遺書
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 あなたがこれを読んでいるということは、僕はちゃんと死ぬことができたのでしょう。(すみません、書いてみたかっただけです。)これを今、誰が読んでいるのか僕は知ることができませんが、もし僕のことを知っている人でしたら、僕が隠したもう一つの遺書を探してください。この文章よりも見つけやすい場所にありますから。 
 それから、ここから先の内容は読まないようお願いしたいです。あなたがこれを見つけた最初の一人でしたら、燃やすなり破くなりして処分してくれると助かります。でも、きっとあなたは最後まで読むのだろうとこれを書きながら考えています。ここからは、僕が自殺を決意した要因となる出来事が書いてあります。僕の記憶が多少の脚色を加えているかもしれませんが、全て僕の身に起こったことです。
 最後の警告です。僕はあなたをそして、あなたの身近な人を危険と恐怖に晒したくはないのです。これは僕が考えた精一杯の解決策です。どうか、お願いします。

 僕には小学校からの友達がいました。ここでは名前を伏せてSということにしておきます。Sは誰とでも親しく接する人でした。勉強もスポーツもできて、内気な僕とはまるで正反対な友人です。僕とSは誰が見ても親しいと思える間柄だったとは思います。そんなSがある日僕に「壁の隅に黒い影のようなものが見えたことはあるか。」と聞いてきました。S曰くその影はうごめいているように見えて、影と言うよりは靄のようだとSは言いました。僕は目が疲れているんじゃないかとSに言いました。壁の隅にある影が動くなんて、信じられなかったからです。Sは「そうだよな」などと言いながら納得がいかないような顔をしていた気がします。
Sとそんな話をしてから、3週間後くらいだったと思います。その日は雨でした。グラウンドが使えなかったので、校舎の廊下で部活動の練習をしていました。その時のSは普段と何ら変わりありませんでした。何も問題ないと思っていました。5時半あたりで練習が終わりました。僕とSは練習で使った道具を片付けていました。外はもう真っ暗で、電気が付いていても廊下は薄暗く、何処か不気味に感じました。荷物をまとめながらSは、「前に言った影の話覚えてるか?」と聞いてきました。僕はその時、その話を覚えていなかったので適当な相槌を打っていました。Sは続けて、「最近、暗がりが怖いんだ。どこかの隙間とか、さっきも言った壁の隅をみるのが怖いんだよ。俺、おかしくなったのかな。」と俯いていました。Sは本当に気に病んでいるようで、僕はSに気の利いた言葉をかけようとしましたが、何も思いつきませんでした。僕は気まずい雰囲気をどうにかしようとして、Sに行こうよと声を掛けました。Sは笑って一言「ごめんな。」と言って力なく笑いました。その言葉を聞いて、Sはきっと大丈夫だと思いました。
 僕らはそのまま廊下を進みました。突き当たりにある掃除用具が入っているロッカー。そこを通り過ぎようとした時、「あ。」とSが呟いたような気がしました。がしゃりと練習道具の入った箱が音を立てて、Sの足元に落ちました。Sロッカーをじっと見つめていました。いや、Sは恐怖で動けなかったのかもしれません。僕はどうしたんだろうと思い、Sの肩をたたきました。振り向いたSの顔は、今まで見たことがないくらい怯えていました。僕はSの顔に驚きながらも、「どうしたの。」と聞くと、「いる。」と一言。このロッカーの中に居るのかと聞くと、Sは無言で頷きました。僕には信じられませんでした。だってロッカーの中には箒やちりとりなどが入っている筈で、生きた何かが入っている訳がないからです。
 僕はそう思いながら、もしかすると…という好奇心からロッカーに手を掛けました。すると、突然Sが「やめろ!」と叫び僕の腕を掴みました。信じられない程の力でした。Sの表情は必死そのもので、目に涙を浮かばせていました。「やめろよ…」とSは俯き、僕は腕を掴まれたまま立ち続けていました。そのまま長い時間が経ったように感じました。時間が止まっているのかと思った時、目の前のロッカーが一人でに、ぎぃ…と音を立てて開きました。 
 僕らはお互い一歩も動けませんでした。そこにいる。


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