歩みゆく 夏は一つに あらねども もし留まれたら もし留まれたら
「変な句〜!」
そう言ったのは尾盛京介。
彼はいつでもけらけらと明朗快活。分校の生徒たちはみんな彼のことが好きだ。
「いいじゃん、だってさ、毎年この夏が終わらなければいいのになって思っちゃうんだから!」
こう言ったのは鈴木あおい 。
てつしとあおいは同じ俳句クラブに通う小学3年生。緑溢れる御鷹村に住む、好奇心旺盛な子どもだ。
授業終わりの鐘が鳴って、生徒たちが散り始める。
鐘を打つのは校長先生で、彼は最近腰を痛めたのにも関わらず、自分がやると言って聞かなかった。
「ねぇ、次の授業ってなんだっけ?」
「ん〜、音楽だと思う。」
「じゃあこれが終わったら今日の授業は終わりか!」とあおい
「帰りにどこか行こうよ。」と京介。
「じゃあ、御鷹山に行こう!」
御鷹山は小学生たちの絶好の遊び場だ。おわんを伏せたようななだらかな山で鬼ごっこをしたり、小川で水遊びをしたり。しかし、今回あおいが行きたいのはツリーハウスでもふもとの池でもなく、山頂近くにある神社であった。神社のある所は昼間でもいつも暗く、あおいたち小学生にとっては御鷹村恐怖の心霊スポットランキング上位にランクインしている。心霊現象が起こったこともないのに、だ。
校門前に止めてある自転車に乗り込んで御鷹山を目指す。土手沿いを走ると、季節外れの赤蜻蛉がつぅぃ、つぅいと彼らの自転車と並走した。
神社に着くまでもソワソワしていたあおいだったが、たくさん並んだ鳥居を見てやはり恐ろしくなった。
しかし、ここでは止まれない。京介の手を握りしめ、一歩一歩進んでいく。京介は怖いもの知らずの根性でズイズイと進んでいったが、あおいは彼の手が小刻みに震えているのを知っていた。
あおいは神社の中身が見てみたかったのだ。大きな仏像とか、お宝とか。そんなものがあればいいな、そう思っていた。しかし、恐ろしい。足が震える。もっと恐ろしいのは、京介に神社の中身を見てみたいと伝えていたことだ。彼もそれに興味津々で、たとえあおいが嫌がろうと絶対に行くつもりだ。
鳥居を進んだ先に、ようやく小さな神社が見えた。
ジーワジーワとセミが五月蠅く鳴いていた。
「さて、開けよう」
けろりと京介が言った。
あおいは無言で目を瞑り、京介はギシギシと音を立てて扉を開けた。
彼の息遣いが聞こえた。
あおいは薄目を開け、まず京介が自分の知らない何かになっていないか確認した。
そして意を決して開いた扉に視線を向けた。
「…無い。何も無い。」
カビ臭い空気だけが、中にあった。
あおいは思わず笑ったが、京介は不満げだった。
あれだけ期待したのに、何もないのはやはり不満。
付与予定タグ: ここに付与する予定のタグ
ページコンソール
カテゴリ
SCP-JP本投稿の際にscpタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。
本投稿の際にgoi-formatタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。
本投稿の際にtaleタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。
翻訳作品の下書きが該当します。
他のカテゴリタグのいずれにも当て嵌まらない下書きが該当します。
言語
EnglishРусский한국어中文FrançaisPolskiEspañolภาษาไทยDeutschItalianoУкраїнськаPortuguêsČesky繁體中文Việtその他日→外国語翻訳日本支部の記事を他言語版サイトに翻訳投稿する場合の下書きが該当します。
コンテンツマーカー
ジョーク本投稿の際にジョークタグを付与する下書きが該当します。
本投稿の際にアダルトタグを付与する下書きが該当します。
本投稿済みの下書きが該当します。
イベント参加予定の下書きが該当します。
フィーチャー
短編構文を除き数千字以下の短編・掌編の下書きが該当します。
短編にも長編にも満たない中編の下書きが該当します。
構文を除き数万字以上の長編の下書きが該当します。
特定の事前知識を求めない下書きが該当します。
SCPやGoIFなどのフォーマットが一定の記事種でフォーマットを崩している下書きが該当します。
シリーズ-JP所属
JPのカノンや連作に所属しているか、JPの特定記事の続編の下書きが該当します。
JPではないカノンや連作に所属しているか、JPではない特定記事の続編の下書きが該当します。
JPのGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。
JPではないGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。
ジャンル
アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:7923631 (09 Mar 2022 00:58)
コメント投稿フォームへ
批評コメントTopへ