【ジャムコンC】人理の免状

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文字数: 7627

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クレジット

タイトル: SCP-3100-JP - 人理の免状
著者: LRRF
作成年: 2023

2/3100 LEVEL 2/3100 CLASSIFIED

アイテム番号: SCP-3100 オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPはその性質上困難であり、当オブジェクトの収容は被影響者であるSCP-3100-JPの社会からの隠ぺいに焦点が置かれます。SCP-3100-JP-aはそれぞれ個別の標準人型オブジェクト収容チャンパーに収容してください。新たなSCP-3100-JP-aによる事件が発生した場合、機動部隊を編成し、当該オブジェクトを収容してください。また、SCP-3100-JP-aによる直接的な被害を受けた一般人には記憶処理を行ってください。SCP-3100-JP-aの取り扱い及び収容作業は、財団と正規の雇用契約を締結した職員によってのみ行われます。従って、契約内容に一部欺瞞が含まれるため、Dクラス職員はSCP-3100-JP-aに関与しません。

説明: SCP-3100-JPは定期的に発生する、ヒトに異常性が付与される現象です。SCP-3100-JPの発生は中南米に偏りが見られますが、これは後述する特徴によるもので、当該地域に特殊性は無いと思われています。

SCP-3100-JP-aはSCP-3100-JPの対象となったヒトです。SCP-3100-JP-aに共通して見られる特徴として、それぞれの地域で低所得者層に属していたことが挙げられ、先進国を出身とするSCP-3100-JP-aもわずかながら存在します。また、SCP-3100-JP-aの大半はスラムを出身としています。これまで財団職員がSCP-3100-JPの影響を受けた事例は存在しません。

SCP-3100-JP-aの異常性は、強く念ずることで「時間を止める」ことであると推測されています。財団による観測は不可能であるため、範囲や上限などの詳細は不明ですが、SCP-3100-JP-a及び目撃者の証言から、発動者以外の物理現象を一時的に静止する能力であると考えられています。SCP-3100-JP-aの能力の発動は任意ながら、その解除は不随意であり、SCP-3100-JP-aが接近中の危険から逃れた場合、自動的に解除される模様です。

+ 収容作戦ログ3100-JP-a-1

収容作戦ログ3100-JP-a-1

日付: 1980/██/██

探索部隊: 臨時機動部隊-Beija-flor（ハチドリ）

対象: カラカス¹、ペドロ氏邸宅²/SCP-3100-JP-a-1

作戦: 当時複数件の異常犯罪と思われる強盗事件が多発。現実改変者によるものと仮定され、機動部隊が編成された。通報に応じたこれの派遣による収容作戦を展開。　

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[ログ開始]

機動部隊隊員アルファ: ハチドリ、現着しました。警備員が４，５…９人、玄関に倒れています。カント³に反応ありません。

ガブリエル管理官: 了解。警備システムが正常に作動した以上、確保しようはあるはずだ。慎重に。

アルファ: 了解。侵入します。

（５分程度経過）

アルファ: 二階寝室にて対象を発見。金品を物色しているようです。

ガブリエル: 了解。E_SRA⁴に異常ないか。

ベータ: オール・グリーン。異常ありません。

ガブリエル: よし。突入開始、確保だ！

アルファ: 了解。突入します。…手を後ろに組んで膝を付け！お前を確保する！

SCP-3100-JP-a-1: （嘲笑）懲りずに来やがったか、無能な警察、薄汚い金持ちの犬どもめ！だが俺には関係ねぇ！

アルファ: 止まれ！両手に持っているものを捨てろ！

ベータ : 隊長、妙です。E_SRAがエラーを…作動しません。

アルファ: エラーだと？ありえない！

SCP-3100-JP-a-1 は！なにかトラブルか？まぁどっちにしても関係ねぇ！神が俺に与えたもう力！時よ、止まれ！

（しばらくの静寂。この間、SCP-3100-JP-aの異常性は発動せず、カント計数機にも反応はない。）

アルファ: なにが…なにか起きた…か？

ベータ: いえ…計器にも反応ありません。

SCP-3100-JP-a-1: クソ、なぜだ！なぜ発動しない！時よ、止まれ！止まれ！止まれぇ！

アルファ: 確保！確保！

（機動部隊がSCP-3100-JP-a-1を確保する。）

SCP-3100-JP-a-1: クソ、なぜだ！正義は俺にあるはずだ！ごうつくばり共から奪うのが！クソォ！

[ログ終了]

+ インタビュー記録3100JP

回答者: SCO-3100-JP-a-1/カラカスのスラムに住む青年 本名不明

質問者: ダーリントン博士

<再生開始>

ダーリントン博士: こんにちは、SCP-3100-JP-a-1。お加減はいかがですか？

SCP-3100-JP-a: 別に。留置所よりはマシなのが意外ではあるよ。

ダーリントン博士: そうですか。それが収容後も従順な理由ですか？

SCP-3100-JP-a: まぁな。べつに暴れたかったわけじゃない。自分が犯罪やってたのもわかってるし、罰されてもしょうがないのはわかる。

ダーリントン博士: おや、反省されているのですか。万能の力を得て、やりたい放題していたのでは？

SCP-3100-JP-a: ふざけんな、べつに俺はだれかれ構わず襲ってたわけじゃねよ！金持ちが嫌いなだけだ。

ダーリントン博士: 嫌いだから襲ったと。

SCP-3100-JP-a: （しばらく沈黙して）裏口があるような家を一軒襲えば、スラムじゃ一年食っていけた。俺たちの地域はゴミを燃やして中の金属を売ってたから、病気のやつも多かった。俺が外道に落ちて助かる命は確かにあった。

ダーリントン博士: …その異常な能力は、いつどのようにして獲得したのですか。

SCP-3100-JP-a: 三か月ぐらい前かな朝起きたら。なん、自分でも「できる」ってわかったんだよな。その時ちょうどダチが火傷してたから、薬を盗った。朝起きて、街行って、盗んで、時間止めて、帰ってきた。

ダーリントン博士: 試運転のようなものは行わなかったのですね。

SCP-3100-JP-a: なんだろうな、火傷を見て焦ってたのはあるんだろうが、不思議と行ける気がしたんだよな。

ダーリントン博士: 我々が確保したときもどなたかお困りで？

SCP-3100-JP-a: うーん、まぁケガとかしてたわけじゃあないんだが。ガキ共が痩せてきてたから。去年事故で親父たちが死んでから、稼ぎが減って、結構危なくて。

ダーリントン博士: 我々があなたを収容したことで、彼らの状況は悪化してしまったのでしょうか。

SCP-XXXX-JP-a: （苦笑）え、マジ？それをあんたらが聞くわけ？

ダーリントン博士: …失礼、少し無神経が過ぎましたね。

SCP-3100-JP-a: いや、いいさ。[[span class="kenten-b"]俺たちは元より望まれた人間じゃなかったんだろう[[/span]]。あんたらは間違っちゃいない。あんたらは正義だよ。…そうか、俺の力があんたらに通じないのは、案外そんなところに理由があるのかもな。

ダーリントン博士: どういうことですか？

SCP-3100-JP-a: 俺は金持ち連中も、地元の警察も、警備員も、みんな嫌いだった。あいつらは俺たちのおかげで生きてるくせに、俺たちより何倍も金を持ってるくせに、俺たちがどれだけ死にそうでも、助けちゃくれなかった。でもあんたらは違う。あんたらは俺たちと全く関係ない。今も俺は、あんたらになら裁かれてもしょうがない、って思っちまってるよ。

ダーリントン博士: ではあなたは自身が悪人だと？

SCP-3100-JP-a: いやぁ、それはない、と思うけどな。だって俺、犯罪はしたけど、やっぱり、それが悪いことだとは思えねぇもん。中もを救おうとしたんだぜ？間違ったことはしてねぇよ。

ダーリントン博士: だが我々もまた正義であると。

SCP-3100-JP-a: そういうこったな。

<再生終了>

+ 補遺１-追加調査結果

複数の実験の結果、SCP-3100-JP-1の異常性は、Dクラス職員を除く財団職員が半径200m以内にいる場合、発動しないことが判明しました。異常性を無視したSCP-3100-JP-aの能力は一般的なヒトのそれと変わりません。これと、SCP-3100-JP発生の散発性から、SCP-3100-JP-aであることが確認できた個体の収容作戦は、現場近くのDクラス職員を除くあらゆる財産職員によって行われます。現在、287体のSCP-3100-JP-aが財団の収容下にあります。

+ 補遺2-インシデント記録

1988/██/██、全てのSCP-3100-JP-aは財団職員周辺での異常性発動が可能になりました。この結果、収容下にある982体のSCP-3100-JP-aのうち、チャンパーを破る物理的手段に欠けた一部を除く86.7%の収容違反が発生しました。これを受け評議会はクラス4非常事態を発令しました。この発令以降、全てのSCP-3100-JP-aの異常性は従来のものにもどり、収容作戦は52時間で終了しました。調査の結果、インシデント発生の直前に財団サイト-24でSCP-████の実験が行われており、非常事態宣言に伴うこの実験の終了とSCP-3100-JP-aの異常性の回帰とはタイミングが一致しました。当該実験はDクラス職員の消費量が多く、実施の必要性を疑問視されていたものですが、当該オブジェクトの性質を鑑みてサイト管理官が許可を下したものでした。

+ 第4回調査報告会抜粋

SCP-3100-JP-第4回調査報告会抜粋

大規模収容違反の解明を目的とした第4回調査報告会はSCP-3100-JPの性質理解及び事後対応に直接的に影響したと考えられています。ダーリントン博士は神智学部門のフィールド・エージェントで、本会議にかかる参考人の一人として召喚されました。

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[再生開始]

議長: では、ダーリントン博士、意見陳述をお願いします。

ダーリントン博士: わかりました。既に出た意見ですが、本インシデントの要点は異常性の変化と回帰―このタイミングがどこにあったのかを探ることにあります。またこの点で、私は皆さまと同じく、SCP-████に関する実験が要因であることは、間違いがないように思います。実験開始と変化、非常事態宣言による実験緊急終了と回帰。それぞれの時間は厳密に、管理官の号令と一致しています。

ダーリントン博士: であれば、誰にそんなことが可能なのかを考えるべきでしょう。世界中のあらゆる場所のヒトに、クラス4相当の事象固定能力を同時に付与・変質させる。また、財団の機密たる実験情報にもやすやすとアクセスして見せる。こんなことが、一体誰に可能なのかを。

██研究員: さらに上位の現実改変能力者…でしょうか。

ダーリントン博士: もちろん可能性としては否定しきれません。我々の職務は疑うこと。SRAの影響を受けず、カントにも反応しない、恐ろしい現実改変者の存在についての検証は必要です。ですが私はそれ以上に、蓋然性の高い、そして財団にとって都合の良い犯人を描いています。

ダーリントン博士: 鍵はSCP-3100-JP-aに共通してみられる性格にあります。彼らの多くは自身を正義だと信じていました。実際、SCP-3100-JP-a個体が私利私欲で動いたケースはほとんどありません。正義をなす彼らを阻む警備員は、その動機は労働対価としての金銭です。一方我々財団はあくまでも人類のために働く、もう一つの正義。SCP-3100-JPの本質は、燻る無力なヒーローに力を与える事なのだと、私は考えます。

██研究員: 悪を阻む力は、別の正義に対しては無力、ということですか。

ダーリントン博士: その通り。つまり犯人は、個人及び組織に、一方的に正義のレッテルを与え奪うことのできるモノです。私の専門ではそんなことをするのはこの世でたった一つ。神的実体とは文字通り格の違う、正真正銘の―神です。

██研究員: 神はサイト-24の実験に際し、財団から正義の資格を奪った。その後実験を終了したことで、我々は再び正義に返り咲いた、と。

ダーリントン博士: 合理的で、しかも魅力的な仮説でしょう？だってほら、SCP-3100-JPの収容が続く限り、我々の正義は―

ダーリントン博士: 神が、保証してくれる。

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[再生終了]

+ 評議会通達

評議会より全職員へ通達
君たち職員は常々思っているだろう。「倫理委員会は何のために作られるのだろう？」と。財団はこれまであらゆる非人道的な行いを認可してきた。赤子を殺し、青年の骨を切り出し、賢人を怪物の生餌にした。そんな我々が守るべき倫理なんてものは？と。お答えしよう。我々が守るべき倫理はSCP-3100-JPが決める。我々が正義である限り、SCP-3100-JPは収容可能であり続ける。そして、我々が神の機嫌を損ねたとき、SCP-3100-JP-aの収容違反は発生する。正義が失われたその時、神は、財団もまた阻まれるべき悪だと認定するのだ。
案ずるな、神は寛容だ。我らの父はモントークを許した。罪なき少女への絶え間ない拷問も、必要な犠牲だと認められている。だがゆめゆめ忘れるな。我らが犠牲を最小にする努力を惜しんだ結果、神が財団を見放したことが、過去に一度はあったことを。
しかして倫理委員会は結成された。どれほど深い闇の中にいようとも、その行いが神の認める正義であること。これを確かめるために。
— O5-1、初代財団倫理委員会 エリザベス・ダーリントン 連名

付与予定タグ: scp euclid 知性 時間 jp 倫理委員会 _イベント3

+ スポイラー

やりたいこと: 倫理委員会の設立背景を描く。
報告書終了時点ではまだ設立されて折らす、設立計画ができたぐらいの段階をイメージしています
気になること: 情報不足になっていないか
倫理委員会という大きなテーマの根幹を描くにあたって、説明不足が感じられる場合、特に指摘をお願いします。
あと、最後の評議会通知の折り畳み内ですが、読みづらいように思うので、改善案があればおしえていただけると助かります。

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  批評コメント批評コメント

  
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  tazen 12 Feb 2023 09:24

  コンテストの為に、とってつけた異常性の様に感じられる(正義のためにという動機とは噛み合わない)のと、世界の貧困層の半数以上はアフリカに存在しており中南米で偏りがある設定は矛盾しているように思います。

  また、倫理委員会のオリエンテーション(http://scp-jp.wikidot.com/ethics-committee-orientation)を読む限り"神"に関する記述は無く、設立の経緯を書こうとしているのならば、そもそも的外れだと感じました。

  LRRF 12 Feb 2023 13:23

  批評ありがとうございます。

  偏りについて: 真に貧困な地帯では奪う対象がいませんので、当オブジェクトは発生しません。そのため貧困かどうかより格差が大きいこと、人口が多いことから南アフリカ以上に中南米で頻発するだろうと考えこちらにいたしました…が、印象として南部アメリカが含まれないことは確かに不自然だと思われましたので、以下のように修正したいと思います。

  中南米、ついで南部アメリカに偏りが見られますが

  倫理委員会のオリエンテーションについて: 当該作品は倫理委員会の役割については書かれているものの、その設立経緯については書かれていません。財団のあらゆる内部組織はオブジェクトの収容に端を発する、とすることに意義を感じたため、本記事を執筆しました。かといって"神"の下りが世界観にあわないことも確かに思われますので、この点は加筆による説明を行おうと思います

  批評ありがとうございました

  最後の編集 12 Feb 2023 13:25 by LRRF さらに表示

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1. portal:7954672 (05 Apr 2022 23:28)

Footnotes

1. ベネズエラの首都

2. 石油会社の社長で、世界的な富豪

3. カント計数機。ヒューム値を測定する。

4. 小型スクラントン現実錨。現実改変を抑制する。