貧乏神と安酒を

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クレジット

タイトル: 貧乏神と安酒を
著者: Scar C does not match any existing user name
作成年: 2023

「今日の午後三時、世界オカルト連合は六四日後のGH-クラス"デッドグリーンハウス"シナリオの発生を公式に発表しました。現時点で詳細は不明であり、その他の正常性維持機関もこれ以上の情報公開を控えています。これについて、元財団職員のシェルドン・ブッツブツ氏にご意見を伺いたいと思います。」

「えー、今回の発表についてですが、やはり信憑性は非常に高いですね。GH-クラス"デッドグリーンハウス"シナリオの発生を発表した団体には未来予知能力を持ったオブジェクトを保有しているものも多く、時期から考えると、世界滅亡の回避は不可能であると確定した時点での発表なのではないでしょうか」

店内に流れるラジオを聴きながら、シェルドン・カッツカツは思っていた。「…あのー」結局のところ、自分がやってきたことは全て間違いだった、と。「あのー店員さん、聞いてます?ヒーロー・フライドチキンクリスマスプレミアムと、ハッシュドポテト追加でください。」「あ、すいませんでした!ヒーロー・フライドチキンクリスマスプレミアムとフライドポテトですね?ポテトは塩漬け豚バーベキュー味と究極マグロ味がございますが…」「あの、フライドポテトじゃなくてハッシュドポテトです」「あ、申し訳ありません!ええと、ヒーロー・フライドチキンクリスマスプレミアムとハッシュドポテトですね、少々お待ちください!」「すみません、袋とおしぼりは大丈夫です」「あ、すみません!」

「嘆きの給料日事件」から数年。働き詰めで体調を崩し、入院してリストラされたカッツカツは貯金を医療費に使い果たし、コンビニのバイトでなんとか生計を立てていた。財団から離れてからも暮らしは一向に改善されず、カッツカツは、自分には貧乏神が三人くらいは取り憑いているに違いないと思い始めていた。そうでなければ、引き出した初任給がその辺の道で無くなり、不健康すぎてどの内臓も売り物にならず、家が人とアメーバの中間のようなアノマリーに占拠されるわけがない。

多分、財団に入ったせいではない。自分は物心ついた時から今まで、あらゆる選択を間違えてきた。初恋の人はネピオフィリアで、入学した大学は理事長の不正が発覚した結果偏差値の低い大学として扱われるようになった。就職した五つの会社のうち、四つの会社は謎の爆発に巻き込まれ、あとの一つは大手による技術革新の影響を受けて倒産した。財団はそういった間違いのうちの一つに過ぎないのだろう。

その中では、このコンビニの仕事は、これまでに自分がした選択の中で最も正解に近いかもしれない。「…おい」少なくとも給料の支払いが滞ることはなく、店長は終末を信じていない。「おい、兄ちゃん」このまま、六四日後まではまともに暮らせるだろう。

「おい、聞いてんのかカッツカツ!お前だよお前、レジでボーっと世界の終わりに思いを馳せてるお前!聞いてんのか?!」

カッツカツは客の大声で我に返った。「す、すみません!お会計ですか?」目の前に居たのは、古びた和服を着た老人だった。その老人は、戸惑うカッツカツをしばらく眺めると、話しかけてきた。「買い物じゃねぇよ。薄情なもんだなぁ、こちとら三十数年の付き合いだってのに」カッツカツは身体を固くした。「えっと、金は貸せませんけど」失礼なのは分かっているが、カッツカツは長年の経験から、遠い親戚にはまずこう言うべきだと分かっていた。最初から断固とした態度を取らなければ、こういう人は諦めない。

付与予定タグ: tale jp まずしいざいだん

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