エージェントXの手記

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その日の空は碧い。本当に綺麗だった。そんな綺麗な日は、絶対に何か悪いことが起きるという事を彼女はもう知っていた。そう考えると風光明媚な景色が何かによって作られたように、不気味に見えた。
   
彼女が無意味に終わったSCP-████の情報収集から帰った時、区域███████にある基地ではチームメイト達が騒いでいた。彼女の所属している部隊は二つに分かれているのだが、もう一つが苦戦しているので自分達のチームもその作戦に投入されるそうだ。非常に憂鬱だ。彼らは別にいいんだが、戦うことが嫌だった。救援物資の補助に回してもらおう、とため息を一つ吐いた後に考えた。
                                     
ついにその日がやってきた。彼女が支度している間、外の廊下では仲間達がせわしく歩き回り、何か話し合ったり舌打ちをしたりしていた。相当危ないSCiPの収容なんだろう。支度が終わった後、プロジェクトの内容を聞いた。今回捕獲するのは泥のようなSCiP。ドロドロで茶色の体で、分裂してくるらしい。それだけでも気持ち悪い。しかもそいつが何匹もいるらしい。極め付けは攻撃的という事だ!風邪に罹って熱を出した時に見る、でたらめな夢に出る怪物みたい、と思った。
 
移動手段はバスだった。装甲付きの。彼女は小さい頃にクラスメート達と行ったチョコレート工場の見学を思い出したが、その時と違い、みんな押し黙っていて、つまらなかった。今日はぼんやりしていて、いつもだったらつまらないとか感じる余裕はないのに、慣れてきたのかな、などと考えていた。強化ガラスで作られた窓から外を眺めていると、自分達が閉じ込められている様な気分になったので、少し眠った。

海沿いの崖の上にある、ぬかるんだ台地。目的地近くに着いた時、数人のメンバーはもう準備していたし、彼はもう楽しげに笑いながら剣を振り回していた。彼の半径2m以内には雑草や花がなかった。剣に薙ぎ払われたのだろう。それはまるで…カインの踏んだ地の様だった。

''あの、アベル……。私、物資の補助に回りたいんだけど。大丈夫?''
彼は穏やかな微笑みを向けてこういった。
''Nop''
柔らかな笑みを浮かべていても、機嫌が悪くなると何をするか分からない人外を前に、彼女のささやかな希望は潰えた。
彼の思い付き……例えばこの場にいるみんなを殺してその皮でボロボロの彼のコートの代わりを作るとか……で私達の命は消えるかもしれないのだ。そういえば彼が少し前、「グッドなアイデア」と称して近くにいたDクラス職員を自分の部屋に招き、何時間も出てこないので様子を見に行ったエージェントが肉塊と化したDクラスと腕組みをして何かを考え込む彼を見てしまったことがある。
彼曰く「████を作ろうとしたが、思ったより脆かった。初めてやることだったからな」。
その時考えていたのが''次からの改善点''とか''次やる時に気をつける事''ではない事を祈りつつ今日まで過ごしたのはおそらく彼女だけではなくチームの全員に当てはまる事だろう。
                   
彼女のロールは前線での補助に決まった。少し不安はあったが、チームメンバーや076と一緒に剣や銃を振り回すよりはるかにマシだと思えた。
        
''GO''

その声を合図に、岩陰、木の上、崖の影に潜んでいたエージェント達が銃を一点へ撃った。ぬかるんだ泥と思われたドロドロがぐわっと起き上がって、撃たれたところから分裂した!彼女はそんな生物がいた事をぼんやりと思い出していた。そうだ、プラナリアだ。弾丸や爆弾etc……の物資をそれぞれの写真で移動させたが、いまいち戦いの場にいる実感が湧かなかった。
            
そのSCiPはある程度分裂して小さくなると大人しくなったので、収容するのは簡単だった。唯一よかったと思える点は、プラナリアみたいに無限に増殖することはないという事だった。それが分かると、銃より爆弾の方が需要が多くなったが、敵を076は剣で薙ぎ払っていった。その小さくなった奴らを他のメンバーが爆散させた。惚れ惚れする様なチームワークだったが、その影には焦りながら物資の供給をする人間がいた。
        
これで最後かと思われた泥を076が切った時だった。その時も彼女はふわふわした気分で岩陰に潜んでいたが、後ろにそいつがいる事は気づかなかった。近くにあった撃鉄を掴んだが、引き金を持つ手が震え、取り落としてしまった。足を払われ、背後の海へ押し出される。
そんな時、彼女は気づいた。今日はボーイフレンドの命日だった事に。朝から気分がふわふわしていたのはそれだった。
かろうじて掴んだ写真と、その写真に突っ込んだ手が意に反して動き、置いていた爆弾が誤作動した。写真が赤く染まったのを見たとき、誰かが横を通り過ぎた。
茶色い物体と一緒に海へ落ちていく人影。その下には、まだ沢山の収容対象もといドロドロがいた。もし誰かがそれを彼女から引き剥がさなければ多分、海に引き摺り込まれて窒息死していただろう。今の彼女には、自分を庇った形で落ちた下の人物の心配をする余裕はなかった。自分が爆発させてしまった爆弾に巻き込まれた人々が動いていない。生きていたエージェントが肩を叩くまで、死体を揺り起こしていた。
それは読み物、聞き物としては滑稽な姿だったが、当事者達には全く面白くない、喜劇どころか悲劇だった。

              
                SCP-█████収容プロジェクトA-8

           
機動部隊Ω-7を投入。爆弾の誤爆による死者8名、SCP-076-2が窒息により脳死状態に。076-1から新しい個体が生成される事がなく、076-2も目を覚ます予兆はありません。SCP-███の3割は未収容。残りの収容には機動部隊-█-█-を派遣する予定です。SCP-████は収容されました。このプロジェクトで█████ドルが損失しました。SCP-105の精神状態が非常に悪いため、週に一度のカウンセリングを受けさせてください。この状態が三ヶ月以上続くなら、Ω-7を解散する事を決定しました。
 
                   
105は目を開けた。今日も空は青く晴れていて、あの日の様だった。ボーイフレンドが殺された日も、こんなに晴れていて、楽しい1日になるに違いないと考えていた。あの爆弾で死んだ、罪のないチームメンバー達もこう考えていたのだろうか。あれから二ヶ月が経った。目はヒリヒリと痛いし、頭も何かに打たれたように鳴っている。076が目覚めなくなった事について上はこう言った。
「気にすることはない。皆これを望んでいたのだから。むしろ感謝しているよ」
誰も彼女の事を責めない事が、彼女にとっては最大の苦だった。
           
彼女がカウンセリングへ向かう途中、見慣れない人がいた。眼鏡を掛けていて、優しそうな顔つきだった。見学だろうか。その目つきがボーイフレンドに似ていて思わず泣きそうになったので彼に見られないよう避けて進んだ、彼女はそう言っていた。
         
彼女が「気に病むな」と毎回同じ事を繰り返して人を救った気になっているカウンセラーの話を聞いている時だった。封じ込め違反のアラームが鳴り響き、その巨躯を見せつけるかのようにトカゲが現れた。カウンセラーは
「なんてこった!もしかしてここ、あいつの収容施設の近くだったのか!?」
と、いつもの真面目で優しい声を荒げて叫び、先程まで猫撫で声で慰めていた対象を置いて逃げていった。
残された105はじっくりと、しかし素早くトカゲを観察し、結論を出した。
''動いてはいけない''
彼女の判断は正しかったのだろうか、息を殺して半壊したテーブルの影に隠れていた頃、カウンセラーはすでに食われていた。
                           
076-2ことアベルが灰色がかった目を開けた時、施設は半壊していた。
彼が今の状況を把握して動き出す前に、封じ込め違反のアラームと銃撃音が鳴り響いた。数ヶ月前は何週間に一回は聞いていたそのアラームだが、この音は彼のために鳴らされたものではなかったようだ。自分の影に手を伸ばして剣を取り出そうとした時、爬虫類が姿を見せた。そいつは隠れようともしないアベルを見た。アベルも''大物''であるそいつをみた。
(メモ:それの記録は報告書████に載ってあるそうだ)
            
俺は彼らから何があったか聞き、自分も彼らを見てきたとされるエージェントの手記に、ボールペンでメモを書き込んだ。どうせ持ち主は死んでるんだ。
クソッタレ。こんなやばい所に行かないとダメなのか。まるきりファンタジーじゃないか。
でも、日記を残すのはいいな。個人的記録
ここから出られる時、ファンタジー小説として出版できるんじゃないか?
文庫の種類はノンフィクションだけども。


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  1. portal:7923631 (09 Mar 2022 00:58)
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