不思議な人となり
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不思議なことがある。私はいつも、あの女性についての話をするときは、例えようのない表情を以て話をする。もう何年も昔のことであるのに、どうしてか遠慮が働いてしまう。そういう類いの顔で彼女を説明するのが、どの場においても正解だと思えるのだ。

あるところに不思議な女性がいた。当時、私は博士と呼ばれるには幾分か未熟で、

何とも不吉なことだが、自分の死を予言するのだ

「こんにちは、おきていますか」
私はこのところ毎日に、ここに訪れては、こう尋ねる。そうすれば間違いなく、こう返事を返す女の静かな声が聞こえるのだ。
「ええ、おきています」
しばらくすると、女は夢現な面持ちで、ベッドの端に座っている。私の顔を見るなり、健気な微笑みを見せる。
そこで私は愉しくなって、ちょいと世間話を差し向けてやると

そして互いに世間話も終わって沈黙が続くと、彼女は初めて昨日の妄想を呟き始めるのだ。

 「その日は、わたしは海にいて──」
 ここで私は紙と筆を執り、それを事細かに書き留める。

時折、彼女は私に

 しかし、私は彼女の顔をちらと伺うだけで、常としてこう返すのだ。
 「そうですか。」
 私は弱いことに、上の者から「彼女については必要以上に関わるな」との命を承っていて、

彼女が息災

その日は、わたしは海にいて

無窮この上ない海を望んで、わたしもこの一部になれたらと、乞い願います。そうして、わたしの心の内が、そうなるべきだと、酷く訴えかけてくるのです。

 海の波の音は、本当のわたしはここにいてはいけない気を彷彿とさせるのです。

わたしの心は覚悟をしていませんが、背中と脇の下が熱を持つのを感じ、

じっと堪え忍ぶ

水はわたしの膝裏を呑み込み、間もなくうなじまで呑み込みました。もう冷たくはありません。何せ、私の心は苔岩のように熱を失っておりますから。

しかし、その度にわたしは、ああ、あの人に想いを伝えていれば良かったと、思うのです。嘘をつくんじゃなかったと、後悔するのです。いつの時も、そう思ってしまうのです。

「こんにちは、おきていますか」
「はい、おきております」

「今朝は、面白い話を聞きましたわ」

「面白い話ですか」

職員が、
「あなたのことを、先生と呼んでるのを聞きました」

「わたしも先生と、そう呼んでもいいですか」
私は書物に目を落として、ただ「勝手にしてください」とだけ言った。
しかし、しばらく沈黙が続くのを見て、私はにわかに自分の行いが大人気なく思えて、しばらく彼女と目を合わせなかった。なぜ彼女が私のことを先生と呼びたくなったかは定かではないが、きっといたずらに違いない。そうして私は頭の中をぐわんぐわんと揺らしていると、女性が「申し申し」と言いながら透明な壁を叩いてるのが見えたのだ。→驚いた
私は照れ隠しのように「何か」
少し笑って女性「やっと気が付いてくださった」
「新しい話(自殺の)が来ました」と言った。
私はさっきまでの自分の疑りが急に馬鹿らしくも、物悲しくも思えた。しかしこれはこれで、何とも都合が良かった。そして言う
「そうですか」
彼女はうやうやしく敷き布団(持ち場)の方へ戻った。その時私は、彼女が本当に私のことを先生と呼べるのであれば、それはいったいいつ頃になるのかと、想像に酔いしれてた。これから始まるであろう彼女の語りよりも、重要なことのように思えてしまうのだ。

酒の飲み方も知らぬわたしは、父に一つや二つでも尋ねておけば良かったと思いました。

酒に飲まれ

わたしは縄を用意する

取っ手、
そうして首に縄をかけたとき、涙が止まらなくなりました。わたしの暮らした家でわたしの死が見つかると思うと、なぜだか涙が止まらないのです。何より、わたしの子供たちがそれを見つけてしまうのだと考えると、涙が止まらないのです。

しかし、それはわたしの気質であるが故のことなのです。せめて私の子供たちが息災であるかどうかを教えてくだされば、上手くいくと思うのです。

故郷に残した子供たちや、あの方は今どうしておりますか。どうか、お教えください。先生のお答えさえ受けられれば、わたしはもうそれでいいのです。

「こんばんは、おきていますか」
「はい、おきています」
彼女はすらりと起き上がると、早々に尋ねた。
「今日は幾分、来るのが遅うございましたね」
私は返答に困った。何せ、私が見ているのは、決してあなただけではないのだ。この事実を知ったら、彼女はどう思うだろうか。檻の中の相手は、彼女にとっては私一人しかいないというのに。目を伏せて→
「そうですか」
また言ってしまった。私は彼女と目を合わせる資格がない、とまで思えてしまったのだ。

「わたしをこれからどうするか、こうなったときどうするか」

「そうですか」

私は冷たい海に飛び込み、

「こんばんは、おきていますか」
「はい、ただいま」
彼女は随分と時間をかけて起き上がる。
私はいたずらに尋ねてみたくなって
「今日は幾分、起きるのが遅うございますね」

わたし

来るべき時が来たのか、と私は考えた。

「わたしの死に必要はありますか」
「それは答えられません」

「なぜわたしをこうして囚えるのですか」

「何か厄介事があるというのですか」
疑(うたぐ)っているな、

「やはり、それほど死が恐いのですか」
そう言われて私ははっとした→私は別に彼女の存在を疑っていたわけではないのだが、
なぜ彼女を閉じ込めていたのか、この頃になっては全くわからない、答えられなかった
⭐しかし私が死を恐れてるのは、それが不吉であることではなく、死の考え方がこの二人を引き合わせ続けてるから、死を忘れてしまえば(もしくは死んでしまえば)二人は引き剥がされるだろう

私は改めて思い知った。そう、彼女は死そのものなのだ。人間は、死を厄介事と解釈しなければならない。それは、生きとし生けるものであるが故の掟なのだ。
「そうですか」という返答こそが、私を厄介事から逃してくれていたのだ。

「それでも、わたしは死に急ぎたくはないのです」
「そうですか」
私は不意にも、一粒の涙を流してしまった。⭐幸いにも、彼女にはそれは見られていなかった。しかし私は取り乱して手元の資料で涙をすいとってしまう→大慌て→何とも馬鹿げた失態だ
彼女はもう見たことないくらい笑って
「もうこのお話は止めにしましょう」

大慌てで職員が私に紙を渡す

私はそれを見やった。しかし、不思議と私は、取り乱す必要はないように感ぜられたのだ。

あのまらすアイテム
彼女は餓死してた

問題の彼女は今やベッドの上で、それも眠るように息を引き取っているのだという。ああ、今ごろは土の下で、生きていたころの妄想を連ねているのだろうか。
 この話をするたびに、私はあの時私の流した涙が、何か特別な意味を含むように思えて、仕方がないのである。⭐

涙を流した理由……私は「わたし」を好きになってしまったから?

後日、もう言うまでもないが、ある女は静かに息を引き取っていた。いや、元々あるべきものがあるべき場所に戻ったと言うべきか。
今ごろは土の下で、生きていたころの妄想を連ねているのだろうか。
死とは違い、あの女が健やかなることを願いたい。


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  1. portal:7707552 (15 Oct 2021 16:17)
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