急募! 締め切り間近scp3000-jp 陽一と榊

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今はなき2人に捧ぐ。

アイテム番号: SCP-3000-JP

オブジェクトクラス: unforgettable

特別収容プロトコル: その特異な性質の為に、SCP-3000-JPの収容は不可能とされています。しかしSCP-3000-JPの影響が一般に暴露する可能性の低さ及びSCP-3000-JPの異常性を考慮し、アノマリーに対してはその解明が優先して行われます。

SCP-3000-JPの消失を防止する為、我々は「彼女等」を忘れてはいけません。SCP-3000-JPの継続的な間接的観察の為に、指定されたサイトに2人以上、この報告書を読んだ事のある職員("記録保持者")が配置されます。SCP-3000-JPを目撃した場合、脳の補完作用1による記憶の食い違いを防ぐ為に、目撃者への迅速なインタビューが行われます。

3000-JP特別情報分析班は財団データベースに於いて新たに報告・更新された全ての情報にSCP-3000-JPが関与していないかを確認し、関与が認められた場合は可能な限りの情報の収集と分析、目撃者へのインタビューをし、手順書に従い当該データの編集或いは削除を加えた上でアノマリーの解明、追跡、確保を試みてください。又、データベースへのアクセスはO5-9の管理の基に行われ、タイプ-γ以上のクラスに指定された検閲2を除く全ての検閲への情報開示請求が許可されます。

説明: SCP-3000-JPは2013年以降に報告された財団データベース上に不定期に出現する二人の人物です。2019年に全国規模で実施された調査により、SCP-3000-JPが一般に暴露/認知されていない事が判明し、現在の特別収容プロトコルの方針が打ち出されました。

二人はそれぞれが「陽一」(SCP-3000-JP-1に指定)、「榊」(SCP-3000-JP-2に指定)と呼ばれており(インタビューログを参照の事)、SCP-3000-JP-1の苗字・SCP-3000-JP-2の名前は不明或いは存在しないと推測されています。
SCP-3000-JP-2との客観的な関係性から2人は兄妹/姉妹であり、SCP-3000-JP-1の苗字は「榊」であるとの主張が度々されますが、目撃者への精神的作用及び根拠の欠如がある以上この主張が受け入れられる事はありません

SCP-3000-JPの容姿を含むあらゆる身体的特徴は軽微な反ミームに類似する未知の影響により正確に記憶或いは伝播する事が不可能です。脳による記憶媒体には二人には“モヤ”がかかり3、目撃者は二人の身体的特徴を言語化する際、抽象的な表現には成功しますが、具体的な表現に失敗し軽微なストレス反応を示します。この局所的な健忘症状はクラスW記憶補強薬を用いた場合(インタビューログ-3000-JP-1を参照の事)にも同様に現れた事から、SCP-3000-JPは自身の身体的特徴をミーム的に暈している現実性実体ではなく、軽微な反ミームを纏った身体的特徴を持たない抽象概念生体であると推察されています。

全ての目撃者はSCP-3000-JPの目撃に際して、アノマリーの容姿や言動を始めとするあらゆる要素を無意識に脳内補完し、アノマリーの存在を認識します。補完された内容は目撃者によって多少異なりますが、その存在は目撃者にとっての"理想的な兄妹/姉妹"が投影された"幸せな"姿である事、2人の名前が「陽一と榊」である事が絶対的に共通しています。
目撃者による全ての供述ではSCP-3000-JP-1「陽一」が兄/姉、SCP-3000-JP-2「榊」が妹として認識されています。この際、目撃者の性自認が男性であった場合は SCP-3000-JP-1をSCP-3000-JP-2の兄、性自認が女性であった場合はSCP-3000-JP-1を SCP-3000-JP-2 の姉であると認識します。
上記の事実は目撃者がSCP-3000-JP-1に対し自身を投影している事を示唆していますが、 目撃者に対しこの事を指摘しても殆んどの場合は強く否定し、顕著なストレス反応を示します。この精神的影響は“絶対的な理想”を守る為の防衛反応とされています。

又、SCP-3000-JP-1が姉として認識される場合にも男性名詞である「陽一」の名前が何故適用されるのか、そもそも「陽一」、「榊」の名称は何が元となっているのかは未だ解明されていません。

特筆すべき事に、SCP-3000-JPに関する供述は年数の経過に伴い変化しています。2013年のSCP-3000-JP発見当初は兄妹それぞれがおおよそ5歳、3歳の「お嬢ちゃん」と評価されていましたが、その評価は年を重ねる毎に徐々に変化し、2022年現在ではおおよそ14歳、12歳の「お姉さん」と評価される様になりました。これはSCP-3000-JPもヒト同様に成長している事を示唆しており、今後もこの「成長」は続くと推察されています。


発見の経緯: 2013年5月フィールドエージェント・ツキがSCP-████の確保作戦中にSCP-3000-JPと遭遇しました。agt.ツキはSCP-3000-JPと遭遇したエリアが一般人の立ち入り禁止地区であった事から2人の事を不審に思い、財団に報告しました。

以下はagt.ツキに対するインタビューログの抜粋です。
又、agt.ツキはSCP-3000-JPと遭遇した際にクラスW記憶補強薬を服用していました。

インタビューログ-3000-JP-1


日付: 2013年5月23日

対象: エージェント・ツキ

インタビュアー: 穴山上級研究員

付記: このインタビューは、SCP-3000-JPに関しての最初の記録でありSCP-3000-JPの存在が発覚する前に行われたことに留意してください。


<抜粋開始>

agt.ツキ: まるでそこに居るのが当然かの様に、2人はそこに居ました。

穴山上級研究員: その時、2人は何をしていましたか?

agt.ツキ: それはーその…恐らく、何もしていなかったと思います。ただそこに居るだけの…そんな感じだったと思います。

穴山上級研究員: フム…。では、2人について覚えている事を教えて下さい。

agt.ツキ: はい、最初は…と言うかその時は親とはぐれてしまった可哀相な姉妹…と言う感じだったんですけど…その…(小声で)いや…。(5秒間の沈黙)

研究員: どうかしましたか?

agt.ツキ: いえ…でもやっぱり、どうしてもはっきりと思い出せないのです。二人の事を。

研究員: そうですか。出来る限りで構いません。何かしらその2人について覚えている事はありませんか?

agt.ツキ: 彼女達は…そう…(3秒間の沈黙)いえ…やはり具体的な事は何も思い出せません。イメージと呼べるものしか私の記憶にはありませんが、それでも構いませんか?

研究員: イメージ、ですか。

agt.ツキ: はい。それはー彼女は、いえ、彼女等は…互いに仲が良い幸せな姉妹だったと、そんなイメージを強く記憶しています。

研究員: 成る程。イメージだけを覚えている、と。

agt.ツキ: はい。

研究員: しかし、2日前に提出された(研究員は手元の事前調査書の入ったファイルを指差す)これによると、あなたは二人の事を具体的に覚えているとあります。

agt.ツキ: それはーその…。

(7秒間の沈黙)

研究員: 念のために、もう一度聞いておきましょう。具体的な事は、何も思い出せないのですか?

agt.ツキ: はい。恐らくは。そしてわたしが"覚えている"イメージも正確な物ではないでしょう。

研究員: どう言う事ですか?

agt.ツキ: 私は…(3秒間の沈黙)あの作戦から2日間、あのあやふやな幻について考えを巡らせなかった時はありません。その考えの中には、もしかしたらこうではないのかと云った憶測や、妄想と言っても差し支えない物まで混じっています。ですから、彼女達から直接的に得られなかった、或いは欠損してしまった情報の穴に、私が都合の良いように情報を補完している可能性が十二分にあるからです。

研究員: つまり、あなたが実際に覚えている物は"姉妹である"と言うその存在のー言い換えれば概念と、ソレと話した話の内容だけであると。

agt.誤謬を恐れずに言えば、そうなるかと。

研究員: では、この報告書にある内容と、現在のあなたとの記憶、言い換えれば保持している情報が違うのは…それに対する認識が変わったからだと。

agt.ツキが僅かに頷く。

穴山上級研究員: もっと詳しく教えて下さい。

agt.ツキ: 私はクラスW記憶補強薬を毎日服用しています。それは2人に会った日にもです。通常、よっぽど強力な反ミームでもない限り、この薬剤はその壁を破る事、そしてその容姿をはっきりと認識し、覚える事が可能です。しかしかし私が見た物はー(目を閉じ、呟く様に)思い出せない。アレはー。

穴山上級研究員: 一体何だったんですか?

(agt.ツキは右手で両目を覆い、深く俯く。)

穴山上級研究員: 大丈夫ですか?

agt.ツキ: 違う二つの記憶があります。

穴山上級研究員: 二つの?違う?

agt.ツキ: ここには2人が居る。けど、一方には…これは一体?違う…誰もいない…何も無い…何も。

穴山上級研究員: 大丈夫ですか?

agt.ツキ: (5秒の沈黙)ええ、大丈夫です。

穴山上級研究員: 必要なら少し休憩を取りますが。

agt.ツキ: (顔を上げて)必要ありません。

穴山上級研究員: (3秒の沈黙)そうですか。では、二つの記憶があるとはどう言う事ですか?

(12秒の沈黙)

agt.ツキ: 恐らくですが、"誰もいない記憶"、これは私が実際に見た記憶で、もう一つの"2人が居る記憶"、この本来であれば正しい記憶、これは私の思い込みの、先程にも言及した抜け落ちた情報への補完によって生まれた物だと思います。

穴山上級研究員: 異なる…2つの…。

(5秒の沈黙)

穴山上級研究員: どうも、納得が行きませんね。何故記憶補強薬を用いているのに、誤った記憶をーああ、そう言う…事…なのか?。

agt.ツキ: 恐らくはその通りです。脳の記憶を"思い出す"仕組みについてはご存知ですよね。

穴山上級研究員: もちろんです。脳は決まった、言い換えれば固定された情報をその度に思い出すのではなく、思い出す度にその情報を更新し、新たに"記憶"させている。記憶補強薬はその更新による変更をゼロにし、結果として「記憶の固定化」の作用をもたらす。

agt.ツキ: その通りです。もし、何かしらの欠損に対して脳が補完を行ったのなら、その新たに追加された事柄は事実として認識され、記憶として脳に保管されるでしょう。

穴山上級研究員: 記憶補強薬を用いたとしても"居なかった"と言う事実は補完された(脳にとっての)"正しい"情報によって更新され塗りつぶされると。

agt.ツキ: そしてそれに対する情報は全てが補完された、言い換えれば嘘であった為、「記憶の固定化」が正常に行われず、この2日間誤った更新を重ねていた。
つまりはそういう事だったんですね。混乱させてしまい申し訳ありませんでした。

穴山上級研究員: ああ、お気になさらず。少し、休憩をとりましょう。

agt.ツキ: そうですね。私も、この情報を正しく保管しなければなりませんしね。

(3分の休憩)

穴山上級研究員: では、現在解っている事を整理しましょう。
あなたはSCP-████の確保作戦中に立ち入り禁止区域でその2人に出会った。しかしその2人は実際には影も形も無く、あなたが会った2人は何らかの情報の欠陥に対してあなたが無意識に補完し続けた結果としての産物である。あなたは記憶補強薬を服用していた為、塗り潰される前の2人のいない光景を思い出す事が出来、今さっきの考察を得られた。

agt.ツキ: そうですね。ここで問題になるのが、2人の存在が何処から来たのかですね。

穴山上級研究員: ええ。何か思い当たる節はありませんか?

agt.ツキ: 私はあの時に何かしらを見ていた筈です。そうでなければ筋が通りません。

穴山上級研究員: 確かに、それがどれだけ不完全であったとしても、基となるものが無ければ補完は出来ませんからね。
しかし、そこには何もなかった。

agt.ツキ: そうです。

(4秒間の沈黙)

agt.ツキ: こう考えてはどうでしょう。私はそれを視覚では認識していなかった。それは第六感か、それに類似する何かによって、私の脳に知覚された、と。

穴山上級研究員: えらく非科学的ですね。

(agt.ツキは赤面する。)

穴山上級研究員: しかし、そうでもないと説明が付きませんね。
私が思うに、それは何かしらの概念か、アイディア体であると思います。

agt.ツキ: 私はーどうでしょう。現状情報が少なすぎます。私が見た「2人の居ない光景」、これが事実であったのかすら定かではありませんし、脳は勿論の事、記憶補強薬すらその作用が完全に判っていない現状、決めつけるのは危険かと。

穴山上級研究員: そうですね。情報が少なすぎるのは確かです。現に、この様な事案は聞いた事がありません。
疑っている訳ではありません。しかし、話を聞く限りこれは新なscipに違いありません。その場合…(穴山上級研究員は頭を押さえ、呟く様に)どうやって収容しろと?

agt.ツキ: 大丈夫ですか?

穴山上級研究員: あ、ええ。失礼。
ともかく、この事は後でちゃんと報告するとして、今は現状唯一の目撃者であるあなたへのインタビューを続けます。

agt.ツキ: はい。

穴山上級研究員: では…2人について…あなたが補完した内容が事実であるとして続けます。
あなたが会った2人について、覚えている事を教えて下さい。

agt.ツキ: はい。2人は女の子で、それぞれが5歳と3歳位の姉妹でした。服装はーこれは、恐らく、そう、白色の何かを両方が着ていました。顔はー(目を瞑って)思い出せません。ついさっき迄は思い出せた筈なのに…。

穴山上級研究員: どうして思い出せないのですか?

agt.ツキ: モヤが、モヤがかかっています。

穴山上級研究員: 「記憶の固定化」が正常に行われていないにしても、記憶補強薬によって補完はある程度強固に行われた筈です。つまりー。

(agt.ツキは精神的苦痛を露わにする。)

agt.ツキ: いいえ。これは決して顔なんかじゃありません。決して!これは?違う!

穴山上級研究員: 落ち着いてください。

(agt.ツキはそのまま俯く。)

agt.ツキ: 申し訳ありません。取り乱しました。2人の顔にはーおおよそ貫通不可能なモヤが、どうしてもかかっています。

穴山上級研究員: いえ、しかし記憶補強薬を用いてもこうなるとなると…困りましたね。
モヤがかかっている部分に関してはおおよそ平均的なイメージを重ねて補完しているのかもしれませんね。

agt.ツキ: そうですね。だからはっきりと思い出せない。記憶補強薬を用いているのに。

穴山上級研究員: では、モヤがかったイメージではなく、はっきりとと覚えている事を教えて下さい。

agt.ツキ: そこに居た事。2人が女の子であること。おおよそ5歳と3歳の姉妹である事。2人と少しだけ会話をした事。その後気づいた時には消えていた事。
そうでないと分かっていても、この出来事が事実としか思えません。私はこの記憶を確実に有しているのです。これは決して幻ではありません。

穴山上級研究員: 分かりました。その事も報告しておきます。では、2人との会話について、何を話したのかを教えて下さい。

agt.ツキ: 会話を、2人の名前を聞きました。しかし、彼女達は女の子である筈なのに、私たちの名前はこうだと言いました。
「陽一と榊」、と。

<抜粋終了>


以下はインタビュー当日に穴山上級研究員が記したメモです。

今日行ったインタビューの…この新たなscipは、これは何と奇妙な物であろうか。実体の無い(恐らくは)概念か、或いは人間には理解できない程膨大か、それとも矮小なミームの複合体か、いずれにせよ、それは影も形も無い筈なのに、まるでそこに居るかの様に現れそして消えた。しかし我々が幸運だったのは、agt.ツキがクラスW記憶補強薬を服用していた事だ。そのお陰でアノマリーの性質が僅かながらも解明出来た。ヤツは、その中途半端な体、或いはイメージ…ソレを人であると最低限理解できる程度の"人間型"を持っており、その存在に触れた者(今回はagt.ツキだった)にその欠損を補完させ、人間としての振る舞いを持たせる。
コレは一体何なのだ?一体どうやって収容しろと?何にせよ、アノマリーの目撃者の調査が明日にも行われるだろう。他の目撃者も見つかれば、アノマリーの性質も解き明かされて行くだろう。
問題があるとすれば、他の目撃者はアノマリーの実体としての存在を信じて疑わない事だろう。agt.ツキですら、それが非実体である事に気づかなかったかもしれないのだ。
どう否定する?否定していいのか?彼等にとって事実である存在を?
聡明であったagt.ツキですら、その事に気づいた後にも矛盾に葛藤しつつ、それが「実在していた」と認識していた。
記憶補強薬を用いてもこのアノマリーには正しく対処出来ない…。記憶補強薬は隠れている、そこに在る物を正しく見、正確に記憶するだけで、そこに無い物に対しては何ら無力だ。
他にも不安がある。奴らは認識災害による何かしらの精神的苦痛を目撃者に与えているのではないか?
今日のagt.ツキのあの苦痛は、単に思い出せないと言うストレスから来る物では無い筈だ。もしーいや、

分からない事が多すぎる以上無理に推察をするのは危険だ。その勝手なイメージが、私のソレに対する認識にどれ程影響を与えるのか分かった物では無い。
収容は不可能ではない。決して。それを決して諦める訳にはいかない。

確保、収容、保護

5月23日,穴山



その後D-3000-1を始めとする目撃者が財団内に複数人居ることが判明し、SCP-3000-JPの存在が発覚しました。
以下はD-3000-1へのインタビューログの抜粋です。

インタビューログ-3000-JP-2

日付け: 2013年6月15日

対象: D-3000-1

インタビュアー: 穴山上級研究員

付記: D-3000-1はサイト81-██のDクラス居住区の自室にてscp-3000-jpと遭遇し、その1日後にインタビューが行われた。


<抜粋開始>
D-3000-1: 俺もその時は全く気付かなかったよ。ただ、そこに居るのが、本当に当たり前って言うか、それがおかしい事に全く気付けなかったんだ。それで、その2秒後位にようやく気づいたんだ。"どうやら、何かしらの収容違反が起こったらしい"と。でも、あんたらが何時も俺に会わせる様な危険なヤツじゃなくて、アイツ等はーそう、何の異常性も危険性も感じられなかった。唯そこに居ただけだった。そして、気づいた時には消えていた。

穴山上級研究員: 2人について覚えている事を教えて下さい。

D-3000-1: 別に…大した事は何も覚えちゃいないよ。アイツ等は2人で…妹と兄の"兄妹"だった。後ー名前を、「陽一と榊」だっけな。話した記憶もないのに、何故かこの名前を覚えている。それだけさ。

穴山上級研究員: 成る程、会話は無かったのに、名前は覚えていると。ん?(2秒の沈黙)兄妹?兄?

D-3000-1: ああ。そうだったさ。妹と兄だ。間違いない。3、4歳位の女の子と、5歳位の男の子だったよ。

(5秒間の沈黙)

穴山上級研究員: もっと詳しく教えて下さい。顔は…覚えていますか?

D-3000-1: 顔か?勿論。ああ。いや…。

(3秒間の沈黙)

穴山上級研究員: どうかしましたか?

D-3000-1: クソが…。全く思い出せねぇ。どうなってやがるんだ、これは。さっき迄簡単に思い浮かんだってのに、いざ具体的に思い出そうとすると、(2秒の沈黙)駄目だ。思い出せねぇ。いいや?これは、違う…。

穴山上級研究員: 違う?何が違うのですか?

D-3000-1: 何でも無えよ。

(3秒の沈黙)

穴山上級研究員: 一体何を思い浮かべたのですか?

D-3000-1: (小声で)何でも無えって…言ってんだろ…。

穴山上級研究員: そう…ですか。では、あなたが思い出せない2人の顔は、今どの様に映っていますか?

D-3000-1: 何だか、とっても奇妙感じだ。何と言うか…ぼやけていてー。

穴山上級研究員: モヤがかかっている?

D-3000-1: あ、ああ。そうだ。モヤがかかっている。

穴山上級研究員: なのに2人の性別は分かった?

D-3000-1: ああ。そうだ。2人の顔なんて思い出せねぇ。けど、アイツ等の顔は、その存在は、女の子のそれと男の子のそれだった。

穴山上級研究員: そして、2人は"兄妹"であると。

D-3000-1: ああ。

(7秒間の沈黙)

穴山上級研究員: しかしー確かに、2人は客観的に見れば兄妹でしょう。しかしそうと決め付けるには根拠が不足しているように感じます。現状ーそれは単なる客観的な視点から受けた印象でしかなくー。

D-3000-1: "兄妹"だ。根拠なんてありゃしねぇ。だが、2人に会って、2人の事を見た俺からすれば、それは紛れもない事実だ。

<抜粋終了>


以下はインタビュー当日に穴山上級研究員記したメモです。

agt.ツキへの、あのインタビューからおおよそ1ヶ月、私はその存在を確かに疑っていた。それに類似するアノマリーなど聞いた事が無かったし、それを見たと言う者も、誰一人として現れなかったからだ。だからagt.ツキが言っていた事も、殆んどが彼女の精神的な問題から生じた妄想なのでは無いかと疑っていた。だが、それが確かに存在する事を確信した。
それは、確かに存在する。agt.ツキが供述した事とD-14が供述した事の一致、これは決して偶然ではない。明日か、明後日にも、新たなscipとして認定されるだろう。
予期してはいたが、D-1は2人の存在を信じて疑わなかった。当然と言えば当然であろう。それが実は(実体として)存在しなかったと、そんな事実が受け入れられる筈がない。agt.ツキの様に聡明な記憶補強薬服用者が次の目撃者になることを祈る。

しかしどうしても腑に落ちない所がある。agt.ツキとD-1で、どうして姉と兄と受けた印象が異なったのだろうか。そして2人の顔を思い浮かばせた時、彼等は何かを否定していた。何も思い出せなかったとして、何を否定する必要がある?彼等は一体何を思い浮かべたのだ
更なる調査が必要である。

ああ、日を跨いでしまった。

6月16日,穴山


補遺1

以下はD-3000-1に対して再び行われたインタビューログです。

インタビューログ-3000-JP-3


日付: 2013年7月5日

インタビュアー: 穴山上級研究員

対象: D-3000-1

付記: D-3000-1はSCP-3000-JPの容姿等が自身の補完作用による産物である事を知らない事に留意して下さい。


<記録開始>
(穴山上級研究員が入室する。)

D-3000-1: よお、久し振りだな。

穴山上級研究員: ええ、そうですね。

D-3000-1: それで、どうなんだ?あんたが俺に話を聞きに来たって事は、どうせまたあの2人の事だろう?

(穴山上級研究員は着席する。)

穴山上級研究員: ええ、その通りです。あの2人は先日正式にアノマリーとして登録されまして、今日は前回のインタビューの延長戦、と言った所でしょうか。

D-3000-1: ヘッ、俺みたいな奴の所へ態々やって来たんだ。アイツらの情報が少ないか、それとも目撃者が少ないか、どっちにしろ、"貴重な目撃者様"への待遇は今よりはマシになるだろうよ。

(5秒間の沈黙)

D-3000-1: チッ、分かったよ。聞きたい事があるんならさっさと聞けよ。

穴山上級研究員: ええ、そのつもりです。先日あなたは、2人の顔を思い出せなかった。

D-3000-1: ああ。そうだ。

穴山上級研究員: しかし…どうも引っ掛かる事があるんです。

(穴山上級研究員は手元の電子機器で前回のインタビューの録音記録の一部を再生する。)

D-3000-1: これがどうしたってんだ?

穴山上級研究員: 「これは、違う」と、一体何が違うのですか?この時、あなたは一体何を思い浮かべたのですか?

D-3000-1: なんでもねぇって、あん時も言っただろ?

穴山上級研究員: 本当に?

D-3000-1: ああ。これは、唯の、そのー…ただの思い過ごしだ。あまりにも思い出せないもんで、変に口走ったせいだ。

穴山上級研究員: しかしー他の目撃者にも、同じような反応が観られるんですよ。これは単なる偶然だとは思えない。何かしらの理由が奥にある筈だ。
恐らくですが、あなたはちゃんと2人の内の1人、兄の方の顔を思い浮かべる事が出来た。

(D-3000-1は穴山上級研究員の顔を険しい表情で見つめる。)

穴山上級研究員: その顔はあなたの、幼い頃の顔だった。

(8秒の沈黙)

D-3000-1: だったらどうだってんだ?

穴山上級研究員: あなたにとって"兄妹"とは?

D-3000-1: 何を唐突に。

穴山上級研究員: 答えて下さい。

D-3000-1: 今までも散々聞かれた事だ。知ってんだろ?ロクなもんじゃねぇ。

穴山上級研究員: ええ、読みましたからね。あなたは家族の、取り分け兄弟のその関係性に対し精神的なトラウマを抱えている。

D-3000-1: (沈黙)

穴山上級研究員: 家族への求愛を暴力によって報われ続けたあなたは、求愛と暴力を根幹的に同一視している。
あなたは「家族」も「兄弟」も知らない。現にその存在は暴力によってもうこの世には存在しない。だが、それでも理想とする「家族」の、「兄弟」の姿をあなたは持っている筈だ。

D-3000-1: 俺が、その理想図をあの2人の、あの子に当て嵌めていると?そう言いたいのか?

穴山上級研究員: 否定はしません。そしてあなたも、この事を否定は出来ません。

(15秒沈黙)

D-3000-1: だったとしても、どれだけ理論ぶっても、そんな事は関係ねぇ。あの子達は、偶然俺の前現れただけの、ちょっと異常なただの兄妹だ。顔がはっきりとしないからって、俺の理想を当て嵌めていようがなかろうが、あの子達は俺とは何の関係もない、関係のない、幸せな兄妹なんだ。

<記録終了>

アノマリーに対する呼称の変化やインタビューの最後にあった「幸せな兄妹」との供述、これはSCP-3000-JPの姿のみならずその存在自体が、D-3000-1の理想とする「兄妹」を投影している事を裏付けており、SCP-3000-JP-1の性別に関する問題もこれで説明が付きます。しかしD-3000-1当人はこの"投影"を否定しました。この否定が彼のトラウマから来たのか、それともアノマリーによる認識災害への防衛反応か、更なる調査が必要です。

ー穴山上級研究員


補遺2: 以下はエージェント・ツキに対して再び行われたインタビューログの抜粋です。

インタビューログ-3000-JP-4


日付: 2013年7月10日

インタビュアー: 穴山上級研究員

対象: エージェント・ツキ

付記: agt.ツキには分かり得る限りのSCP-3000-JPに関する情報を開示した上でインタビューを行った。



agt.ツキ: それで、今日私を呼び出したのは私があの子達に対し投影している理想図が何か、それを確認する為ですか。

穴山上級研究員: ええ、そうです。あなたに取っては辛い事であるのは理解しています。しかしー。

agt.ツキ: 必要な事、ですから。仕方がありませんね。

穴山上級研究員: はい。そうです。

(5秒間の沈黙)

穴山上級研究員: その前に、あなたは、いえ、あなたも、2人の顔を思い出した際に、何かを否定していました。

agt.ツキ: はい。

穴山上級研究員: あの時、本当は何が見えたのですか?

agt.ツキ: それは…私の、幼い頃の、顔です。これは、さっきD-3000-1のインタビューログを閲覧した後に更新され、補完された内容ではありません。私は確かに、あのインタビューの時にこれを思い浮かべていました。その事を私は覚えています。
しかし、こんな事はあり得ないと、何かの間違いないだと、そう思って、この事を否定し続けていたんだと思います。

穴山上級研究員: そうですか。あなたは記憶補強薬を服用していますから、その証言に間違いは無いでしょう。
その顔は、はっきりとしていますか?それともモヤがかっていますか?

agt.ツキ: とても奇妙な感覚です。私自身、私の幼い頃の顔を"これがそうだ"と認識出来る程覚えていません。しかしこれは、何か、"これは私の幼い頃の顔である"と認識させられるだけの、何かがありました。モヤがかっていながら、はっきりとしている感じです。

穴山上級研究員: そうですか。
では、あなたにとっての"姉妹"について、それの理想図を教えて下さい。

(5秒間の沈黙)

agt.ツキ: 私の理想とするのであれば、それはきっと、姉である私があの子をー妹をちゃんと守ってあげられて5、そして、妹はちゃんと生きて、元気にしている。それが理想です。

穴山上級研究員: やはり、そうでしたか。

agt.ツキ: はい。

穴山上級研究員: それで、2人はその理想図通りでしたか?

agt.ツキ: いいえ。2人は、守る守らないに関係無く、そんな事の必要性を知らない、この世にあんな恐ろしく、敵対的な物があることを知らない、幸せな姉妹だったと、そう映りました。

穴山上級研究員: そうですか。

agt.ツキ: でも、そうであって当然かもしれませんね。

穴山上級研究員: と言うと?

agt.ツキ: 私は妹の死をきっかけにここに来ました。それは、私が財団で働き、アノマリーを封じ込め、何も知らない一般人に被害を出さない為に、私の様な人を増やさない為です。私はこの選択に後悔などしていません。私はもう無力ではありませんし、守る事の出来た命もあります。
(3秒間の沈黙)でもー、私は…出来る事なら、こんな所には来たく無かったです。世界はあんな恐ろしい物で溢れている事も知りたく無かったです。今となっては叶わぬ夢ですが、ずっと、2人で、何も知らずに幸せに暮らしたかった。
それが私にとっての、この上無い理想だから、だからそれが反映されたんだと思います。

<抜粋終了>


以下はインタビュー当日に穴山上級研究員が記したメモです。

D-3000-1もagt.ツキも、自身の"理想"の兄妹/姉妹を投影し、そしてその事を否定していた。私は当初この否定に関しては2人のアノマリーに自身を投影していると言う事実から来る本能的な恐怖への防衛反応であると思っていた。しかし今日のagt.ツキへのインタビューにより、それが間違いであると分かった。
彼等は、その具現化した"理想"が"現実"によって犯される事を恐れているのだ。彼等にとっての理想とは、agt.ツキの供述にもある通りこの上無い物である。しかしそれは抽象的でありながら絶対的な物である為にほんの些細な逸脱に、その可能性にすら過剰に反応してしまうのだろう。だから彼等は、それを著しく汚す可能性のある現実の自分を投影する事を、いや、投影していると言う事実を恐れ、それを遠ざけようとした。
ときに、目撃者となるには何かしらの適正が有るのだろうか。私は兄弟を失った事も、そもそも兄弟すら居ない。もし私の前にSCP-3000-JPが現れたとしたら、私の目にはどの様に映るのだろうか。いずれにせよ、今は新たな目撃者の報告を待てば良い。データが集まれば、また新たな事が分かる。
しかし、自身の理想とする姉妹の姿に、自身を投影出来ないとは、投影を否定しなければいけないとは、何と…難儀な事であろうか。彼女は多忙な日々の束の間に、自身を癒し得る夢すら見ることが出来ないのだ。


7月10日,穴山


補遺3: 事案3000-JP-2

2014年4月8日、板浦上級研究員がscp-████の報告書内の調査ログにSCP-3000-JPと思われる存在についての記述がある事に気付きました。
その後目撃者にはインタビューが行われ、目撃した存在がSCP-3000-JPである事が確認されました。

以下はその調査ログの当該部分の抜粋です。

調査ログ-████


付記: D-3000-4は暗がりの中懐中電灯の光のみを頼りに移動をしていた。



<抜粋開始>

D-3000-4: おっおい!今!今なんかがいたぞ!

██研究員: 一体何が居たんですか?そこはまだ安全なエリアの筈ですよ。

D-3000-4: へ?あ、あれは?そ、そうだ、何か小さな子供が居たぞ!それも2人!暗くて顔は見えなかったけど、確かに居たぞ!

██研究員: その2人が居た所を確認できますか?

D-3000-4: あ、ああ。ちょっと待ー。あれ?何も居ねえぞ。おい!どうなってんだよ!俺に一体何を!おい!

██研究員: 落ち着いて下さい。その2人は、確かに、そこに居たのですか?

D-3000-4: ああ!あれは決して見間違いなんかじゃねぇ!

██研究員: (6秒間の沈黙)分かりました。今後の調査対象としますが調査は予定通り行います。そのまま目的地へ移動を続けてください。

<抜粋終了>


その後行われたインタビューに於いて、D-3000-4はSCP-3000-JPの容姿について殆んど何も覚えていないのにも関わらず、2人が兄妹であり、その名前が「陽一と榊」であることを記憶している事が判明しました。

今回D-3000-4がSCP-3000-JPを目撃した時、その環境が極端に暗かった事、そして彼はそれを恐怖の対象であると感じてしまった事により、通常では起こり得ないSCP-3000-JPへの認識をー補完の不足が起こったのだと思われます。
しかし、それでも2人が兄妹であり、その名前が「陽一と榊」であると彼は認識し、その調査から3ヶ月以上経ったインタビューに於いてもその事を明確に記憶していました。これはその二つが補完作用による産物では無く、SCP-3000-JPの中核構成要素であると同時に、ミーム的な脅威を有する事を示唆しています。

ー穴山上級研究員


SCP-████の報告書の当該部分は現在は削除され、この事案を機に3000-JP特別情報分析班が編成されました。


補遺4: 以下はSCP-3000-JPの目撃記録です。
日付 目撃された行動 補筆
2013/5/21 そこに居るだけだった。 SCP-3000-JPの初の目撃例。
2013/6/14 そこに居るだけだった。 N/A
2013/11/3 サイト81-██の休憩室のソファの上で寝ていた。 N/A
2014/1/9 不詳。「襲って来た」とも供述している。 事案3000-JP-2を参照の事。
2014/2/24 そこに居るだけだった。 N/A
2014/4/4 そこに居るだけだった。 N/A
2014/5/9 そこに居るだけだった。 以降「2人はおおよそ6歳と4歳だった」と供述される。
2014/7/17 公園で遊んでいた。 何をして遊んでいたのかを覚えていなかった。
2014/10/4 そこに居るだけだった。 N/A
2014/10/18 目撃者の家にて、机に誕生ケーキが置かれており、2人は互いを祝っていた。 この日は目撃者の誕生日であり、「とても嬉しそうだった」と供述している。
2015/1/15 そこに居るだけだった。 N/A
2015/3/11 目撃者の家のベッドの上で寝ていた。 「2人が寝ていた場所には温もりが残っていた」と供述している。
2015/4/18 そこに居るだけだった。 以降「2人はおおよそ7歳と5歳だった」と供述される。
2015/6/22 サイト81-██の食堂にて、SCP-3000-JP-1は鉛筆を持ち勉強をし、SCP-3000-JP-2は隣の席で寝ていた。 2人が居た所には何も残っていなかった。
2015/9/12 公園で追い掛けっこをして遊んでいた。 N/A
2015/11/3 そこに居るだけだった。 N/A
2016/1/6 目撃者の家の火燵に入り、みかんを食べながら喋っていた。 2人が居た所には何も残っておらず、会話の内容も覚えていなかった。
2016/2/29 サイト81-██のインタビュー室にて、SCP-3000-JP-1は勉強をし、SCP-3000-JP-2は反対の席で絵本を読んでいた。 2人が居た所には何も残っていなかった。
2016/4/12 そこに居るだけだった。 N/A
2016/7/12 公園のベンチに座り、アイスを食べていた。 N/A
2016/8/30 サイト81-██の食堂にて、会話をしていた。 N/A
2016/11/5 そこに居るだけだった。 N/A
2017/1/15 サイト81-██のロビーのソファの上で寝ていた。 目撃者以外で2人の存在に気付けた者は誰一人として居なかった。
2017/3/2 サイト81-██の会議室にて、2人で絵本を読んでいた。 N/A
2017/4/15 目撃者の家の机にて、SCP-3000-JP-1は勉強をし、SCP-3000-JP-2は教科書を読んでいた。 以降「2人はおおよそ9歳と7歳だった」と供述される。
2017/6/17 目撃者の家のソファの上で寝ていた。 N/A
2017/9/23 そこに居るだけだった。 N/A
2017/12/5 公園で遊んでいた。 何をして遊んでいたのかを覚えていなかった。
2018/1/28 サイト81-██の医務室のベッドで寝ていた。 「2人が寝ていた場所には温もりがあった」との供述があったが、設置されたカメラには目撃者がそれを確認する様子は記録されていなかった。
2018/5/9 公共図書館の児童文学コーナーにて、絵本を読んでいた。 以降「2人はおおよそ10歳と8歳だった」と供述される。
2018/7/23 目撃者の自家用車の後部座席で寝ていた。 「2人は水着バックを持っていた」と供述している。
2018/10/10 サイト81-██の食堂にて、勉強をしていた。 2人が居た所には何も残っていなかった。
2018/12/27 ██県██線██駅の向かいのホームにて、会話をしながら電車を待っていた。 N/A
2019/2/4 そこに居るだけだった。 目撃者はクラスW記憶補強薬を服用しており、agt.ツキと同様の供述をした。
2019/4/1 栃木県日光東照宮にて、表参道を歩いていた。 N/A
2019/6/30 公共図書館の児童文学コーナーにて、絵本を読んでいた。 以降「2人はおおよそ11歳と9歳だった」と供述される。
2019/8/18 目撃者の家にて、机に誕生ケーキが置かれており、2人は互いを祝っていた。 この日は目撃者の誕生日であり、「とても嬉しそうだった」と供述している。
2019/11/11 サイト81-██の食堂にて、SCP-3000-JP-1は本を、SCP-3000-JP-2は絵本を読んでいた。 2人が居た所には何も残っていなかった。
2020/2/28 不詳。 目撃者は1泊2日の群馬旅行の後に自身の記憶の異変に気付き、この事を報告した。
2020/3/30 ██線██行きの普通列車の座席に座り、寝ていた。 「2人が居た所には温もりが残っていた」と供述している。以降「2人はおおよそ12歳と10歳だった」と供述される。
2020/5/3 京都嵐山の渡月橋を渡っていた。 十三参り6との関連は不明。2年後に行われた監視実験ではSCP-3000-JPは確認されなかった。
2020/6/15 傘を差し、目撃者の自宅付近の道路を歩いていた。 N/A
2020/9/22 サイト81-██のインタビュー室にて、SCP-3000-JP-1は勉強をし、SCP-3000-JP-2は読書をしていた。 2人が居た所には何も残っていなかった。
2020/12/2 目撃者の家の火燵で寝ていた。 N/A
2021/2/22 SCP-3000-JP-2が目撃者の家のピアノを弾いていた。 弾いていた曲、習得度については憶えておらず、SCP-3000-JP-1の存在も認識していなかった。
2021/5/3 目撃者の家の机にて、SCP-3000-JPは勉強をし、SCP-3000-JP-2は読書をしていた。 以降「2人はおおよそ13歳と11歳だった」と供述される。
2021/7/24 目撃者の家の居間でスポーツの観戦していた。 テレビの電源は点いていなかった。目撃された時間には丁度、東京五輪の柔道60キロ級の決勝試合が行われていた。
2021/8/3 ██県██線██駅の向かいのホームの椅子に座って寝ていた。 N/A
2021/12/15 目撃者の自宅にて、SCP-3000-JP-1は机に伏せて寝ており、SCP-3000-JP-2は毛布をSCP-3000-JP-1に被せようとしていた。 この時期はおおよそ中学校の2学期期末試験の時期であり、目撃された時刻は23時を過ぎていた。
2022/2/26 サイト81-██の食堂にて、会話していた。 事案3000-JP-3を参照の事。
2022/5/1 不詳。 目撃者は自身の記憶に異変に気付き、この事を報告した。「2人はおおよそ14歳と12歳だった」と供述された。

目撃記録にもある様に、2人は成長しています。それは2人の見た目だけでは無く、目撃された行動からも確認出来ます。最初の頃2人は何もしない、ただそこに居るか、眠っているだけの存在でした。しかし2人は勉強をし、様々な経験をし、自分達で目的を持った行動を取れる様にもなりました。この成長が今後も続くのか、目撃される行動にどの様な変化が見られるのか、引き続き観察する必要があります。

2021年12月16日
穴山博士


補遺4: 2014年、2019年~2020年に一般人に対するSCP-3000-JPについての大規模な調査が行われましが、結果一般人へのSCP-3000-JPの暴露は認められませんでした。

以下は穴山博士と板浦博士との会話ログの抜粋です。

会話ログ3000-JP-8


日付: 2020年10月23日



<抜粋開始>

穴山博士: どうやら、SCP-3000-JPは一般には目撃されていなかったらしいな。

板浦博士: そうらしいな。2度のこの規模の調査なんだ、間違いは無いだろう。「2人の子供」と、「陽一と榊」の名前の記憶。全員が忘れられる訳が無いだろう。しかし府に落ないな。どうして財団職員には認知出来て、一般人には認知出来て無いんだ?

穴山博士: ああ、私も同じ事を考えていたんだが…。

板浦博士: 何か分かったのか?

穴山博士: 推測はした。だが、これはとてもー。

板浦博士: 非科学的?

穴山博士: そうだ。君の言う通り、この2人に関する記憶は簡単に消える物では無いだろう。では、なぜ一般人には認知されず、財団職員には認知されるのか。そこで気になったのが、一般人と、財団職員との違いだ。

板浦博士: そこに鍵があると。奇遇だな。俺も同じ推測を立てていたんだ。

穴山博士: では聞こうか、一般人と財団職員との違いは?

板浦博士: ズバリ、異常な存在に対する認知だろ?

穴山博士: ああ。結局はそうなる。理論の飛躍だ。科学者として、どうかしている。

板浦博士: だが、そうでもなければ説明がつかない。

穴山博士: ああ…。人はーその認識によって世界を造り上げる。このアノマリーも似た様な物だ。"そこに居た事実"を、脳が勝手に産み出して、その人の世界を構成する事実達の中に加えさせる。
まあ要は、それを知らなければ、その人の世界にそれは存在しないも同義だと言う事だ。

板浦博士: それは"異常な存在"にも当てはまる。世の一般人はそれを知らない。我々が封じ込めているからだ。

穴山博士: 幽霊とか呪いとか、そういった"異常"を信じる者も居るだろう。

板浦博士: だがその"異常性"と、この"異常性"はあまりにも違いすぎる。

穴山博士: ああ。それ等は恐ろしい、この世に通常在ってはならない存在だ。それは自分に危害を加える、だからそれには関心が行く。それを信じる。認知する。
それに対し、あの2人は、その存在は何の異常でもない。ただの"幸せな"本来であれば非異常である異常だ。そんな恐ろしくも無い異常を、その存在を信じはしない。だから、認知出来ない。それに触れる事が出来ない。財団職員でも無い限りは。

板浦博士: これが一番説得力のある説明だな。

穴山博士: 説得力…ねぇ…。

板浦博士: だが説明がつかない事もある。他の要注意団体も、あの2人を認知していなかった。

穴山博士: それはー調査不足としか言い様が無いな。

板浦博士: 完全と言えないが、出来る限りの手は尽くした筈だ。

穴山博士: 今後の研究対象だな。まだ、分からない事が多すぎる。
ときに、このアノマリーは、本当に“死ぬ”事が出来るのだろうか。

板浦博士: こう言った存在は、基本神や伝説と同じ筈だ。つまり、誰もがそれを忘れてしまったら…その時に死んでしまう筈だ。

穴山博士: "忘れられない"…か…。

板浦博士: ああ。そうだ。その為の継続的な観察と記録だ。

穴山博士: だが、実はそうでも無いんじゃないかと、最近になって感じるんだ。どう言えば良いのか分からないんだけれど、2人が例え目撃されなくなっても、誰からも忘れ去られてしまっても、ずっと何処かで生き続けられるんじゃないかな。それはー誰かが認知しているとか、そう言う話じゃなくて、この世界その物が、2人の事をずっと記憶し、補完して行く気がするんだ。

板浦博士: それこそ“理論の飛躍”だぞ。

穴山博士: ああ。勿論さ。でも、そんな気がしたのさ。

(20秒の沈黙)

穴山博士: (小声で)確保、収容、保護…か…。

板浦博士: どうした?いきなり。

穴山博士: 何も…。

<抜粋終了>


補遺5: 事案3000-jp-3

2022年2月26日、食堂にて昼食を食べようとしていた穴山博士がSCP-3000-JPを目撃しました。穴山博士は即座に板浦博士に報告し、インタビューを行いました。
以下はそのインタビューログの抜粋です。

インタビューログ-3000-JP-121


<抜粋開始>

板浦博士: それで、どうだった?見たんだろ?

穴山博士: ああ。あれはー彼等は、理想の兄妹そのものだった。私には兄妹は居ない。だが、それでも、それが最高の、この上無い物であった事は間違い無い。

板浦博士: 2人は、何をしていた?

穴山博士: 会話を、していた。話の内容は、覚えていない。いや、聞こえる距離じゃなかったんだ。

板浦博士: そうか。最初からもっと詳しく聞かせてくれ。

(5秒の沈黙)

穴山博士: いつも通りに昼食を食べようと、定食を受け取って、いつものすぐ右手に馬鹿でかい観覧植物のある席に座って、ふと前を見ると…。

板浦博士: そこにいたのか?

穴山博士: いいや。最初は気付かなかったさ。けど、何かの違和感に覚えて、何秒だったかは分からない。2秒位だったかもしれないし、10秒位だったかもしれない。けど、もう一度、まさかと思って見ると…8メートル程離れた円卓の席に…(俯いて)ああ…2人は…居た。

(5秒の沈黙)

板浦博士: どうか…したのか?何をそんなに…。2人は、いつ消えた?

穴山博士: 恐らくはその直ぐ後に。本当に、呆気にとられている内に、気がついたら消えていたよ。不思議だ。何もかもが幻みたく、モヤがかっている。

板浦博士: 顔は…2人の顔は覚えているか?

穴山博士: 止めてくれ。いや、分かっているんだ。分かっているんだよ。これが必要な事だって。でも、それを、彼等に、幸せな彼等に、その理想に、自身を投影なんて、出きる訳が無い!

板浦博士: 落ち着け。分かったから。この事はもう聞かないから。

穴山博士: すまない…。けれど、これがとても苦しい事だったんだと、今になってようやく理解出来る。不思議な事に今までは何ら、ただの記号としか思えなかった2人の名前が、2人が兄妹であると言う客観的な印象も、それが、本当の事なんだと、事実なんだと分かる。

板浦博士: 分かる?だがそれはー。

穴山博士: ああ。分かっているさ。根拠なんかありゃしない。でも、それがそうだと、今ならそうと理解出来る。

板浦博士: "心で理解した"ってやつか。

穴山博士: そうだ。ああ…。

板浦博士: 本当に、どうかしたのか?

穴山博士: なあ、財団の理念は覚えているか?

板浦博士: 確保、収容、保護だ。それがどうかしたのか?

穴山博士: 私たちはーそれを封じ込める。

板浦博士: そうだ。一般人が決してそれに触れない為に、幸せであり続ける為に。俺達は戦う。

穴山博士: そうだ。幸せを守る為にだ。私もそう誓った。幸せを、その生活を、命を、2度と奪わせまいと。だが、だが…私たちは…それを彼等から奪ってしまってもいいのか?

板浦博士: (沈黙)

穴山博士: 封じ込めてしまって良いのか?

板浦博士: 彼等にはー…いや、それは、異常な存在なんだ。それが"非異常な異常"であったとしても、異常は異常だ。収容しなければならない。それが使命なんだ。何を今更!

穴山博士: 分かっているんだ!私の言っている事が、どれ程間違っているのか、どれ程身の程知らずか。でも私はーーその幸せを守りたい。唯それだけなんだ。

板浦博士: (沈黙)

穴山博士: 彼等にはそれしか無いんだ。2人の名前と、2人の関係性と、その他に何がある?

板浦博士: (沈黙)

穴山博士: 彼等に人生があったとして、それに一体何の意味がある?集めたデータにしか存在しない人生を、彼等は歩んでいると、果たして言えるのか?

板浦博士: (沈黙)

穴山博士: その人生は何もかもが幻想に過ぎない。そうだろ?

板浦博士: (沈黙)

穴山博士: その2人から、存在する事すら許されない、唯語ることによってのみ、この世に紡ぎ止められる哀れな偶像に他ならぬ彼等から、幸せである事を、奪っても良いのか?

(20秒の沈黙)

板浦博士: 分からない。だがー。

(9秒の沈黙)

穴山博士: すまない、取り乱した。私情を挟み過ぎた。分かっているんだ、彼等は、その全てが幻想に過ぎないと。

板浦博士: いいや、君の言いたい事は俺にも分かるよ。でも、それが使命なんだ。
気分は大丈夫か?

穴山博士: 酷い気分だ。何か大切な…丸で体の一部を失ったみたいだ。私はもう、二度と彼等には会えないのだからな。

板浦博士: 前例が無いだけで、可能性はあるさ。

(7秒の沈黙)

穴山博士: だが…次会えたとして、それに意味は無い。
その、失った彼等の…その部分の記憶痕が、私に幻を見せている可能性があるのだから。

板浦博士: 幻肢の話か?

穴山博士: ああ。次彼等を見たとしても、それは…本当の彼等か分からない。いや、元々全てが補完によって産み出された幻想なんだ。本物と偽物の違いなんて無いんだ。
なあ、このアノマリーは、一体どうやって生み出されたんだと思う?

板浦博士: サッパリだ。第一、それを論じるには情報が足りなさ過ぎる。

穴山博士: ああ、そうだ。だが、それが人為的にせよ自然的にせよ、彼等は生まれ、そして成長している。一体何があったんだ?何の意味があって彼等は生まれて来たんだ?そして、何故私達だけが、その物語を紡ぐ事が出来るんだ?これは誰の幻なんだ?

(9秒の沈黙)

板浦博士: 今後の研究課題とする。

<抜粋終了>


補遺5: 以下はscp-3000-jpの目撃者に対して行われたscp-978の拡張実験記録の一部です。目撃者への完全な実験記録はこちらを参照して下さい。

被験者: agt.ツキ
日付け: 2014年5月20日
撮影された行動: 撮影の為に椅子に座っており、少し緊張した様子を見せる。
撮影結果: スーツを着、普段は履かないハイヒールを履いており、拳銃の銃口をこちらに向ける形で構えている。その背後にはagt.ツキの妹と推測される女児が隠れている。

被験者: D-3000-1
日付け: 2014年5月21日
撮影された行動: 自室の椅子に座り、壁を見つめている。
撮影結果: 木の柱に括り付けられ、胸に5発の銃弾を受けて死んでいる。5発の銃弾が彼が殺した人数に関係があるのか、自身への確かな暴力性の現れなのかは不明。

被験者: 穴山博士
日付け: 2022年3月8日
撮影された行動: 研究室の椅子に座り、本を読んでいる。
撮影結果: 膝を地に着け、性別不明の5歳程の子供を抱きしめる様を横から捉えている。


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