1.開幕
彼が卒倒する10分前、橘研究員は明らかに気分が悪そうに見えた。期限切れの書類を気難し屋の目暮研究員に届けるというのは、彼にとって出来るだけ避けて通りたい道であるようだった。
彼は研究室へと辿り着いた。ありったけの勇気を振り絞り扉をノックするも、返事がない。開けようとするが、鍵がかかっている。内側から施錠してあるようだ。非常に
2.証言
無惨な男の死体のある部屋に、阿宮と吽野は立っていた。死体は衝撃を受けたような顔をして、入り口の扉のすぐ前に転がっていた。
「鑑識の報告をまとめます。被害者が目暮研究員であることは間違いありません。被害者は後頭部を銃撃され即死。これは今から数えて2時間ほど前のことと推定されています。死体はこれらのことを調べるために少し格好を変えた以上の移動はしていません。死体から異常性は見つかりませんでした。」と阿宮。
吽野は「なるほどね。関係者の証言は?」と訊ねた。
「大雑把には収集済みです。監視カメラに記録されていた、部屋を通りかかった人間、部屋に出入りした人間、そして第一発見者の証言を全て信用するなら―」
「密室殺人、か。超常事件でないことを祈るよ、それでは面白くないからね」と吽野は言った。
「取り敢えず、この部屋は調べさせてもらおう。そんなに広くは無いし…すぐに終わるだろう」
吽野はそう言って、殺された男の部屋を調べ始めた。
彼の言った通り、調査はすぐに終わった。阿宮が何か収穫はあったかと訊くと、
「ああ、つけっぱなしのパソコン、置いてあった新聞、遺体のポーズ。そんなところだね」
阿宮にはさっぱり意味が分からなかった。だが、質問したところで吽野はまともに答えてくれないだろう。彼の信条は「探偵は多くを語らない」だった。
「取り敢えず、第一発見者を呼んで証言を―」
「いや、その必要はない。それよりも、さっきの大雑把な証言の中から、最後に哀れな目暮研究員が生きているのを確認したのは誰だい?」
「それは俺の部下の阿ヶ咲さんが知っていますが―でもなぜ?私としては第一発見者の方が―」
「いいかい、探偵は少しのことから多くのことを想像するものだ。そして僕の想像は、第一発見者ではなくその大雑把な証言を必要としている」
これ以上の質問には吽野は答えなかった。阿宮はいつものことながらその勿体ぶりに呆れたが、こうなればもう誰も吽野の考えていることを知ることはできないと分かっていた。
阿宮はしばらくして、一人の男を連れてきた。
「阿ヶ咲さんに訊いてきました。彼があなたの求める人物ですよ」
男は少し緊張していたが、吽野の質問には淀みなく答えた。
「はい、僕が廊下を通ったとき、キーボードの音と―それと少しの罵声が聞こえました。」
「ああ。報告書に書いたら勝手に編集されるか突っ返されてしまう類のものだろう。彼は怒りっぽいという評判だったからね」
男は苦笑した。
「君が廊下の前を通ったのは、何時何分のことだった?」
男は「それなら、正確に言えると思います。午後1時55分ごろでした。2時に韮崎っていう同僚と会う約束だったんです」と答えた。
「ありがとう。同じことを二度訊くことになって申し訳ないが、例の罵りとセットで確かにキーボードの音も聞いたんだね?言い切れるかい?」
男は怪訝な表情を浮かべた。質問の意図が分からないようだった。
困惑しながらも男は答えた。「―はい。言い切れると思います。罵りに加えて打鍵音が聞こえて、なにかゲームをしているんじゃないかっていう想像がぱっと浮かんだんです。もちろん間違いだと思いますが」
「ありがとう。いや、君は非常に有用なことを教えてくれたよ」
男が出て行くと、阿宮が「なぜキーの音にこだわるんですか?」と聞いた。
「質問ばかりではダメだよ、阿宮くん。君はどう思うね?」
「どうって…。失礼かもしれませんが、意味のない質問としか…。」
「それではダメだ。きちんと君の脳髄をフルに使って考えるんだ。しかし超えられない壁というのはあるからね、ヒントを与えてあげよう」
阿宮はもう少しで硬く握った拳を振り下ろすところだったが我慢した。
「君、キーボードのタイピング音が外に漏れる、そしてはっきり聞こえるなんてことあるかい?ましてや財団の支給するパソコンは静音性の優れたものだよ」
ここまで来れば阿宮にも理解できた。パソコンが打鍵音の大きいものにすり替えられていたか、もしくはそもそも“目暮研究員はパソコンに向かっていなかった”かだ。
「阿宮くんにも分かったようだね。まあ、これで一つ状況は変化したわけだ。さて、話は変わるが、最近現実改変を起こすanomalousアイテムが収容違反したということがあったね」
そのことなら阿宮も知っていた。三日前、自身とその周辺の物体の位置を現実改変によって置き換えるアノマリーが紛失したのだ。かなり複雑で混み入った使い方を要求する代物であり、一般人の手に渡っても大きな影響はないだろうということで捜索の優先度は低くなっていた。今月の財団茜莿新聞にも記事は小さくしか載っていない。ましてや、収容違反したアイテムは事件現場で管理されていたものではないのだ。だが阿宮は疑問を口に出さず、
「それがどうしました?」
「今は質問は無しだ。その収容違反事件を総括しているのは誰だい?その人に会いたいんだが」
3.証言その2
「ああ、先月ぐらいに起きた収容違反事件のことですね?それなら原因ははっきりしてますよ。そこのロッカーだけ電気系統が故障してたんです。
付与予定タグ: ここに付与する予定のタグ
ページコンソール
批評ステータス
カテゴリ
SCP-JP本投稿の際にscpタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。
本投稿の際にgoi-formatタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。
本投稿の際にtaleタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。
翻訳作品の下書きが該当します。
他のカテゴリタグのいずれにも当て嵌まらない下書きが該当します。
言語
EnglishРусский한국어中文FrançaisPolskiEspañolภาษาไทยDeutschItalianoУкраїнськаPortuguêsČesky繁體中文Việtその他日→外国語翻訳日本支部の記事を他言語版サイトに翻訳投稿する場合の下書きが該当します。
コンテンツマーカー
ジョーク本投稿の際にジョークタグを付与する下書きが該当します。
本投稿の際にアダルトタグを付与する下書きが該当します。
本投稿済みの下書きが該当します。
イベント参加予定の下書きが該当します。
フィーチャー
短編構文を除き数千字以下の短編・掌編の下書きが該当します。
短編にも長編にも満たない中編の下書きが該当します。
構文を除き数万字以上の長編の下書きが該当します。
特定の事前知識を求めない下書きが該当します。
SCPやGoIFなどのフォーマットが一定の記事種でフォーマットを崩している下書きが該当します。
シリーズ-JP所属
JPのカノンや連作に所属しているか、JPの特定記事の続編の下書きが該当します。
JPではないカノンや連作に所属しているか、JPではない特定記事の続編の下書きが該当します。
JPのGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。
JPではないGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。
ジャンル
アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:7734559 (12 Dec 2021 09:58)
コメント投稿フォームへ
批評コメントTopへ