット

タイトル: SCP-1472-JP - 
夢の彼方で蛸とランデブー
著者: ©Popepape does not match any existing user name

作成年: 2023


アイテム番号: SCP-1472-JP

オブジェクトクラス: Keter Nagi Safe

特別収容プロトコル: SCP-1472-JP-1は、不透明な布で表面を覆った上で低危険物収容ロッカーで保管されます。担当職員はSCP-1472-JP-1との対話を行ってください。

イベント1472-JP-23以降の█年間、SCP-1472-JP事象の発生は確認されていません。SCP-1472-JP-1の供述から、当該超常現象は今後発生しないと考えられています。

+ Keter指定時の特別収容プロトコルを表示する

旧特別収容プロトコル:

+ Nagi指定時の特別収容プロトコルを表示する

旧特別収容プロトコル:

説明: SCP-1472-JPは異常性を持った夢です。内容は個人によってばらつきがありますが、一貫して以下の出来事を含みます。

1. 対象は不明な建物の廊下を歩く。このとき、外部からは強い雨音が聞こえる。
2. 廊下の行き止まりに部屋がある。
3. 対象は部屋の扉を開け、入室する。室内であるにも関わらず雨が降っている。

夢。
コンクリートの壁に絵が描いてある。
声が聞こえる。
雨が降っている。
絵が全部洗い流されたら夢から覚める。

• ヒョウモンダコ(Hapalochlaena fasciata)に関する一定の知識¹を保有していること
• 何らかの創作活動を行っていること

補遺1: 脳内画像可視化記録装置Brain Image Visualizer（以下、BIVと呼称）によるSCP-1472-JPの記録が成功しました。以下に

イベント1472-JP-23記録

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記録日: 2023/██/█

参加者: エージェント・樫野(SCP-1472-JP-A-23)

付記: 事案発生当時のエージェント・樫野は標準明晰夢訓練を実行中であり、訓練終了後にフィードバックを行うことを目的としてBIVを使用していました。以下はBIVにより取得された記録です。

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<以前の記録は関連性が低いため省略>

エージェント・樫野: 風景が変わりました。雨が降っています。

SCP-1472-JP-B: 言の葉の海 征く廃船は 掬い上げては くれぬのだ

エージェント・樫野: 声が聞こえる方向へ歩いてみます。

SCP-1472-JP-B: 墨吐けぬ蛸 泳げぬ蛸に 如何なる価値を 見出すか

SCP-1472-JP-B: 忌むべきものは 永久の忘却 恥ずべきものは 酩酊だ

SCP-1472-JP-B: かたちつくった あいつが去って おれの中身は 空になり

SCP-1472-JP-B: 七五の韻と 八の手足と おれの本当は それらだけ

青と黄と毒

エージェント・樫野: そうか、あなたは祈りだったのか。²

エージェント・樫野: あるいは、この雨はあなた自身だと？

エージェント・樫野: ええ。幸せの絶頂のその最中、私は死んでしまいたかった。

エージェント・樫野: しかし。夢は、醒めなければ。

SCP-1472-JP-B: 識っている

SCP-1472-JP-B:

[エージェント・樫野が覚醒する。]

<記録終了>

視力がとてもよい
吸盤と墨汁嚢が退化している、泳ぐのも得意ではない
→毒が発達したから

頼みもせぬのに

歌うたい

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終了報告書: 覚醒後、エージェント・樫野には

補遺2: イベント1472-JP-23の発生以降、2年間にわたってSCP-1472-JPの発生が確認されませんでした。したがって、オブジェクトクラス指定がNagi³に変更されました。発生が休止した原因は調査中です。補遺3を参照してください。

補遺3: エージェント・樫野から、「自作の詩が蛸をモチーフとしたカリグラムに改変された」という報告がありました。

SCP-1472-JP-1文面

たとえばだ 壺を抱えて旅に出たい 春の嵐が来るそのひ
こよいは月も出るそうだ 明かりを標と歩き出そうよ
つぼの中では寂しかろう つぼの中身は哀しかろう
ぼくの愛しき トロンプ・ルイユ 永久と見紛う そのも
の　ん
な　だ
か　たこ
の　行こう彼方へ

エージェント・樫野には懲戒処分が下されました。
これに伴って、SCP-1472-JPのオブジェクトクラスはSafeに変更されました。

以下は、SCP-1472-JP-1の収容直後に行われたインタビューです。

対象: SCP-1472-JP-1
インタビュアー: 酒井博士
付記: 本インタビューにおいては、酒井博士がSCP-1472-JP-1文書へ記入することを通じてSCP-1472-JP-1とのコミュニケーションが行われました。

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酒井博士: まず、君の正体について教えてほしい。

SCP-1472-JP-1: 蛸壺でした、あれがぜんぶの原因なんです。概念の海を抜け出して自分の形をつくって、それなのに自由になれなかったのは。五と七の韻律も、創作者も、全部が綺麗に揃っていました。足りなかったのは完結でした。おれの描写の終着でした。

あるところに、人間がいました。人間は、自分が存在したことをどこかに残したいなあ、と思って物語を書くことにしました。けれど、人間は物語を書くのを途中でやめてしまいました。死んだのか、飽きたのか、満たされたのか、おれに理由はわかりません。わかるのは、物語はおわらなかった、ということだけです。

SCP-1472-JP-1: おれに実体はなくて、だって誰も認識してくれなくて、夢を漂うのが精いっぱいでした。境界がぼんやりとしたままで、この色と毒と七五の韻律だけがおれをおれたらしめていました。如何ともしがたく、おれは空腹でした。

SCP-1472-JP-1: けれどもたべるものがありませんでした。仕方がなかったので脚をたべて、脚がなくなったので胴をたべて、胴がなくなったら空腹でした。そうやってかたちをなくして、でも気がつくとまた体が戻っていました。

SCP-1472-JP-1: ほんとうはおかしかったんです。だっておれは想像上の動物で、ふつうならどこにもいけないなんて起こるはずがない。

酒井博士: SCP-1472-JPイベントは、君の自食行為であったと？

アクロスティック

何にも、要りません。

世界への独善的かつ一方的な呼びかけでした。

酒井博士: 自分の現状には満足していますか？

SCP-1472-JP-1: 止まれ、時。 汝はいかにも美しい。

酒井博士: どういう意味か教えてくれるかい？

SCP-1472-JP-1: おれの物語が終わったんです。それと、これからもきっと楽しいんだろうなあってこと。

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ページ情報

執筆者: SCPopepape

文字数: 4485

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最終更新: 11 Feb 2023 04:50

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ディスカッション
72時間ジャムコンテストJP-2023に、テーマC「時よ止まれ」で参加します。

参考・引用文献

また、最強のコンテストに参加します。キーワードは「ランデブー」をメタタイトルに使用しています。

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利用ガイド

1. portal:8207850 (22 Aug 2022 22:39)

Footnotes

1. より詳細には、

• 有毒のタコである
• 興奮時に青い輪の模様のある黄色の警告色に変化する

以上2点の特徴を知っていることが条件であると考えられています。

2. 事案記録中のこの時点から、エージェント・樫野の発言と会話の文脈との整合性が破綻します。SCP-1472-JPの未知の異常性による影響と推測されていますが、詳細は不明です。

3. アイテムは何らかの理由で長期的に異常性と危険性を失っていますが、収容プロトコルは継続されなければなりません。